こども家庭庁が進める不登校支援 14地域の実践から見る「切れ目ない支援」の現在地

不登校支援の地域連携を示す記事用サムネイル

こども家庭庁は、地域における不登校のこどもへの支援をつなぐため、「地域における不登校のこどもへの切れ目ない支援事業」を進めています。令和8年度は、教育委員会だけでなく、市区町村の福祉・保健部門、医療機関、民間の支援機関などが連携する14地域の取組が示されました。学校に行けない時期の支援を、学校復帰だけに限定せず、休み始め、家庭で過ごす時期、外との接点が少しずつ戻る時期まで切れ目なく考える事業です。

今回、公表された事業の概要

こども家庭庁の公式ページによると、この事業は令和7年度から始まり、自治体における不登校のこどもへの支援を、教育・福祉・保健・医療などの関係機関が連携して行う仕組みとして開発・実証するものです。令和8年度の実施自治体として、旭川市、宮城県登米市、三鷹市、静岡県、浜松市、名古屋市、豊明市、滋賀県、京都府、八尾市、奈義町、宇部市、福岡県、水俣市の14地域が掲載されています。

事業の背景には、不登校のこどもが増える一方、困りごとを抱えていても専門的な支援につながっていないケースがあるという課題があります。こども家庭庁のページは、文部科学省の調査を引用し、令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒が約35万人、専門的な相談・指導等を受けていない児童生徒が約13万人と説明しています。この数字は全国調査の集計であり、個々の家庭の状況や不登校の理由を示すものではありません。人数の大きさを知る資料として確認し、特定の子どもに当てはめて判断しないことが大切です。

令和8年度の事業実施計画には、各地域がどの段階の支援に力を入れるかが整理されています。例えば、休み始めの「休」、家庭で過ごしている時期の「家」、外とのつながりや回復のきっかけをつくる「回」という区分です。実施計画は、各自治体がどのような体制をつくるかを示した資料であり、すでにすべての支援が全国で利用できることや、事業によって不登校が解消されることを意味しません。

なぜ地域でつなぐ支援が必要なのか

不登校の背景は一つではありません。学校での人間関係、学習のつまずき、集団や音への負担、体調、家庭の状況、進路への不安、学校文化との相性など、複数の要素が重なっていることがあります。同じ欠席という結果でも、本人が必要としている支援は異なります。担任との相談だけで解決しやすいケースもあれば、心理、福祉、医療、家庭支援、居場所づくりを組み合わせて考える必要があるケースもあります。

学校の中に相談先があっても、保護者が話を切り出すまで時間がかかったり、学校以外の支援につながる情報を得にくかったりすることがあります。反対に、福祉の窓口につながっていても、学習評価や出席の扱い、在籍校との連携について学校との調整が必要になる場合があります。こども家庭庁の事業は、こうした制度や窓口の境目で支援が途切れないよう、自治体の中に連携の仕組みをつくる点に特徴があります。

ここでいう「切れ目ない」は、こどもを同じ支援に長くつなぎ続けるという意味ではありません。本人の状態や希望に応じて、支援の担当や方法を変えながら、必要な情報が引き継がれるという意味で考えると分かりやすくなります。相談先が変わるときに、家庭が同じ説明を何度も繰り返さなくてよいこと、本人の同意や個人情報の扱いを確認すること、支援が合わないときにやめたり見直したりできることが、継続性の土台です。

「休・家・回」の3段階で考える支援

休み始めの「休」

休み始めの時期は、こども本人も保護者も、何が起きているのか整理しにくいことがあります。朝に起きられない、学校の話をするとつらくなる、体調の訴えが増える、玄関から動けないなど、表れ方はさまざまです。この段階で、理由を一つに決めたり、短期間で登校を結論づけたりすると、本人が相談から離れてしまうことがあります。まず安全と休息を確保し、本人が話せる範囲で状況を聴き、学校と家庭の連絡方法を整えることが大切です。

事業計画には、早期の相談、家庭へのアウトリーチ、医療・福祉との連携、学校との情報共有などを掲げる地域があります。早期支援は、早く登校させるための手段とは限りません。困りごとが大きくなる前に、本人や保護者が相談先を知り、選択肢を検討できるようにする取組です。いきなり面談に行くのが難しければ、電話やオンライン、家庭訪問など、地域が用意する複数の入口を確認できます。

家庭で過ごす「家」

家庭で過ごす期間が長くなると、学習の遅れ、昼夜逆転、きょうだいとの関係、保護者の仕事や生活、医療費や交通費など、学校以外の課題も見えやすくなります。学習だけに焦点を当てると、生活全体の負担が見落とされる場合があります。福祉部門と連携する意味は、家庭の困りごとを「学校に行けるかどうか」だけで評価せず、必要な制度や生活支援につなぐ点にもあります。

学校外の教育支援センターやフリースクール、民間の居場所を利用する場合には、在籍校との連携方法を事前に確認することが重要です。利用日数が出席として扱われるか、学習の記録を誰が作るか、学校の成績や進路にどのようにつながるかは、支援先や学校、自治体の運用によって異なります。「通えば必ず出席扱いになる」「家庭学習なら必ず評価される」と一般化せず、子どもの在籍校に具体的な手続きを確認してください。

つながりを戻す「回」

「回」は、学校への復帰だけを表すものではありません。教育支援センターに行く、医療機関に相談する、オンラインで人と話す、地域の居場所に短時間参加する、興味のある活動から再開するなど、本人が外との接点を少しずつ取り戻す過程を含みます。回復の速度や順序は一人ひとり違い、昨日できたことが今日は難しい場合もあります。

地域の支援者が「次の一歩」を決めるのではなく、本人と相談しながら、負担と安心のバランスを調整することが大切です。参加後に疲れが強く出た場合は、回数を減らす、時間を短くする、オンラインに戻すなど、計画を変えて構いません。支援につながったという事実だけを成果にせず、本人が何を望み、どんな状態であれば続けられるのかを確認します。

14地域の取組に見る共通点

令和8年度の実施計画を見ると、地域によって重点は異なりますが、いくつかの共通点があります。一つ目は、教育委員会だけでなく、市区町村のこども・福祉・保健部門を含めた連携です。二つ目は、支援につながっていない家庭への訪問や相談です。三つ目は、医療機関、大学、フリースクール、地域のボランティアなど、自治体の外にある資源との協力です。四つ目は、支援情報の共有やコーディネートを担う担当者を置くことです。

旭川市の計画では、学校外の居場所、ボランティア、医療・福祉機関などとの連携を含む支援が示されています。宮城県登米市では、教育支援センターの機能や家庭への支援を組み合わせる方向が示されています。三鷹市は、医療・教育に関わるコーディネーターによる相談や連携を計画しています。地域ごとに名称や担当窓口が異なるため、同じ支援が全国共通のサービス名で提供されるわけではありません。

静岡県は専門家の訪問・助言を活用する計画、浜松市は相談や関係機関との連携、名古屋市は小学校低学年からの早期把握や家庭訪問、豊明市は学校・福祉・医療等の連携を示しています。滋賀県、京都府、八尾市、奈義町、宇部市、福岡県、水俣市も、それぞれの地域資源を踏まえた相談、アウトリーチ、居場所、オンライン、進路支援などを組み合わせています。ここで大切なのは、計画の存在を地域の実績と読み替えないことです。

例えば、京都府の計画には、ウェブサイトや生成AIを使った24時間の情報提供・相談の仕組み、義務教育終了後の支援につなげる取組が含まれています。ただし、情報提供の窓口が24時間利用できることと、専門職が24時間対面で相談に応じることは同じではありません。利用できる時間、回答の仕組み、緊急時の連絡先、個人情報の扱いを確認して使う必要があります。オンライン窓口は、対面に行くことが難しい家庭への入口として役立つ可能性がある一方、それだけで全ての課題を解決するものではありません。

医療・福祉・民間との連携

不登校の支援で医療や心理の相談が必要になることはありますが、欠席しているから医療につなげればよい、と単純化することはできません。体調、睡眠、発達、気分の落ち込み、不安、痛みなどが気になる場合は、本人の負担を考えながら、かかりつけ医や自治体の相談窓口に相談します。診断の有無は、支援を受ける権利や本人の価値を決めるものではありません。医療は診断のためだけでなく、身体・心理の状態を確認し、生活の工夫を考えるために利用する場合もあります。

福祉との連携では、家庭の困窮、保護者の就労、きょうだい、養育、障害福祉、子育て支援などが関わることがあります。本人の不登校だけを切り取らず、家庭全体の負担を把握できる窓口があると、保護者が複数機関を転々とする負担を減らせます。一方で、情報共有は本人や保護者に説明し、必要な範囲を確認して進めることが大切です。支援機関の間で情報が共有される場合、何を、誰に、何の目的で伝えるのかを尋ねて構いません。

フリースクールや民間の居場所は、自治体や学校とは異なる特色を持っています。活動内容、開所日、費用、送迎、対象年齢、スタッフ、緊急時の連絡、個人情報、出席・評価に関する学校との連携など、見学や相談の際に確認したい項目があります。こども家庭庁の事業が民間の場と連携することは、全ての民間施設を公的に認証・保証することを意味しません。家庭が実際の運営や契約内容を確かめ、本人に合うかを検討する必要があります。

オンライン相談と情報提供の使い方

オンライン相談は、外出が難しい時期や、対面の窓口に行くことへの緊張が強いときに、最初の一歩になり得ます。文字での相談なら、話すより整理しやすい人もいます。自治体の事業計画には、SNS、ウェブサイト、オンライン相談、大学と連携した個別支援などを検討する地域があります。ただし、サービスの対象、利用時間、予約の要否、回答者、相談の記録、緊急時の対応はそれぞれ異なります。

インターネット上の情報を利用するときは、公式サイトのURL、更新日、対象地域、対象年齢、費用、申込み方法を確認してください。検索結果に出た民間のまとめ記事だけで判断せず、自治体や支援機関の原資料に戻ることが大切です。生成AIなどを使った情報案内についても、表示された情報が個別の診断や緊急対応を行うものとは限りません。危険がある、身体の不調が強い、虐待や暴力の心配があるなど緊急性がある場合は、地域の公的な緊急窓口や医療・警察などに相談してください。

家庭が確認したい相談先と進め方

最初の相談先は、必ずしも一つに決める必要はありません。在籍校の担任や管理職、特別支援教育コーディネーター、教育支援センター、自治体のこども・福祉・保健窓口、医療機関、民間の居場所など、相談しやすい入口を選べます。学校に相談しづらいと感じる場合は、教育委員会や自治体の相談窓口から学校との調整を頼む方法もあります。事業の対象地域でなくても、従来の相談窓口がなくなるわけではありません。

相談前に、子どもが困っている場面、本人が望んでいること、今できること、避けたいこと、体調や睡眠、学校との連絡状況を短くメモすると役立ちます。欠席日数や成績だけでなく、「玄関までは行ける」「電話は難しいが文字なら読める」「人が少ない場所なら活動できる」など、条件を具体的に伝えると支援方法を選びやすくなります。家庭が作った記録は、本人を評価するためではなく、支援者と状況を共有するための材料です。

支援を受けた後は、本人の負担、安心感、睡眠や体調、学習へのアクセス、人とのつながりを確認します。支援が合わない場合に、本人の努力不足と決めず、頻度や場所、担当者、方法を変える選択肢を検討してください。家庭だけで支援計画を背負う必要はありません。自治体のコーディネーターや学校の担当者に、次の見直し日と連絡先を確認しておくと、困ったときに再相談しやすくなります。

学校・自治体に求められる役割

学校には、欠席の背景を決めつけず、本人の安心と学びへのアクセスを支える役割があります。家庭への連絡は、登校を促すためだけでなく、体調や安全の確認、学習情報の提供、支援先の紹介として行うことが大切です。本人が学校の話題を受け止められない時期には、連絡の頻度や方法を調整し、保護者を介した情報提供から始めることも考えられます。

自治体には、事業を実施する地域だけでなく、通常の相談窓口も含めて、住民が自分の地域の支援を見つけられる情報設計が求められます。窓口名だけでなく、対象、時間、費用、申込み、予約、対応言語、オンライン利用の可否、緊急時の連絡先を分かりやすく示す必要があります。学校、福祉、医療、民間のそれぞれが別のページを持っている場合は、担当者同士がつなぎ、家庭がたらい回しにならない工夫が必要です。

支援の記録や効果の確認も、本人を管理するためではなく、支援を改善するために行います。利用件数や相談件数だけでは、本人の安心や生活の変化は分かりません。支援につながりにくい家庭の状況、途中で利用をやめた理由、費用や交通の負担、本人の意見、学校や支援者の負担など、複数の視点から検証することが大切です。事業の実証で得られた知見が、将来、他地域にも生かせる形で公開されることが期待されます。

この事業を読むときの注意点

第一に、14地域の実施計画は全国すべての地域に同じサービスが始まるという発表ではありません。事業実施地域であっても、計画に書かれた取組の開始時期、対象、利用条件は異なります。利用できるかどうかは、自治体や学校の最新案内を確認してください。居住地と在籍校の所在地が異なる場合、どの自治体の窓口が担当するかも、個別に確かめる必要があります。

第二に、事業の計画は成果の証明ではありません。アウトリーチを増やしたから不登校が減る、医療と連携したから学校に戻れる、オンライン相談を使ったから安心できる、といった因果関係は、計画資料だけでは判断できません。不登校の人数や相談件数の変化には、調査方法、認知の広がり、地域の人口、学校の記録方法、家庭の相談行動など、さまざまな要因が影響します。実施後の評価を読むときも、単純な前後比較だけで効果を断定しないことが必要です。

第三に、個別のこどもへの診断や将来予測は、ニュースから導けません。こども家庭庁が示す事業の対象や支援モデルを見て、「うちの子はこの支援が必要だ」「この段階だからこうすべきだ」と決めつけるのではなく、本人の希望と状態を中心に相談してください。支援は試して見直すことができます。休むこと、相談だけにすること、複数の窓口を使うことも選択肢です。

家庭と学校のチェックリスト

家庭が地域の支援を調べるときは、次の項目を確認すると情報を比較しやすくなります。対象となる年齢や居住地、相談できる曜日と時間、予約や費用の有無、本人が同席しなくても相談できるか、訪問やオンラインの選択肢があるか、学校との連携を頼めるか、個人情報をどのように扱うか、緊急時はどこへ連絡するか、という点です。すべてが一度にそろわなくても、分かるところから確認できます。

学校との話し合いでは、連絡の担当者、連絡方法、学習教材の受け取り方、課題の量、評価や出席の確認、教育支援センターなどとの情報共有、見直しの時期を決めておくと安心です。子どもの同意が必要な情報共有については、本人に分かる言葉で説明します。学校側の支援と学校外の支援が別々に進まないよう、保護者が希望すれば関係者会議やケース会議を開けるか尋ねることもできます。

本人に伝えるときは、「この事業があるから行こう」「みんな利用しているから大丈夫」と急かすより、「こういう相談先がある。見学だけでもいい。今は使わなくてもよい」と選択肢として示すことが大切です。本人が拒否した場合も、拒否の理由や負担を確認し、別の方法を探します。支援の目標は、周囲が安心する形に合わせることではなく、本人が安全に生活し、学びや人とのつながりへの道を選べるようにすることです。

困ったときの相談

ご家庭・学校の方へ

お子さんの不登校や学び、生活のことで「どこに相談すればよいか分からない」「学校と支援機関の間をつないでほしい」と感じたら、まずは在籍校、教育支援センター、自治体のこども・福祉・保健の相談窓口のいずれかに、困っている場面を具体的に伝えてみてください。電話が難しい場合は、メールやオンラインの窓口がないか確認することもできます。にじいろでは、不登校・発達特性・特別支援教育・多様な学びについて、公式資料をもとに家庭で確認しやすい形で整理しています。この記事を必要としているご家庭や先生にも共有してください。

一次情報

発表日:令和8年度の実施計画は2026年7月30日付。こども家庭庁の事業ページと実施計画をもとに、地域の支援体制を解説しています。事業の対象、利用条件、支援効果は地域や本人の状況により異なります。