結論:発達障害があるから不登校になる、という単純な関係ではありません。
ただし、発達特性と学校の環境が合わない状態が続くことで、授業・集団生活・人間関係などに大きな負担を感じ、学校へ行きづらくなる子どもはいます。
2026年に文部科学省が公表した調査では、回答校全体の不登校率3.71%に対し、調査上の「発達障害のある児童生徒等」では13.26%でした。
大切なのは「この子を学校に合わせるには?」だけではなく、「この子が安心して力を発揮できる環境はどこか?」を考えることです。
「発達障害だから学校に行けないの?」「私の育て方が悪かった?」「普通級が合わないなら、どこで学べばいい?」
子どもが学校へ行けなくなったとき、保護者は原因を探そうとします。
特に発達特性があると、「発達障害と不登校は関係があるのか」「診断を受けた方がいいのか」「学校には何をお願いできるのか」と悩むご家庭も少なくありません。
この記事では、2026年に公表された文部科学省の最新調査をもとに、発達障害と不登校の関係、学校で起こりやすい困りごと、小学生・中学生の違い、親ができる対応、学ぶ環境の選び方まで整理します。
元小学校教員。不登校・発達特性のある小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長。
子どもを既存の環境に合わせるだけでなく、一人ひとりの特性・主体・得意が生きる教育環境をつくることに取り組んでいる。
にじいろは株式会社NIJINが運営し、この記事で紹介するNIJINアカデミーも同社の事業です。
発達障害の子は不登校になりやすい?2026年の文科省調査
発達障害と不登校の関係を考える上で、2026年に新しい調査結果が公表されました。
文部科学省の「特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究」では、全国から抽出された小中学校など1,570校へ調査を依頼し、432校から回答を得ています。
全児童生徒の不登校率
「発達障害のある児童生徒等」
発達障害等に起因する支援ニーズがあった層
小学校より高い結果
同調査では、特別支援学級(自閉症・情緒障害)に在籍していた児童生徒、通級による指導を受けていた児童生徒、通常学級で通級を受けていないものの発達障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求め・相談があった児童生徒を合わせた不登校率が13.26%でした。
さらに、通常学級・通級なしで支援の求めや相談があった児童生徒では22.76%でした。
この数字を「発達障害の子の全国不登校率」と読み替えることはできません。
調査回答は432校で、地域によって回答数にも偏りがあると報告書自身が注意しています。また、「発達障害のある児童生徒等」には診断だけでなく、疑いや教育的支援ニーズを含む区分があります。
それでも、発達特性のある子どもへの早期支援と不登校予防を、国が重要な教育課題として調査していることは分かります。
参考: 文部科学省|令和7年度 特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究 報告書
発達障害だから不登校になるのではなく「特性×環境」のミスマッチを見る
ここで一番避けたいのは、
「発達障害だから学校に行けない」
と決めてしまうことです。
発達障害者支援法では、発達障害を自閉症、学習障害、注意欠如・多動性障害などを含む脳機能の障害として定義しています。
一方で、その特性によって生活上の困難がどの程度生じるかは、本人の状態だけでなく、周囲の環境との関係によっても変わります。
同じ子でも、環境が変わると「困った子」から「得意を発揮する子」へ見え方が変わることがあります。
問題を子どもの内側だけに探すのではなく、「どの環境なら力を出せるか」という視点も持ってください。
発達障害の子が学校でつらくなりやすい7つの理由
学校は、多くの子どもが同じ場所・時間割・ルールの中で生活する場所です。
その仕組み自体が悪いわけではありませんが、発達特性によっては毎日大きなエネルギーを使うことがあります。
複数の指示が一度に出たり、曖昧な表現が多かったりすると、何をすればよいか分からなくなることがあります。
周囲に合わせ続けることや、暗黙のルールを読み取ることに強い負荷がかかる子もいます。
教室のざわめき、チャイム、給食のにおいなどの感覚刺激が大きな負担になることがあります。
突然の時間割変更、先生の変更、行事などで強い不安が生じる場合があります。
努力しているのに結果につながりにくく、「自分はできない」と自己評価が下がることがあります。
忘れ物、提出物、離席などを繰り返し注意されることで、学校が「失敗する場所」になってしまう場合があります。
言葉の受け取り方や距離感の違いから、本人に悪意がなくてもトラブルになることがあります。
ADHD・ASD・LDで学校の困りごとはどう違う?
「発達障害」と一言でまとめても、困りごとは一人ひとり違います。
また、複数の特性が重なって現れることもあります。
注意欠如・多動症
忘れ物、提出物、注意の切り替え、待つこと、衝動的な行動などで困ることがあります。
注意や失敗が積み重なると、学校への苦手意識につながる場合があります。
自閉スペクトラム症
見通しの持ちにくさ、対人コミュニケーション、強いこだわり、感覚刺激などが学校生活の負担になる場合があります。
予定やルールを分かりやすく示すことで楽になる子もいます。
学習障害
全般的な知的発達とは別に、読む・書く・計算など特定の学習に大きな困難が現れることがあります。
ICTや教材、課題量などの調整が助けになる場合があります。
学校や保護者が、子どもの様子だけから医学的な診断をすることはできません。
「ADHDっぽい」「ASDっぽい」とラベルを先に決めるより、まず「どんな場面で、何に困っているか」を整理することが支援の第一歩です。
小学生と中学生では、不登校につながる背景も変わる
文部科学省の2026年調査では、「発達障害のある児童生徒等」として集計された各区分で、中学校の不登校率が小学校の3倍以上でした。
発達段階や学校の仕組みが変わることで、困りごとの現れ方も変わります。
- 教室の音や人数がつらい
- 一斉指示についていけない
- 切り替えに時間がかかる
- 友達との遊びのルールが難しい
- 読み書きや宿題が極端につらい
- 登校前の腹痛・頭痛・泣くなどが増える
本人が困りごとを十分に言葉にできず、「学校嫌い」「行きたくない」という表現だけになる場合もあります。
- 教科担任制で先生ごとにルールが変わる
- 定期テストや提出物が増える
- 人間関係が複雑になる
- 集団内で「周りと違う」ことを意識しやすくなる
- 苦手を隠して頑張り続ける
- 進路への不安が強くなる
小学生の頃は何とか合わせられていた子が、中学校で急に疲れ切ってしまうケースもあります。
発達障害は親の育て方・家庭環境が原因?
発達障害を「親の育て方が原因」と考えるのは適切ではありません。
政府広報は、発達障害について脳の働きの違いが関係しており、「本人の努力が足りない」「親のしつけに問題がある」というものではないと説明しています。
文部科学省も、LDについて環境的要因が直接の原因となるものではないと定義しています。
不登校になったときに「私の育て方が悪かった」と保護者だけが責任を背負う必要はありません。
家庭でできる工夫はありますが、それは「親が原因だから直す」という意味ではなく、子どもが安心できる環境を一緒につくるためのものです。
「発達障害かも」と思ったら、診断を受けないと学校で支援されない?
医学的な診断がなくても、教育的な支援を相談することはできます。
文部科学省の教育支援体制整備ガイドラインでは、医師による障害の診断がなければ特別支援教育を行えない、というものではないと明記されています。
学校では診断名だけでなく、本人が実際にどんな学習上・生活上の困難を抱えているのかを踏まえて支援を検討することが重要です。
「診断がつくまで何もできない」ではありません。
音がつらい、板書が難しい、一斉指示が分かりづらい、教室にいるだけで疲れるなど、具体的な困りごとから学校へ相談して大丈夫です。
不登校になったとき、親ができる5ステップ
「発達障害だから何とかしなきゃ」と急ぐより、まず今の子どもの状態を整えます。
- まず休める状態をつくる 登校できるかどうかより、睡眠・食事・表情・身体症状などを確認します。疲れ切っている時期は、回復を優先します。
- 「どこがつらいか」を具体化する 「学校そのもの」ではなく、教室、授業、音、人間関係、提出物、先生など、負担になる場面を分けて考えます。
- 学校へ環境調整を相談する 別室、座席、課題量、ICT、予定の見える化、登校時間など、本人に合う配慮を相談します。
- 一人の担任だけで抱えない 特別支援教育コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラー、管理職などにもつなぎます。
- 学校だけで難しければ、学ぶ環境を広げる 教育支援センター、通級、フリースクール、オンラインなども含めて「今の子に合う場所」を探します。
学校には何を伝える?そのまま使える相談文例
「発達障害だと思うので配慮してください」だけでは、学校側も何を変えればよいか判断しづらい場合があります。
困っている場面+家庭で見えている変化+相談したい調整をセットで伝えると話が進みやすくなります。
いつもお世話になっております。
最近、本人が「教室の音がつらい」「先生の指示を一度で理解するのが難しい」と話しており、登校前に腹痛を訴えることが増えています。
家庭では、静かな場所で一つずつ説明すると取り組めることが多いため、学校での様子も教えていただけますでしょうか。
可能であれば、別室の利用や指示を紙でも示すことなど、本人が負担を減らして過ごせる方法を一緒に相談させてください。
診断名を証明することより、「何に困っていて、何があるとできるか」を共有する方が、具体的な支援につながりやすくなります。
通常級・通級・支援級・学校外の学び|どれを選べばいい?
「発達障害なら支援級」「不登校ならフリースクール」と一つに決める必要はありません。
本人の困りごと、得意、体調、人間関係、学校側の支援体制などによって、合う環境は変わります。
| 選択肢 | 特徴 | 向いているケースの例 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| 通常の学級 | 在籍学級で合理的配慮や個別の支援を受ける | 環境調整によって集団参加が可能な場合 | 座席・課題・ICT・別室など何が可能か |
| 通級による指導 | 通常級に在籍しながら、一部の時間に個別・小集団で指導 | 特性に応じた専門的な指導が必要な場合 | 対象・頻度・通級先・時間割 |
| 特別支援学級 | 少人数の学級で特性に応じた教育を受ける | より継続的な個別支援が必要な場合 | 交流学級との関わりや支援内容 |
| 校内別室 | 在籍校の教室以外で過ごす | 学校には行けるが教室が大きな負担の場合 | 利用時間・学習方法・支援する職員 |
| 教育支援センター | 自治体が設置する学校外の公的支援 | 教室から距離を取りながら人や学習につながりたい場合 | 対象年齢・利用頻度・出席扱い |
| フリースクール・オンライン | 民間の多様な教育・居場所 | 学校とは違う人数・学び方・人間関係が合う場合 | 教育内容・費用・出席認定・本人との相性 |
NIJIN実例|環境が変わると、子どもの姿も変わる
環境とのミスマッチを考えるとき、実際の子どもの変化を見るとイメージしやすくなります。
せり君は小学校入学後、大人数の教室の音や人の多さに圧倒され、不登校になりました。
その後、自分に合う環境を探し続け、NIJINアカデミーで仲間と出会い、現在は「日本一周・世界一周」という夢に向けて計画やプレゼンづくりに挑戦しています。
せり君の体験談を読む →
NIJINアカデミーでは、8〜10人ほどの少人数・異年齢クラスを採用しています。
学年・地域・一律のペースだけに合わせず、授業も月100コマ超から自分で選ぶことで、その子に合う参加方法を探します。
学校との違いを見る →タツロー校長の考え|不登校は「ランの花」
ここからは、文部科学省や医療上の定義ではなく、NIJINアカデミー校長・星野達郎の教育者としての比喩・問題提起です。
タツロー校長
不登校の子を見ていると、「どこでも育てる子」ではなく、自分に合う環境に出会ったときに一気に力を発揮する子がたくさんいます。僕はそれを「ランの花」にたとえています。
ランは、どんな環境でも同じように育つ植物ではありません。
温度、湿度、光、土など、その植物に合う条件があります。
子どもについても、今いる場所でうまくいかないからといって、「能力がない」「努力が足りない」とは限りません。
大人数の教室では話せなくても、少人数なら話せる。
紙のテストでは力を出せなくても、ものづくりなら何時間でも集中できる。
同学年の集団では疲れるけれど、異年齢なら自然に関われる。
環境が変わることで、その子の見え方そのものが変わることがあります。
「ランの花」は医学的な説明ではなく、環境との相性を考えるための教育上の比喩です。
発達障害の医学的な定義や支援については、公的資料や医療専門職の判断と分けて考えてください。
環境を変えることは「逃げ」ではない
子どもが不登校になると、
「ここで逃げたら、この先も逃げ続けるのでは」
と心配になる保護者もいます。
しかし、環境を変えることと、課題から逃げることは同じではありません。
文部科学省の2026年調査でも、発達障害のある児童生徒等の不登校率と統計的に関連していた支援として、
- 通常学級で合理的配慮を組織的に検討する
- 校内委員会やケース会議を機能させる
- 学校と保護者が連携する
- 分かりやすい授業づくりを工夫する
- 本人・保護者と対話しながら合理的配慮を決める
- 進学時に情報を引き継ぐ
などが挙げられています。
つまり、国の調査からも、本人だけを変えるのではなく、学校側の環境や支援方法を変えることが重視されています。
合わない場所から離れることも、合う場所を探すことも、「その子が学び続けるための調整」です。
発達障害と不登校についてよくある質問
まとめ|「この子を変える」より「この子が力を出せる環境」を探す
発達障害と不登校には関連がみられます。
しかし、
「発達障害だから不登校になる」
と考えるのは違います。
学校で困りやすい背景には、
- 一斉指示
- 集団行動
- 感覚刺激
- 学習の得意・苦手の差
- 人間関係
- 時間割やルール
- 注意・失敗経験の積み重ね
など、特性と環境の組み合わせがあります。
だから親にできることも、「頑張って学校へ行ける子にする」だけではありません。
困りごとを具体化し、学校に配慮を相談する。
必要なら別室や通級につなぐ。
それでも苦しいなら、学校の外にも目を向ける。
タツロー校長
合わない場所で咲かないからといって、その子に力がないわけではありません。その子が咲ける環境を、一緒に探してほしいと思います。
「学校に戻れるか」だけではなく、「この子が安心して、自分らしく学び続けられるか」を中心に考えてみてください。
あわせて読みたい
動画でも詳しく|「不登校はランの花」発達障害の子と環境
株式会社NIJIN代表取締役・NIJINアカデミー校長の星野達郎が、発達特性のある子が学校という環境で困りやすい背景と、「子どもを変えるのではなく、環境を選ぶ」という考え方を独自の視点から解説しています。
動画内の「ランの花」という表現は教育者としての比喩です。本記事では、公的資料で確認できる発達障害の定義・不登校データ・学校支援と、星野の教育観を分けて整理しました。
参考・一次資料
- 文部科学省|令和7年度 特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究 報告書
- 文部科学省|発達障害について
- 文部科学省|発達障害の法令上の定義
- 文部科学省|発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン
- 政府広報オンライン|発達障害って、なんだろう?
- 厚生労働省|発達障害者支援施策
- NIJINアカデミー|感覚過敏のまゆちゃんが、自分らしくかわいくいられる社会をつくる
- NIJINアカデミー|学校とのちがい
最終確認:2026年10月
本記事は一般的な教育情報を提供するもので、医学的な診断や個別の治療判断に代わるものではありません。心身の不調が続く場合や発達について医学的な相談が必要な場合は、医療機関等の専門機関へご相談ください。


