「うちの子、特別支援級に入れた方がいいのでしょうか?」
発達障害への認知が広がった今、保護者から最も多く寄せられる相談の一つです。
ADHD、ASD、学習障害(LD)──。
以前よりも診断を受けやすくなり、「特別支援級」という選択肢も社会に浸透してきました。
だからこそ今、保護者は悩んでいます。
「本当に支援級が合っているのか?」
「通常級のままでは厳しいのか?」
「でも、支援級に入れることで可能性を狭めないか?」
このテーマについて、精神科医や専門家が語る動画はたくさんあります。
しかし、“学校の中で実際に何が起きているのか”を教育者の視点から語る人は少ない。
私は小中学校の現場で教師を経験し、現在はオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長として、多くの発達特性を持つ子どもたちと向き合っています。
その立場から、今日は率直にお話しします。
全国750名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
結論:「特別支援級に入れるべきか」は、先生による

結論から言います。
特別支援級が合うかどうかは、“制度”よりも“先生”によります。
これが、保護者にぜひ知ってほしい一番大きなポイントです。
支援級か通常級か。
多くの人は「子どもの特性」で考えます。
もちろんそれも大切です。
ですが、実際の学校現場では、
- どんな先生が担任になるのか
- その先生に教育力があるのか
- 子どもの特性を理解できるのか
- 子どもの主体性を伸ばせるのか
ここが、子どもの未来を大きく左右します。
特別支援級に入るまでの流れ
通常、小学校入学前や中学進学前に「就学相談」が行われます。
その中で、
- WISC(知能検査)
- 発達検査
- 医師の診断
- 保護者との面談
などを通して、「支援級が適切か」が検討されます。
医師はDSM-5という診断基準をもとに、
- ADHD
- ASD
- 学習障害(LD)
などを判断します。
そして最終的に、「支援級にするか」は保護者が決めていく流れになります。
学校現場の“裏側”
ここからは、あまり表に出ない話をします。
現実として、一部の学校では、
「扱いづらい子を支援級に送りたい」
という空気が存在します。
もちろん全員ではありません。
素晴らしい先生もたくさんいます。
しかし実際に、
- 多動
- 落ち着きがない
- 指示が入りづらい
- 授業中に立ち歩く
そんな子どもに対して、
「WISC受けてみませんか?」
「支援級もありますよ」
と、“学校側の都合”で話が進むケースもあります。

特に低学年は、教師の力量でクラスの雰囲気が大きく変わります。
子どもが暴れているのは、本当に発達特性だけが原因なのか。
授業がつまらない。
抑圧されている。
エネルギーを発散できない。
そういうケースも、実は少なくありません。
特別支援学校と特別支援級は、全く違う

混同されがちですが、
- 特別支援学校
- 特別支援級
は別物です。
特別支援学校は、盲学校、聾学校など、専門的な支援が必要な子どもたちが通う学校です。
ここでは、
- 特別支援学校教諭免許
- 理学療法士
- 作業療法士
など、専門性の高い人たちが支援に関わります。
一方、特別支援級は「普通の公立学校の中」にあります。
少人数制で、
- 自立活動
- 個別指導計画
- 個別学習
などが行われます。
ここで重要なのが、
支援級の先生は、特別支援の専門家とは限らない
という点です。
通常学級の先生が、そのまま支援級担任になることも珍しくありません。
「個別指導」が、逆に苦しくなることもある
支援級では、一人ひとりに合わせた「個別指導計画」が作られます。
一見、とても良さそうに聞こえます。
しかし私は、これが子どもによっては“苦しさ”になることもあると感じています。
例えば、
本来はエネルギーにあふれ、好奇心旺盛な子どもが、
- 「もっと静かに」
- 「もっと丁寧に字を書いて」
- 「ちゃんと挨拶して」
- 「止め・はね・払いを意識して」
そんな“学校的価値観”で矯正され続ける。

すると、子どもは自分らしさを失っていきます。
笑わなくなる。
挑戦しなくなる。
自己肯定感を失う。
これは、本当に起きています。
学校は「口頭コミュニケーション至上主義」になりやすい
NIJINアカデミーには、
- 吃音
- 場面緘黙
- チック
- トゥレット症候群
- 構音障害
など、様々な特性を持つ子どもたちがいます。
ですが、オンラインやデジタルツールを活用すれば、子どもたちは驚くほど能力を発揮します。
- チャット
- イラスト
- 動画
- プログラミング
- Webコミュニケーション
口頭だけがコミュニケーションではありません。
しかし学校現場では、どうしても
- 「目を見て話しなさい」
- 「ちゃんと挨拶しなさい」
- 「声を出しなさい」
という価値観が強く残っています。
そこに苦しむ子どもたちは、本当に多い。
特別支援級の先生には、実は様々な事情がある

これも外からは見えません。
支援級担任になる理由は、本当に様々です。
- 特別支援を本気でやりたい先生
- 通常級がうまくいかなかった先生
- 校内事情で回ってきた先生
- 仕事をセーブしたい先生
- 給与面を理由に選ぶ先生
もちろん、素晴らしい先生もいます。
ですが現実として、
「支援級だから安心」とは限りません。
子どもを伸ばすのは、“制度”ではなく“人”
私は、支援級そのものを否定したいわけではありません。
実際、支援級で救われる子どももたくさんいます。
ただ、
- 通常級だからダメ
- 支援級だから安心
そんな単純な話ではない。
本当に大切なのは、
「その先生が、子どもをどう見ているか」です。
教師に力があれば、
- 発達特性
- 多動
- 集団が苦手
- コミュニケーションの困難
そうしたものを超えて、子どもを伸ばすことができます。
逆に、教師の力量がなければ、どんな制度でも苦しくなる。
保護者に伝えたいこと
もし今、特別支援級を迷っているなら、
「制度」だけではなく、
- 担任の先生
- 学年の雰囲気
- 学校文化
- 子どもとの相性
を、ぜひ観察してください。
そして何より、
「この子らしさを伸ばしてくれる場所か?」
を見てほしいと思います。
子どもは、“矯正”されるために生きているわけではありません。
その子が持っているエネルギーや個性を、どう社会につなげていくか。
そこに、本当の教育があると私は思っています。
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星野達郎校長が今回のテーマを動画で丁寧に解説しています。
これからの時代の教育トレンドについて、より深く知りたい方はぜひフルバージョンの動画をご視聴ください。

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この記事の内容を確かめるための一次資料
発達特性の話は、ネット上に断定的な情報があふれています。診断や支援の枠組みは公的機関が定義しているものなので、判断に迷ったときは一次資料に戻るのがいちばん確実です。とくに支援級・通級の仕組みは自治体で運用が違うため、制度の原文を知っておくと学校との話が具体的になります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報・支援センター」 | 特性の定義と支援の基本。全国の支援センター一覧 |
| 文部科学省「特別支援教育」 | 通級・支援級・支援学校の制度と対象の考え方 |
| 国立精神・神経医療研究センター | 医学的な情報と研究の一次情報 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 診断がついていなくても、支援は受けられますか?
A. 受けられます。通級指導や校内の配慮は、診断名がなくても本人の困りごとを根拠に相談できます。就学相談や教育支援センターも同様です。診断は「支援を受けるための条件」ではなく、支援の設計を助ける情報のひとつだと考えてください。
Q. 支援級に移すべきか迷っています
A. 「どちらが正解か」ではなく、いまの学級でその子が消耗しているかどうかで考えるのが現実的です。学びの内容だけでなく、人数・音・切り替えの多さといった環境要因を見てください。判断の考え方は支援級に入れるべきかにまとめています。
Q. 特性があると、進路は狭くなりますか?
A. 狭くはなりません。不登校を公表した著名人のように、学校の枠に合わなかった人が別の道で力を発揮する例は多くあります。大事なのは「合う環境を選べるかどうか」で、選択肢は年々増えています。
Q. 学校に特性を伝えると、レッテルを貼られませんか?
A. 伝え方次第です。「◯◯障害です」と診断名だけを伝えるより、「音が大きいと固まってしまうので、席を後ろにしてほしい」と具体的な場面と対処で伝えるほうが、担任も動きやすくなります。
Q. 家庭でできる工夫はありますか?
A. 一度に多くを変えないことです。予定を紙に書いて見える場所に貼る、次の行動を1つだけ先に伝える——この2つだけでも負担が変わる子は多いです。うまくいかない日があっても、やり方が悪いわけではありません。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

