不登校の子どもに対応する担任は、教育現場の中で特に多くの負担を感じる存在です。
授業以外の業務が多い中で、不登校の生徒への支援が求められると、担任は「しんどい」と感じてしまうのが現実です。
本記事では、担任が「しんどい」と感じる理由やその対処法、そして心のケア方法までを詳しく解説します。
先生方が無理をせずに、学校全体でサポートを行える環境づくりについても考えていきます。
不登校の子どもに対する担任の対応はどこまでが義務なのか?
不登校の子どもへの対応は、担任の業務の中でも特に「グレーゾーン」と言えます。
学校や教育委員会の方針によって異なるため、担任の業務として「これが絶対の義務」と明確にされているわけではありません。
実際、学校ごとに対応が異なり、家庭によっては「学校に来ないなら家庭訪問するのが当然」と考える親もいれば、「家庭に踏み込まないでほしい」と考える親もいます。
このように、対応の一貫性がないことが担任の「しんどい」原因の一つです。
基本的には、保護者と担任が「何が必要か」を話し合い、両者の合意のもとで進めていくのが理想的な対応です。
ただし、担任がすべての対応を一人で背負うのではなく、管理職やスクールカウンセラーと協力することが必要です。
不登校に悩む担任が「しんどい」と感じる主な理由とは?
不登校の生徒に対応する担任が「しんどい」と感じる理由はさまざまです。
ここでは、特に多い3つの要因について解説します。
専門知識の不足による対応の難しさ
不登校の原因は、いじめ、家庭の問題、本人の体調不良、学校生活への不安などさまざまです。
そのため、どのような対応が最適かを担任が即座に判断するのは難しいケースが多いです。
特に、カウンセリング技術や心理的なサポートの専門知識が求められる場面では、担任は「自分には無理だ」と感じがちです。
こうした場合は、スクールカウンセラーの力を借りるのが有効です。
担任がすべての問題に対処する必要はなく、他の専門家に頼ることも大切な選択肢の一つです。
学校や保護者からのプレッシャー
「不登校の子をなんとかしてほしい」という学校の管理職や保護者からのプレッシャーは、担任の大きなストレス要因です。
特に、管理職からの「家庭訪問をしてきてほしい」や「親からのクレームに対応してほしい」という依頼が重なると、担任は「もう無理だ」と感じてしまいます。
また、家庭によっては「家庭訪問してきてほしい」という要望をする保護者もいますが、これらの行為は慎重に検討すべきです。
不登校の子どもは「家庭が最後の安全地帯」だと考えるため、学校の人間が家庭に踏み込むことで、精神的な逃げ場を失い、ストレスが増大してしまうことがあるからです。
→元不登校のひまわり先生は不登校の子どもにどう対処した?実践例はこちら
生徒への対応に対する責任感の重さ
担任は生徒の成長を支える存在であり、特に不登校の生徒に対しては「自分が支えなければならない」という責任感を抱きやすいです。
このような使命感は、時に担任自身を追い詰めてしまいます。
生徒が不登校のままでいると、「自分の指導が悪かったのではないか」と自責の念を抱いてしまうケースもあります。
担任は一人で背負い込みすぎず、周囲の支援を求めることが必要です。
担任の仕事が多すぎて、不登校対応が「しんどい」
先生の仕事は「授業をするだけ」ではありません。
むしろ、授業以外の業務が大半を占めています。
授業の準備や生徒の学習サポート、保護者対応、学校行事の運営、さらには部活動の指導まで、業務の幅は非常に広いのが特徴です。
ここでは、教員の1日がどのように動いているのかを詳しく見ていきましょう。
朝の時間帯:生徒が来る前から始まる「準備業務」
先生の1日は、生徒が登校する前から始まります。
朝早くから、教室の環境整備やコロナ禍では消毒作業が行われ、さらに職員会議が行われることもあります。
その後は、生徒が安全に登校できるよう、通学路や校門付近での見守り業務を行います。
登校時間になると、生徒一人ひとりの様子を見守りつつ、問題があればすぐに対応します。
これが「朝のほんの一部」の業務です。この時点で、すでに相当な体力と気力が求められます。
授業時間:指導以外の業務も並行する「マルチタスク業務」
一見すると「授業をしているだけ」に見えるこの時間も、実際はさまざまな業務を同時進行で行っています。
例えば、児童の健康状態を把握したり、クラス内でのトラブルが発生すれば、その解決に時間を割かれます。
さらに、ただ授業を進めるだけではありません。
生徒の発言を引き出し、授業の進行に合わせて教材の調整も必要です。
事前にしっかりと準備したはずの授業でも、状況によって柔軟に対応しなければならず、気を抜けないのが現実です。
放課後:テストの採点や会議、部活動まで業務が続く
生徒が下校した後も、先生の仕事は終わりません。
生徒が書いた作文を読んで評価をつけたり、テストの採点、次の日の授業準備が待っています。
さらに、学校行事の打ち合わせや、保護者への連絡業務も発生します。
部活動の指導を担当している先生は、放課後も部活の顧問を務めます。
部活動は、生徒の成長を支える大切な活動ではありますが、顧問の業務負担が大きすぎるため、これが「教員の負担が増える大きな要因」として問題視されています。
イレギュラー対応の発生:体調不良の生徒やトラブルの解決
生徒が体調を崩した場合、保護者に連絡して引き渡しの手続きを行わなければなりません。
また、教室内でトラブルが起こった場合は、喧嘩の仲裁を行い、問題が解決するまで話し合いが続きます。
その後、保護者に報告を行い、場合によっては面談が必要になることもあります。
1クラスの生徒は25〜40人が標準的であり、トラブルが一度に複数発生することも珍しくありません。
生徒一人ひとりに向き合うことは理想的ですが、現実には時間が足りず、先生は常に「もっと何とかしなければ」と感じてしまいます。
時間外労働が当たり前の状態に
多くの学校では、勤務時間が終わっても仕事が終わりません。
勤務終了後も、プリントの作成や行事の準備、授業の計画立て、さらには保護者からの問い合わせ対応が続きます。
中には、夜遅くまで学校に残る教員も多いです。
特に、部活動の顧問を任された教員は、放課後の活動指導に時間が取られます。
土日も大会や練習に付き添う必要があるため、「週7日勤務」のような状態になる先生も少なくありません。
このような状態では、不登校の子どもに向き合いたくても向き合う時間が十分に取れず、管理職や保護者からのプレッシャー、自身の責任感で押しつぶされそうになってしまうこともあるでしょう。
不登校に悩む担任が「しんどい」と感じたときの心のケア方法
「しんどい」と感じたときには、担任自身の心のケアが必要です。
無理をしてしまうと、最悪の場合、心身の健康を害してしまいます。ここでは、心のケア方法をいくつか紹介します。
専門家への相談
不登校の対応に関しては、担任一人では限界がある場合が多いです。
そのため、スクールカウンセラーや教育相談員に相談することが有効です。
彼らは不登校の子どもの心理や家庭環境に関する専門知識を持っているため、的確なアドバイスが得られます。
同僚や上司との情報共有
学校内でも、同僚の先生や管理職に相談することで、解決の糸口が見つかる場合があります。
特に、他の先生が持つ経験や事例は、担任の気づきにつながることがあります。
同僚と話すだけでも精神的な負担が軽減されるでしょう。
適切な休息とリフレッシュ
担任は業務量が多く、どうしても「自分がやらなければ」という気持ちにとらわれがちです。
しかし、体を壊してしまえば元も子もありません。
定期的な休息を取り、リフレッシュすることが重要です。
仕事の合間に短時間の休憩を挟むだけでも、ストレスを和らげる効果があります。
まとめ:不登校に悩む担任が「しんどい」と感じる理由とその対処法
不登校に悩む担任が「しんどい」と感じる理由は、対応方法の難しさ、学校や保護者からのプレッシャー、生徒への責任感など、様々な要因が重なっています。
これに加え、不登校の対応は担任の義務業務ではなく、学校の方針や家庭の要望によって異なる「グレーゾーン」であるため、担任は余計に負担を感じがちです。
担任一人ですべてを抱え込むのではなく、学校全体のサポート体制を整えることが求められます。
スクールカウンセラーの協力を得る、同僚と情報を共有する、業務の優先順位を明確にするなど、できることから始めていくのが良いでしょう。
何よりも、担任自身が無理をしすぎず、心のケアを大切にすることが重要です。
不登校の対応は学校全体で取り組むべき課題です。
担任が一人で抱え込まないような学校の仕組み作りが、これからの教育現場には求められています。