「うちの子、いじめられていないかな」。6月や11月は、学校でいじめアンケートや教育相談が行われる時期です。そのため、そんな不安を感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。実際、文部科学省の令和6年度調査によると、いじめの認知件数は76万9,022件でした。つまり、これは過去最多であり、前年度から5.0%増加しています。さらに、重大事態も7.6%増の1,405件にのぼっています(参考:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。
いじめは誰にでも起こり得ます。ただし、研究上「いじめられやすい傾向」が指摘されている特徴もあります。そこで、本記事では、その特徴や早期発見のサインを解説します。あわせて、家庭での対処法や相談窓口、学校がつらくなった場合の選択肢も、最新データをもとに紹介します。
📝 この記事でわかること
- 2026年最新データで見る、いじめの実態と傾向
- いじめられやすい子に共通する特徴(性格・行動・発達特性)
- 家庭で気づける「いじめのサイン」チェックリスト
- 子どもから相談されたときの対処法と、してはいけないNG対応
- 学校・専門機関・相談窓口の活用法と、不登校になった場合の選択肢
2026年最新|いじめの実態はどうなっている?
文部科学省が公表した令和6年度の調査結果によると、小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめの認知件数は76万9,022件でした(前年度73万2,568件)。つまり、これは過去最多の数字です。また、いじめを認知した学校の割合は83.9%にのぼります。したがって、ほとんどの学校で何らかのいじめが起きている計算になります(出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)。
特に近年目立つのが、SNSを介した「ネットいじめ」の増加です。実際、2023年度のネットいじめは2万4,678件で最多となりました。これは、10年前と比べると2.8倍の増加です。しかも、ネットいじめは学校外でも継続し、保護者や教員から見えにくいという特徴があります。そのため、重大事態の増加の一因としても指摘されています。
また、いじめ全体に占める比率は、学年が上がるほど高まる傾向があります。例えば、中学生で約9%、高校生で約16%という報告もあります。こうした状況を受け、こども家庭庁と文部科学省は令和7年11月に「いじめの重大化を防ぐための留意事項集」を公表しました。そして、早期発見・早期対応の徹底を呼びかけています(参考:こども家庭庁)。
多くの学校では6月・11月・1月頃にいじめアンケートや教育相談を実施
学校では年に数回、いじめの実態把握のためのアンケートや個別の教育相談期間を設けています。この時期は子どもの様子に変化が出やすいタイミングです。家庭でも改めて様子を確認しておくとよいでしょう。
いじめられやすい子に共通する特徴
いじめの責任は、100%いじめをする側にあります。とはいえ、研究や教育現場の知見はあります。それによると、いじめの被害を受けやすい子どもには、共通する傾向がいくつか報告されています。だからこそ、早期に気づくための参考として知っておきましょう。それが、適切なサポートにつながります。
1. 引っ込み思案で自分から友達を作りにくい
自分から積極的に声をかけたり、輪に入ったりすることが苦手な子どもがいます。そのため、こうした子どもは孤立しやすく、いじめの対象になりやすい傾向があります。また、一人で過ごす時間が多いと、周囲から「ターゲットにしやすい」と見られることもあります。
2. 自分の気持ちや意見を主張しにくい
嫌なことをされても「やめて」と言えない子どもがいます。こうした子どもは、いじめがエスカレートしやすいといわれています。しかし、本人に問題があるわけではありません。むしろ、優しさや控えめな性格の裏返しであることも多いのです。
3. 先生や親に相談しない・できない
いじめられていることを誰にも話さない子どももいます。この場合、問題が表面化しにくく、いじめが長期化しやすい傾向があります。なぜなら、「心配をかけたくない」「言ったら余計ひどくなるかもしれない」という不安もあるからです。そうした思いから、一人で抱え込んでしまうケースが少なくありません。
4. 見た目や持ち物、言動が周囲と異なる
服装や持ち物、話し方、興味の対象などが周囲と違うことが、いじめのきっかけにされてしまうことがあります。本来は個性として尊重されるべきものです。しかし、子ども同士の集団の中では「違い」が標的にされやすい現実があります。
5. ASD・ADHDなどの発達特性がある
近年の研究では、発達特性といじめ被害の関連が明らかになってきています。例えば、8,396名を対象とした国内の調査があります。その結果、すべてのいじめ種別においてASD(自閉スペクトラム症)傾向の子どもがいじめ被害を受けやすいことが分かりました(参考:田中・伊藤「保育所・小中学校におけるASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連」)。
また、米国の調査では、ADHDのある学齢期の子どもについて報告があります。それによると、ADHDのない子どもに比べて、いじめ被害者のみになる可能性が3.7倍、被害者と加害者の両方になる可能性が17.71倍にのぼるという結果です。さらに、自閉症・ADHD・学習障害のある子どもについても、データがあります。つまり、定型発達の子どもと比べて、約3倍近い割合でいじめを経験しているという報告です。
ASDのある子どもは「相手の意図を読み取りにくい」ことから、攻撃の対象にされやすい傾向があります。なぜなら、コミュニケーションの違いが誤解を生みやすいことが、背景にあると考えられているからです。つまり、これは本人の性格や努力の問題ではありません。むしろ、特性に合わせた、周囲の理解と配慮が必要なサインです。
6. 体が小さい・力が弱い、または特定の身体的特徴がある
体格や運動能力など、身体的な特徴が理由でいじめの対象になることもあります。しかし、これも本人にはまったく責任がありません。だからこそ、いじめをする側の問題であることを、子どもにもはっきり伝えてあげることが大切です。
これらの特徴があること自体は、悪いことでも直すべきことでもありません。問題なのはいじめという行為そのものです。したがって、特徴の有無に関わらず、いじめをすることは決して許されません。また、特徴を知る目的は、子どもを変えさせることではありません。むしろ、リスクに早く気づき、必要な支援につなげることが目的です。
家庭で気づける「いじめのサイン」チェックリスト
子どもが自分から「いじめられている」と言うケースは、実はそれほど多くありません。だからこそ、日常の小さな変化に気づくことが早期発見の鍵になります。実際、学校や自治体は「いじめ発見チェックシート」を公開しています(参考:福岡県「いじめの早期発見・早期対応の手引」)。そこで、以下は、それを参考にまとめたものです。
表情・態度の変化
- 笑顔が減り、元気がなく沈んでいる
- 視線を合わせようとしない、表情が乏しくなった
- イライラしやすくなった、些細なことで怒る
生活面の変化
- 朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と言うことが増えた
- 食欲が落ちた、あるいは急に増えた
- 寝つきが悪い、夜中に何度も起きる
持ち物・お金の変化
- 持ち物が壊れている、なくなっている、落書きされている
- 服や上履きが汚れて帰ってくることが増えた
- 説明のつかないお金の使い方や、お金を欲しがるようになった
友人関係・スマホの変化
- 遊ぶ友達の名前を聞かなくなった、一人で過ごす時間が増えた
- スマホやSNSを見たあとに表情が暗くなる
- グループから外されたような会話の様子が見られる
一つひとつは些細なことでも、複数のサインが重なっている場合は注意が必要です。そのため、「最近様子が違うな」と感じたら、それだけで十分に話を聞くきっかけになります。
子どもから相談されたときの対処法
ステップ1:最後まで話を聞き、否定しない
「それは辛かったね」「よく話してくれたね」と、まずは気持ちを受け止めましょう。一方で、「あなたにも原因があるのでは」といった言葉に気をつけてください。なぜなら、励ますつもりでも、子どもを深く傷つけることがあるからです。場合によっては、二度と話してくれなくなる可能性もあります。
ステップ2:事実を整理する(誰が・いつ・どこで・何を)
いつ、どこで、誰から、どのようなことをされたのかを、できる範囲でメモしておきましょう。また、日付や状況を記録しておきましょう。これは、後で学校に相談する際にも、重大事態として扱う際にも、重要な資料になります。
ステップ3:すぐに学校に連絡し、対応を依頼する
担任や学年主任、スクールカウンセラーに連絡し、状況を伝えましょう。実際、いじめ防止対策推進法では、学校に組織的な対応をとる義務があります。つまり、いじめの相談を受けた場合は、必ず対応しなければなりません。もし学校の対応が不十分な場合は、教育委員会や下記の相談窓口も活用してください。
「子ども同士のことだから」と様子を見すぎることに注意しましょう。また、子どもに無断で加害者の家庭に直接連絡することや、子どもを責めるような言葉をかけることも避けてください。これらは状況を悪化させる可能性があります。そのため、まずは子どもの安全と気持ちを最優先にしましょう。なお、専門機関と連携しながら対応することが大切です。
相談先・専門機関の活用法
- 担任の先生・スクールカウンセラー:最初の相談先として、学校での様子や対応方針を確認しましょう。
- 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310):文部科学省が整備する全国共通の窓口です。そのため、夜間・休日を含め24時間、通話料無料で相談できます(参考:文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」)。
- こどものSNS相談窓口:電話が苦手な子どもでも、LINEやチャットで相談できる窓口が各自治体で整備されています。
- 教育委員会・法務局の子どもの人権110番:学校の対応に納得できない場合の相談先になります。
- 児童精神科・発達外来:発達特性が背景にある場合は、専門医に相談することで、子どもに合った関わり方のヒントが得られます。
いじめがつらくて学校に行きたくない場合の選択肢
いじめが原因で「学校に行きたくない」という気持ちが強くなることは、決して珍しくありません。実際、文部科学省の令和6年度調査によると、小・中学校の不登校児童生徒数は35万人を超えました。これは、12年連続の増加です。つまり、学校に通うことだけが唯一の正解ではありません。
フリースクール・オルタナティブ教育という選択肢
フリースクールやオルタナティブスクールは、いじめなどで学校がつらくなった子どもの「居場所」になります。また、学びを継続する場としても機能します。さらに、学校長の判断により「出席認定」を受けられるケースもあります。なお、発達特性に合わせた個別カリキュラムを提供するオルタナティブスクールも増えています。そのため、合う環境を見つけることで、子どもが安心して過ごせるようになることもあります(参考:全国のフリースクールを探す|にじいろ、不登校に発達障害が多い理由とは?親ができる環境選び)。
クラス替え・転校という選択肢
同じ学校の中で距離を置くことが難しい場合もあります。その際は、学校に相談してクラス替えや席の配慮を依頼する方法があります。また、状況によっては、転校を検討するという選択肢もあります。いずれにしても、子どもの安全と心の健康を最優先に考えましょう。つまり、無理に元の環境に戻すことを目的にしない判断が大切です。
よくある質問
いじめられやすい特徴があるのは子どものせいですか?
いいえ。特徴があることと、いじめを受けてよい理由になることは全く別の話です。責任は100%いじめをする側にあります。つまり、特徴を知る目的は、子どもを変えることではありません。むしろ、リスクに早く気づき、適切な支援につなげることが目的です。
子どもが「いじめられていない」と言うのに様子がおかしいときは?
子どもなりに「心配をかけたくない」「言いたくない」という気持ちがあることが多いです。そのため、無理に聞き出そうとしないでください。代わりに、「いつでも話してね」「あなたの味方だよ」と伝えながら、日々の様子を見守り続けましょう。なお、表情や生活面の変化が続く場合は、スクールカウンセラーなど第三者への相談も検討してください。
発達特性のある子どもへの予防的な配慮はありますか?
ASDやADHDの特性がある子どもは、コミュニケーションの違いから誤解を受けやすい傾向があります。そのため、学校と連携することが大切です。例えば、座席配置やグループ分けへの配慮、ソーシャルスキルトレーニングの活用などを相談すると、いじめの予防につながる場合があります。
学校に相談しても対応してもらえない場合はどうすればいいですか?
担任だけでなく、学年主任や教頭、スクールカウンセラーにも相談しましょう。それでも改善しない場合は、学校外の窓口に相談できます。例えば、教育委員会や法務局の「子どもの人権110番」、24時間子供SOSダイヤルなどです。なお、記録を残しておくと、その後の対応がスムーズになります。
まとめ:特徴があることは悪いことではない
いじめの認知件数は過去最多を更新し続けています。つまり、いじめは決して珍しい問題ではありません。引っ込み思案な性格や、ASD・ADHDといった発達特性は、いじめの「きっかけ」にされてしまうことがあります。しかし、それ自体は悪いことでも直すべきことでもなく、いじめをする側の行為こそが問題です。
大切なのは、日々の小さな変化に気づくことです。そして、子どもの話を否定せずに受け止め、学校や専門機関と連携しながら、早めに対応しましょう。なお、いじめアンケートや教育相談の時期は、家庭でも改めて子どもの様子を確認する良いタイミングといえます。
もし学校に行くこと自体がつらくなってしまった場合は、学校以外の選択肢もあります。例えば、フリースクールやオルタナティブ教育など、子どもに合った場を知っておいてください。そして、子どもが安心して過ごせる場所を、焦らず一緒に探していきましょう。

