「最近、勉強の話をすると黙ってしまう」——それは怠けではなく、分からないが積もって自信がすり減っているサインかもしれません。責めずに立て直す道すじを一緒に見ていきます。
中学生:学習のつまずきと自信——まず知ってほしいこと
小学校では解けていた我が子が、中学に入って急に「勉強が分からない」と口にする。テストの点が落ち、机に向かう時間が減り、やがて朝の「行きたくない」につながっていく——そんな変化に戸惑っていませんか。まずお伝えしたいのは、それはお子さんの能力ややる気の問題ではない、ということです。
中学の学習は、量も抽象度も一気に上がります。数学は文字式や関数、英語は文法と語彙、理科や社会も暗記から思考へと質が変わります。一つの単元のつまずきが次の単元の土台になっているため、どこかで「分からない」が生まれると、雪だるまのように積み重なっていきます。本人は「頑張っているのに追いつけない」感覚のなかで、少しずつ自信を失っていくのです。
自信が削れると、「どうせ自分にはできない」という気持ちが先に立ち、勉強そのものを避けるようになります。避けるとさらに分からなくなる——この悪循環が、行き渋りや不登校の背景に隠れていることは少なくありません。
ひとりで抱えないで
つまずきは「戻れば必ずほどける」ものです。どうか一人で抱え込まず、お子さんと一緒に、そして学校とも手をつないでいきましょう。
よくあるサイン
学習のつまずきは、点数よりも先に生活のなかの小さな変化として現れます。次のようなサインが見られないか、そっと目を向けてみてください。
- 勉強の話題を避ける:テストや宿題の話になると黙る、話をそらす、不機嫌になる。触れられたくない気持ちの表れです。
- 「どうせ無理」が口ぐせに:やる前から諦める言葉が増える。自信の低下がそのまま言葉に出ています。
- 提出物が滞る:宿題やワークをやらない・出さないことが続く。分からなくて手が止まっている場合があります。
- 特定の教科を極端に嫌がる:数学や英語など、積み上げ型の教科だけ強く拒む。土台のつまずきが疑われます。
- 朝の体調不良が増える:テストや苦手教科のある日に頭痛や腹痛を訴える。心の負担が体に出ているサインです。
- 自分を下げる言葉が増える:「バカだから」「みんなできるのに」と自分を責める。友だちと比べて苦しんでいます。
これらが複数、2週間ほど続くようなら、成績の問題ではなく「自信の問題」として向き合うタイミングかもしれません。
うちの子は当てはまる?チェックリスト
つまずきは「どこで」つまずいたかが分かれば、必ずほどけます。責める材料ではなく、手がかりを見つけるためのチェックとして使ってください。
- つまずいた学年まで戻れているか:今の単元が分からないとき、実は前学年・前単元が土台になっていることが多いです。分数や割合、be動詞など、戻る地点を探してみましょう。
- 「分からない」を言葉にできているか:何が分からないか本人も分からない状態か、具体的に指させるか。指させれば半分は解決に近づいています。
- 睡眠と生活リズムは保てているか:睡眠不足は集中力と記憶を大きく下げます。夜更かしやスマホで学習効率が落ちていないか確認を。
- 「量」で疲弊していないか:分からないまま大量の課題に向かうと、努力が報われず消耗します。量より「戻ってやり直す」が先です。
- 誰かと比べられていないか:きょうだいや友だち、過去の自分と比べられると、意欲より劣等感が育ちます。比較の言葉が家庭にないか振り返ってみましょう。
チェックの見方
チェックが当てはまっても、それはお子さんのダメな点ではなく「支援の入り口」が見つかったということ。一つほどければ、必ず次につながります。
やってしまいがちな対応と、その注意点
よかれと思ってした対応が、かえって自信を削ってしまうことがあります。次の関わりは、少し立ち止まって見直したいものです。
- 今の単元をもっとやらせる:土台が抜けたまま先へ進ませると、分からなさが増して自信がさらに下がります。まず戻ることが近道です。
- 「やればできる」と励ます:本人は「やってもできない」と感じています。精神論はプレッシャーになり、逆に手が止まりやすくなります。
- 点数やきょうだいと比べる:比較は意欲ではなく劣等感を育てます。「前より」の視点も本人には責めに聞こえることがあります。
- スマホやゲームを取り上げて勉強させる:取り上げは反発と対立を生み、心の余裕を奪います。安心できる関係が学び直しの前提です。
してあげたい関わり(具体的な声かけ例つき)
NG例 → OK例
『なんでこんな問題も分からないの』 → 『ここまでは分かってるね。どこから怪しくなるか一緒に探そう』
『みんなできてるのにどうして』 → 『人それぞれ得意も進み方も違うよ。あなたのペースで大丈夫』
『こんな点数で高校行けると思ってるの』 → 『今つまずいてる所が分かれば、ちゃんと取り返せるよ』
声かけと合わせて、家庭では「小さな成功体験」を積める工夫が効果的です。
- 戻って学び直す:分かる学年まで思いきって戻り、「解ける」感覚を取り戻します。基礎ドリルや前学年の教科書で十分です。
- できたことを言葉にする:「昨日より一問多く解けたね」と過程を認めます。結果ではなく取り組みを見てあげてください。
- 分量を小さく区切る:「今日は5分」「一問だけ」と始めやすくします。ゼロが一になる経験が自信の芽になります。
- 比べない環境をつくる:きょうだいの成績を話題にしない、過去の自分とだけ比べる。家庭を安心できる場所にします。
回復への道すじ——3つの段階
1. 安心を取り戻す
まずは成績を横に置き、「分からなくても大丈夫」と伝わる関係を作ります。プレッシャーが減ると、子どもは再び学びに向かう余力を持てます。
2. つまずきに戻る
分かる地点まで戻って学び直します。ここで「解ける」を一つ積むことが、失った自信を取り戻す出発点になります。
3. 成功体験を重ねる
小さな『できた』を積み上げ、「やれば分かる」感覚を育てます。自信が戻れば、勉強への足取りも自然と軽くなっていきます。
学校との連携の進め方
家庭だけで抱え込まず、学校とも手を組みましょう。つまずきの立て直しは、連携するほど早く進みます。
- 担任と状況を共有する:どの教科で、いつ頃からつまずいているかを伝えます。授業中の様子や提出状況など、家では見えない情報を教えてもらえます。
- スクールカウンセラー(SC)に相談する:自信の低下や行き渋りが絡むときは、学習面と心の面の両方から見てもらえます。保護者だけの相談も可能です。
- 柔軟な登校や配慮を相談する:苦手な教科だけ別室で取り組む、課題量を調整するなど、合理的配慮を相談できます。学び方は一つではありません。
- 親の負担も軽くする:家庭学習をすべて親が抱える必要はありません。個別指導や通級、地域の学習支援など、頼れる先を分け合いましょう。
相談先・受診を考える目安
戻って学び直しても分からなさが強く残る、特定の教科だけ極端に苦しむ、自信の低下が生活全体や睡眠・食欲にまで影響している——そんな様子が続くときは、学習面の背景に読み書きや発達の特性が隠れていることもあります。決めつけずに、まずは学校や専門機関に相談してみてください。お子さん自身がつらさを言葉にできないときは、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も利用できます。
にじいろが大切にしていること
テストの点や順位は、お子さんの一部でしかありません。中学の学びでつまずいたとしても、戻って一つずつ積み直せば、必ず「分かる」は取り戻せます。にじいろが大切にしたいのは、数値で測られる学びから、経験で語れる学びへ——点数では見えない「自分で解けた」という手ごたえこそが、これからの自信の土台になります。焦らず、お子さんのペースで進んでいきましょう。
動画で見る|【不登校】夏休み明けに増えるのは「子どもが急に行きたくなくなる」からではありません。子どもが学校に行けなくなるまでの本当の理由
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制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 学校を休ませてもいいのでしょうか?
A. 教育機会確保法の第13条は「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」と条文で明記しています。休むことは制度の外側にある逸脱ではなく、法律が想定している状態です。
Q. どこに相談すればいいですか?
A. まずは市区町村の教育委員会(教育相談室)です。学校を通さずに保護者から直接相談できる自治体がほとんどです。全国の窓口は文部科学省のページから探せます。
Q. 学校以外に、どんな場所がありますか?
A. 教育支援センター(適応指導教室)は原則無料の公的な居場所、学びの多様化学校は特別の教育課程を組める正式な学校、ほかにフリースクールとオンラインがあります。
Q. 出席扱いにできますか?
A. 要件を満たせば校長の判断で可能です。通所する場合は別記1、自宅でICT等を活用して学ぶ場合は別記2の要件があります。令和6年度は学校外の機関等で42,978人、自宅ICT学習で13,261人が出席扱いになっています。
Q. この先どうなるのか不安です
A. 不登校の経験がその後を決めるわけではありません。不登校を公表した著名人12人のように、別の道で力を発揮している人は多くいます。いまは先を決めるより、目の前の回復を優先してよい時期です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

