「不登校の当事者だった人が、今どんな風に考えているのか知りたい」。そんな思いで検索されている方も多いのではないでしょうか。
子どもが不登校になると、正解のない毎日に不安を感じます。そんなとき、当事者や経験者の言葉は、大きな支えになります。
この記事では、日本で唯一の不登校専門紙「不登校新聞」の代表・石井志昂さんのご経歴と発信内容を紹介します。そこから、不登校との向き合い方のヒントを整理しました。
📝 この記事でわかること
- 石井志昂さんのプロフィール・不登校経験
- 「不登校新聞」での取り組み
- 発信内容から見えるヒント
- 保護者が今日から取り入れられる視点
石井志昂さんはどんな方?
石井志昂(いしい・しこう)さんは、1982年に東京都で生まれました。19歳から、日本で唯一の不登校専門紙『不登校新聞』のスタッフとなります。2006年から編集長、2020年からは代表理事も務めています。
これまで、不登校の子どもや若者、保護者など400人以上に取材を重ねてきました。女優の樹木希林さんや、社会学者の小熊英二さんなど、幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材しています。
「あさイチ」(NHK)「逆転人生」(NHK)「スッキリ」(日本テレビ)「報道特集」(TBS)など、メディア出演も多数あります。
中学2年生からの不登校とフリースクールとの出会い
石井さん自身、中学受験をきっかけに、学校生活が徐々に合わなくなっていきました。教員との関係や校則、いじめなどの経験を経て、中学2年生から不登校になります。
同じ年に、フリースクール「東京シューレ」に入会します。そこでの経験が、のちの活動の土台になっています。当事者として苦しさを経験しているからこそ、取材や発信にも説得力があると評されています。
参考:スタディサプリ進路「不登校だったぼくが、不登校専門紙の編集長になるまで」
「不登校新聞」での発信
「不登校新聞」は、不登校の子どもや保護者に向けたメディアです。当事者の声や、専門家の意見を届けています。
石井さんは編集長として、単に「学校に戻ること」をゴールにしていません。多様な学びの場や生き方があることを、伝え続けています。ベネッセ教育情報サイトなど、各種メディアでの連載でも、保護者の悩みに丁寧に向き合う姿勢が特徴です。
発信内容から見えるヒント
石井さんの発信からは、不登校と向き合う上でのヒントが見えてきます。ここでは、保護者の視点で役立つポイントを整理しました。
- 「学校に戻ること」だけがゴールではないという視点
- 本人の「居場所」を、焦らずに探すことの大切さ
- 保護者自身が一人で抱え込まず、当事者・経験者の声に触れること
- 子どもの「今」を否定せず、まるごと受け止めること
これらは、特別なテクニックではありません。けれども、不安の中にいると忘れがちな視点でもあります。「戻すこと」より「安心できる場を見つけること」を先に考える。その順番が、子どもの回復を支えます。
保護者が今日からできること
当事者の発信に触れると、「じゃあ、家では何をすればいいの?」と思うかもしれません。今日から取り入れられる、小さな一歩を挙げてみます。
- 「学校に行けたか」ではなく、「今日は少し笑えたか」に目を向ける
- 本人が好きなこと・熱中できることを、否定せずに認める
- 学校以外の学びの場について、親自身が情報を集めておく
- 親も相談先を持ち、ひとりで抱え込まない
学校以外の選択肢を知っておくと、気持ちに余裕が生まれます。フリースクール以外の不登校支援の種類もあわせてご覧ください。
当事者・経験者の声に触れる意味
不登校の渦中にいると、「うちだけがうまくいっていない」と感じてしまいがちです。しかし、同じ道を通った人の言葉に触れると、見え方が変わります。
「今つらいのは、自分たちだけではない」。そう感じられるだけで、少し肩の力が抜けます。当事者だった人の発信は、多くの保護者にとっての支えになっています。下の関連動画では、不登校を経験した漫画家との対談が紹介されています。あわせてご覧ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
まぎらわしい用語の整理
不登校について調べていると、似た名前の制度がいくつも出てきて混乱しがちです。いちばん多い誤解は「教育支援センター」と「学びの多様化学校」を同じものだと思ってしまうことです。前者は在籍校に籍を置いたまま通う「施設」、後者は転校して在籍する「学校」で、まったく別物です。
| 用語 | 正体 | 在籍 | 費用 | 出席の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 教育支援センター (=適応指導教室) | 市区町村の教育委員会が運営する施設 | 在籍校のまま | 原則無料 | 要件を満たせば出席扱い |
| 校内教育支援センター (=校内の別室) | 在籍校の中に置かれた部屋 | 在籍校のまま | 無料 | 出席として扱われる |
| 学びの多様化学校 (旧・不登校特例校) | 特別の教育課程を組める正式な学校(全国84校) | その学校に転校 | 公立は無償/私立は学費 | 通常の出席 |
| フリースクール | NPOや民間企業が運営する民間施設 | 在籍校のまま | 月1〜5万円程度 | 要件を満たせば出席扱い |
| オンラインスクール | 自宅から参加する民間のスクール | 在籍校のまま | スクールにより異なる | 自宅ICT学習の要件を満たせば可 |
| 通信制高校・サポート校 | 高校段階の学校と、その学習を支える施設 | その高校に在籍 | 学校により異なる | 高校の在籍として扱われる |
この表でとくに見ておきたいのは「在籍」の列です。転校が必要かどうかで、手続きも心の準備もまったく変わります。教育支援センターやフリースクールは在籍校に籍を残したまま通えるので、「合わなければ戻る」ことができます。
名前が違っても中身は同じことがあります
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
石井志昂さんの著書はありますか?
不登校新聞の記事や、各種メディアでの連載など、多くの発信があります。最新の著作や発信については、不登校新聞の公式サイトでご確認ください。
「不登校新聞」はどこで読めますか?
公式サイトやニュースレターなどで発信されています。詳しくは、全国不登校新聞社の公式サイトをご覧ください。
東京シューレとはどんな施設ですか?
1985年に開設された、日本で最初期のフリースクールのひとつです。不登校の子どもたちの居場所として、長年活動しています。
当事者の声は、どこで知ることができますか?
不登校新聞のほか、書籍やインタビュー記事、YouTubeなど、さまざまな形で発信されています。まずは気になる媒体から、少しずつ触れてみるのがおすすめです。
親も相談できる場所はありますか?
あります。親の会や、自治体の教育相談、スクールカウンセラーなど、保護者が相談できる場は複数あります。ひとりで抱え込まず、頼れる場所を見つけてください。
まとめ
石井志昂さんは、自身の不登校経験を土台に、「不登校新聞」を通じて多くの当事者・保護者に寄り添う発信を続けています。「学校に戻ることだけがゴールではない」という視点は、今悩んでいる保護者やお子さんにとって、心を軽くするヒントになるかもしれません。
正解を急がず、まずは子どもの「今」を受け止めること。当事者の言葉は、その勇気をそっと後押ししてくれます。
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つらい気持ちを今すぐ話したいとき(全国共通・24時間)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310
お子さんからでも、保護者の方からでも相談できます。お住まいの地域の教育相談センターにつながります。


