結論(早見):強迫性障害は、場面緘黙などの不安症とは脳のメカニズムが異なり、不登校との直接的な関係はそこまで大きくありません。ただし、手洗い・やり直し・号令といった学校の習慣が症状を強化してしまうリスクはあります。NIJINアカデミー校長・タツロー校長は、自分を自覚し言語化する「小さなプレゼンテーション」の積み重ねが、教育的なアプローチとして有効ではないかと提案しています。
俳優の佐藤二朗さんが、小学生時代に強迫性障害を抱えていたことを公表し、話題になりました。「あの頃の自分も、実は強迫性障害だったのかもしれない」——そう振り返る人は、決して少なくありません。
そこで本記事では、「強迫性障害と不登校の関係」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、脳科学の仕組みと教育者としての視点から、この障害の正体と向き合い方を徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
強迫性障害と不登校、実は「そこまで関係ない」
タツロー校長はこれまで、母子分離不安や場面緘黙といった「不安症」について繰り返し解説してきました。しかし今回のテーマである強迫性障害は、これらとは脳のメカニズムが根本的に異なるといいます。
タツロー校長「場面緘黙のような不安症は、脳の警報装置である扁桃体のユニークさによって起こります。一方で強迫性障害は、それとは違ったメカニズムなんです。だから一緒くたにしてしまうと、本質を見誤ってしまいます。」
強迫性障害を一言で表すと、「やめられない・終わらない」状態です。自分ではやめたいと分かっているのに、やめられない。この感覚が、不安症とは違う独自の脳機能に由来しています。
「観念」と「行為」が生み出す、終わらないループ
強迫性障害は、10歳前後、または18〜20歳前後に発症することが多いとされ、生涯有病率はおよそ100人に1〜3人と言われています。手洗いを何度も繰り返す、鍵を閉めたか何度も確認してしまう——こうした症状の背景には、「観念」と「行為」のループがあります。



「『手が汚い、綺麗にしなければ』という観念があり、不安になって手を洗うという行為をする。一時的に安心するけれど、また『汚れたかもしれない』という不安が湧いてきて、また洗う。これを繰り返すうちに、本来あった『清潔にするため』という理由がなくなり、ただ行為だけが続いていくんです。」
このループにすべてのエネルギーを使ってしまうため、学校に着いた時点でもう疲れ切っている、というケースも少なくありません。
脳科学から見る強迫性障害の正体「CSTCループ」
なぜこのループが止まらなくなるのか。脳画像研究の専門誌でも取り上げられている「CSTCループ」という仕組みで、タツロー校長は次のように解説します。


- 皮質:脳の表面部分。「手が汚れた」「物が揃っていない」などをアンテナのように感じ取る
- 尾状核:皮質からの情報を受け取り、「対応すべきか」を判断する門番のような役割
- 視床:尾状核の判断を受けて、皮質にフィードバックを返す



「皮質はいろんな情報を感じ取りますが、誤作動も多いんです。UFOを見た気がしても、普通の人はすぐに『いないはずだ』と判断できますよね。強迫性障害の人は、この門番である尾状核が、その誤作動をすべて通してしまう。だから『まだ汚いんじゃないか』という不安な信号を、何度も何度も受け取り続けてしまうんです。」
本人が「やめたい」と頭では分かっていても、体が自然と反応してしまう。これが、強迫性障害が「意志の弱さ」の問題ではないと言われる理由です。
治療の基本は、薬物療法と認知行動療法
強迫性障害への対応として、現在の医療現場で主流とされているのは、薬物療法と認知行動療法(CBT)を組み合わせるアプローチです。



「薬によって尾状核の過剰な働きを抑えつつ、認知行動療法で『自分が今何をしていたのか』を書き出したり、人に話したりして、自分の行動を自覚していく。時間はかかりますが、症状はどんどん収まっていくと言われています。」
強迫性障害は、症状として確立されたメカニズムを持つからこそ、しっかりと治療していけば改善が見込めるものです。ただし、症状が悪化した状態で本人が責められたり、周囲から拒絶されたりすると、二次的な苦しみにつながってしまうため注意が必要だとタツロー校長は強調します。
学校が、症状を強化してしまう構造
強迫性障害の診断や治療そのものは、医師や専門機関の領域です。しかしタツロー校長は、教育者の視点から、見過ごせないポイントを指摘します。



「学校というのは、実は症状の中身や習慣化そのものを強化してしまう場所でもあるんです。『手を洗いましょう』という指導、書き直し・やり直しの繰り返し、号令や点呼。こうした反復行為は、今もほとんどの学校で当たり前のように行われています。」
NIJINアカデミーには、「手を洗いましょう」という一律の指導も、書き直し・やり直しの強制も、号令や点呼もありません。学校が無意識に繰り返している習慣が、強迫性障害の症状のアウトプットと重なってしまう構造があることを、まず知っておくことが大切だとタツロー校長は語ります。
結論:「小さなプレゼンテーション」のすすめ
タツロー校長が教育者として提案するのが、「小さなプレゼンテーション」の積み重ねです。



「強迫性障害には認知行動療法が効くと言われる通り、『自分がなぜその行動をしたのか』『その時どう思い、どう感じたのか』を自覚して言語化することが大事です。本を読んだら誰かに伝えてみる、今日あったことを保護者や友達に話してみる。そうした小さな自己表現を積み重ねる教育を、NIJINアカデミーでは大切にしています。」
自分のことを、自分の言葉で語れるようになっていく。その積み重ねを通じて、少しずつ「怖さ」が消えていく——それが、タツロー校長が考える教育的なアプローチです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 強迫性障害と不登校は関係がありますか? A. 場面緘黙などの不安症と比べると、直接的な関係は大きくないとされています。ただし、学校の反復的な指導(手洗い・やり直し・号令など)が症状を強化してしまう可能性はあるため、注意が必要です。
Q2. 強迫性障害はどのくらいの人がなるものですか? A. 生涯有病率はおよそ100人に1〜3人程度とされ、10歳前後、または18〜20歳前後での発症が多いと言われています。
Q3. 強迫性障害の治療法は何ですか? A. 薬物療法と認知行動療法(CBT)を組み合わせるのが現在の主流です。専門の医療機関を受診し、医師の診断のもとで治療を進めることが推奨されます。
Q4. 場面緘黙など他の不安症と何が違いますか? A. 場面緘黙などの不安症は脳の扁桃体(警報装置)のユニークさによるものですが、強迫性障害はCSTCループと呼ばれる別の脳機能に由来しており、メカニズムが異なります。
Q5. 保護者や周囲はどう接すればいいですか? A. 本人を責めたり、症状を無理にやめさせようとしたりすることは避けましょう。二次的な苦しみにつながる可能性があります。まずは専門機関に相談しつつ、自分の気持ちを言葉にできる小さな機会(家庭での対話など)を積み重ねることが助けになります。
まとめ:治療は専門機関で、日常は「小さな自覚」から
強迫性障害は、不登校の直接的な原因というより、独立した脳のメカニズムを持つ症状です。診断や治療は専門の医療機関に委ねるべきですが、学校という環境が症状を無意識に強化してしまう可能性があることは、保護者としてぜひ知っておいてほしいポイントです。
そして日常の中では、本人が自分の行動や感情を言葉にできる小さな機会を積み重ねること。それが、専門的な治療と並行して、家庭や教育現場でできる支えになります。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
スタッフのじゅりたろう氏自身の当事者エピソードなど、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!
※本記事は教育者としての視点からの解説であり、医学的な診断・治療方針を示すものではありません。強迫性障害の診断・治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。


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