結論(早見):子どものスマホ依存は、そこまで心配しなくて大丈夫です。1955年の「悪書追放運動」(漫画)、1957年の「一億総白痴化」(テレビ)と同じ現象が、スマホで繰り返されているだけ。本当に見るべきは利用時間の数字ではなく、「消費するだけの使い方」になっていないか、そして「その子の周りにデジタル機器を良く使いこなす大人がいるか」という環境です。
「うちの子、スマホばかり見ていて大丈夫かな…」「ショート動画中毒になっているんじゃないか」——不登校のご家庭に限らず、ほぼすべての保護者が抱える悩みが、子どものスマホ依存です。
そこで本記事では、「子どものスマホ依存」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、歴史的な視点と最新データから、この問題の本当の正体を徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
歴史は繰り返す。「悪書追放運動」と「一億総白痴化」
新しいメディアが登場するたびに「子どもがダメになる」と騒がれるのは、実は今に始まったことではありません。
1955年、第二次世界大戦後まもない日本では「悪書追放運動」が起こりました。それまで本しかなかった時代に漫画が登場し、「脳をダメにする」として、実際に漫画を焼く事件まで起きたといいます。
その2年後の1957年には、テレビの登場に対して「一億総白痴化」という言葉が広まりました。当時、文化人たちがこぞって「テレビは全員をバカにする」と主張したのです。
タツロー校長「その時代にテレビや漫画で育った世代は、今60代から80代になっています。彼らは全員バカになりましたか?もちろんそうではありません。漫画依存、テレビ依存、そして今のスマホ依存。結局、同じことの繰り返しなんです。」
データで見る、子どものスマホ利用実態
実際のデータを見てみましょう。こども家庭庁「令和7年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、小中高生の1日の平均利用時間は5時間27分(前年度から約25分増加)。学年別に見ると、次のようになっています。
| 学年 | 1日の平均利用時間 |
|---|---|
| 高校生 | 6時間44分 |
| 中学生 | 5時間24分 |
| 小学4〜6年生 | 3時間54分(過去最長) |
利用機器別に見ると、スマートフォンが78.5%でトップ。次いでGIGA端末(学習用パソコン・タブレット)が72.7%、ゲーム機が66.2%、テレビが65.9%と続きます。テレビをリアルタイムで視聴する小中高生は、今や4〜5人に1人程度にとどまっています。



「GIGA端末が配布されてから、利用時間は1日平均で1時間以上増えました。国が主導して端末を配り、『デジタルリテラシーを上げよう』と言っておきながら、使ったら『使いすぎだ』と問題視する。それはおかしな話だと思います。」
「スマホ依存93万人」というデータのからくり
「中高生の約93万人がネット依存の疑い」という数字も話題になっています。これは厚生労働省研究班による全国調査がもとになっているデータですが、しかしタツロー校長は、この調査方法に注意が必要だと指摘します。



「この調査は、アルコールやタバコの依存調査に使われる質問項目に相乗りして作られています。『思っていたより長く使ってしまう』『制限されるとイライラする』といった質問に5問以上当てはまると依存疑いとされますが、正直に言うと私自身も半分以上当てはまります。」
疲れた大人がドラマを見てストレスを発散するのと同じように、子どもがスマホに没頭するのも自然な行動だとタツロー校長は考えています。
不登校の原因は、スマホではない
不登校の理由として「生活リズムの不調(スマホ依存)」が挙げられることがよくあります。しかしタツロー校長は、NIJINアカデミーに入学してきた累計900人以上の子どもたちを見てきた経験から、これを明確に否定します。



「学校しか選択肢がないことによって自分を見失い、生きることを諦めそうになった子どもたちにとって、スマホやインターネットは唯一の逃げ場だったりします。それを取り上げてしまうのは、シェルターのない状態で爆撃を受けさせるようなものです。」
NIJINアカデミーの生徒の中には、不登校で苦しんでいた時期に、ポケモンのアニメやゲームに救われたという子もいます。ポケモンGOの開発者自身も、幼少期に孤独だった経験の中でゲームを通じて友達とつながっていたというエピソードもあり、ゲームやスマホが一概に悪者とは言えないとタツロー校長は語ります。
良い使い方・悪い使い方を分ける「4象限」
タツロー校長は、スマホの使い方を「誰かと/ひとりで」×「つくる・学ぶ/消費する」という2軸で、4つの象限に分けて考えています。
スマホの使い方・4象限
仲間とプロジェクトを企画・制作
一人で集中して作り込む
友達と動画・音楽を楽しむ
一人でショート動画を見続ける
一般的には左上ほど「良い」とされがちですが、優先順位は子どもの状態によって変わります。



「生きることに絶望しかけていた子に、いきなり『誰かと一緒に何かを作れ』と求めるのは、跳び箱23段を飛べと言っているようなものです。すがれるものが一つでもあるかないかで、その子の未来は大きく変わります。」
脳機能を低下させるのは「同じことの繰り返し」
受動的な行動を一定時間続けると脳機能が低下することは、脳科学的にも明らかにされています。しかしタツロー校長は、これはスマホに限った話ではないと語ります。



「同じ学年をずっと担当し続ける学校の先生や、同じ仕事をルーティーンでこなし続ける社会人も、脳機能は低下していくと言われています。問題はスマホそのものではなく、毎日同じことを繰り返すことなんです。」
保護者にできること:環境を用意してあげる
では、子どもが一人で消費するばかりの状態から抜け出すために、保護者は何をすればいいのでしょうか。タツロー校長は、声かけよりも「環境を変えてあげること」の方が本質的に効果があると考えています。



「子どもの周りに、デジタル機器を使って面白いことをしていたり、社会を良くしている大人がいなければ、その力は発揮されようがありません。学校や塾しか知らない環境では、子どもが本来持っている力を発揮できないんです。」
保護者自身がデジタル機器を使いこなす必要はありません。大切なのは、そうした環境を探して用意してあげることです。実際、NIJINアカデミーの生徒たちの多くは「親が見つけてくれた環境に感謝している」と語っているといいます。完璧主義と不登校の関係で解説した「ERN」の考え方とも共通しますが、変えるべきは子どもではなく環境である、という視点は一貫しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どものスマホ利用時間は、何時間くらいが平均ですか? A. 小中高生全体の平均は1日5時間27分です。高校生は6時間44分、中学生は5時間24分、小学4〜6年生は3時間54分(いずれも過去最長)となっています。
Q2. 「スマホ依存93万人」というデータは信用できますか? A. 厚生労働省研究班の調査がもとになっていますが、質問項目はアルコール・タバコの依存調査に相乗りして作られており、「当てはまりやすい」設計になっています。数字だけを鵜呑みにせず、実際の生活への支障(睡眠不足など)の有無で判断することをおすすめします。
Q3. スマホ依存と不登校は関係がありますか? A. タツロー校長は「関係はない」と明言しています。むしろ、学校という環境が合わず苦しんでいる子どもにとって、スマホやゲームが唯一の逃げ場・心の支えになっているケースが多く見られます。
Q4. 子どものスマホ利用を制限した方がいいですか? A. 睡眠時間を大きく削るなど生活に支障が出ている場合は注意が必要ですが、一律に取り上げることは推奨されません。「消費するだけ」の使い方から「つくる・学ぶ」使い方に自然と移行できるような環境を用意してあげることが大切です。
Q5. 保護者ができる具体的な対応は何ですか? A. 声かけや制限よりも、「環境」を変えてあげることが本質的な解決につながります。デジタル機器を良く使いこなす大人や仲間に囲まれる場(NIJINアカデミーのような環境)を探してあげるのも一つの方法です。
まとめ:変えるべきは子どもではなく、環境
子どものスマホ依存は、漫画やテレビが辿ってきた歴史の延長線上にある現象です。データの裏側にある調査方法にも注意が必要で、「使いすぎ=問題」と単純に片づけられるものではありません。



「デジタル機器を使って問題を発見したり、解決したり、誰かと一緒に何かをつくったりする力は、これからの時代にますます重要になります。そういう大人たちに囲まれて育つ環境を、ぜひ用意してあげてほしいです。」
スマホを取り上げることよりも、子どもが「消費する側」から「つくる側」に自然と回っていけるような環境を探してあげること。それが、保護者にできる本質的なサポートです。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
ポケモンサークル部長のリアルなエピソードなど、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!


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