不登校を「希望」に変える|青森の子どもたちが、びしょフェスで見せた挑戦

不登校は、子どもの可能性が止まった状態ではありません。
その子に合う環境と出会えば、子どもは自分から学び、挑戦し、社会へ踏み出していきます。

2026年、NIJINアカデミー青森浪岡校の子どもたちは、青森県で開催された「びしょフェス」に参加しました。

ドリンクを考え、試作し、POPを作り、お客さんに販売する。働いて得たお金を仲間と出し合い、新しい体験に使う。初対面の高校生とチームを組み、赤外線サバゲーで対決する。

そこにいたのは、「学校へ行っていない子ども」という一つの言葉では表せない、一人ひとりの個性と意志を持った子どもたちでした。

この日の実践から見えてきたのは、NIJINが目指す教育の形です。学校に行けない子どもを元の場所へ戻すことだけを目標にするのではなく、子ども自身が強みに気づき、人とつながり、社会の中で「自分にもできる」と感じられる機会をつくろうとしています。

不登校を「できない子」の問題にしない

一般的に持たれやすい不登校のイメージ

不登校と聞いたとき、「気が弱い」「無気力」「人との関わりが苦手」「人混みを避ける」といったイメージを持つ人がいるかもしれません。

ただ、それらは子どもの全体像ではなく、学校という特定の環境で見えていた一面である可能性があります。

実際、青森浪岡校では、学校では力を発揮しにくかった子が、好きな活動には長く集中する姿が見られています。人前で話すことが苦手でも、役割を持つと自然にお客さんへ声をかける。不安が強くても、安心できる仲間と一緒なら初めての場所へ向かう。びしょフェスでも、そうした変化が随所に表れていました。

こうした姿を見ると、学校で力を出せなかったことを、そのまま「力がない」と捉えることはできません。環境や関わる人、与えられる役割が変わることで、これまで見えなかった力が表に出てくる場合があるからです。

NIJINでは、不登校を「子どもを変えなければならない問題」とは捉えていません。子どもに合う教育の選択肢を、社会の側が増やしていく必要があると考えています。

青森県でも求められている「居場所」と「学びの保障」

青森県が公表した「令和7年度版 青森県子ども・若者白書」によると、令和6年度における県内の国公私立小・中・高等学校の不登校児童生徒は、合計3,276人でした。内訳は、小学生981人、中学生1,888人、高校生407人です。

3,000人を超えるという数字からは、不登校が一部の家庭に限られた問題ではないことがわかります。同時に、学校だけではなく、子どもの状態や特性に応じて選べる複数の学び場が必要になっていることもうかがえます。

青森県教育委員会の「不登校児童生徒支援に関する検討会議提言書」では、将来の青森県を担う子どもたちのために、不登校児童生徒の居場所を確保し、学びを保障することの必要性が示されています。また、地域で子どもを育てるという観点や、学校・家庭・地域・支援機関が連携する大切さにも触れています。

青森浪岡校では、この「地域で子どもを育てる」という考えを、日々の活動に取り入れています。学びを教室の中だけで完結させず、地域の人や店、イベントとつなぐ。びしょフェスへの参加も、その実践の一つでした。

「それぞれの目的」があるから、人は動き出せる

びしょフェスに参加した子どもたちそれぞれの目的

びしょフェスへ参加した目的は、全員同じではありませんでした。

「ボランティアではなく、自分でお金を稼いでみたい」「人に慣れたい。接客に挑戦したい」「思いきり水鉄砲で遊びたい」。一人ひとりに、自分なりの目的がありました。

青森浪岡校が活動の出発点にしているのは、大人が決めた共通の目標ではなく、それぞれの子どもが抱く「やってみたい」という思いです。

今回の準備では、目的を持った子どもたちが「どうすればできるだろう」と考え、人に相談し、必要な作業へ向かう様子が見られました。指示された課題をこなすのではなく、自分の目的に必要な学びを取りにいく姿でした。

地域の力を借りて、企画から販売まで挑戦

地域のお弁当屋さんとドリンクを考案し、試作する子どもたち
地域のお弁当屋さんの協力を得て、ドリンクの考案、試作、POPづくり、接客に挑戦しました。

子どもたちは、びしょフェスで販売するドリンクを自分たちで考えました。

地域のお弁当屋さんに協力してもらい、アイデアを形にし、試作を重ねます。どんな味なら喜んでもらえるのか。どう見せたら手に取ってもらえるのか。パソコンを使って調べ、仲間と相談しながらPOPも作りました。

一連の準備に含まれていたのは、商品づくりだけではありません。自分たちだけでは難しいことを地域の人に相談し、知恵や技術を借りる。仲間と役割を分け、一つの商品を形にする。そうした過程そのものが、学びの機会になっていました。

自分の得意を生かし、難しい部分は誰かの力を借りながら共通の目的へ進む。今回の活動は、社会の中で物事を動かすときに必要となる協働を、子どもたちが実際に経験する場にもなっていました。

雨、寒さ、売れない。それでも考え、行動する

雨と寒さの中で、売り子に挑戦する子どもたち

当日は雨が降り、気温も低く、販売には厳しい状況でした。子どもたちは「160杯売る」と意気込んでいましたが、思うように商品が売れません。

準備を重ねても、必ず想定どおりの結果が出るわけではありません。子どもたちは、正解があらかじめ用意されていない活動の中で、天候や客足といった自分たちでは変えられない条件にも直面しました。

それでも子どもたちは、諦めずに売り子へ挑戦しました。待っているだけでは届かないなら、自分たちから声をかける。お客さんの反応を見て、伝え方を変える。うまくいかない現実を前にしても、「では、どうする?」と考え続けました。

この場面には、NIJINが重視する「正解のない状況で考える学び」が表れていました。失敗を避けることよりも、思いどおりにいかないときに周囲と協力し、次の行動を選ぶ経験に価値を置いているといいます。

働いて得た500円が、次の挑戦につながった

働いて得た500円を出し合い、サバゲーに参加する子どもたち

販売を通して、子どもたちは初めて「お金を稼ぐ難しさ」を知りました。同時に、「お客さんはどうしたら喜んでくれるのか」を考えました。

そして、働いて得た500円を仲間と出し合い、赤外線サバゲーへ参加しました。

「働く」「対価を得る」「仲間と相談する」「使い道を選ぶ」「新しい体験へつなげる」。子どもたちは、この一連の流れを実際の活動の中で経験しました。

500円という金額以上に注目したいのは、自分たちの行動が客の購入につながり、得た対価で次の体験を選んだことです。教室長は、こうした経験が「自分にも社会と関われる」「自分で選べる」という感覚につながっていくと考えています。

人前が苦手でも、リアルな場へ踏み出せる

初対面の高校生と赤外線サバゲーに挑戦する子どもたち

参加した中学2年生の「なち」は、人前に出ることが得意ではありません。それでも、リアルイベントには無欠席で参加しています。

今回も、初対面の高校生と同じ場に立ち、4人のチームで赤外線サバゲーに挑戦しました。

なちの姿は、「人前が苦手」という特性だけで、その子が人と関われるかどうかを判断できないことを示しています。会話そのものを求められる場では緊張しても、好きな活動や共通の目的があれば、自然に人と同じ時間を過ごせる場合があります。

青森浪岡校では、苦手を克服してから参加を求めるのではなく、苦手さがあっても参加できる場を整えています。安心できる大人や仲間と小さな経験を重ねることを、外の世界へつながる一つの過程として位置づけています。

学校の外にも、学びと社会は広がっている

びしょフェスを通して外へ飛び出していく子どもたち

不登校になった子どもへの支援は、「早く元の学校生活へ戻ること」だけを基準にしてよいのだろうか。

今回の活動では、好きなことに取り組むこと、自分の得意を誰かに届けること、年齢も立場も異なる人と出会うこと、地域の中で役割を持つことが同時に起きていました。NIJINでは、こうした経験も学校の授業と同じように、子どもの育ちを支える学びとして捉えています。

水鉄砲、サバゲー、商売は、一見すると教科学習とは離れています。しかし活動を分解すると、企画、デザイン、コミュニケーション、協働、試行錯誤、お金の使い方といった複数の学びが含まれています。

びしょフェスで見られた子どもたちの姿は、地域や人との出会いもまた、学びの場になり得ることを伝えています。

NIJINが目指すのは、「教育から世界を照らす」こと

NIJINは「教育から世界を照らす」を掲げ、既存の教育をよりよくする取り組みと、新たな教育の選択肢をつくる事業を進めています。

その根底にあるのが、すべての子どもには「幸せになる力」と「人を幸せにする力」があるという教育理念です。

子どもを既存の枠へ合わせるのではなく、その子の個性が生きる環境をつくる。オンラインとリアル、学校と地域、大人と子どもをつなぐ。NIJINは、そうした方法で、一人ひとりが力を発揮できる教育の実現を目指しています。

青森浪岡校のやこたん教室長が目指しているのは、青森にある「不登校」の概念を変えることです。

今回のびしょフェスで、子どもたちは支援を受けるだけの存在ではありませんでした。自ら商品を考え、客に届け、人とつながり、イベントを構成する一員になっていました。やこたん教室長は、こうした姿を地域へ伝えることが、青森にある不登校のイメージを変える一歩になると考えています。

地域に根付いたリアル校から、一歩外へ出る勇気を届ける

子どもたちの挑戦を動画で見る

販売や赤外線サバゲーに挑戦する、青森浪岡校の子どもたちの姿をご覧ください。

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