不登校のまま海外へ引っ越すことに…転居・帰国と学校の手続き、学びを止めない進め方

不登校と引っ越し・海外
不登校のまま海外へ引っ越すことに…転居・帰国と学校の手続き、学びを止めない進め方

「転勤が決まった」「本帰国が決まった」——子どもが学校に行けていない時期に、住む場所まで変わることになった。手続きは何から始めればいいのか、学校にはどう伝えればいいのか、そして何より、この子にどう話せばいいのか。不安が一度に押し寄せる状況だと思います。この記事では、①国内での転居 ②日本から海外への帯同 ③海外から日本への本帰国という3つのパターンごとに、転出・転入学の手続きと、不登校の状態だからこそ気をつけたい点を整理します。制度の運用は自治体によって異なります。「何を、どこに聞けばいいか」がわかる状態を目指してお伝えします。

不登校と海外・引っ越し 執筆 にじいろ編集部 最終更新 2026.09.04

この記事の結論

  • 手続きの流れは①国内転居/②日本→海外/③海外→日本で大きく異なります。共通してカギになるのは「在学証明書」と「教科用図書給与証明書」ですが、現地校へ進む場合など証明書が発行されないケースもあります(千葉市の案内より)。
  • 海外に1年以上住む予定で国外転出届を出すと、住民票とともに学齢簿も消除され、日本の学校の学籍はいったん切れます。就学義務は「国内に居住する日本国民」に課されるもので、海外在住中の日本国民には適用されません(文部科学省「就学事務Q&A」)。
  • 不登校で欠席が続いていても、転校の手続き自体は同じです。ただし指導要録の写しは転学先の校長に送付され(学校教育法施行規則第24条第3項)、支援の引き継ぎは「児童生徒理解・支援シート」などで意識的に行う必要があります。
  • 住所が変わっても前の学校に通い続けたい場合は、「指定校変更」(学校教育法施行令第8条)「区域外就学」(同第9条)という制度があります。使えるかどうかは教育委員会の判断次第です。
  • 転校は万能な解決策ではありません。環境が変わることが良い方向に働く子もいますが、そうでない子もいます。「行けたらいい」より先に、学びと人間関係を途切れさせない設計を考えておくほうが現実的です。

引っ越しと不登校が重なったとき、最初に整理したいこと

文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人で、過去最多となりました。学校に行きづらい子がこれだけいれば、その家庭に転勤や帰任の辞令が重なることも、決して珍しいことではありません。

ただ、この状況がつらいのは「不登校の対応」と「引っ越しの段取り」という、まったく性質の違う課題が同時に降ってくるからです。だからこそ、最初に「事務手続きの話」と「子どもの気持ちの話」を分けて考えることをおすすめします。事務手続きには締め切りと正解があります。子どもの気持ちには締め切りも正解もありません。同じテーブルで悩むと、どちらも動かなくなってしまいます。

まずは全体像です。引っ越しのパターンによって、必要な手続きも、日本の学校の学籍の扱いも変わります。

3つのパターン別・手続きと学籍の扱い(早見表)
パターン住民票の手続き日本の学校の学籍主に必要な書類
①国内転居転出届(旧住所)→転入届(新住所)転学。指導要録の写しが転学先の校長に送付される在学証明書/教科用図書給与証明書/転(編)入学通知書
②日本→海外国外転出届(1年以上滞在予定の場合)住民票の消除に伴い学齢簿も消除され、在学しないものと同様の扱いに日本人学校へ進むなら在学証明書・教科用図書給与証明書。現地校のみなら退学届(証明書が発行されない場合あり)
③海外→日本転入届(新住所)帰国した時点から就学義務が生じ、原則として年齢相当の学年に編入学転(編)入学通知書/日本人学校在籍者は在学証明書・教科用図書給与証明書

※上表は文部科学省「就学事務Q&A」、千葉市・武蔵野市の案内をもとに作成した一般的な流れです。書類の名称・順番・受付窓口は自治体によって異なります。必ずお住まいの(引っ越し先の)市区町村教育委員会に確認してください。

【パターン①】国内で引っ越すとき:転出・転入学の手続き

国内の転居がいちばん手続きはシンプルです。千葉市の案内では、市外へ転出する場合・市外から転入する場合の流れが次のように整理されています。

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在籍校に転居することを伝える

引っ越しの日程が固まったら、まず担任か学校の事務室に連絡します。不登校で登校できていない場合も、連絡の窓口は同じです。「最後の登校日」をどう設定するか、そもそも設定しないのかも、この段階で相談します。

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在学証明書・教科用図書給与証明書を受け取る

千葉市の案内では、在学校の最終登校日に「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取るとされています。教科用図書給与証明書は、転入先の学校で不足している教科書を無償で受け取るために必要な書類です。

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市区町村の窓口で転出届・転入届を出す

新しい住所の区役所・市役所で転入(転居)届を出すと、「転(編)入学通知書」が発行されます。千葉市の場合、市外へ転出するときに市教育委員会での手続きは不要とされています。

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3点を持って新しい学校へ

在学証明書・教科用図書給与証明書・転(編)入学通知書の3点を転入校に持参して、手続きが完了します。

登校できていない場合の受け取り方

「最終登校日に受け取る」という前提が、そもそもハードルになる家庭もあると思います。証明書は保護者だけで受け取れるのが一般的ですし、郵送で対応してもらえる場合もあります。まずは学校に「子どもは登校が難しいので、保護者が受け取りに行ってよいか/郵送は可能か」と率直に聞いてみてください。学校側も、この手の相談は初めてではないはずです。子どもを無理に登校させて受け取りに行く必要はありません。

「引っ越しても前の学校に残る」という選択肢もある

あまり知られていませんが、住所が変わっても前の学校に通い続けられる制度があります。文部科学省「就学事務Q&A」では、市町村教育委員会は「相当と認めるときは、保護者の申立てにより、その指定した小学校、中学校又は義務教育学校を変更することができる」(指定校変更・学校教育法施行令第8条)とされ、他市町村の学校に就学する区域外就学(同第9条)についても、住所地の教育委員会への届出と受け入れ側の教育委員会の承諾によって可能とされています。

同Q&Aでは、いじめへの対応や通学の利便性などを理由とする指定校変更が例示され、「地方への一時的な移住や二地域に居住するような場合も教育上の影響等に留意しつつ、この区域外就学の手続を活用すれば、就学指定校と他市町村の学校との間を行き来するようなことも可能です」とも書かれています。

不登校の子の場合、やっと関係ができた担任やスクールカウンセラー、別室・相談室のつながりを切りたくないということがあります。距離的に通えなくても、オンラインで担任とつながっている、月に一度だけ相談室に行けている——そうした細い糸が命綱になっている家庭は少なくありません。認められるかどうかは教育委員会の判断ですが、「そういう制度がある」と知ったうえで相談するのと、知らずにあきらめるのとでは大きく違います。

段ボール箱に囲まれた部屋で引っ越しの荷造りをする家族

【パターン②】日本から海外へ(転勤・帯同):出国前にやること

海外への引っ越しでいちばん見落とされやすいのが、「日本の学校の学籍がどうなるか」です。ここは国内転居とはまったく仕組みが違います。

1年以上か、1年未満かで扱いが変わる

文部科学省「就学事務Q&A」の「学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて」では、次のように整理されています。

海外滞在の見込み期間と、日本の学校の学籍の扱い(文部科学省「就学事務Q&A」より)
滞在の見込み住民票・学齢簿学校での扱い
1年以上(国外転出届を提出)「市町村に住民基本台帳法に基づく転出届を提出することにより住民票が消除され、それに伴い学齢簿も消除されることとなります」「在学しないものと同様に取り扱い」——日本の学校の学籍はいったん切れます
1年未満とあらかじめ分かっている「国内に住所を有するものとして処理されることとなる」在籍は継続し、学校の記録上は通常、欠席として扱われます
期間が不明あらかじめ見込み期間を確認しておくことが求められます不明な場合は1年を限度に欠席扱いとされ、1年を超えると在学しないものと同様の扱いになります

これは実務上、とても大きな意味を持ちます。1年以上の赴任で国外転出届を出すと、日本の学校に「在籍している」という前提が消えます。後述する「出席扱い制度」も、在籍校があって初めて成り立つ仕組みですから、出国と同時に使えなくなります。

海外にいる間、日本の就学義務はどうなる?

文部科学省「就学事務Q&A」の「外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について」には、就学義務は「国内に居住する日本国民に対して課されているものであり、外国に居住する日本国民には適用されません」と明記されています。

つまり、海外赴任に帯同している間は、日本の就学義務の対象から外れます。「日本の学校に行っていないこと」を制度上とがめられる立場ではなくなるということです。子どもが学校に行けていない状態で出国する家庭にとって、これは知っておくと少し肩の力が抜ける情報かもしれません。ただし現地の国・地域には、その国の就学に関するルールがあります。渡航先の制度は、赴任先の会社や現地の日本人会、大使館・総領事館などで必ず確認してください。

出国前の学校の手続きと、教科書

千葉市の案内では、海外転出の際の扱いが進学先によって分けられています。現地校へ進む場合は学校に「退学届」を提出し、証明書は発行されません。日本人学校へ進む場合は、最終登校日に「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取り、日本人学校に提出します。ここも自治体・学校で運用が異なるため、在籍校に確認してください。

教科書については、公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)が、海外へ出る子どもへの教科書無償配布の窓口になっています。JOESのサイトでは対象として「日本国籍を有している」「海外赴任予定1年以上」「日本の標準課程を修了している」の3条件が示され、申請は出国予定日の2か月前から可能とされています。

不登校の子と渡航するときに、渡航前にしておきたいこと

日本で受けていた支援——教育支援センター(適応指導教室)、フリースクール、スクールカウンセラー、通っていた病院やクリニック——は、出国と同時にいったん途切れます。渡航前に「渡航後も続けられるもの」を最低1つ確保しておくと、着いてからの空白が短くなります。オンラインで続けられる相談先、日本の時間帯でつながれる居場所、主治医からの紹介状や経過のまとめなど、形は家庭によってさまざまです。荷造りより先に、ここを考えておいて損はありません。

【パターン③】海外から日本へ(本帰国):編入学の手続き

帰国は、出国と逆の流れになります。文部科学省「就学事務Q&A」には「日本国民である学齢児童生徒が帰国した場合、その時点からその保護者には就学義務がかかることとなり」と書かれています。帰国=就学義務が復活する、という理解でよいでしょう。

どの学年に入るのか

編入学の学年について、同Q&Aは「原則として、その年齢に応じ、小学校、中学校又は義務教育学校の相当学年に編入学することになります」としています。そのうえで、「帰国児童生徒の日本語能力等の事情により、直ちに相当学年の教育を受けることが適切でないと認められるときは、学校の生活に適応するまで、一時的に下級の学年に編入する措置をとることも可能です」とも書かれています。

ここで注意したいのは、下学年への編入が想定されているのは主に「日本語能力等の事情」であって、「不登校で学習が進んでいないから」ではないという点です。学習の遅れを理由に学年を下げたいと考えている場合は、そもそも認められるのか、認められるとしたらどういう条件かを、引っ越し先の教育委員会に個別に相談する必要があります。

手続きの流れ

武蔵野市の「海外からの転校(編入学)手続き」では、次のように案内されています。

  • 引っ越し先が決まり次第、教育委員会に連絡する(帰国前から連絡できる自治体があります)
  • 市役所等で住民登録(転入届)をしたあと、教育委員会の窓口へ行き、編入学通知書を受け取る
  • 在学証明書は「日本人学校に在学しているかたは、日本人学校に交付を依頼してください。現地校に在学しているかたは必要ありません
  • 教科用図書給与証明書は「日本の教科書をお持ちのかたは、日本人学校・補習授業校や大使館など教科書の配布を受けた機関に交付を依頼してください」
  • 編入学通知書を持って、編入する学校で手続きをする

現地校だけに通っていた場合、日本の書類が何もなくても手続きが進む、というのは覚えておくと安心な点です。逆に、日本人学校・補習授業校に在籍していた場合は、出国前・帰国前に証明書の発行を依頼しておくほうがスムーズです。帰国してから海外の学校に書類を頼むのは、時差もあり手間がかかります。

「帰国すれば元に戻る」とは限らない

海外で学校に行けなくなった子が、帰国して日本の学校ならいけるのではないか——そう期待したくなるのは自然なことです。ただ、帰国後に日本の学校の空気になじめず、あらためて行きづらくなるケースも報告されています。日本語での一斉授業、細かい持ち物や校則、「みんな同じ」を前提にした集団行動。海外で数年過ごした子にとっては、それ自体が新しい環境です。詳しくは帰国子女の「逆カルチャーショック不登校」とは?もあわせてご覧ください。

スーツケースを引いて空港の通路を歩く母親と子ども

不登校のまま引っ越すとき、迷いやすい5つの論点

1. 学期の途中で動いていい?

転出・転入学の手続きに「学期の区切りでなければならない」という制度上の決まりはありません。自治体の窓口は通年で受け付けています。学年の途中でも、学期の途中でも、手続きそのものは進みます。

むしろ考えたいのは、子どもの気持ちの準備に必要な時間のほうです。学校に行けていない子にとって、生活のリズムや部屋の配置が変わることは、それだけで大きな負荷になります。引っ越しの日程が動かせないなら、せめて「知らされるのが直前」にならないようにする。動かせるなら、子どもの調子が比較的いい時期に合わせる。判断材料はカレンダーではなく、その子です。

2. 欠席が多いことは、新しい学校に伝わる?

伝わる、という前提で考えておくのが現実的です。学校教育法施行規則第24条第3項は、「校長は、児童等が転学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の写しを作成し、その写し(略)を転学先の校長(略)に送付しなければならない」と定めています。出欠の記録を含む指導要録の写しは、転学先の学校に届きます。

これは隠せない情報ですが、裏を返せば「何をどう伝えてもらうか」は相談できるということでもあります。数字だけが伝わって「行かない子」という印象で始まるのか、どんなときなら来られたか・どんな配慮が効いたかまで伝わるのか。前の学校の担任やスクールカウンセラーに、そこを丁寧にお願いしておく価値はあります。

3. 支援の引き継ぎはどうする?

文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)は、個々の児童生徒に合った支援策を策定するために「児童生徒理解・支援シート(参考様式)」を作成することが望ましいとし、こうした情報は「関係者間で共有されて初めて支援の効果が期待でき、必要に応じて、小・中・高等学校間、転校先等との引継ぎが有効である」と述べています。

同じ通知は、支援の視点として「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」とも明記しています。引き継ぎを頼むときに、この一文を共有しておくと、話の前提がそろいやすくなります。

4. 出席扱い制度は、転校後も引き継がれる?

自宅でICT等を活用した学習を行った場合に指導要録上の出席として扱う仕組み(いわゆる出席扱い制度)は、文部科学省の通知で要件が示されています。要件には「保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること」「訪問等による対面指導が適切に行われることを前提とすること」「当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること」などが含まれ、最終的に判断するのは校長です。

つまり、校長が変われば判断もやり直しになります。前の学校で認められていたからといって、自動的に引き継がれるわけではありません。転入前に、新しい学校に「前の学校では出席扱いの相談をしていた」と早い段階で伝え、同じ枠組みが使えるかを確認しておくことをおすすめします。制度の詳しい要件や進め方は、フリースクールとは?費用・種類・出席扱いと全国の探し方で解説しています。

5. 海外にいる間、日本の学校に在籍したままにできる?

前章のとおり、1年未満とあらかじめ分かっている滞在であれば「国内に住所を有するものとして処理」され、在籍が続く可能性があります。一方、1年以上の赴任で国外転出届を出せば学齢簿は消除され、在学しないものと同様の扱いになります。この場合、在籍校を前提とする出席扱い制度も成立しません。

「在籍を残せないか」を相談する価値がある家庭もあります。ただし、これは自治体と学校の判断であり、制度上できることとできないことがはっきりしている領域です。早めに、正直に、在籍校と教育委員会に事情を話して確認するのがいちばんの近道です。

子どもへの伝え方と、別れ・荷造りの扱い方

ここからは、制度ではなく気持ちの話です。正解はありません。ただ、引っ越しを経験した家庭の話を聞いていると、共通して大事にされているポイントがいくつかあります。

決まったことは早めに、決まっていないことは「決まっていない」と伝える

子どもに知らせるのが遅くなるのは、たいてい「動揺させたくない」という優しさからです。ただ、荷造りの箱が積まれていく家の中で、何も知らされないまま過ごす時間はそれ自体が不安です。いつ、どこへ行くのかという確定事項は、決まった時点で共有する。そして「新しい学校がどんなところか」「そこに行くかどうか」など、まだ決まっていないことは、決まっていないと正直に言う。分からないことを分からないと言われるほうが、子どもは安心できることが多いようです。

「引っ越したら学校に行けるようになるかもね」は、言わないほうがいい

これは、つい口をついて出てしまう言葉です。でも子どもの側からすると、「新しい学校では行けることを期待されている」というメッセージとして受け取られます。引っ越しという大きな変化に、さらに期待というプレッシャーが乗ることになります。

代わりに伝えられるのは、「学校のことは、向こうに着いてから一緒に考えよう」「まずは荷ほどきと、寝る場所を作るところからね」といった、当面の見通しです。学校の話をゼロにする必要はありませんが、引っ越しと登校を1本の線でつながないほうが、子どもの負担は軽くなります。

荷造りは、子どものものは子どもが決める

不登校の時期に、部屋にあるものは子どもにとっての生活そのものです。親から見ればガラクタでも、その子にとっては安心の材料であることがあります。捨てる・持っていくの判断を、親が代わりにしない。時間はかかりますが、「自分のことは自分で決められた」という感覚は、引っ越し後の生活の立ち上がりに効いてきます。逆に、荷造りに参加できる状態でないなら、無理に参加させなくてもかまいません。

別れ方と、つながりの残し方

お別れの会や最後の登校日に出られない子はたくさんいます。それでいいのだと思います。大事なのは「行けなかった」で終わらせず、別の形を用意しておくことです。担任や仲のよかった子への手紙、オンラインで話す機会、連絡先の交換。前の学校のクラスLINEに残っている、担任と月に一度メールする、部活の友達とゲームでつながっている——どんなに細くても、続いている関係は引っ越し後の支えになります。

とくに海外に出る場合は、時差と回線の問題で、意識してつくらないとつながりは自然に切れていきます。渡航前に「日本の誰と、どうやって、どのくらいの頻度でつながるか」を、子どもと一緒に一つでも決めておいてください。

心配な様子が見えるときは、早めに専門機関へ

引っ越しの前後は、子どもにも大人にも負荷がかかる時期です。眠れない・食べられない状態が続く、以前できていたことが急にできなくなる、自分を傷つけるような言動が出る——こうした様子が見えたときは、家庭だけで抱えずに専門機関に相談してください。在籍校のスクールカウンセラー、市区町村の教育相談窓口、こども家庭センター、地域の精神保健福祉センターなどが窓口になります。海外滞在中であれば、日本語で相談できるオンラインのカウンセリングや、大使館・総領事館が案内している医療情報も選択肢になります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の状態についての助言ではありません。判断に迷うときこそ、専門家に見てもらうのがいちばん確実です。

ベッドに座って母親と静かに話している女の子

場所が変わっても続けられる学びの例

引っ越しでいちばん失われやすいのは、実は「学習の進度」ではありません。やっと続くようになっていた関係です。週に一度話せていたカウンセラー、ようやく顔を出せるようになったフリースクール、名前を呼んでくれる大人。住所が変わると、これらは一度リセットされます。そして、不登校の子にとって、新しい場所で関係をゼロから作り直すのは、大人が想像するよりずっと消耗する作業です。

だからこそ、住む場所に依存しない学びの場を、引っ越しの前に一つ持っておくという考え方があります。オンラインの学びは、国内転居でも、海外赴任でも、本帰国でも、同じ画面の同じ場所に戻れるという点で、引っ越しと相性がよい選択肢です。

例①|NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)

株式会社NIJINが2027年9月の開校を予定しているオンラインインターナショナルスクールです(まだ開校していません)。対象は6〜18歳、1クラス8名の少人数で、入学試験・選考・英語要件はなく、まず対話(面談)から始まる設計です。公式サイトでは「学校に行きづらかったお子さんも対象」と明記されています。今の学校と併用する「ダブルスクール型」(平日放課後+土曜)もあります。学費は未公表で、公式には「校舎を持たない分、対面インターより大きく抑えた価格を予定」とあるのみです。また日本の一条校ではないため、日本の高校卒業資格は発行されません。在籍校での「出席扱い」については公式サイトに記載を確認できませんでした(可否は在籍校の校長判断です)。無料体験クラスは2026年9月から毎月開催予定とされています。

例②|ともだちじゃぱん(TOMODACHI JAPAN)

同じく株式会社NIJINが2026年12月のパイロット開校を予定している、子ども向けの日本語オンラインスクールです(補習授業校の代わり・併用を想定)。対象は年長ごろ〜高校3年生で、年齢ではなく「今どのくらい話せるか」でクラス分けされます。日本語ゼロ・ひらがなが読めなくても参加でき、1クラス8名の対話中心。時間帯は住んでいる地域の時差に合わせて設定され、メタバースの校舎で日本の同世代と過ごせます。料金は未公表で、居住地に応じた奨学金による自動割引があるとされています。こちらも開校前のため、内容・料金は変更の可能性があると公式が注記しています。

正直に書いておくと、この2校はどちらもまだ開校していません。来月引っ越す家庭の「今すぐの受け皿」にはなりません。今この瞬間に必要なら、すでに運営されているフリースクールやオンラインスクールを探すほうが現実的です(フリースクールとは?費用・種類・出席扱いと全国の探し方)。ここで紹介したのは、あくまで「住む場所が何度も変わる可能性がある家庭にとって、こういう形の学びもある」という選択肢の例です。

NIJIN GLOBAL ACADEMY NIJIN GLOBAL ACADEMY|6〜18歳

引っ越しても、学校が変わらない

オンライン完結型なので、国内転居も海外赴任も帰国も、学びと人間関係が途切れません。入学試験・英語要件なし、1クラス8名の対話型。2027年9月開校予定。

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TOMODACHI JAPAN|にほんごで、ともだちになる。

世界のどこへでも持ち運べる、日本語の居場所

転勤や帰国のたびに学びが途切れないオンライン日本語スクール。時差に合わせた時間帯で、日本の同世代とメタバース校舎でつながれます。2026年12月パイロット開校予定。

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「転校すれば変わる」と期待しすぎないために

引っ越しが決まったとき、心のどこかで期待してしまうものだと思います。人間関係がリセットされる。誰も過去を知らない。新しい学校なら行けるかもしれない——。

実際に、環境が変わったことで動き出せる子はいます。特定の相手との関係が原因だった場合や、通学の距離・時間が大きな負担になっていた場合、学校の雰囲気が本人と合っていなかった場合には、場所が変わることで状況が変わることがあります。それは事実です。

一方で、変わらないことも、いったん悪くなることもあります。学校に行きづらい理由が環境だけではない場合、場所を変えても同じ壁が残ります。加えて、新しい学校で一から関係を作るのは、それ自体が相当なエネルギーを必要とする作業です。前の学校では「知っている子がいる」という最低限の足場があったのに、転校先ではそれもない。引っ越し直後に、以前より動けなくなる時期があっても、それは後退ではなく想定内——そう構えておけると、親も子も追い詰められずに済みます。

「行けたらいい、行けなくても計画どおり」という構え方

引っ越し後の数か月を「学校に行けるかどうかを試す期間」にしてしまうと、うまくいかなかったときに家族全員が消耗します。代わりに、この時期を「生活の基盤を作り直す期間」と位置づけてみてください。寝る時間、食べるもの、安心できる場所、話せる相手。それが整ってから学校のことを考える、という順番でも遅くはありません。学校に行けたらそれはうれしいことですが、行けなくても計画は崩れていない、という設計にしておくことです。

なお、海外に着いてから「現地校を続けるか、日本人学校に移るか、帰国するか、オンラインにするか」という進路の選び方で迷っている場合は、海外赴任先の子どもの不登校、帰国して日本の学校に戻る・現地校を続ける・オンライン教育、どれがいい?で詳しく整理しています。この記事は「移動そのもの」に絞っているため、学校選びの比較はそちらをご覧ください。

渡航前・帰国前に相談できる窓口

手続きの正解は、最終的に「在籍校」と「教育委員会」にしかありません。そのうえで、それ以外にも相談できる場所があります。

引っ越し・渡航・帰国のときに使える主な相談先
相談先相談できること
在籍校(担任・養護教諭・スクールカウンセラー)証明書の受け取り方、最終登校日の扱い、支援の引き継ぎ、指導要録に何をどう書いてもらうか
市区町村の教育委員会(学事課など)転出入・編入学の手続き、指定校変更・区域外就学の可否、就学義務の扱い、帰国後の学年
公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)赴任前・滞在中・帰国後の教育相談(対面/オンライン/メール)。教科書の無償配布の申請窓口
市区町村の教育相談窓口・教育支援センター不登校に関する相談、転居後の居場所や支援機関の紹介
渡航先の大使館・総領事館、現地の日本人会現地の就学ルール、日本人学校・補習授業校の情報、日本語で受けられる医療の情報

JOESの教育相談は、「赴任前」「滞在中」「帰任」の場面ごとに受け付けられており、対面(東京・大阪・京都)、オンライン(Zoom/Microsoft Teams)、メールの3つの方法があります。公式サイトによると、地域によって無料で利用できる相談があり、有料相談は1回1,000円(税抜)からとされています。相談枠は平日の午前・午後に設定されています。料金や実施方法は変更される可能性があるため、申し込み前に必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

また、文部科学省の「就学事務Q&A」は本来は自治体の担当者向けの資料ですが、公開されているため誰でも読めます。教育委員会に相談するとき、「文科省のQ&Aのこの項目について聞きたい」と言えると、話が早く正確に進みます。

よくある質問(FAQ)

不登校で学校に行けていなくても、転校の手続きは同じですか?

同じです。転出届・転入届と、在学証明書・教科用図書給与証明書・転(編)入学通知書という書類の流れは、登校できているかどうかにかかわらず変わりません。ただし「最終登校日に証明書を受け取る」といった運用が難しい場合があるため、保護者が代わりに受け取れるか、郵送が可能かを在籍校に確認してください。

在学証明書や教科用図書給与証明書は、子どもが登校しなくても受け取れますか?

多くの場合、保護者が学校で受け取ることができます。郵送で対応してもらえることもあります。学校ごとの運用によるため、まず担任か事務室に「子どもが登校できないので保護者が受け取りに行きたい」と相談してみてください。子どもを無理に登校させる必要はありません。

海外に引っ越すと、日本の学校の学籍はどうなりますか?

文部科学省「就学事務Q&A」によると、住民基本台帳法に基づく転出届を提出すると住民票が消除され、それに伴い学齢簿も消除され、在学しないものと同様に取り扱われます。一方、国外転出の期間があらかじめ1年未満であることが分かっているときは、国内に住所を有するものとして処理されます。期間が不明な場合は1年を限度に欠席として扱われるとされています。

海外にいる間、日本の就学義務はどうなりますか?

文部科学省「就学事務Q&A」には、就学義務は「国内に居住する日本国民に対して課されているものであり、外国に居住する日本国民には適用されません」と明記されています。海外在住中は日本の就学義務の対象外です。ただし渡航先の国・地域には現地の就学に関するルールがあるため、赴任先や大使館・総領事館で確認してください。

帰国したら、子どもはどの学年に入りますか?

原則として年齢に応じた相当学年に編入学します。文部科学省「就学事務Q&A」では、帰国児童生徒の日本語能力等の事情により直ちに相当学年の教育を受けることが適切でないと認められるときは、学校生活に適応するまで一時的に下級の学年に編入する措置も可能とされています。個別の判断は引っ越し先の教育委員会・学校が行うため、事前に相談してください。

引っ越しても、前の学校に通い続けることはできますか?

「指定校変更」(学校教育法施行令第8条)や「区域外就学」(同第9条)という制度があります。文部科学省「就学事務Q&A」では、市町村教育委員会が相当と認めるときに保護者の申立てにより指定校を変更できること、区域外就学には住所地の教育委員会への届出と受け入れ側の承諾が必要であることが示されています。認められるかどうかは自治体の判断です。まず教育委員会に相談してください。

出席扱い制度は、転校しても引き継がれますか?

自動的には引き継がれません。自宅でのICT等を活用した学習を指導要録上の出席として扱うかどうかは、最終的に校長が判断する仕組みだからです。学校が変われば判断もやり直しになります。転入前の早い段階で、新しい学校に前の学校での経緯を伝え、同じ枠組みが使えるかを確認しておくことをおすすめします。

不登校だったことは、新しい学校に伝わりますか?

学校教育法施行規則第24条第3項により、転学した場合には指導要録の写しが転学先の校長に送付されます。出欠の記録も含まれるため、伝わる前提で考えるのが現実的です。そのうえで、欠席日数だけでなく「どんなときなら来られたか」「どんな配慮が効いたか」も引き継いでもらえるよう、前の学校に依頼しておくとよいでしょう。

学期の途中で転校しても大丈夫ですか?

手続き上、学期の区切りでなければならないという決まりはなく、自治体の窓口は通年で受け付けています。判断の軸になるのは制度よりも子どもの状態です。日程が動かせない場合は、直前に知らせることにならないよう、決まった時点で共有することをおすすめします。

渡航前に相談できるところはありますか?

在籍校と市区町村の教育委員会が基本の窓口です。加えて、公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)が赴任前・滞在中・帰国後の教育相談を対面・オンライン・メールで受け付けており、海外に出る子どもへの教科書無償配布の申請窓口にもなっています(対象は日本国籍・海外赴任予定1年以上・日本の標準課程を修了、申請は出国予定日の2か月前から)。料金や条件は変更される可能性があるため、公式サイトで最新の情報をご確認ください。

執筆|にじいろ編集部

「学校に合わない個性を応援する」教育情報サイト「にじいろ」の編集部。不登校・発達特性・オルタナティブな学びの選択肢について、公的機関や学校の公式情報など一次情報を確認しながら記事を作成しています。就学に関する手続きの運用は自治体・学校によって異なり、また変更されることがあるため、必ず在籍校およびお住まいの自治体の教育委員会に最新の情報をご確認ください。

この記事の内容を確かめるための一次資料

転校・転出入の手続きは、自治体ごとに書類の名称や窓口が異なります。学校や教育委員会と話すときは、下記の一次資料を手元に置いて確認しながら進めることをおすすめします。

このテーマに関わる公的資料
資料何がわかるか
文部科学省「就学事務Q&A」6. 学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて海外転出時の学齢簿の消除、1年以上/1年未満/期間不明の場合の扱い
文部科学省「就学事務Q&A」7. 外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について海外在住中の就学義務の扱い、帰国後の編入学学年、下学年編入の考え方
文部科学省「就学事務Q&A」3. 就学すべき学校の指定の変更や区域外就学について指定校変更(施行令第8条)・区域外就学(同第9条)の要件と考え方
文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日支援の基本的な考え方、児童生徒理解・支援シート、転校先等との引継ぎ
文部科学省「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」いわゆる出席扱い制度の要件、校長の判断であること
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」小・中学校の不登校児童生徒数(353,970人・過去最多)
千葉市「入学・転校等の手続き」国内転居・海外転出・海外からの帰国編入それぞれの必要書類と流れ(自治体の実例)
武蔵野市「市立小中学校への海外からの転校(編入学)手続き」帰国時の必要書類、現地校在籍者は在学証明書が不要な場合があること
公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)教育相談赴任前・滞在中・帰国後の教育相談の方法と料金、教科書無償配布の申請

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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の学校・サービスへの入学や利用を推奨するものではありません。転出入・編入学の手続き、指定校変更・区域外就学の可否、出席扱いの判断は、自治体・学校・年度によって運用が異なり、変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、必ず在籍校およびお住まいの(引っ越し先の)市区町村教育委員会の最新の公式情報をご確認ください。また、お子さんの心身の状態について心配があるときは、スクールカウンセラーや医療機関など専門の窓口にご相談ください。