『次に何があるの?』と何度も確かめるわが子に、どう答えれば安心するのだろう。先が見えないと強く不安になる子には、予定や手順の『見通し』を具体的に手渡すことが、いちばんの安心材料になります。
不安が強い子への"見通し"の伝え方——まず知ってほしいこと
『明日って学校あるの?』『体育のあと何するの?』——同じことを何度も確かめるわが子に、つい『さっき言ったでしょう』と返してしまい、あとで胸が痛む。そんな夜を過ごしている保護者の方は少なくありません。まず知っておいてほしいのは、それはお子さんのわがままでも、育て方のせいでもないということです。
先の見えない状況に強い不安を感じる子は、頭のなかで『これから起きること』を映像のように思い描くのが苦手なことがあります。だからこそ、次に何が起きるか分からない時間が続くと、心がざわざわして落ち着けません。逆に、予定や手順がはっきり『見える』と、脳が安心し、気持ちがすっと落ち着きます。確認が多いのは、その安心を自分でつかもうとしている行動でもあるのです。
文部科学省の令和6年度調査では、小学生が学校へ行きづらくなる主な要因として『無気力・不安』が約52%と最も多く挙げられています。不安の強さそのものは、けっして珍しいことではありません。
ひとりで抱えないで
『どう安心させたらいいのか分からない』と感じるのは、あなたが真剣にお子さんと向き合っている証拠です。ひとりで抱えず、いっしょに『見通し』の伝え方を整えていきましょう。
よくあるサイン
見通しが持てず不安が高まっているとき、お子さんは次のようなサインを見せることがあります。
- 同じ確認を繰り返す:『明日は何時間目まで?』などを何度も聞き、答えても安心しきれない。
- 初めての予定を極端に嫌がる:行事や遠足、席替えなど『先が読めない』ことに強く抵抗する。
- 朝の支度が急に止まる:登校前に固まったり、お腹が痛くなったりして動けなくなる。
- 小さな変更で崩れる:時間割の入れ替えや担任の交代など、予定外の変化で気持ちが不安定になる。
- 寝つきが悪い・夜に確認が増える:翌日のことが気になって眠れず、布団の中で予定を聞いてくる。
- 『できない』が口ぐせになる:やる前から『無理』『どうせダメ』と、見えない先を最悪に想像してしまう。
こうしたサインが複数、2週間ほど続くようなら、お子さんが見通しの持てなさに疲れているサインかもしれません。
不安の対象が「予定が読めないこと」ではなく「保護者と離れること」に集中している場合は、母子分離不安として考えたほうが対応しやすくなります。詳しくは母子分離不安とは?年齢別の特徴と対応へ。
うちの子は当てはまる?チェックリスト
『見通し』を伝えると安心しやすい子かどうか、ふだんの様子から確かめてみましょう。当てはまるものがあれば、関わりのヒントになります。
- 予定が分かると落ち着く:『今日はこの順番だよ』と伝えた日は、比較的スムーズに動ける。
- 急な変更に弱い:楽しみな予定でも、直前に変わると気持ちが大きく崩れる。
- 全体像を知りたがる:『あと何個で終わる?』とゴールや残りの量を確かめたがる。
- 口頭より見て理解する:言葉だけの説明より、絵や文字にすると納得しやすい。
- 初めての場所・人に緊張する:事前に写真や説明があると、当日の緊張がやわらぐ。
チェックの見方
いくつ当てはまっても、優劣ではありません。『見える形にすると安心する子なんだな』と分かること自体が、明日からの関わりを楽にしてくれます。
やってしまいがちな対応と、その注意点
よかれと思ってやりがちですが、不安の強い子にはかえって逆効果になりやすい対応があります。
- 『大丈夫だから』とだけ繰り返す:根拠が見えないと、子どもは『何が大丈夫なのか』分からず、不安が消えません。
- 『さっき言ったでしょう』と突き放す:確認は安心を求める行動。責められると、聞くこと自体が怖くなってしまいます。
- 予定をあいまいにぼかす:『たぶん』『そのうち』は、先を読めない子にとって最も不安な言葉です。
- サプライズで驚かせる:喜ばせるつもりでも、心の準備ができず、パニックにつながることがあります。
- 『慣れれば平気』と急がせる:見通しのないまま数をこなさせると、不安の記憶だけが積み重なります。
してあげたい関わり(具体的な声かけ例つき)
NG例 → OK例
『大丈夫だから早くしなさい』 → 『あと3つで支度は終わりだよ。まずは靴下からいこう』
『何回も聞かないの』 → 『気になるよね。今日はこの表を見れば分かるよ、一緒に確認しよう』
『行ってみないと分からないでしょ』 → 『着いたらまず先生に会って、次に荷物を置くよ。その順番でいこう』
『見通し』は、次のような工夫で目に見える形にできます。どれも特別な道具は要りません。
- 視覚的な予定表をつくる:朝の支度や一日の流れを、絵カードや短い文字で並べる。終わったら剥がす・消すと達成感も生まれます。
- スモールステップに分ける:『支度する』を『トイレ→着替え→朝ごはん』のように小さく区切り、一つずつ『できた』を確認します。
- 始まりと終わりを伝える:『これは10分で終わるよ』『3ページで終わり』とゴールを先に示すと、見通しが立ち安心します。
- 事前に予告する:変更や初めての予定は、前日や当日の朝に『こういうことがあるよ』と早めに伝えて心の準備の時間をつくります。
- 選べる余白を残す:『どっちを先にする?』と小さな選択を渡すと、見通しのなかに『自分で決めた』安心が加わります。
回復への道すじ——3つの段階
見える化で安心の土台をつくる
予定表やステップ表を使い、『次が分かる』毎日を積み重ねます。まずは家の中の安心から。
小さな成功を一緒に確認する
『予告どおりできたね』と振り返り、見通しがあれば動けたという実感を子どもの中に育てます。
自分で見通しを立てはじめる
少しずつ『次は何だっけ?』と本人が表を確かめるように。やがて予定表がなくても見通しを持てる力が育ちます。
学校との連携の進め方
家庭の工夫は、学校と共有するとぐっと効果が高まります。無理のない範囲で連携してみましょう。
- 担任と様子を共有する:『見通しがあると落ち着く子です』と伝え、時間割の変更を早めに知らせてもらうなどの配慮をお願いします。
- スクールカウンセラー(SC)に相談する:不安との付き合い方や、学校でできる見通しの工夫について、専門的な視点から一緒に考えてもらえます。
- 柔軟な登校・合理的配慮を相談する:予定表の共有や、初めての活動の事前説明など、その子に合った配慮を学校と話し合えます。
- 保護者自身の負担を軽くする:すべてを完璧に見える化しようとしなくて大丈夫。頼れる人や制度を使い、あなた自身の余裕も守りましょう。
相談先・受診を考える目安
見通しの工夫を続けても不安が強いままだったり、眠れない・食べられない・登校できない状態が続いてお子さんの生活に影響が出ているときは、早めに専門機関へ相談してよいサインです。どこに相談するか迷うときや、お子さんがつらさを訴えるときは、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も利用できます。相談は『大げさ』ではなく、お子さんを守る大切な一歩です。
にじいろが大切にしていること
先が見えて安心できた一日は、お子さんにとって『できた』という小さな経験になります。にじいろは、そうした経験の積み重ねを大切にしています。数値で測られる学びから、経験で語れる学びへ。見通しに支えられて動けた日々は、やがて『不安でも自分で進める』という、その子だけの物語になっていきます。
動画で見る|【不登校】夏休み明けに増えるのは「子どもが急に行きたくなくなる」からではありません。子どもが学校に行けなくなるまでの本当の理由
学校以外にも、その子に合う学びの場があります
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制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 朝だけ具合が悪くなります。仮病でしょうか?
A. 仮病とは限りません。起立性調節障害のように、午前中に強く症状が出て午後に回復する状態は思春期に多くみられます。本人の意思では動かせない体の反応なので、まずは小児科や児童精神科で相談してください。
Q. 受診したほうがよい目安はありますか?
A. 睡眠・食事・体重に変化があるとき、体の症状が2週間以上続くときが一つの目安です。「気のせいかも」と迷う段階で相談して構いません。学校を休む判断の根拠にもなります。
Q. 薬を飲ませることに抵抗があります
A. 治療の選択は家庭が決めることです。迷いをそのまま医師に伝えてよいですし、薬以外の選択肢や、まず生活リズムから整える方針を相談することもできます。
Q. 学校にどう説明すればいいですか?
A. 診断名だけでなく、「午前中は登校が難しいが、午後なら可能なことがある」と具体的な時間帯や条件で伝えるほうが配慮につながります。医師の意見書があると、学校側も動きやすくなります。
Q. 保護者自身がつらいときは?
A. 保護者の消耗は子どもに伝わります。厚生労働省「こころの健康」や自治体の相談窓口は、保護者本人の相談も受け付けています。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は保護者からの相談も可能です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

