「学校の前を通ると、こんな夜にまだ職員室の明かりが見える」
あなたは、この一文に違和感を感じましたか?
もし感じていなければ、もう教員の長時間労働は当たり前になってしまっているかもしれません。
今回は、教員にとって切実な問題である長時間労働について、最新の論文と文科省の対策をもとに考察します。
当たり前にしてはいけない「教員の長時間労働」を一緒に改善していきましょう!
教員の長時間労働:数字で見る驚くべき実態
鈴木(2018)の研究によると、2016年の教員勤務実態調査で次のような衝撃的な結果が明らかになりました。
- 小学校教員:週平均57時間25分
- 中学校教員:週平均63時間18分
1日8時間労働で1週間の7日丸々働いても56時間ですので、これには驚きを隠せません。
2006年の調査と比べても増加しているそうです。
さらに驚くべきことに、中学校教員の57.6%、小学校教員の33.5%が週60時間以上働いているのです。
教員の長時間労働の原因:何が彼らを縛っているのか
では、なぜこんなに長時間労働になってしまうのでしょうか。
小学校教師を対象とした研究では、以下の要因が指摘されています。
- 授業準備や教材研究
- 生徒指導
- 部活動指導
- 保護者対応
- 事務作業
特に、「教師の職務に対する認知」と「人間関係」が大きく影響しているそうです。
つまり、「これくらいは頑張らないと」という思い込みや、同僚や保護者との関係性が、長時間労働に追い込んでいるのかもしれません。
教員の長時間労働の問題点:給特法と文科省提言
改正給特法の問題点
高橋(2021)の研究では、公立学校教員の労働時間に関する法的問題が指摘されています。
以下に簡単にまとめます。
1. 現在の給特法
- 残業代の処理:
- 教職調整額として、基本給の4%が一律に支給されていた。
- 労働時間の把握:
- 労働時間の管理が曖昧で、特に時間外労働の実態把握が難しかった。
2. 改正給特法
- 一年単位の労働時間制の導入:
- 労働時間を年間で調整する制度を導入。
- 月の残業時間は45時間、年間で360時間までに制限。
- 特例として、月100時間未満、年間720時間以内の残業が認められることもある。
- 勤務時間の上限設定:
- 正規の勤務時間外の労働時間(在校等時間)も把握。
- 在校等時間が時間外勤務の上限に含まれるようになった。
3. 改正給特法の問題点
- 「超勤4項目」以外の時間外勤務の処理:
- 授業準備やクラブ活動の指導など、「超勤4項目」以外の時間外勤務を「自発的行為」として扱う。
- この扱いにより、実際には労働時間が多いにもかかわらず、それが労働時間として認められない。
- 独自の労働時間概念(在校等時間):
- 「在校等時間」という独自の時間概念が、労働基準法と矛盾している。
- 労働基準法との整合性が取れていないため、労働時間の管理が困難になっている。
- 労働時間の実態把握と管理の困難:
- 文科省の解釈により、時間外労働の正確な把握が難しい。
- 実際の労働時間に見合った残業代の支給が行われず、長時間労働が続く可能性がある。
改正給特法は今どうなったのか?
「中教審中間まとめ」では教員に残業手当を支給しない現在の法律(給特法)を維持する代わりに、教職調整額を現在の4%から10%以上へ引き上げる、という方針が示されました。
今、給特法を廃止し、教員に残業代を支給する仕組みへ移行したとしても、長時間労働が解決されることにつながらないと判断されたことが理由のようです。
最悪のケースでは、都道府県の予算の都合上、教員給与を下げて残業代を支払う、または残業代が支払われないという事態が起きる可能性も考えられています。
詳しくは、こちらから文科省の「中教審中間まとめ」をご覧ください。
文科省の提言(働き方改革の取り組み):光明は見えるのか
文部科学省は「学校における働き方改革に関する緊急対策」を提言し、以下のような対策を打ち出しています。
- タイムカードで勤務時間を管理する。
- 登下校、部活、会議の時間設定を適正にする。
- 緊急連絡を確保しつつ、留守番電話やメール対応を整備する。
- 部活の活動時間や休養日を適切に設定する。
- 長期休業期間に有給休暇を確保するため、学校閉庁日を設ける。
しかし、これらの対策では、特に、自発的・自主的な勤務時間が依然として時間外労働とみなされない点が問題視されています。
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そんな思いがよぎったら、まずはこの記事を併せて読んでみてください。
教員の長時間労働:私たちにできる解決の道筋
教員の長時間労働は、私たち一人一人の努力だけでは解決できない構造的な問題です。
しかし、最新の研究結果を知り、自分にできることから始めることで、少しずつ改善ができるはずです。
研究結果を踏まえ、以下のような対策が効果的だと考えました。
- 業務の優先順位付け:重要度と緊急度のマトリックスを使って整理する
- ICTの活用:事務作業の効率化や保護者とのコミュニケーションツールとして
- チーム学校の実現:専門スタッフの配置や業務の分担
- マインドセットの変革:「完璧を目指さない」「NOと言える勇気」を持つ
- セルフケア:運動や趣味の時間を確保し、メンタルヘルスを維持する
教員が健康で充実した生活を送ることができれば、それは必ず子どもたちの幸せにもつながります。
私たちも一緒に、よりよい教育環境を作っていけるお手伝いをしたいと思っております。
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