「頑張っているのに点数が伸びない」——テストのたびに、そう感じてこられたかもしれません。読み書きの困難は努力不足ではなく、その子に合う学び方と配慮でぐんと変わっていきます。この記事では、テストの合理的配慮と学び方の広げ方を、前向きにご紹介します。
LD中学生:テストの配慮と学び方——まず知ってほしいこと
テスト用紙を前にして固まってしまう、時間内に読み終わらない、頭では分かっているのに書き取れない。LD(学習障害・読み書き等の困難)のあるお子さんは、こうした場面で本来の力を出しきれないことがあります。中学生になると定期テストや入試が現実味を帯びて、「このままで大丈夫かな」と焦る気持ちが出てくるのは自然なことです。
読み書きの困難は、知的な遅れややる気の問題ではありません。文字を音に変換したり、文字を書く動作を素早く行ったりする脳の働きに、その子なりのつまずきがあると考えられています。つまり『理解する力』と『読み書きで表現する力』の間に差があるだけで、内容を理解する力そのものは十分に育っていることが多いのです。
だからこそ、読み書きの負担を減らす道具や配慮があれば、その子が持っている力はちゃんと発揮されます。学び方は一つではありません。紙と鉛筆だけが学びの形ではない、と視点を切り替えるところから始めていきましょう。
ひとりで抱えないで
テストや進路のことを、どうかご家庭だけで抱え込まないでください。学校や専門機関には、一緒に考えてくれる人がいます。
よくあるサイン
次のような様子が続くとき、読み書きの困難が関係しているかもしれません。「怠けている」のではなく、負担がかかっているサインとして見てみてください。
- 音読につまずく:文字を一つずつ拾い読みしたり、行を飛ばしたり、同じ行を繰り返したりする。
- 書くのに時間がかかる:黒板の写しが間に合わない、板書のノートが空欄だらけになる。
- 似た文字を混同する:『わ』と『ね』、bとdなど、形の似た文字を書き間違えやすい。
- テストだけ点が伸びない:口で説明させると理解しているのに、文章題や記述で得点できない。
- 宿題に極端に時間がかかる:量は少ないのに、読み書きの負担で何時間もかかり疲れ果てる。
- 勉強を避けるようになる:できない自分を責め、机に向かうこと自体を嫌がるようになる。
こうした様子がいくつも重なり、2週間ほど続くようなら、学び方を見直すサインかもしれません。まずは本人を責めないことが出発点です。
不安を希望に変える視点
読み書きに困難があっても、その子の中には確かな力が育っています。困難の裏側にある可能性に目を向けてみましょう。
- 考える力は別に育つ:読み書きが苦手でも、聞いて理解し、筋道立てて考える力は豊かに伸びていきます。
- 道具が力を引き出す:音声読み上げやタブレットを使えば、理解力がそのまま成果につながっていきます。
- 配慮は権利になった:テストの時間延長や代読などの合理的配慮は、法律に基づき求められるものになっています。
- 自分の学び方を知る子に:工夫を重ねる経験は、『自分に合うやり方を選ぶ力』という一生の財産になります。
- 得意分野で輝ける:読み書き以外の得意——話す、作る、考える——を軸に進む道は、いくらでもあります。
希望の芽を見つけて
読み書きの困難は、その子の可能性の天井ではありません。合う学び方に出会えたとき、驚くほど伸びていく子はたくさんいます。
してあげたい関わり(具体的な声かけ例つき)

NG例 → OK例
『もっと練習すれば読めるようになるよ』 → 『音声で聞くやり方も試してみようか。合うほうでいいよ』
『みんなと同じようにやりなさい』 → 『あなたに合う道具を使うのは、ずるいことじゃないよ』
『字が汚い、ちゃんと書いて』 → 『内容がよく分かったよ。書き方はタブレットに頼ってもいいね』
家庭では、読み書きの負担を減らしながら『分かる喜び』を守る工夫が力になります。
- 音声で入力する:教科書の音声読み上げアプリや、朗読音源を使い『耳から読む』選択肢を持たせる。
- 書く量を減らす:写すのではなく撮影する、キーボードやタブレット入力に切り替えるなど負担を軽くする。
- 理解の確認は口頭で:書かせて確かめるのではなく、話してもらって理解度を確かめる。
- できたことに注目する:点数より『前回より読めた』『最後までやれた』という変化を一緒に喜ぶ。
強みを育てる3つのステップ
その子の得意と困難を知る
どこでつまずき、何なら力を出せるのかを、学校や専門機関とともに丁寧に見立てます。決めつけず『この子はこう学ぶのが合う』を探す時期です。
合う道具と配慮を整える
タブレット、音声読み上げ、時間延長など、本人に合う手段を試して定着させます。テストでの合理的配慮も学校と相談して準備していきます。
自分で選べる子に育てる
『自分はこの方法が合う』と本人が理解し、必要な配慮を自分で求められるように支えます。これは進学や社会に出た先でも本人を守る力になります。
学校との連携の進め方
テストの配慮は、家庭だけでは実現できません。学校と段階を踏んで連携していきましょう。
- 担任と困りごとを共有する:テストのどの場面で困っているか、家庭での様子を具体的に伝え、一緒に対応を考えてもらう。
- スクールカウンセラー(SC)や特別支援に相談:SCや特別支援教育コーディネーター、通級指導などにつなぎ、専門的な視点を借りる。
- 合理的配慮を申し出る:時間延長、問題文の代読、別室受験、タブレット使用などを、定期テストや入試に向けて相談する。
- 家庭の負担も軽くする:宿題の量や提出方法の調整を相談し、家庭が『できないこと探し』に疲れきらないようにする。
相談先・受診を考える目安
音読や書き取りの困難が続き、学習や本人の自信に影響が出ているようなら、専門機関に相談する目安と考えてみてください。医療や専門家の見立ては、その子に合う配慮や学び方を整えるための手がかりになります。診断のためだけでなく、『どう支えるか』を一緒に考える相手を得るためにも役立ちます。気持ちがつらいときは、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も利用できます。
にじいろが大切にしていること

テストの点数は、その子の学びのほんの一部でしかありません。読み書きに困難があっても、耳で聞き、道具を使い、自分に合うやり方で世界を理解していく力は、確かに育っています。にじいろは、数値で測られる学びから、経験で語れる学びへと、まなざしを広げていくことを願っています。学び方は一つではありません。その子だけの道を、一緒に見つけていきましょう。
動画で見る|【ディスレクシア】書けない子でも高校に行ける?識字障害と不登校の関係
学校以外にも、その子に合う学びの場があります
「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。不登校・発達特性のある子どもたちが全国から通っています。在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。
NIJINアカデミー
「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。累計1,000名以上が入学し、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。
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制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 診断がついていなくても、支援は受けられますか?
A. 受けられます。通級指導や校内の配慮は、診断名がなくても本人の困りごとを根拠に相談できます。就学相談や教育支援センターも同様です。診断は「支援を受けるための条件」ではなく、支援の設計を助ける情報のひとつだと考えてください。
Q. 支援級に移すべきか迷っています
A. 「どちらが正解か」ではなく、いまの学級でその子が消耗しているかどうかで考えるのが現実的です。学びの内容だけでなく、人数・音・切り替えの多さといった環境要因を見てください。判断の考え方は支援級に入れるべきかにまとめています。
Q. 特性があると、進路は狭くなりますか?
A. 狭くはなりません。不登校を公表した著名人のように、学校の枠に合わなかった人が別の道で力を発揮する例は多くあります。大事なのは「合う環境を選べるかどうか」で、選択肢は年々増えています。
Q. 学校に特性を伝えると、レッテルを貼られませんか?
A. 伝え方次第です。「◯◯障害です」と診断名だけを伝えるより、「音が大きいと固まってしまうので、席を後ろにしてほしい」と具体的な場面と対処で伝えるほうが、担任も動きやすくなります。
Q. 家庭でできる工夫はありますか?
A. 一度に多くを変えないことです。予定を紙に書いて見える場所に貼る、次の行動を1つだけ先に伝える——この2つだけでも負担が変わる子は多いです。うまくいかない日があっても、やり方が悪いわけではありません。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

