不登校を経験している中学生やそのご家族にとって、進路の選択は大きな不安や悩みの種になりがちです。「みんなと同じように高校へ行けるのだろうか」「将来はどうなるのだろう」と焦る気持ちが生まれるのはとても自然なことです。
現在では、通信制高校の普及や多様な学びの選択肢が増えたことで、不登校から自分に合った進路を見つけて歩んでいる生徒はたくさんいます。
しかし、中学卒業後の進路が決まれば、それで十分でしょうか。
単純に「今、行けそうな場所」だけが決まっても、さらにその先に、自分が進む道を決める時期がまたすぐにやってきます。その時、「自分がやりたいこと」が見つかり、「やりたいことを実現できる」道筋が自分の目の前に広がっているか、ということの方が大切です。
中学生の今、将来の進路をしっかりと考え、着実に進んでいくために必要なことは何か、ポイントを解説します。
1. 成績や出席日数よりも大切な「進路を決める力」

高校で、最も進路決定に苦労するパターンは、勉強ができないことでも、欠席日数が多いことでもありません。
多くの高校では、進路目標を達成するために「良い成績を取る」「欠席をしない」ことを強く推奨します。もちろん、成績が良いことで書類上の評価が高くなったり、筆記試験に有利だったりはします。欠席がないことも「勤勉に働いて/学んでくれるだろう」という良い印象につながるでしょう。
でも、それはあくまでもその会社や学校に「入る」時に有利だということにしかなりません。
「進路を決める」というのは、自分が「どうやって生きていくか」を決めることです。高校などを卒業する際、多くの人が最も迷うのは「どの会社・学校を受けるか」を決めることです。実は、これは成績や生活態度が良好な生徒ほど陥りやすいポイントでもあります。
2. なぜ進路選びで迷ってしまうのか?
高校生が進路を決められずに迷ってしまう大きな理由は、主に2つあります。

理由①:「自分がしたいこと」がわからないから
高校まではやるべきことが示されており、それをこなせば良い成績や評価を得られます。しかし、評価が良いからといって「この進路に進みなさい」と決めてもらえるわけではありません。(先生からおすすめされることはあっても、最終的に決めるのは自分です。)
結局、高校でどんなことに興味を持ち、どんな力を身につけ、それを自分の人生でどう生かしていくかが分からないと、いざという時に「やりたいことが分からない」ということになります。
これは、高校3年生になってから急に考え始めることではなく、小中学生のころから時間をかけて自分を見つめ、磨きながら考えていくことです。
さらに言えば、高校で普通科に行くのか、専門学科(農業科・工業科・商業科など)に行くのかによっても、その後に進める分野がある程度限られてきます。だからこそ、中学卒業時の学校選びの段階から、将来の自分を見据えておく必要があるのです。
そして、それができるためには、小学生や中学生のうちから様々な分野に触れて挑戦し、「自分はこれが好きか」「得意だと思えるまで力を磨けるか」を試しておくことが必要です。それが積み重ねられていると、いざ進路を決める時に「自分がやっていきたいのはこれだな」とスムーズに決める力になります。
理由②:「どんな仕事・学問があるか」を知らないから
受験の面接などで「志望理由」を聞いた際、話のつじつまが合わなかったり、それらしい理由を並べただけだったりする生徒がいます。それは「本気でそこに行きたい」という気持ちが固まっていないからです。
本音では「有名大企業だから」「家から通えるから」という理由で選ぶ生徒も多いですが、それが本当に自分に合った場所とは限りません。実は、高校生になっても世の中にある職業のほとんどを知らないのが現実です。
一般的な生活で耳にするのはせいぜい数百種類ですが、日本国内だけでも公的な分類で約1万8,000種類以上の職業が存在します。本来は、万を超える選択肢があるのです。
進路で迷う人や、決めた後に「やっぱり合わなかった」となる人の多くは、少ない選択肢の中で順位をつけて選んでしまっています。万を超える選択肢があるなら、きっと自分に合う仕事がどこかにあるはずです。
だからこそ、小中学生のうちから様々な職業に触れ、その魅力を知っておくことが、将来の進路を決める際の大きな力になります。
(参考)
厚生労働省編職業分類(労働政策研究・研修機構)https://www.jil.go.jp/institute/seika/shokugyo/04th/sakuin/index.html
日本標準職業分類(総務省統計局)https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/shokgyou/index.htm
3. 今、小中学生のうちからできること

ここまでお話ししてきたことは、欠席日数が多いことや、不登校であることとは一切関係ありません。
どんな学校の通い方をしていたとしても、時間をかけて自分を見つめたり、世の中にある選択肢の知識を増やしたりしている人は、自分らしく、もっとも輝ける進路をつかむことができます。
進路を決めるということは、人生の一大イベントです。失敗してもやり直すことはいくらでもできますが、最初から自分に合わないと分かっている道を選ばない力(知る力・選ぶ力)はとても大切です。
進学は、小学6年や中学3年、高校3年の「その瞬間」だけ考えるものではありません。
小学生・中学生のうちから様々なことにチャレンジし、いろいろな職業に触れながら、自分の可能性をゆっくりと広げていきましょう。
【監修】水谷 和佳奈(元 公立高校教諭)
19年間、公立高校教諭として大学・短大・専門学校への進学や高卒就職など、幅広い進路指導に従事。その中で、高校卒業時ではなく中学までの進路選択のあり方に社会的な課題を見出す。我が子の学びの場を探す中で直面した地方都市における学びの選択肢の少なさを解消すべく、NIJINアカデミー熊本八代校の教室長に就任。地域産業に密着した学びを通じ、自己理解・社会理解を深め、主体的な進路実現に向かう教室を運営している。




