- 学びの多様化学校は「不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程」を編成できる学校だということ
- 2026年4月時点で全国84校。国は300校を目標にしていること
- 入学は学力試験ではなく、説明会・体験・面談を経た審査で決まること
- 確認できた公立3校はいずれも、その自治体に住んでいないと入れないこと
- 年度途中の転入枠がある学校もあること
制度と設置校数は文部科学省の公表資料、入学の手続きは八王子市・岐阜市・大阪市が公表している募集案内で確認しています。要件も時期も学校ごとに異なります。必ず志望校の最新の案内を確認してください。
「学びの多様化学校」とは何か
文部科学省の定義はこうです。
「不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校」
「学校教育法施行規則第五十六条等の規定に基づく同令の規定によらないで教育課程を編成することができる場合」
ポイントは「教育課程の基準によらずに、特別の教育課程を編成できる」という点です。通常の学校は学習指導要領に沿って授業時数などが決まっていますが、この指定を受けた学校は、その枠を外して組み直すことができます。授業時数を減らす、時間割を柔軟にする、体験活動を厚くするといった設計が可能になります。
もともとは「不登校特例校」と呼ばれていましたが、令和5年8月31日の文部科学省通知で「学びの多様化学校」に名称が変わりました。古い記事では旧名称で書かれていることがあります。
全国に84校。目標は300校
文部科学省が公表している「学びの多様化学校 設置者一覧」には、2026年4月時点で84校が掲載されています。形態別の内訳は次のとおりです。
| 形態 | 校数 | 内容 |
|---|---|---|
| 本校型 | 32校 | 学校そのものが指定を受けている |
| 分校型 | 12校 | 既存校の分校として設置 |
| 分教室型 | 29校 | 既存校の分教室として設置 |
| コース指定型 | 11校 | 学校内の特定のコースが指定を受けている |
※文部科学省「学びの多様化学校 設置者一覧」(令和8年4月1日時点の資料)より。一覧を集計すると、教育委員会が管理機関のものが59校、学校法人のものが25校、高等学校が14校です(内訳は文部科学省が明示していないため、一覧からの集計値です)。
国の目標は、はっきり数字で示されています。
「将来的には、学びの多様化学校への通学を希望する児童生徒が居住地によらずアクセスできるよう、分教室型も含め、全国で300校の設置を目指しているところです。」
令和5年3月の「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」で掲げられた目標です。84校ですから、達成率はまだ3割弱。「居住地によらずアクセスできるように」という言い方は、裏を返せば、今は居住地によって入れるかどうかが決まってしまうという現状を国自身が認めているということでもあります。
どうやって入るのか——3校の実際
公立の学びの多様化学校の入り方は、一般的な高校入試とはまったく違います。実際に公表されている3校の手続きを見てみます。
八王子市立高尾山学園(東京都八王子市)
対象は「市内在住の小学4年生から中学3年生」で、八王子市立小・中学校等に在籍していること。加えて「年間30日以上の欠席、または保健室や相談室登校、適応指導教室に通っていて、現在もその状態が続いている」ことが要件です。「病気や経済的な理由によって登校できていないというお子さんは除きます」とも明記されています。
流れは、①電話で見学・面談を申し込む → ②面談(スタッフ・子ども・保護者)→ ③適応指導教室への通級や体験交流 → ④転入学審査会 → ⑤転入学手続き。受付は随時です。
岐阜市立草潤中学校(岐阜県岐阜市)
要件は「岐阜市在住の生徒」「不登校状態である者、不登校状態であった者」「学校説明会及び学校体験会に参加し、草潤中学校について理解した上で、保護者の協力のもと、草潤中学校で学ぶ意欲がある児童生徒」の3つ。
募集は「新1年生については10名程度。新2・3年生についてもそれぞれ若干名」。令和8年度入学の実績では、9月に学校説明会 → 11月に学校体験会 → 11月下旬〜12月中旬に個別面談 → 1月中旬に結果通知、というスケジュールでした。説明会への参加が必須という点に注意が必要です。
大阪市立心和中学校(大阪府大阪市)
対象は「大阪市立中学校または義務教育学校後期課程に在籍し、不登校または不登校傾向にあり、心和中学校への登校意欲がある生徒」。要件には「心和中学校で卒業まで学習を進めていくことを希望する者(転学は原則認めない)」「保護者の責任のもと、安全な登下校が可能な者」も含まれます。
受入予定人数を超える場合は生活習慣や面談状況等で判定し、それでも超える場合は抽選と明記されています。後期(10月)転入の枠があり、4月に説明会、5月に面談申込、7月に転入申請という日程でした。
共通しているのは「説明会 → 面談 → 審査」
3校を並べると、構造が見えてきます。
① 学力試験で選ぶ学校ではない。説明会・体験・面談を重ねたうえで、審査会や教育委員会が判定します。テストの点数で決まるわけではありません。
② 説明会への参加が事実上の入口。草潤中学校のように参加を要件に明記している学校もあります。情報が出るのは春から夏。動き出しは早めが必要です。
③ 申込は在籍校を通すことが多い。大阪市立心和中学校は面談申込を在籍校経由と定めています。担任の先生に「学びの多様化学校を検討している」と伝えるところから始まります。
④ 年度途中の転入枠がある。高尾山学園は随時受付、心和中学校は後期(10月)転入の枠があります。「4月まで待つしかない」とは限りません。
住んでいる市区町村の外からは入れるのか
ここが最大の壁です。今回確認できた公立3校は、いずれもその自治体に住んでいる(またはその自治体の学校に在籍している)ことが要件でした。
八王子市立高尾山学園は「市内在住」、岐阜市立草潤中学校は「岐阜市在住」、大阪市立心和中学校は「大阪市立中学校等に在籍」。近隣の市に良い学校があっても、そのままでは入れません。
文部科学省の手引きには、指定校変更や区域外就学といった就学の法的な取扱いについての記述を見つけられませんでした。実際にどう扱われるかは自治体の判断になるため、お住まいの市区町村の教育委員会に直接確認するのが確実です。
国が「居住地によらずアクセスできるよう300校を目指す」と書いているのは、まさにこの制約を解消するためです。裏を返せば、今の時点ではお住まいの自治体に設置されているかどうかが、そのまま選択肢の有無になるということになります。
よくある質問
まとめ
学びの多様化学校は、教育課程の基準によらずに時間割や授業時数を組み直せる学校です。2026年4月時点で全国84校、国は300校を目標にしています。
入り方は学力試験ではなく、説明会・体験・面談を経た審査。そして今のところ、確認できた公立校はいずれも自治体内に住んでいることが要件でした。だからこそ、まずは文部科学省の一覧でお住まいの地域に何があるかを見て、あれば説明会の時期を調べる——この2ステップが最初の一歩になります。
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