「あんなに優等生だったのに、ある日突然学校に来なくなった」——学校現場では、こうしたケースが少なくありません。実は完璧主義な子ほど、不登校になりやすいという傾向があります。
そこで本記事では、「完璧主義と不登校の関係」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、脳科学のキーワード「ERN(エラー関連陰性電位)」から、完璧主義が生まれる本当の原因を徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
結論:治すべきは人ではなく、環境
完璧主義と聞くと、「本人の性格や心の持ちようを直すべき」というアプローチが一般的です。しかしタツロー校長は、教育者としてまったく異なる結論を出しています。
タツロー校長「精神科医の解説だと、どうしても『完璧主義を治す方法』というマインドの話になりがちです。でも私は教育者として、治すべきは人ではなく環境だと考えています。」
なぜそう言い切れるのか。まずは、完璧主義と精神疾患の関係を示すデータから見ていきましょう。
世界的に増え続ける「完璧主義」
完璧主義は今、世界的に増加傾向にあります。精神医学の専門誌『Journal of Affective Disorders』の研究によると、最も高い水準の完璧主義を持つ人のうち、女性の4割、男性の3割にうつ病の経験があるとされています。



「完璧主義の人たちは、2人に1人、あるいは3人に1人がうつ病を経験している計算になります。うつ病になれば、当然不登校にもつながりやすくなります。」
タツロー校長は、完璧主義を3つのタイプに分類しています。
- ①自己志向的タイプ:「こんな自分は許せない」「私はこんなものではない」と、自分自身に完璧を求めるタイプ
- ②社会規定的タイプ:「みんなが求めているから」「常識だから」と、社会や周囲の期待に応えようとするタイプ
- ③他者志向的タイプ:「なんであなたはできないの」と、他人に対して完璧を求めるタイプ


27年間で最も増えたのは「社会規定的タイプ」
2019年に発表された、1989年から2016年までの27年間・約4万人の大学生を対象にした調査によると、3つのタイプすべてで完璧主義の傾向が増加していました。



「自己志向的タイプは約10%増加、他者志向的タイプは約16%増加。そして最も増加率が高かったのが、社会規定的タイプで、なんと33%も増えています。他の2タイプと比べても、ダントツの伸び率です。」
「みんなが求めているから」「常識だから」という理由で、自分に完璧を課してしまう人が急増している。SNSの普及も一因として考えられますが、タツロー校長はさらに脳科学の視点から、この現象を独自に読み解きます。
カギを握る「ERN」という脳波


ここでタツロー校長が注目するのが、「ERN(エラー関連陰性電位/Error-Related Negativity)」という脳波の指標です。人がミスをした瞬間に現れる脳の反応で、その振れ幅には個人差があります。



「ERNの振れ幅が小さい人は、ミスをしても前向きに乗り越えやすい。逆に振れ幅が大きい人は、ミスを引きずってしまい、思考停止や強い不安に陥りやすくなります。この振れ幅は、遺伝が半分、育った環境が半分で決まると言われています。」
つまり、ERNの大きさは生まれ持った性質だけでなく、育ってきた環境によって大きく左右されるということです。
ERNを大きくする「まんま学校」な環境
タツロー校長は、ERNが大きくなってしまう要因として、次の3つを挙げています。
- ミスへの罰:ミスをすると叱られる、ペナルティが課される環境
- 減点方式:一つのミスがそのまま評価のマイナスにつながる仕組み
- 他者比較:一律の評価のもと、常に他人と比べられながら育つ環境



「これ、まんま学校なんです。提出物を出さなければ減点され、みんな同じテストを受けさせられて他者と比較される。50m走なんて典型例で、走るのが得意な子もいれば、絵やプログラミングが得意な子もいるのに、全員が同じ距離を走らされます。」
こうした環境で育つと、ERNは大人になっても大きいまま定着しやすく、その後小さくすることは簡単ではないとタツロー校長は指摘します。


ERNが小さい人の特徴と、心理的安全性
対照的に、ERNが小さい人に共通するのは「心理的安全性」の高い環境で育ってきたことです。



「NIJINでは、あえて『落選しろ』と伝え、落選した社員を一番褒めるようにしています。ニジアカでも、小学生が中学生の内容を学んでいても、逆に中学生が小学生の内容を復習していても、誰からも後ろ指を指されません。学年という概念自体が薄いんです。」
他者と比較されるのではなく、それぞれの特性や個性を軸に、他者との違いを刺激として受け取れる環境。そうした場所で育つと、ミスをしても引きずらず、逆境から立ち上がる力——レジリエンスが自然と育まれていきます。
タツロー校長自身、ほとんど学校に通わなかった経験を振り返り、「自分はERNが小さい方だと思う」と語ります。一方で、9年間毎日学校に通い続けたスタッフのじゅりたろう氏は、「すぐ動揺してしまう」と自認しており、二人のエピソードからも、育った環境の違いがERNに与える影響がうかがえます。
保護者にできること:多様性の中に置いてあげる
もし我が子のERNが大きく、ミスにすぐ動揺してしまうタイプだとしたら、保護者にできることは何でしょうか。タツロー校長は、自身が新卒でグアテマラに渡り、5カ国の人々と働いた経験をもとに、一つのヒントを語ります。



「ドイツ人、アメリカ人、イタリア人、中国人と一緒に働いたとき、これぞ教育だと思いました。お互いが違うからこそ、自分を出しやすいし、人も認めやすい。箸の持ち方も訛りも、誰も気にしません。同じ地域・同じ年齢の中でずっと比較され続ける環境には、実は大きなマイナス面があると感じています。」
減点方式や他者比較を強めがちな塾や受験の環境に置けば置くほど、ERNは大きくなっていきます。逆に、異年齢・異文化など多様性のある環境に身を置くことで、子どもは自分の個性を発揮しやすくなり、将来的にレジリエンスを発揮できるようになるとタツロー校長は考えています。
まとめ:完璧主義は「性格」ではなく「環境」の産物
完璧主義、特に「社会規定的完璧主義」は、生まれ持った性格の問題というより、ミスへの罰・減点方式・他者比較といった、学校的な環境の中で作られていく側面が大きいとタツロー校長は考えています。



「子どもたちには、みんなの軸に自分を当てはめて生きても、そんなにいいことはないよ、と伝えてあげたいですね。」
「完璧主義な我が子を、どう直すか」ではなく、「どんな環境に置いてあげるか」。その視点の転換こそが、不登校や精神的な不調を未然に防ぐための、本質的なアプローチになります。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
タツロー校長とスタッフのじゅりたろう氏、それぞれのERNタイプ診断など、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!




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この記事の内容を確かめるための一次資料
学校とのやりとりは、担任個人の考え方に左右されやすい部分です。だからこそ国が学校に何を求めているかを知っておくと、話が噛み合いやすくなります。「認めてください」ではなく「要件を満たすには何を用意すればよいですか」と聞くのが、実務上いちばん通ります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 文部科学省「生徒指導提要」 | 学校の生徒指導の基本方針(改訂版) |
| 文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業」 | SC・SSWの役割と配置の考え方 |
| 文部科学省「就学援助」 | 学用品費・給食費などの経済的支援 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。









