Wスクールとは?転校せずに学校とフリースクールへ通う方法|別室登校との違い・出席扱い

Wスクールのイメージ|学校と自宅、二つの居場所を持つ子ども

Wスクールとは、在籍校に籍を置いたまま、フリースクールやオンラインスクールにも同時に通う通い方のことです。転校も退学もしません。学校に行ける日は学校へ、行けない日は別の場所で学ぶ——その両方を「欠席」にせずに積み上げる方法です。要件を満たせば、学校外での学習は校長の判断で出席扱いになります(令和6年度は42,978人が該当)。分け方は「曜日で分ける/時間で分ける/場所で分ける/教科・行事で分ける」の4つ。費用は無料(教育支援センター)〜月5万円程度が目安です。

この記事では、Wスクールの4つの型と1週間のモデルスケジュール、出席扱いの要件、費用、学校への相談の切り出し方までを、文部科学省の通知と最新の統計にもとづいて具体的に説明します。

目次

先に結論|転校しなくても、学校とフリースクールは両方使えます

  • Wスクールは「転校」ではなく「重ねる」選択。在籍校を辞める必要はありません。
  • 併用でも出席扱いは認められます。令和6年度は学校外の施設で42,978人、自宅のICT学習で13,261人が出席扱いになりました。
  • 型は大きく4つ。曜日で分ける/時間で分ける/場所で分ける/教科・行事で分ける。うちの子はどれから始められるか、で選びます。
  • いちばんの落とし穴は費用でも制度でもなく、「両方に中途半端に合わせて、子どもが疲れる」こと。最初に「減らすもの」を決めてから始めます。
  • 学校に伝えるときは「配慮してください」ではなく、「どうすれば出席扱いにできますか」と聞くほうが前に進みます。

Wスクールとは?学校に行きながらフリースクールにも通うこと

「毎日は無理。でも、学校とのつながりは切りたくない」——そんな声を、にじいろにはたくさんいただきます。学校に行くか、行かないか。その二択で考えると、どちらを選んでも何かをあきらめることになります。Wスクールは、その二択を一度おろして、両方を少しずつ使うという考え方です。

Wスクール(ダブルスクール)とは、在籍する学校に籍を残したまま、フリースクール・オルタナティブスクール・オンラインスクールなど学校外の学びの場にも同時に通うことを指します。「W=Double(二重)」で、どちらか一方に移るのではなく、二つを重ねる点が特徴です。

もともと「ダブルスクール」は、大学生が大学に通いながら専門学校や資格スクールにも通うことを指す言葉でした。近年はそれが小中学生の文脈にも広がり、不登校・行きしぶりの子が学校とのつながりを保ちながら別の居場所を持つ形として使われるようになっています。この記事では後者の意味で解説します。

似た言葉が並ぶので、先に整理しておきます。

呼び名意味・使われ方
Wスクール/ダブルスクール在籍校+学校外の学びの場を並行して利用すること。この記事での主題
併用通学同じ意味。学校や自治体の書類ではこちらの表現が使われることが多い
ハイブリッド通学スクール側の呼び方。オンラインとリアル教室を組み合わせるコース名として使われる
部分登校・別室登校在籍校の「中」で通い方を調整する形。Wスクールと組み合わせることが多い

つまり、Wスクールは新しい制度ではありません。既にある制度(出席扱い・別室登校・フリースクール)を、子どもに合わせて組み替えた通い方の名前です。だからこそ、特別な申請書があるわけでもなく、家庭ごとに形が違います。

別室登校・保健室登校・部分登校と、何が違う?

「別室登校」「保健室登校」「部分登校」も、毎日フルで教室に通う以外の通い方です。Wスクールと重なるので、先に整理しておきます。

呼び方過ごす場所特徴
別室登校在籍校の相談室・支援教室など校舎には入る。担任や養護教諭とのつながりが保てる。通学の負担は残る
保健室登校在籍校の保健室養護教諭が見守る。受け入れ人数に限りがあり、長期は難しいことも
部分登校在籍校(時間や曜日を限定)給食だけ、午後だけなど。時間割の一部に参加する
Wスクール在籍校+学校外の学びの場学校の外にもう一つ居場所を持つ。学校に行けない日も学びが止まらない

いちばん大きな違いは、「学校の中で調整するか、学校の外にもう一つ持つか」です。

別室登校は、まず試す価値のある選択肢です。移動の負担が増えず、先生とのつながりも切れません。ただし、校舎に入ること自体がしんどい時期には使えません。「別室ならおいでと言われたけれど、校門で足が止まる」——そうなったときに、外側の居場所が要ります。

そしてこの2つは、どちらか一方ではありません。午前は別室登校、午後は自宅からオンライン。これがいちばん多い組み方です。

「別室で過ごすのはずるいのでは」と気にされる方がいますが、そんなことはありません。校内の別室も学校外の施設も、どちらも国が認めた支援の形です。後ろめたく思う必要はまったくありません。

転校しても不登校が続くのはなぜ?

「学校を変えれば行けるようになるかもしれない」——多くの方が一度は考えます。実際、転校して合う環境に出会えた子もいます。

ただ、うまくいかなかったケースには共通点があります。しんどさの原因が、その学校だけにあったわけではなかった、というものです。

Wスクールを考えるきっかけ|転校しても学校に向かえない子どもと寄り添う母親
  • 朝起きられない、身体がつらい(体調)
  • 人の多さや音がつらい(感覚)
  • 一斉授業のペースが合わない(学び方)
  • 集団のなかで気を張り続けて消耗する(特性)

これらは、学校を変えても持ち越されます。転校は環境の総取っ替えなので、当たれば大きいけれど、外れたときのダメージも大きい。新しい学校でもう一度つまずくと、「どこに行っても同じだ」と本人が思ってしまうことがあります。

Wスクールは、ここが違います。在籍校をそのまま残して、外側に一つ足すだけなので、合わなくても失うものがありません。元に戻せばいいだけです。低いリスクで試して、うまくいったら少しずつ比重を移していく——その順番が取れます。

転校を決めるのは、Wスクールを試してからでも遅くありません。

なぜいま増えているのか|数字で見る背景

令和6年度の文部科学省の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人(小学校137,704人、中学校216,266人)で、12年連続の増加となりました。一方で、増加率は2.2%と鈍化し、新規の不登校児童生徒数は9年ぶりに減少しています。

同時に、「学校を離れる」以外の道が急速に整ってきました。

項目(令和6年度)人数
小・中学校の不登校児童生徒数353,970人
学校外の機関等での学習を出席扱いにした人数42,978人
自宅でのICT学習を出席扱いにした人数13,261人
欠席中の学習の成果を成績評価に反映した人数81,467人

国の方針も「学校に戻すこと」だけをゴールにしていません。令和5年3月に示されたCOCOLOプラン(誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策)では、学びの多様化学校や校内教育支援センターの設置が進められ、子どもが「学校以外でも学べる」前提が制度側にも入りました。

Wスクールは、この変化の受け皿として現実的に選ばれている形です。詳しい制度の中身は不登校の「出席扱い」完全ガイドにまとめています。

Wスクールの4つの型|わが子はどれから始められる?

「併用」と一口に言っても、分け方は一つではありません。実際に選ばれている型は、大きく4つです。

① 週1だけ学校、あとはフリースクール(曜日で分ける)

いちばん多い形です。週1〜2日は学校、残りはフリースクールやオンラインスクール。あるいはその逆。予定が固定されるので、子どもも先生も見通しが立てやすいのが利点です。「火曜と金曜は学校の日」と決まっているだけで、朝の攻防が減ったという声は少なくありません。

② 午前中だけ学校に行く、午後は家で(時間で分ける)

午前は在籍校の別室(相談室・保健室など)で過ごし、午後は自宅からオンラインスクールに参加する。あるいは午前は自宅で学習し、給食や午後の授業だけ学校に行く。起立性調節障害など、体調に時間帯の波がある子と相性がいい型です。

③ 学校には行かず、フリースクールとオンラインで(場所で分ける)

在籍校には行かず、通える距離のフリースクールとオンラインスクールを組み合わせる形。「人と会う日」と「家から出ない日」を分けられるので、外出そのものに負荷がある時期に機能します。家にいる日を家庭学習で組み立てるなら、ホームスクールという考え方も参考になります。ただしオンライン中心に寄せると学習の遅れや社会性が気になってくるので、弱点を先に知ったうえで組んでください。籍は在籍校に置いたままなので、体調が戻ったときに学校側の受け皿が残ります。

④ 給食だけ、行事だけ行く(教科・行事で分ける)

理科の実験、音楽、運動会、修学旅行など、子どもが「これなら出たい」と言うものだけ在籍校に参加し、それ以外は学校外で学ぶ形。参加のハードルは高めですが、クラスとの関係を細く保ちたい場合に効きます。

向いている子気をつける点
① 曜日で分ける見通しがあると動ける子「行く日」が固定されるとプレッシャーになることも
② 時間で分ける午前/午後で体調の波がある子移動と切り替えの負荷。予定を詰め込みすぎない
③ 場所で分ける外出そのものに負荷がある子在籍校との接点が細るので連絡の設計が必要
④ 教科・行事で分ける好きなことなら動ける子単発参加は当日の体調に左右されやすい

どの型でも共通しているのは、「学校の時間割に子どもを合わせる」のではなく、「子どもの動ける条件に合わせて枠を切る」という考え方です。

Wスクールの1週間|3つのモデルスケジュール

「実際どんな一週間になるの?」がいちばんイメージしづらいところなので、よくある組み方を3つ挙げます。そのまま真似する必要はありません。枠の切り方の見本として見てください。

A. 学校を細く残す型(週2日登校+オンライン)

午前在籍校(別室)自宅・休息オンライン授業自宅・休息在籍校(別室)
午後帰宅オンライン授業オンライン授業自由学習帰宅

登校日を火・木ではなく月・金に置いているのは、週明けと週末に予定を固定すると生活リズムが崩れにくいためです。中日は意識的に空けます。

B. 体調の波に合わせる型(午前と午後で分ける)

午前自宅・休息自宅・休息自宅・休息自宅・休息自宅・休息
午後オンライン授業フリースクール通所オンライン授業フリースクール通所オンライン授業

起立性調節障害など、朝が極端につらい子に向く型です。午前をまるごと諦めるのがポイントで、中途半端に「10時には起こす」をやらないほうが結果的に続きます。

C. 外出の負荷を下げる型(通所とオンラインを分ける)

午前オンライン授業フリースクール通所オンライン授業自宅・休息オンライン授業
午後自由学習フリースクール通所自由学習自宅・休息在籍校(放課後に担任と面談・月1回)

在籍校との接点を「月1回・放課後15分の面談」だけに絞った形です。接点が細くても、途切れていなければ出席扱いの相談は進められます。

どの型でも、最初の1か月は予定の7割が実行できれば上出来だと考えてください。埋まらない日があることを前提に組むのが、続けるコツです。

Wスクールのメリット

  1. 籍を残せる。転校や退学の手続きをせずに始められます。合わなければ元に戻すのも簡単です。
  2. 「行けた日」が積み上がる。ゼロか100かではなくなるので、子ども自身の「今日は行けた」という感覚が戻ってきます。
  3. 学習の空白が埋まる。学校を離れている期間の学びを、フリースクールやオンラインが引き受けます。出席扱いや成績評価につながる場合もあります。
  4. 相談先が二つになる。担任だけに頼らずに済むので、保護者の孤立が減ります。これは見落とされがちですが、続けるうえで大きい要素です。
  5. 進路の選択肢が狭まらない。中学卒業後の進路を考えるとき、在籍校の記録と学校外での学びの記録の両方を持てます。
Wスクールで大切なこと|荷物を減らして負担を分散する

つまずきやすいポイントと、その対策

いい面だけ書いても役に立たないので、実際に起きやすいことも正直に書きます。

起きやすいことなぜ起きるか手を打つなら
子どもが両方で疲れきる学校の課題と、スクールの活動を両方こなそうとする始める前に「減らすもの」を決める。宿題の量、参加コマ数を先に削る
学校との連絡が細くなる担任が子どもの様子を見る機会が減る月1回・15分の情報共有を先に約束しておく。長くしないのがコツ
費用が想定より膨らむ交通費・教材費・イベント費が積み上がる月額以外の費用を入会前に必ず確認。自治体の補助金も調べる
「どっちつかず」と言われる周囲がこの通い方を知らない「在籍校に籍を置いたまま、学校外の学習も併用しています」と一文で説明できるようにしておく
出席扱いにならなかった事前の相談・連携の手順を踏んでいなかった始める前に校長・担任に相談する。事後申請は通りにくい

とくに1つめは頻度が高いです。Wスクールは「二倍やる」ことではありません。一つ分の負荷を二か所に分散させる設計だと考えてください。

Wスクールの出席扱い|学校・フリースクール・家庭の三者連携

フリースクールは出席扱いになる?文部科学省が示した要件

「両方に通っていると、どっちつかずで出席扱いにならないのでは」と心配される方がいますが、そんなことはありません。根拠になっているのは令和元年10月25日・元文科初第698号「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」で、学校外の施設での相談・指導も、自宅でのICT等を活用した学習も、要件を満たせば校長の判断で指導要録上の出席扱いにできます。

ざっくり言うと、要件の芯は3つです。

  1. 保護者と学校の間に十分な連携・協力があること
  2. 利用する施設・学習内容が、在籍校の教育課程に照らして適切であること
  3. 校長が子どもの学習状況を定期的に把握していること(訪問・面談・報告など)

さらに令和6年8月29日・6文科初第1126号の通知により、欠席中の学習の成果を成績評価に反映することも明確に位置づけられました。出席扱いと成績評価は別の制度なので、片方だけ認められることもあります。

要件の詳細・7つのステップ・実際に認められなかった事例は不登校の「出席扱い」完全ガイドに、学校へ出す依頼文の文例は出席扱いの申請の流れとそのまま使える依頼文にまとめています。あわせて、出席扱いが認められると通学定期券が使えるようになるケースもあるので、交通費が気になる方は確認してみてください。

学校に行かない日の勉強はどうする?

いちばん心配されるのがここです。結論を言うと、学年相当の内容を全部やろうとしないほうが、結果的に進みます。

順番があります。

  1. まず生活のリズム。起きる時間と寝る時間が戻らないうちは、勉強は積み上がりません。ここを飛ばさないでください。
  2. 次に、得意な教科を1つだけ。苦手から手をつけると、勉強そのものが嫌になります。好きなものから戻すのが鉄則です。
  3. 最後に、穴の空いた単元だけ。学年をさかのぼって、つまずいたところを拾います。AI型のドリル教材は、この「どこでつまずいたか」を見つけるのが得意です。

フリースクールやオンラインスクールを使うと、この設計を一緒に考えてもらえます。家庭だけで抱えると、親が先生役になってしまい、勉強より先に親子関係のほうが消耗します。教える役は、外に出してしまってかまいません。

なお、欠席中に進めた学習の成果は、在籍校の成績評価に反映してもらえる場合があります。令和6年度は81,467人が実際に反映されています。

費用はいくら?フリースクール・オンライン・教育支援センターの相場

Wスクールでいちばん現実的な壁は、実はここです。目安を整理します。

学びの場費用の目安(月額)
教育支援センター(適応指導教室)無料(公的機関)
民間フリースクール(通所型)30,000〜50,000円程度
オンラインスクール10,000〜30,000円程度
学びの多様化学校(公立)公立校と同等
自治体の補助金月10,000〜20,000円程度を補助する自治体あり

※金額は施設・通う頻度・コースによって大きく変わります。必ず各施設で最新の金額をご確認ください。

費用を抑えたい場合、まず教育支援センター(適応指導教室)を確認するのが定石です。無料で、在籍校との連携実績も豊富です。そのうえで足りない部分を月1万円台から使えるオンラインスクールで補うと、月の負担を大きく下げられます。お住まいの自治体に補助制度があるかはフリースクールの助成金・補助金で確認してください。

Wスクールの相談|担任と保護者が学習の様子を共有する面談

学校にどう伝える?|相談の切り出し方

Wスクールを始めるとき、最初の相談の仕方で結果がかなり変わります。ポイントは、お願いではなく相談の形にすることです。

  1. 目的を先に言う。「学校を辞めたいのではなく、籍を置いたまま学べる時間を増やしたい」と最初に伝えます。ここを誤解されると話が進みません。
  2. 具体的な場所と内容を出す。「◯◯というフリースクールに週2日、9時から14時まで通います。学習内容は◯◯です」と、施設名・頻度・時間・内容をセットで。
  3. 「配慮してください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞く。判断するのは校長です。学校側が動きやすい問い方をします。
  4. 記録に残す。相談日・話した相手・決まったことをメモし、可能ならメールでも一度送っておきます。

伝え方の例文です。そのまま使えます。

「いつもお世話になっております。◯◯の母です。◯◯は学校に籍を置いたまま、体調に合わせて学べる時間を増やしたいと考えています。◯◯というフリースクールに週2日通うことを検討しており、学習内容は◯◯です。出席扱いとしていただくために、学校側にどのような資料や手続きをご用意すればよいでしょうか。一度ご相談のお時間をいただけませんか」

Wスクールを支える人たち|家族と支援者が一緒に過ごす様子

ひとりで抱えないで|相談できる窓口

Wスクールを組むかどうかの前に、保護者自身が相談できる先を持っておいてください。学校とのやりとりが続くと、子どもより先に親のほうが消耗します。

相談先できること
在籍校の担任・スクールカウンセラー校内での配慮、別室登校の相談、出席扱いの入口
教育支援センター(適応指導教室)無料で通える学びの場。在籍校との連携実績が豊富
教育センター(自治体)保護者・学校関係者の相談を受け付ける公的窓口
児童相談所・児童家庭支援センター18歳未満の子どもとその家族の相談全般
発達障害者支援センター特性についての相談
ひきこもり地域支援センター家から出ない時期が長くなってきたときの相談先

窓口の一覧は、厚生労働省の「いじめや不登校、ひきこもりなどの相談窓口」にまとまっています。夜中にどうしようもなくなったときのために、「まもろうよ こころ」には24時間の電話・SNS相談があります。お子さんのことではなく、ご自身のことで使ってかまいません。

世界ではどうしている?イギリスの「フレキシスクーリング」

学校とそれ以外を組み合わせる通い方は、日本だけの苦しまぎれの工夫ではありません。

イギリスにはフレキシスクーリング(flexi-schooling)と呼ばれる形があります。子どもは学校に籍を置いたまま、週のうち何日かを家庭での教育にあてる。この取り決めはイギリス教育省の家庭教育ガイダンスでも扱われていて、正式な「フルタイムの教育」として認められています。ただし校長の裁量によるもので、保護者が権利として請求できるものではありません。

おもしろいのは、日本との違いです。イギリスでは、家庭で学んでいる時間は出席ではなく「欠席」として記録されます。それでも教育としては認められる。一方で日本は、要件を満たせばその時間を「出席」として記録できます。記録の扱いだけを見れば、日本の出席扱い制度のほうがむしろ手厚いのです。

こうした制度の根っこには、子どもの権利条約の考え方があります。第28条が保障しているのは「学校に行くこと」ではなく、教育を受けることです。第29条は教育の目的を、子どもが自分のもっている能力を最大限のばすことだと定めています。

学校に通うことは、その目的をかなえるいちばん代表的な方法であって、唯一の方法ではない。Wスクールという通い方は、この順番を思い出させてくれます。

始める前に決めておきたい3つのこと

  1. 「減らすもの」を先に決める。増やす前に、宿題・習い事・参加コマ数のどれを削るかを決めます。これをやらないと、ほぼ確実に子どもが疲れます。
  2. やめる基準を決めておく。「朝、二週続けて起きられなくなったら見直す」など、続けるかどうかの判断基準を最初に言葉にしておくと、迷いが減ります。
  3. 子ども本人に選ばせる。曜日でも時間でも、どこを学校にしてどこを外にするかを本人に決めてもらいます。決めた本人でないと、続きません。

にじいろが大切にしていること

学校に行けるようになることは、ゴールの一つであって、唯一のゴールではありません。にじいろが大事にしているのは、その子が安心して過ごせる時間を、一日のなかにどれだけ増やせるかです。Wスクールは、そのための道具の一つにすぎません。うまく回らなければ、型を変えればいい。合わなければ、やめてもいい。子どもが「今日はここにいてよかった」と思える場所を、一つずつ足していけば十分です。

NIJINアカデミーの様子|学校と、どう組み合わせるか

にじいろを運営する株式会社NIJINは、不登校の小中学生のためのオンラインフリースクール「NIJINアカデミー」を運営しています。現在900名を超える子どもたちが通っています。通い方はメタバース通学リアル通学の2つで、どちらもWスクールとして学校と組み合わせられます。ここでは「実際どんな場所なのか」を、できるだけそのままお伝えします。

メタバース通学の1日

自宅からクリック一つでメタバース校舎に入り、こんな一日を過ごします。

時刻内容
9:00朝学習|AI学習ドリル「navima」や探究活動に、それぞれのペースで取り組む
10:00ホーム体育|画面ごしにみんなで体を動かして、一日のスイッチを入れる
11:00クラス会議|企業や社会とつながるプロジェクトに挑戦する
13:00オンライン授業|月100コマ以上が受け放題。対話しながら学ぶ
15:00サークル・実行委員|行事もサークルも、子どもたちがゼロから創る
Wスクールのメタバース通学|自宅からタブレットでオンライン授業に参加する小学生

Wスクールとして効いてくるのは、授業が「受け放題」で、出るコマを自分で選べるという点です。学校に行けた日は夕方のサークルだけ、家にいる日は朝からフル参加、というふうに、その日の残り体力に合わせて出方を変えられます。

リアル通学の日

リアル教室は全国42か所に広がっています(2026年8月時点)。教室ごとに特色のある“特化型”になっていて、地域の大人や、同じ境遇の友達と直接会える場です。家から出られる日はリアル通学、しんどい日はメタバース通学、とその日のコンディションで選べるのが特徴です。

Wスクールのリアル通学|NIJINアカデミーのリアル教室で作品づくりに取り組む子ども

ここが、学校を含めて三択にできるところです。「今日は学校」「今日はリアル通学」「今日はメタバース通学」——どれを選んでも、その日は家でひとりきりにならない。Wスクールで組むときに、この選択肢の多さがそのまま余白になります。

学校とどう組み合わせる?よくある3パターン

実際にご家庭が選んでいる組み方は、大きく3つです。記事の前半で紹介した「4つの型」と、そのまま対応しています。

① 学校に行けない日だけ、メタバース通学する

基本は在籍校に通い、行けない日をメタバース通学で埋める形。その日を欠席のままにせず、出席扱いの相談材料にできるのがねらいです。朝になってみないと分からない、という波のある子と相性がいい組み方です。

② 基本はNIJINアカデミーで過ごし、学校行事のときだけ登校する

平日はアカデミーで過ごし、運動会・修学旅行・音楽会など、本人が「これは出たい」と言う行事のときだけ在籍校へ行く形。教室に毎日入るのはつらいけれど、クラスとの縁は切りたくないという子に向きます。前半の「教科・行事で分ける型」です。

③ 曜日を決めて、学校に行く日とアカデミーの日を分ける

「月・木は学校、それ以外はアカデミー」というように、週の予定を先に固定する形。見通しが立つので、本人も担任も動きやすいのが利点です。学校・家庭・アカデミーの三者で同じ予定表を共有できます。

組み方向いている子学校との関係
① 行けない日だけメタバース通学日によって体調・気分の波が大きい子在籍校が主。欠席日を学びで埋める
② 行事のときだけ登校教室はつらいが、行事には出たい子アカデミーが主。籍と関係は残す
③ 曜日で分ける見通しがあると動ける子週単位で半々。予定を三者で共有

どれも、始めてから変えて構いません。①で慣らして③に移る、③がしんどくて②に落ち着く、という動き方が普通です。

費用

項目金額(税込)
メタバース通学月額25,443円
リアル通学(リアル教室)月額16,500円〜(メタバース通学に加えて)
入会金33,000円(初月のみ)

リアル通学は、通う教室によって金額が変わります。在籍校との連携や、出席扱いに必要な手続きのサポートも行っています。この記事の前半で書いたとおり、出席扱いを判断するのは在籍校の校長です。実績のある施設が学校側とやりとりしてくれるかどうかで、保護者の負担はかなり変わります。入会前の相談は担当の教室長から直接連絡が来て、日程や内容を相談しながら進められます。

NIJIN高等学院(ニジ高)の様子|高校では、Wスクールがむしろ標準

「Wスクールは中学までの話でしょうか」と聞かれることがありますが、逆です。高校段階では、二つの学校に籍を置く形がすでに一般的になっています。

2026年4月に開校したNIJIN高等学院(ニジ高)が、まさにその構造です。ニジ高に通うには通信制高校への出願・入学手続きが別途必要で、高卒資格は通信制高校側で取り、日々の学びと居場所はニジ高で持つ、という二階建てになっています。つまり、入学した時点で全員がWスクールです。

在籍している子たちの様子も、その前提で動いています。中学2年からニジ高に通い始め、N高と併用しながら“1期生”として活動している子。通信制高校に通いながらニジ高でリアルイベントの企画に携わり、大好きな電車の話をしている子。体育教師をめざして、自分で体育祭を企画している子。教育の展示会EDIX2026では、生徒が大学教授と対談する場面もありました。

NIJIN高等学院の様子|生徒が教育イベントの壇上で大人と対談する場面

「学校を一つに絞らなかったから、やりたいことが増えた」——ニジ高の生徒たちの動き方は、Wスクールという通い方が行き着く先を見せてくれます。小中学生のいま併用を選ぶことは、遠回りではなく、この先の進路にまっすぐつながっています。

項目内容
対象新1年生(中学卒業見込み・卒業済み)/2〜3年次の転入・中退者。入学時点で20歳未満
卒業資格提携する通信制高校に別途出願・入学手続きが必要
キャンパスTIBキャンパス/リアル教室キャンパス
授業料398,000円/年(月払い39,800円)※2026年3月時点
その他専任サポートスタッフ 16,500円/月(オプション)、兄弟姉妹割引5,000円
募集通年募集(定員あり)

まずは、見てみてください

文章で読むより、実際の様子を見ていただくのがいちばん早いと思います。入会前の相談だけでも大丈夫です。「うちの子の場合、学校とどう組み合わせられますか」という質問から始めていただけます。

NIJINアカデミー(小中学生)を見てみる
無料の体験・個別相談に申し込む
NIJIN高等学院(高校生)を見てみる

売り込むつもりはありません。合わなければ、この記事で紹介した他の選択肢を試してください。大事なのは、子どもが安心していられる時間が一日のなかに増えることで、その場所がどこであるかは二の次です。

よくある質問(FAQ)

Q. Wスクールをすると、在籍校を辞めることになりますか?
いいえ。在籍校に籍を置いたまま行うのがWスクールです。転校や退学の手続きは不要で、合わなければ元の通い方に戻せます。

Q. 学校の許可は必要ですか?
学校外の学びの場に通うこと自体に、学校の許可は必要ありません。ただし出席扱いにするには校長の判断が必要なので、始める前の相談は必須です。事後の申請は通りにくくなります。

Q. 「ずるい」と言われませんか?
言われる筋合いはありません。学校外の施設での学習も、校内の別室での学習も、文部科学省の通知にもとづいて認められている支援の形です。周囲に説明が必要なときは「在籍校に籍を置いたまま、学校外の学習も併用しています」と一文で伝えれば十分です。

Q. 両方に通うと、子どもの負担が増えませんか?
「二倍やる」形にすると増えます。Wスクールは負荷を分散させる設計なので、始める前に宿題や参加コマ数を減らすことをセットにしてください。

Q. 中学生でも間に合いますか?進路に影響しませんか?
間に合います。令和6年度は81,467人が欠席中の学習の成果を成績評価に反映してもらっています。内申点の扱いは学校によって差があるため、中学3年生の場合はとくに早めに担任・進路指導の先生に相談してください。

Q. 「ダブルスクール」は大学生の話では?
もともとは大学+専門学校などを指す言葉でした。近年は小中学生の「在籍校+学校外の学びの場」の意味でも使われています。学校や自治体の書類では「併用」という表現が使われることが多いです。

Q. 高校生でもWスクールはできますか?
できます。というより高校段階では一般的で、通信制高校に籍を置きながら、日々の居場所や探究活動は別のスクールで持つ形が広がっています。2026年4月開校のNIJIN高等学院も、通信制高校への出願が別途必要な二階建ての仕組みです。

Q. 費用を抑えてWスクールを始める方法はありますか?
教育支援センター(適応指導教室)は無料です。まずここを確認し、足りない部分をオンラインスクールで補うと負担を抑えられます。自治体によっては月10,000〜20,000円程度の補助金もあります。

この記事の内容を確かめるための一次資料

※費用は2026年8月時点の目安です。制度の運用は自治体・学校によって異なるため、最終的な判断は在籍校・お住まいの教育委員会にご確認ください。

目次