静岡県浜松市。転倒防止床材「ころやわ®︎」を製造する工場に、この日、小学生たちの声が響いていました。「え、これ全然痛くない!」「すごい!」。床材の上に膝をつき、目を輝かせる子どもたち。その様子を、少し照れくさそうに、でも嬉しそうに見つめる大人たちがいました。
この社会科見学を実施したのは、不登校オルタナティブスクール NIJINアカデミー と、浜松発スタートアップ 株式会社Magic Shields。単なる工場見学ではなく、子どもと企業が「社会課題」を一緒に考える時間でした。
「毎日でも来てほしい」──工場に変化を起こした小学生の存在


Magic Shieldsが開発する「ころやわ®︎」は、転倒した瞬間だけ柔らかく沈み、骨折を防ぐ床材です。医療・介護の現場を中心に導入が進む、高度な技術を用いた製品ですが、工場で働く人たちにとっては、日々「つくること」が仕事でした。
今回、NIJINアカデミーの子どもたちが工場を訪れ、実際に床材を触り、体験し、「これ、すごい!」と率直な声をあげたことで、空気が変わります。
「誰のための製品なのか、初めて実感できた」「子どもたちの反応で、仕事の意味が変わった」「毎日来てほしいくらいだよ」。そんな言葉が、現場から自然に聞こえてきました。
社会科見学は、子どもが学ぶ場であると同時に、大人の仕事を照らし返す場にもなっていたのです。
なぜ、子どもを工場に呼ぶのか
この社会科見学を受け入れたのが、Magic ShieldsのCTO・宮島勇也さんです。宮島さんが教育の取り組みに強い関心を持つ背景には、家庭での経験があります。
宮島さんのお子さん二人は、不登校を経験しました。不登校は、ニュースや統計で語られる「社会課題」ではなく、日常として向き合ってきた現実です。「不登校を選ぶという行動に対して、自分にも何かできることがあるんじゃないか」。そんな想いが、NIJINアカデミーとの関わりにつながっています。
支援する、教える、という立場ではありません。「一緒に社会をつくる仲間として関わりたい」。その距離感が、今回の社会科見学にも表れていました。
驚くほど“とんとん拍子”で進んだ関係性


宮島さんとNIJINアカデミーのタツロー校長が名刺を交わしたのは、2024年6月。その翌月には、宮島さんが以前在籍していた Panasonic での社会科見学が実現しました。その後も、ブーストコンテストの審査員として子どもたちの発表に関わるなど、交流は自然と広がっていきます。
今回の浜松での工場見学も、「工場が新しくなったんですよ」という何気ない会話から始まり、あっという間に実現しました。宮島さんは笑いながらこう話します。「6月に名刺交換して、7月に社会科見学。ものすごいスピードですよね」。
特別なプロジェクト会議があったわけではありません。信頼関係の延長線上で、必要なことが必要なタイミングで形になっていきました。
「構造」をつくる人は、「場」をつくる
宮島さんの思考のベースには、「構造」があります。Panasonic在籍時、年間5,000億円規模の開発費が使われているにも関わらず、「誰が、何のために、何をしているのか」が見えにくい状況に違和感を持ちました。
そこで宮島さんは、会社に所属しながら、趣味のような形でコミュニティを立ち上げ、部活動として商品開発の場をつくります。課題を分解し、人に役割を渡す。最終的には120人が集まり、それぞれの立場で活躍する場になりました。
この「構造化して、人が活きる場をつくる」という姿勢は、Magic Shieldsの組織づくりにも、今回の社会科見学にも通じています。
大人が楽しそうに働く姿を、子どもたちへ


宮島さんが社会科見学で大切にしているのは、技術のすごさを見せることではありません。「大人が楽しそうに働いている姿を見てほしい」。そして、「働きやすい環境があることを知ってほしい」。
不登校を経験した子どもたちにとって、学校の外にある「社会」は、不安や未知で満ちています。だからこそ、仕事は苦しいものではなく、誰かと協力し、役割を持ち、社会とつながる一つの手段であることを、体感してほしいと考えています。
浜松から広がる、教育×企業の共創
11月は「世界子どもの日(11/20)」を含み、子どもの権利や多様な学びが注目される月です。今回の取り組みは、不登校という選択が、社会から切り離される理由にならないことを、地域から示す一歩でもありました。
子どもが工場に来たことで、大人の仕事が変わり、大人の姿を見たことで、子どもが社会を近く感じる。浜松で行われたこの社会科見学は、教育と企業が出会うことで生まれる、新しい共創の形を静かに示しています。

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動画で見る|【ディスレクシア】書けない子でも高校に行ける?識字障害と不登校の関係
この記事の内容を確かめるための一次資料
学校とのやりとりは、担任個人の考え方に左右されやすい部分です。だからこそ国が学校に何を求めているかを知っておくと、話が噛み合いやすくなります。「認めてください」ではなく「要件を満たすには何を用意すればよいですか」と聞くのが、実務上いちばん通ります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 文部科学省「生徒指導提要」 | 学校の生徒指導の基本方針(改訂版) |
| 文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業」 | SC・SSWの役割と配置の考え方 |
| 文部科学省「就学援助」 | 学用品費・給食費などの経済的支援 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
静岡県で使える公的な支援と相談窓口
民間の教室やスクールを探す前に、静岡県で公的に使える支援を知っておくと、費用も選択肢の幅も変わります。市区町村の教育委員会が運営する教育支援センター(適応指導教室)は利用料が原則無料で、通った日は在籍校の出席扱いにできます。
静岡県の小中学校の不登校児童生徒数は12,118人(令和6年度・文部科学省調査)。在籍者に占める割合は約4.56%で、全国平均は約3.86%です。ひとりで抱えている家庭が、それだけ多くあるということでもあります。
静岡県全体の相談窓口
| 窓口 | リンク |
|---|---|
| 静岡県 不登校支援ポータルサイト ~不登校児童生徒、保護者、学校のためのサポート~ | 公式ページを見る |
| 24時間子供SOSダイヤル(全国共通・無料) | 0120-0-78310 |
静岡県内23市区町村の窓口をまとめた一覧は、静岡県の教育支援センター(適応指導教室)一覧にあります。掲載しているリンクはすべて実際にアクセスして到達を確認済みです。
静岡県で相談を始めるときの進め方
どこに何を聞けばいいか分からないまま電話すると、たらい回しになりがちです。順番を決めておくと、1本の電話で話が進みます。
相談の順番
① 在籍校か、市区町村の教育相談窓口に連絡する
担任・スクールカウンセラーに伝えるか、静岡県の教育委員会(教育相談室)に保護者から直接電話します。多くの自治体が保護者からの直接相談を受け付けています。
② 「今すぐ通えますか」「対象は何年生からですか」を最初に聞く
教育支援センターは定員があり、小4以上を対象とする自治体が多いです。ここを最初に確認すると、次の手を早く打てます。
③ 見学・体験から始める
保護者だけの見学から始めても構いません。部屋の雰囲気と、指導員との相性を見てください。
④ 出席扱いの扱いを学校と確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
費用の負担を軽くする制度
- 教育支援センターは利用料が原則無料(教材費・昼食・交通費は自己負担の場合あり)
- 就学援助(学用品費・給食費などの補助)は、静岡県の教育委員会が窓口です
- フリースクール利用料の補助制度を設けている自治体も増えています。静岡県に制度があるか、教育委員会に直接お問い合わせください
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
Q. 静岡県の教育支援センターは無料ですか?
A. 利用料は原則無料です。市区町村の教育委員会が運営する公的機関のためです。ただし教材費・体験活動の材料費・昼食・交通費は自己負担になることがあります。給食がない施設が多く、弁当持参が一般的です。
Q. 静岡県で通える場所がない場合はどうすればいいですか?
A. ①在籍校の校内別室(保健室登校を含む)を確認する、②訪問型支援があるか窓口で聞く、③自宅でのICT学習を出席扱いにする道(別記2)を学校と相談する、④オンラインを検討する——の順で当たるのが現実的です。静岡県の状況によっては、通える範囲に施設がないこともあります。
Q. 学校を休ませてもいいのでしょうか?
A. 教育機会確保法の第13条は、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」と条文で明記しています。休むことは制度の外側にある逸脱ではなく、法律が想定している状態です。文部科学省の通知も「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく」と述べています。

