「朝、どうしても学校へ向かう足が動かない」「もう何日も欠席している」「このままでは留年してしまうのではないか」——高校生の不登校は、本人にとっても親にとっても、中学までとは違う不安がつきまといます。高校は義務教育ではないため、欠席が続くと留年や中退という現実的なリスクが生じるからです。
けれども、結論から言えば、道は決して一本ではありません。在籍している高校で立て直す方法もあれば、通信制高校への転校、高卒認定試験(高認)、サポート校の利用など、選べる選択肢はいくつもあります。大学進学や就職の道も、思っているほど狭まりません。
この記事では、高校生の不登校について、最新の公的データ、中学との制度的な違い、取れる選択肢、転校の進め方、親の接し方、そしてその後の進路までを、本人にも保護者にも役立つ形で整理します。
1. 結論(早見)
忙しい方のために、まず要点をまとめます。
- 留年の目安を早めに確認する:多くの全日制高校では、各教科の授業日数の3分の1以上を欠席すると、その科目の単位が認定されず、進級・卒業に響きます。まずは在籍校の規定と、今の欠席状況を把握することが最優先です。
- 「休ませてはいけない」ではない:エネルギーが枯れている時期に無理に登校させると、回復はかえって遅れます。休養と安心の確保が先で、進路の判断はその後です。
- 選択肢は主に4つ:(1)在籍校で頑張る、(2)通信制高校へ転校(転入)する、(3)高卒認定試験を受ける、(4)サポート校を併用する。どれも「高卒」または「大学受験資格」につながります。
- 転校は年度途中でもできる:通信制高校の多くは転入を随時、または年数回受け付けています。取得済みの単位は原則引き継げます。
- 進路は狭まらない:通信制高校からでも大学進学や就職は十分に可能です。焦って一つの道に決めず、選択肢を残すことが大切です。
- 迷ったら相談を:ひとりで抱え込まず、学校の先生、スクールカウンセラー、教育相談窓口、そして本人が話しやすい大人に、早めに相談してください。
2. 高校生の不登校の現状(データ・出典)
まず、高校生の不登校は決して「特別なこと」ではないと知ってください。
文部科学省の令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(令和7年10月29日公表)によれば、高等学校における不登校生徒数は67,782人で、児童生徒1,000人当たり23.3人にのぼります。おおよそ40人のクラスに1人前後の割合で、不登校の生徒がいる計算です。
同じ調査で、小・中学校を合わせた不登校児童生徒数は353,970人と過去最多を更新しており、不登校は社会全体で年々身近な状況になっています。一方で、小・中学校の新規の不登校児童生徒数は9年ぶりに減少しており、支援の広がりが少しずつ表れているとも読み取れます。
高校生に特有の数字として押さえておきたいのが、中途退学の状況です。同調査では、高等学校の中途退学者数は44,571人(前年度46,238人)で、こちらも前年度から減少しました。中退理由で最も多いのは「進路変更」で、全体の約4割を占めます。つまり、高校を離れる生徒の多くは「学びをやめた」のではなく、「別の学びの形へ移った」ということです。この事実は、いま在籍校で苦しんでいる人にとって、大きなヒントになります。
大切なのは、これらの数字が「あなただけではない」ことと、「学校を移ることは失敗ではない」ことを示している点です。
3. 中学との違い(留年・単位・中退リスク)
高校生の不登校が中学までと決定的に違うのは、高校が義務教育ではないという一点です。ここから、いくつかの現実的なリスクが生まれます。
(1)出席日数と単位認定 全日制高校では、進級・卒業に「単位の取得」が必要です。単位を得るには、定期試験などの成績に加えて、各科目ごとに一定の出席日数が求められます。一般的な目安として、その科目の授業日数の3分の1(学校によっては4分の1)を超えて欠席すると、成績が良くても単位が認定されないことがあります。ここで見落としがちなのが、出席は科目ごとに判定されるという点です。全体の欠席日数には余裕があっても、特定の科目だけ欠席が集中すると、その科目の単位を落とすことがあります。
(2)留年(原級留置) 必要な単位がそろわないと、進級できずに同じ学年をやり直す「留年」になります。これは中学にはなかったリスクです。ただし、留年が見えてきたからといって即詰みではありません。後述するように、留年が決まる前に通信制高校へ転入すれば、留年せずに学びを続けられる場合があります。
(3)中退リスク 欠席が長引き、単位が大きく不足すると、中退という選択が視野に入ります。ただし前章で触れたとおり、中退理由の多くは「進路変更」です。中退そのものを避けることよりも、「学びを止めない次の一手」を早めに用意することが重要です。
まずは在籍校の担任やスクールカウンセラーに、「今の欠席状況で、どの科目がいつ危ないのか」を具体的に確認しましょう。数字が見えると、打てる手も見えてきます。
4. 取れる選択肢(在籍校で頑張る/通信制へ転校/高認/サポート校)
高校生の不登校で取れる道は、大きく4つに整理できます。どれか一つが正解ではなく、状況に応じて組み合わせるのが現実的です。
選択肢A:在籍している高校で立て直す 今の学校に戻る・在籍を続ける道です。保健室登校や別室登校、放課後の補習、追試・追認考査(救済措置)などを使えば、単位を確保できる場合があります。学校が認めた施設への通所や、一定条件を満たすICT等を活用した自宅学習が、指導要録上「出席扱い」となる制度もあります(詳しくは第8章)。ただし高校では、出席が認められても単位そのものは別途取得が必要な点に注意が必要です。友人関係やクラスへの安心感が残っているなら、まず検討したい道です。
選択肢B:通信制高校へ転校(転入)する 自分のペースで学べる通信制高校へ移る道です。レポート提出とスクーリング(面接指導)、試験で単位を積み上げ、全日制と同じ「高校卒業資格」を得られます。登校日数が少ない・オンライン中心のコースも多く、体調や生活リズムに合わせやすいのが特長です。取得済みの単位は原則引き継げます。詳しい進め方は第5章で解説します。
選択肢C:高卒認定試験(高認)を受ける 高等学校卒業程度認定試験(高認)は、文部科学省が実施する国家試験で、「高校卒業と同程度の学力がある」と認定する制度です(旧・大学入学資格検定)。合格すれば、高校を卒業していなくても大学・短大・専門学校の受験資格が得られ、就職や各種資格試験の幅も広がります。高校に在籍したまま受験することもでき、通信制・定時制では合格科目を単位に振り替えられる場合もあります。ただし高認は「高校卒業資格」そのものではないため、進路の希望に合うかは事前に確認しましょう。
選択肢D:サポート校を併用する サポート校は、通信制高校での学びを支える民間の教育施設です。レポート作成や学習の伴走、生活リズムづくり、進路相談、居場所づくりなどを担い、「通信制だと自己管理が不安」という人を支えます。単体では卒業資格は得られませんが、提携する通信制高校とセットで利用することで、卒業までを継続的に支えてもらえます。
5. 転校・編入の進め方とタイミング
「学校を移りたい」と思ったとき、まず整理しておきたいのが「転入」と「編入」の違いです。
- 転入(転校):今の高校に在籍したまま、別の高校へ移ること。学校に籍を置いたまま切り替えるので、空白期間が生まれにくい。
- 編入:一度高校を中退(退学)したあとに、あらためて別の高校へ入り直すこと。
不登校で悩んでいる段階なら、多くの場合は在籍を切らさない「転入」が有利です。中退してからの編入だと、受け入れ時期が限られたり、空白期間が生じたりしやすいためです。
タイミングの目安 全日制高校の転入は4月・9月など時期が限られることが多い一方、通信制高校は転入を随時、または年数回(4月・10月など)受け付けているところが多くあります。「留年が確定する前に動く」ことが一つの分岐点です。年度の途中でも、単位が認定される前に転入すれば、その学年をやり直さずに済むケースがあります。
単位の引き継ぎ 転入・編入いずれの場合も、単位は引き継げますが、原則として「前年度までに修得した単位」までが対象です。たとえば2年生の途中で移る場合、引き継げるのは1年生で修得した単位が中心になります。今年度の途中単位がどう扱われるかは学校によって異なるため、必ず個別に確認しましょう。
進め方の流れ(例) 1. 在籍校の担任・教頭に「転校を検討している」と相談し、現在の修得単位と欠席状況の書類を確認する 2. 通信制高校・サポート校の資料請求、説明会・個別相談に参加する(本人が主役で選ぶことが大切) 3. 出願・面談・作文などの選考を受ける 4. 在籍校と転入先で単位引き継ぎと手続きの調整を行う 5. 転入後、新しいペースで学びを再開する
不登校で心身が疲れているときに、この手続きを本人だけで進めるのは大変です。親や先生、支援機関が手続き面を支え、本人は「どこで学びたいか」の判断に集中できる形が理想です。無理のない居場所を探す際は、フリースクールという選択肢もあります。あわせてフリースクールとは?費用・種類・選び方も参考にしてください。
6. 親の接し方
不登校の高校生を支えるうえで、親の関わり方は回復のスピードを大きく左右します。焦りや不安は当然ですが、いくつかのポイントを意識するだけで、家庭が安心できる場所に変わります。
まずは「休んでいい」を保証する 学校へ行けない背景には、心身の消耗や人間関係の疲れ、その子なりの理由があります。原因を問い詰める前に、「今は休んでいい」「あなたは大切だ」というメッセージを、言葉と態度で伝えることが出発点です。安心が回復のエネルギーになります。
「進路の話」は回復のあとに 留年や単位のことは親としては気が気でないものですが、本人がまだ動けない時期に進路を急かすと、追い詰めてしまいます。制度や期限の確認は親が水面下で進めておき、本人には「選べる道がいくつもあること」を、追い詰めない形でそっと共有しましょう。
登校を「ゴール」にしない 目標を「元の学校に戻ること」だけに固定すると、本人も親も苦しくなります。大切なのは学校復帰そのものではなく、本人が自分らしく学び、成長していける道を見つけることです。通信制や高認も、後退ではなく前向きな選択肢として一緒に眺めてみてください。
親自身も抱え込まない 親が孤立して疲れ切ってしまうと、家庭全体が張りつめます。スクールカウンセラー、教育相談窓口、同じ立場の保護者の会などに、親自身も相談してください。親が支えられていることが、結果として子どもの安心につながります。
7. 進路・その後(大学・就職の道は狭まらない)
「不登校になったら、もう進学も就職も難しいのでは」——そんな不安を抱く必要はありません。
大学・専門学校への道 通信制高校を卒業すれば、全日制と同じ「高校卒業資格」が得られ、大学・短大・専門学校を一般入試・総合型選抜・学校推薦型選抜などで受験できます。前述のとおり高認に合格すれば、高校を卒業していなくても大学受験資格が得られます。近年は、不登校経験や自分のペースでの学びを、むしろ主体性の表れとして評価する入試も増えています。
就職への道 高校卒業資格があれば、高卒として就職活動ができます。高認合格者についても、多くの企業・自治体が採用や人事考課で高卒相当として扱う動きが広がっています(企業により対応は異なるため、志望先での扱いは確認しましょう)。時間を自分のために使えた経験や、困難を乗り越えた過程は、社会に出てからの強みにもなり得ます。
「今」で人生は決まらない 高校時代につまずいたことは、その後の人生を決定づけるものではありません。大切なのは、いま無理をして心を壊さないこと、そして自分に合った学びの形を見つけることです。回り道に見えても、本人のペースで進んだ道は、本人の力になります。
8. オンライン・通信という選択肢
高校で不登校になったときの4つの選択肢
出席・単位の条件を担任に確認
登校日を選べる・卒業資格
大学受験資格を得る道
学習と生活を支えてもらう
高校は義務教育ではないため、留年・中退の前に早めの相談を。進路は狭まりません。
近年、不登校の高校生にとって大きな支えになっているのが、オンライン・通信での学びです。
背景の一つに、文部科学省が示すICT等を活用した自宅学習の出席扱いの制度があります。自宅でICT等を使って学習した場合に、一定の条件(保護者と学校の連携、計画的な学習プログラム、学習状況の確認など)を満たせば、指導要録上「出席扱い」とできるという考え方です。この制度は主に小・中学校の義務教育段階を対象としており、高校では出席が認められても単位取得は別途必要な点に注意は要りますが、「家からでも学びをつなげる」動きが社会に広がっていることの表れといえます。
通信制高校やオンライン中心のスクールでは、体調や生活リズムに合わせて学べる環境が整いつつあります。近年は、オンラインでも孤立しないよう、少人数のホームルームや担任制、メタバース上のキャンパスなどで「つながり」を大切にする学校も登場しています。たとえば2026年4月に開校したNIJIN高等学院は、通信制高校のサポート校として、オンラインでの居場所づくりや個別最適な学びを通じて、通信制で起きがちな「孤立・不安・退屈」という課題に向き合う取り組みを掲げています。
大切なのは、「家からでも学べる」「一人にならずに学べる」選択肢が現実にあると知ることです。全日制に戻ることだけが正解ではありません。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 何日休んだら留年しますか? 学校によって基準は異なりますが、多くの全日制高校では各科目の授業日数の3分の1(学校によっては4分の1)を超えて欠席すると、その科目の単位が認められにくくなります。出席は科目ごとに判定されるため、まずは在籍校の規定と現在の欠席状況を担任に確認してください。
Q2. 不登校でも通信制高校に転校できますか? できます。不登校の生徒を数多く受け入れているのが通信制高校です。自分のペースで学べる仕組みが整っており、取得済みの単位も原則引き継げます。
Q3. 転校(転入)と編入の違いは何ですか? 転入は今の高校に在籍したまま別の高校へ移ること、編入は中退したあとに入り直すことです。不登校で悩んでいる段階では、在籍を切らさない転入のほうが有利なケースが多いです。
Q4. 留年が決まってからでも間に合いますか? 留年が確定する前に通信制高校へ転入すれば、その学年をやり直さずに済む場合があります。単位が認定される時期との兼ね合いがあるため、早めに相談・行動することが大切です。
Q5. 高卒認定(高認)を取れば高校を卒業したことになりますか? 高認は「高校卒業と同程度の学力」を認定する国家試験で、大学等の受験資格は得られますが、「高校卒業資格」そのものとは異なります。進路の希望に合うかを事前に確認しましょう。
Q6. 高認と通信制高校卒業は、どちらが良いですか? 一概には言えません。最短で大学受験資格を得たいなら高認、「高校卒業」という肩書きや学校生活・居場所も得たいなら通信制高校の卒業、と目的によって変わります。両方を組み合わせる人もいます。
Q7. 大学進学や就職で不利になりませんか? 通信制高校卒業でも全日制と同じ高校卒業資格として扱われ、大学受験も就職も可能です。高認合格者も多くの企業・自治体で高卒相当として扱われつつあります(志望先ごとに確認を)。
Q8. 親としてまず何をすればいいですか? まず「休んでいい」という安心を保証し、進路の話は本人の回復を待ってから。制度や期限の確認は親が水面下で進め、本人には「選べる道がある」ことをそっと伝えましょう。親自身も相談機関を頼ってください。
Q9. 学校に行けない間、勉強はどうすればいいですか? 体調と気力が戻るまでは、勉強より休養が優先です。少し動けるようになったら、オンライン教材や通信制のレポートなど、負担の軽いものから再開すると続けやすくなります。
Q10. どこに相談すればいいですか? 在籍校の担任・スクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、通信制高校・サポート校の個別相談などが入り口になります。記事末尾の窓口もご活用ください。
10. まとめ
高校生の不登校は、義務教育の中学までとは違い、留年や中退という現実的なリスクを伴います。だからこそ、現在の欠席・単位の状況を早めに把握し、選べる道を知っておくことが何より大切です。
在籍校で立て直す、通信制高校へ転入する、高卒認定を受ける、サポート校を併用する——道は一つではありません。中退した生徒の多くが「進路変更」で新たな学びへ移っているように、学校を移ることは失敗ではなく、前向きな選択になり得ます。大学進学も就職も、道は決して狭まりません。
そして、いちばん大切なのは、いま無理をして心を壊さないこと。本人には休む時間を、親には抱え込まない相談先を。焦らず、一つずつ進んでいきましょう。
相談窓口 一人で悩まず、まずは話してみてください。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310(なやみ言おう)
オンラインという選択肢——家から出られない時期こそ
朝、玄関のドアが遠く感じる。制服に袖を通す気力すら湧かない。そんな時期は、誰にでも訪れます。でも、家から一歩も出られない時期こそ、オンラインという扉は静かに開いています。
画面の向こうには、同じように悩みながら学ぶ仲間がいて、あなたのペースを待ってくれる先生がいます。無理に外へ出なくても、学びは続けられる。つながりは持てる。進路は開ける。まずは今日、休むこと。そして少し元気が戻ったら、家にいながら踏み出せる小さな一歩を、一緒に探していきましょう。
