最近、「不登校離職」という言葉を耳にする機会が増えました。不登校というと「子どもが苦しんでいる問題」というイメージが強いかもしれません。しかし実は、苦しんでいるのは子どもだけではありません。
そこで本記事では、「不登校離職」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、最新の調査データと経済的なインパクトから、この問題の本質と解決の方向性までを徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
結論:不登校離職は、家庭の問題ではなく「みんなの問題」

結論から言うと、不登校離職は一つの家庭だけで抱える問題ではありません。放置すれば、社会全体が損をする問題だとタツロー校長は指摘します。
タツロー校長「『ママが大変だね』で終わらせてしまうと、家庭の問題として片づけられてしまいます。でも本当は違う。子どもとママだけの問題じゃなくて、みんなの問題として一緒に解決していく必要があるんです。」
なぜ「みんなの問題」と言えるのか。まずは最新のデータから見ていきましょう。
データで見る不登校離職の実態
2026年7月9日、NPO法人キーデザインが「不登校1,234件のアンケート調査」を発表しました。その結果は衝撃的なものでした。
- 母親の20%(5人に1人)が離職
- 父親の離職はわずか0.6%
- 遅刻・早退・欠勤が増えた:35%
- 仕事に集中しづらくなった:27%
- 有給取得が増えた:17%
- 一時休職した:9%
母親と父親の離職率には、実に30倍以上の差があります。この数字の裏側には、日本特有の「家事や子育てはママが担うもの」という根強い価値観があるとタツロー校長は語ります。



「学校の先生のようにフルタイムで出社しなければいけない働き方だと、正直かなり厳しいと思います。逆にNIJINのように在宅中心の働き方なら、子どもが不登校になってもほとんど影響がありません。つまりこれは、本人の頑張りではなく、働き方の問題なんです。」
不登校離職がもたらす、社会全体の経済損失
ここからは、不登校離職が社会にどれほどのインパクトを与えているのかを、実際の数字で見ていきます。
年間の新規不登校者数は約15.4万人。そのうち、働く母親の割合を約80%と仮定すると、対象となる母親は約12.4万人にのぼります。このうち5人に1人が離職するとすれば、離職者数は約2.5万人という計算になります。
- 企業の離職コスト:約750億円(採用・育成にかかるコストが失われる)
- 家計の逸失所得:約830億円(母親が本来稼げていたはずのお金)
- 税・社会保険料の減収:約300億円
合計すると、経済損失は約1,900億円にのぼるという試算です。しかもこれは、実際に離職した人だけの試算です。仕事に集中できなくなった人や、メンタルに不調をきたしている人の分は含まれていません。



「企業は法人税や消費税として、稼いだお金の多くを納めています。それによって病院や道路といった、私たちが受けているサービスが成り立っている。企業が稼ぐ力が落ちれば、そのサービスの質も下がっていきます。」
母親が働けなくなれば、家庭で使えるお金も減ります。子どもと旅行に行く機会が減り、体験の機会が減り、家庭に余裕がなくなっていく。そして税収が減れば、社会全体で受けられるサービスの質も下がっていく。不登校離職は、当事者の家庭だけでなく、巡り巡って社会全体に影響を及ぼす問題なのです。
不登校離職の本質にある、3つの課題
タツロー校長は、不登校離職の本質を「お金インフラ」「働き方」「場所」という3つの軸で整理しています。
①お金インフラ:教育インフラが「学校」しかない
憲法や教育基本法のどこにも、「学校に行かなければならない」とは書かれていません。義務教育の「義務」は、子どもに自分らしく誰かを幸せにできる教育(普通教育)を受けさせる保護者の義務であり、それを学校で受けさせなければならないとは定められていないのです。



「にもかかわらず、公的なお金は学校という一つのインフラにしか集まっていません。だからこそ私たちは、NIJINアカデミーのような民間資金で運営される『私教育』を、もう一つの教育インフラとして育てていく必要があると考えています。」
その第一歩として、タツロー校長は海外事業を成功させ、1,500億円規模のファンドを作ることを目指しています。毎月2万円を3万人の子どもたちに無償の奨学金として提供できれば、NIJINアカデミーは実質無料で通える選択肢になります。学校とNIJIN、どちらを選んでも公平である仕組みづくりに向け、先日はシリコンバレーの海外起業家プログラムにも合格しました。
②働き方:仕事と家庭を分けすぎている
「仕事」と「家庭」を完全に切り離す働き方は、実は工業化時代に生まれた比較的新しい習慣にすぎません。かつては地域のつながりの中で子どもが育ち、大人たちの仕事ぶりを間近で見る機会がたくさんありました。



「自分の親が働く姿を、見たことがありますか?他の世代の人と関わること、大人の仕事ぶりを見ること。これこそが、実は一番の教育だと私は思っています。教科書や先生の話だけを聞いているより、よっぽど大事です。」
NIJINアカデミーでは、赤ちゃんを抱っこしながら授業をする先生や、我が子を職場に連れてくる先生も珍しくありません。仕事と子育てを完全に分けるのではなく、混ぜ合わせながら生きていく。そんな選択肢を増やしていくことが重要だとタツロー校長は語ります。
③場所:学びの場が社会から切り離されている
現状、多くの学びの場は「学校の中」という、社会から切り離された空間に閉じています。NIJINアカデミーでは、駅や企業、地域の中に学び舎を作る取り組みを進めています。



「学校ではなく駅にあれば、出勤の途中で子どもを連れていけます。自分の職場に教室があれば、一緒に出勤して一緒に帰ってこられる。そうなれば、そもそも仕事を辞める必要がなくなるんです。」
企業はお金を稼ぎ続けられる。母親も収入を維持できる。税収も減らない。学びの場所を社会の中に取り戻すことは、まさに全員がHAPPYになれる仕組みだとタツロー校長は言います。
今、目の前で困っている家庭ができること
とはいえ、今まさに離職を考えているご家庭にとって、明日からすぐに状況が変わるわけではありません。タツロー校長も、そこにこそ「この問題の闇」があると認めています。



「介護離職に対する介護休暇のように、不登校に対しても法的な休暇制度が整っていれば、少し時間を稼ぐことができます。今はそれがない。正社員や公務員は、働く場所や働き方を自分で選べない構造になっているんです。」
タツロー校長は、実際にいくつかの自治体と連携し、教員がメタバース上のスクールに移籍しながら働き続けられるような仕組みづくりにも取り組んでいます。「かわいそうだね」で終わらせず、構造そのものを変えていく必要があると強調します。
まとめ:不登校離職は、社会全体で向き合うべき課題
不登校離職は、母親20%対父親0.6%という数字が示す通り、特定の家庭・特定の性別に負担が偏った構造的な問題です。その経済損失は、試算だけでも年間約1,900億円にのぼります。



「これは家庭の問題でも、母子だけの問題でもありません。お金インフラ、働き方、場所。この3つを社会全体で変えていかない限り、本当の解決にはたどり着けないと思っています。」
アンケート結果を「大変だね」で終わらせるのではなく、社会全体のムーブメントとして解決に取り組んでいくこと。それが、不登校離職という課題の本質的な解決につながります。
あわせて読みたい
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
「1,500億円ファンド構想」や「駅・企業内スクール構想」など、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!


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この記事の内容を確かめるための一次資料
学校とのやりとりは、担任個人の考え方に左右されやすい部分です。だからこそ国が学校に何を求めているかを知っておくと、話が噛み合いやすくなります。「認めてください」ではなく「要件を満たすには何を用意すればよいですか」と聞くのが、実務上いちばん通ります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 文部科学省「生徒指導提要」 | 学校の生徒指導の基本方針(改訂版) |
| 文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業」 | SC・SSWの役割と配置の考え方 |
| 文部科学省「就学援助」 | 学用品費・給食費などの経済的支援 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。









