近年、少子化や教員の負担軽減を背景に、部活動の地域移行が進められています。
これにより、地域のスポーツクラブや団体が部活動を運営し、専門的な指導が受けられるようになります。
一方で、「教員の業務負担軽減につながっていない」「地域格差で不平等」などの問題も浮上しています。
本記事では、部活動の地域移行のメリット・デメリットや成功事例を紹介し、その未来を探ります。
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1. 部活動の地域移行とは
1-1. 地域移行の背景と目的
部活動の地域移行は、少子化や教員の負担軽減を目的として、学校の運動部活動を地域に移行する取り組みです。
文部科学省は、教員の働き方改革の一環として、2023年度から2025年度までを「改革推進期間」と位置付け、部活動の地域移行を進めています。
1-2. 現在の部活動との違い
従来の部活動は、学校の教員が顧問として指導し、学校の施設を利用して行われていました。
一方、地域移行後の部活動は、地域のスポーツクラブや団体が運営し、地域の指導者が指導を担当します。
これにより、学校の枠を超えた多様な活動が可能となります。
1-3. 地域移行の進め方
地域移行は段階的に進められます。
まず、地域のスポーツクラブや団体と連携し、指導者や施設の確保を行います。
その後、休日の部活動を地域に移行し、最終的には平日の部活動も地域で行うようにします。
各自治体や学校は、地域の実情に応じて柔軟に対応します。
2. 部活動の地域移行によるメリット
2-1.児童・生徒にとってのメリット
地域移行により、学校の部活動では提供できなかった多様な競技や活動が可能になります。
地域のスポーツクラブや団体が運営するため、専門的な指導が受けられるほか、新しいスポーツや文化活動にも挑戦できるようになります。
また、入部・退部も自由に行うことができるため、強要されにくいという利点があります。
2-2. 教員にとってのメリット
部活動の指導という負担が減ります。
また、部活動の指導時間を他の授業準備等の業務に充てることができます。
地域のスポーツクラブや団体とコミュニケーションをとる機会にもなります。
2-3. 地域にとってのメリット
地域のスポーツクラブや団体に子どもたちが参加することで、地域全体が活性化します。
また、地域の指導者やスポーツ愛好家の活躍する機会が増え、生きがいや健康増進につながります。
そういえば、私の同僚で「部活動の顧問になりたくて教員になった」という方が結構いらっしゃったわ。
3. 部活動の地域移行によるデメリット
3-1. 児童・生徒や親にとってのデメリット
所属するスポーツクラブや団体、そして指導者によっては、学校管理下の部活動よりも、よりハードなケースも考えられます。
練習時間の増大、体罰や暴言を受けるなどの被害も想定しておく必要があります。
また、費用や送迎などによる親の負担も増大するでしょう。
さらに地域によって、所属できる団体の数には差があり不平等な機会となりえます。
3-2. 教員にとってのデメリット
部活動は、普段の学校生活とは違った経験を教員と生徒が共有できるため、信頼関係を深める機会が減ることが挙げられます。
また、部活動の顧問になりたくて教員になったというケースも多く、そのような教員にとってはやりがいやモチベーションを奪ってしまうかもしれません。
もし地域のスポーツクラブや団体の活動の中で、児童・生徒の問題行動があった場合、新たな教員の業務が増えることも考えられます。
3-3. 地域にとってのデメリット
地域が部活動の代わりを担うことで、単純に教員の負担が地域の負担へ移行します。
また、地域のスポーツクラブや団体が豊富でない地域にとっては、活性化にはつながらないでしょう。
地域の事情も家庭の事情もそれぞれに違うので、とても心配です。
4. 地域移行に向けた成功事例
福井県の事例
・県の競技団体が地域スポーツクラブを創設
・中高一貫指導体制を構築
富山県の事例
・「応援企業登録制度」を設立し、指導者や財源を確保
・部活動指導員等の全ての指導者を対象に研修会を実施
・「地域部活動検討委員会」を定期的に開催し、部活動の地域移行「手順」を県内全15市町村に提示
岡山県の事例
・地元大学生と連携した指導体制の構築
・参加中学校を2つのグループに分け、合同部活動を実施。
・教師、保護者、地域指導者、有識者からなる合同部活動推進委員会を結成
香川県の事例
・スクールバスを活用した移動手段の確保
・複数の種目でコーディネータを配置
・保護者懇談会を各種目ごとに開催
以下の資料では、他にも多数の事例が紹介されています。
詳しくは、文部科学省の資料「運動部活動の地域移行等に関する実践研究事例集」をご覧ください。
●運動部事例集
●文化部事例集
5. まとめ
部活動の地域移行は、少子化や教員の負担軽減を目的とした重要な取り組みです。
地域資源の活用や多様な活動の提供により、学生の社会性やコミュニケーション能力の向上が期待されます。
一方で、教員の負担増や地域格差、学校との連携の難しさもあります。
成功事例を参考にしながら、地域全体で支える体制を整えることが求められます。
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