「料理が好き」は最高の学び!不登校・行き渋りの時期に育つ子どもの自己肯定感と生きる力

「料理が好き」は最高の学び!不登校・行き渋りの時期に育つ子どもの自己肯定感と生きる力
家庭でできること

「料理が好き」は最高の学び!
不登校・行き渋りの時期に育つ
子どもの自己肯定感と生きる力

切る・焼く・混ぜるという体験が、
学校に行けない・行き渋る時期の子どもに
どんな学びと成長をもたらすのか。
データと食育の現場の声から、
家庭でできる関わり方までお伝えします。

子どもが台所で楽しそうに料理をしている様子

朝、「学校に行きたくない」とお子さんに言われたとき、親として真っ先に頭をよぎるのは「学校の勉強が遅れてしまうのではないか」という不安ではないでしょうか。

しかし、もしお子さんが「切る・焼く・混ぜる」といった料理やお菓子作りに興味を持っているなら、どうか安心してください。子どもが夢中になって台所に立つ時間には、学校の授業だけでは得られない「生きた学び」がたくさん詰まっています。

今、不登校の子どもはどれくらいいるの?

文部科学省の最新調査(令和6年度)によると、全国の不登校児童生徒数は353,970人と、統計開始以来過去最多を更新し、12年連続で増加しています。「学校に行けない」は、決して特別なことでも珍しいことでもありません。

学校段階別 不登校児童生徒数(令和6年度)

小学校 137,704人 中学校 216,266人

合計 353,970人(過去最多・12年連続増加)

出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

「料理好き」から広がる、教科を超えた学びの世界

教科書を開いていなくても、レシピを読んだり、分量を計ったり、味の変化を確かめたりする中で、子どもたちは自然とさまざまな学びを深めています。

  • 理科・観察力:加熱や発酵による食材の変化、五感を使った味・匂い・食感の観察
  • 国語・読解力:レシピを読み解く、作り方を人に説明する、味の感想を言葉にする
  • 算数・数学:分量を計る、加熱時間を計算する、人数分に按分する
  • 社会・家庭科:旬の食材や地域の食文化、栄養バランスへの興味
  • 図工・美的感覚:盛り付けや彩り、器との組み合わせを考える
子どもが食材を切って調理体験をしている様子
食材に触れる時間そのものが、教科を超えた学びになる

【食育の現場から】”できた”の瞬間が、自信と会話を生む

佐藤絢子先生の写真
佐藤 絢子 先生
NIJINアカデミー我孫子校 教室長/調理師・製菓衛生士・保育士

千葉県我孫子市でNIJINアカデミー我孫子校の教室長を務める佐藤先生は、都内ホテル・結婚式場で10年以上料理人として活躍したのち、子どもの食育・料理教室「たべるのcooking」を立ち上げ、現在は不登校の子どもたちに教室も運営しています。

現在佐藤先生のもとには、3歳から小学6年生まで幅広い年齢の子どもたちが通っていますが、共通しているのは「自分で作った料理を食べたときの、とびきりの笑顔」だといいます。

「子どもが”今すぐ料理がしたい”と言っても、家庭ではすぐに叶えてあげられないことがあります。そんな子どもたちが、のびのびと料理をしながら食を学べる場所をつくりたい」

その想いから食育プログラムを続けている佐藤先生は、自分で作った料理を食べる子どもたちの笑顔、それを受け取る保護者の笑顔に出会うたびに「料理は、相手を思う気持ちが現れるものだ」と実感してきたそうです。

味付けや盛り付けに「正解」がたくさんあるからこそ、子どもたちは自分らしい選択を重ね、小さな成功体験を積み上げていくことができます。そしてその成功体験は、「できたよ」「食べてみて」という誰かへの声かけ、つまり自然なコミュニケーションのきっかけにもなっていきます。

命の”食”と向き合うことで育つ「非認知能力」とは?(文部科学省の視点から)

料理と関わる学びは、知識の習得(認知能力)にとどまりません。テストの点数では測れない「生きる力」=非認知能力が大きく育ちます。

文部科学省が定める学習指導要領でも、子どもたちに育成すべき資質・能力の柱の一つとして「学びに向かう力、人間性等」が掲げられています。これは、自己肯定感、粘り強さ、好奇心や他者への思いやりといった「非認知能力」に該当するものです。

  • 自己肯定感の回復:自分の手で最後まで作り上げ、「できた」という達成感に自信を持つ
  • 思考力・試行錯誤:「どうすればもっと美味しくなるかな?」と自ら課題を見つけ、工夫して解決しようとする
  • 他者への思いやり:「誰かに食べてもらう」体験を通じて、相手を思う気持ちが自然と育つ
  • 生活リズムの立て直し:食事の支度という日課が、崩れがちな生活リズムを整えるきっかけになる

学校という枠組みから少し離れている時期だからこそ、こうした「自分軸」となる心の成長(非認知能力)がじっくりと育まれていきます。

子どもたちが協力しながら料理をしている様子
「できた」を分かち合う時間が、非認知能力を育てる

料理体験は子どもにどんな力をくれるの?

ハウス食品グループが実施した調査(2024年、保護者・子ども各1,000人対象)でも、料理体験と子どもの成長の関係が数字で裏づけられています。

89.6%の子どもが「料理をすることが好き」と回答

料理体験を通じて身につくと保護者が回答(複数回答)

自分で考える力 46.8% 自信・肯定感の醸成 42.7% 物事を順番に進める力 40.3% 生きる力・生活力 39.6%

さらに子ども自身も、自分で作った料理を食べたとき「いつもより美味しいと思った」(94.9%)、「自分は料理をできるようになったんだと思った」(91.4%)と、9割以上がポジティブな成功体験を得ていると回答しています。

出典:ハウス食品グループ本社株式会社「子どもの初めての料理体験に関する調査」(2024年3月・PR TIMES

親ができる、子どもの「料理したい」を広げる関わり方

1. 上手さより「やってみたい」気持ちをそのまま肯定する

「まだ危ないからダメ」「もっと丁寧にやって」といった声かけではなく、「自分で考えて作れたんだね」「その組み合わせ面白いね」と、挑戦している姿そのものを認めてあげることが大切です。行き渋りや不登校の時期は、子どもの自己肯定感が下がりがちです。まずは「料理に取り組む自分」を好きになれるよう、温かく肯定する関わりを意識してみましょう。

2. 台所を”安全に試せる実験室”にする

子ども用の安全な包丁や、火を使わずに作れるレシピから始めるなど、少しずつ「自分でできること」を広げられる環境を整えてあげましょう。特別な道具がなくても、家にある食材で十分です。「今日は何を作ってみる?」と選択肢を委ねることが、子どもの主体性を育てます。

3. 教室や地域の食育プログラムともつながっておく

保護者の方だけで抱え込まず、外部のサポートを活用することも大切です。同じように料理に夢中になる仲間や、子どもの「好き」を伸ばしてくれる大人の存在があることで、子どもの世界はさらに広がっていきます。

たとえば千葉県我孫子市のNIJINアカデミー我孫子校では、食育を軸にしたハイブリッド型フリースクールとして、調理師・保育士の資格を持つ先生のもとで、少人数制の子どもたちが料理を通じた学びを実践しています。地域の生産者と連携した体験型プログラムも取り入れながら、子どもたちが安心して挑戦できる居場所づくりを行っています。

親子で一緒に料理を楽しんでいる様子
家庭での「一緒に作る」時間も、大切な学びの場に

まとめ:小さな”ごちそう”が、自信になる

学校に通うことだけが学びのすべてではありません。教育の場でも「個別最適な学び」や、自ら問いを立てて探究する姿勢が重視されるようになっています。

切って、焼いて、混ぜて——自分の手で作った一皿を誰かに食べてもらう時間は、お子さんにとって間違いなくかけがえのない「学びの時間」です。焦らず、お子さんが持つ「作ってみたい」という気持ちを信じて、温かく寄り添っていきましょう。その小さな”ごちそう”は、これから先のお子さんの自信につながっていくはずです。


■ 監修者情報

佐藤 絢子(さとう あやこ)

NIJINアカデミー我孫子校 教室長/調理師・製菓衛生士・保育士。2026年5月からNIJINアカデミー我孫子校の教室長として、食育を軸にした不登校支援に携わる。

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