- 調査書の記載項目は都道府県ごとに違い、様式そのものが別物だということ
- 「出欠の記録」を記入している都道府県は37、記入していない都道府県は10あること(文部科学省調査)
- 愛知県・千葉県が、出欠の記録や行動の記録を調査書から削除したこと
- 調査書や指導要録を見られるのか(開示請求の考え方と、判断が分かれてきた経緯)
- 「先生の主観で不利に書かれる」という不安に、どう向き合うか
記載項目は東京都・埼玉県・神奈川県の様式、全国の状況は文部科学省の調査、削除の事例は愛知県・千葉県の公表文書で確認しています。様式は都道府県ごとに異なるため、必ずお住まいの地域のものを確認してください。
調査書には、実際にどんな欄があるのか
調査書は、中学校が作成して志望校に提出する書類です。「内申書」と呼ばれることも多いですが、正式には調査書といいます。
東京都の令和8年度の様式(様式10)を見ると、次の欄があります。
受検番号/氏名(フリガナ)/性別/生年月日/卒業・卒業見込/選抜区分/各教科の学習の記録(9教科それぞれについて「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の観点別学習状況と、5段階の評定)/総合的な学習の時間の内容及び評価/諸活動の記録/中学校英語スピーキングテストの結果/学校名・校長名・記載者氏名・記載年月日。
ここで注目したいのは、東京都の様式には「出欠の記録」も「行動の記録」も「備考」もないということです。「諸活動の記録」も、東京都の作成資料では所見を除いた客観的な記録を記入すると定められています。
一方、埼玉県の様式1には「出欠の記録(欠席日数・主な理由)」と「備考」の欄があります。神奈川県の第11号様式には「行動の記録」があり、出欠は調査書ではなく別の様式(欠席状況証明書)で扱われます。同じ「調査書」でも、県が違えば別の書類だと考えたほうが実態に近いのです。
「出欠の記録」を書かない県が、すでに10ある
文部科学省は毎年、公立高校の入学者選抜について全国調査を行っています。その最新版(令和7年度入学者選抜が対象)から、調査書の記入事項を都道府県数で見ると、次のようになります。
| 調査書の記入事項 | 記入している都道府県数 |
|---|---|
| 各教科の学習の記録 | 47 |
| 総合的な学習の時間の記録 | 43 |
| 特別活動の記録 | 42 |
| 出欠の記録 | 37(記入していない=10) |
| 行動の記録 | 34 |
| 観点別学習状況 | 33 |
| 総合所見及び指導上参考となる諸事項 | 29 |
※文部科学省「高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」より。令和7年度入学者選抜が対象です。
欠席日数が調査書に載らない県が、すでに10あります。また「総合所見及び指導上参考となる諸事項」——いわゆる先生の所見欄——を記入している県も29にとどまります。「先生に何を書かれるか分からない」という不安は理解できますが、そもそも所見欄がない県が18あるということでもあります。
調査書から項目を削る動きが、実際に起きている
愛知県:令和9年度入試から3項目を削除
愛知県は、令和9年度(2027年春)入試から、調査書情報の「性別」「行動の記録」「出欠の記録」を削除すると公表しました。理由も明記されています。
行動の記録について:「学びの多様化が進み、教育支援センター等で学ぶ生徒や、自宅でICT等を活用して学ぶ生徒が増え、中学校において評価することが難しい場合もあります」
出欠の記録について:「学ぶ場についての考え方が変化していることに伴い、出席についての考え方も変化している」
「学校の外で学ぶ子が増えたから、学校の出欠で測るのは無理がある」——県の公文書がそう書いている、という事実は、進路を考えるうえで小さくない意味を持ちます。
千葉県:令和8年度入試から4項目を削除
千葉県は令和8年度(2026年春)入試から、「総合的な学習の時間の記録」「出欠の記録」「行動の記録(第3学年)」「総合所見」を削除しました。理由は「配慮の必要な生徒の心理的負担等とならないよう、調査書の記載項目を精選します」と説明されています。
調査書の中身を見ることはできるのか
結論から言うと、「見られる場合がある」が正確なところです。「必ず見られる」とも「絶対に見られない」とも言えません。
公立学校や教育委員会が持っている個人情報は、個人情報保護法第76条に基づく開示請求の対象になります。個人情報保護委員会のQ&Aにも、未成年者の法定代理人(=保護者)からの開示請求についての項目があります。制度としては、請求できる建て付けになっているということです。
ただし、実際に何がどこまで開示されるかは、自治体ごとの判断に委ねられてきました。学校が保管する原簿である指導要録については、判断が分かれた経緯があります。
| 自治体・答申 | 判断 |
|---|---|
| 中野区 答申第5号(1993年) | 指導要録の全部開示が妥当。「公正な教育への権利の保障という意味合いが存する」 |
| 中野区 答申第12号(2000年) | 在学中の児童本人に対しても、所見欄を含め全部開示すべき |
| 豊橋市 答申第4号(2008年) | 「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄の非開示を妥当と判断 |
また、入試そのものの開示制度もあります。東京都では、受検者本人・保護者が「学力検査等得点表」と「学力検査における答案の写し」の開示を請求できます。ただし東京都の案内には、調査書そのものや調査書点の開示についての記載はありません。
つまり「入試の点数は見られるが、調査書は別の手続き」という構造です。調査書の中身が気になる場合は、学校の設置者(市区町村の教育委員会)に、保有個人情報の開示請求として相談することになります。
それでも不安が残るときに、できること
開示請求は時間もかかりますし、学校との関係を考えると踏み切りにくいこともあります。もっと手前でできることもあります。
① お住まいの都道府県の様式を見る。多くの教育委員会が、実施要綱と一緒に調査書の様式や記入例をPDFで公開しています。「県名 高等学校入学者選抜 実施要綱」で探すと出てきます。欄がないものは、書かれようがありません。
② 三者面談で「何が調査書に載りますか」と聞く。「何を書きますか」ではなく「どの欄がありますか」と聞くと、先生も答えやすくなります。
③ 学校の外で続けてきたことを、記録として残しておく。調査書に載らなくても、自己申告書のような書類で伝えられる県があります。
よくある質問
まとめ
調査書は、都道府県ごとに様式が違う書類です。出欠欄がない県が10、所見欄がない県が18あり、愛知県・千葉県のように項目を削る動きも進んでいます。「何を書かれるか分からない」という漠然とした不安は、お住まいの地域の様式を1枚見るだけで、かなりの部分が具体的な情報に置き換わります。
そのうえで中身を確認したい場合は、個人情報保護法に基づく開示請求という道があります。ただし開示の範囲は自治体の判断によるため、「必ず全部見られる」とは限りません。まずは様式を見て、次に面談で聞いて、それでも必要なら開示を検討する——この順番が現実的です。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 東京都教育委員会「調査書の作成について」「調査書記入例(様式10)」(令和8年度) 作成について/記入例
- 文部科学省「高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和7年度入学者選抜が対象) PDF
- 愛知県教育委員会ほか「調査書情報の変更点」(令和8年4月) PDF
- 千葉県「令和8年度以降の千葉県公立高等学校入学者選抜の改善点について」 ページ
- 埼玉県「令和8年度入学者選抜 様式1・2(調査書)」 PDF
- 神奈川県「調査書作成上の注意」(令和9年度) PDF
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法についてのQ&A(行政機関等編)」 ページ
- 東京都教育委員会「令和8年度 本人得点等の開示について」 ページ
- 中野区個人情報保護審査会 答申第5号・第12号 第5号/第12号
- 豊橋市個人情報保護審査会 答申第4号 PDF
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