- 自己申告書は「欠席の理由や事情を、志望校に伝えるための書類」だということ
- 制度の強さは都県でまったく違い、埼玉県のように選抜方法そのものを変える県もあること
- 東京都の自己申告書は、対象も扱いも要綱に定められていないこと(=加点される制度ではない)
- 神奈川県には自己申告書がなく、別の様式で長期欠席に対応していること
- 何を書けばいいのか、提出はいつ誰に出すのか
制度に関する記述は、各都県教育委員会が公表している入学者選抜の実施要綱・要領・様式と、文部科学省の通知にあたって確認しています。お住まいの地域に同じ制度があるとは限りません。根拠にした資料は記事の最後にすべて並べています。
自己申告書とは——「欠席の理由を、志望校に伝えるための書類」
高校入試の出願書類は、入学願書と調査書が基本です。そこに加えて、志願者本人(と保護者)が自分の言葉で事情を書いて提出できる書類を用意している都県があります。それが自己申告書です。
東京都の場合、実施要綱の細目に次のように書かれています。
「都立高校に理解してほしい事情を説明する必要がある場合、志願者は、自己申告書(様式)を志願する都立高校の校長に提出することができる。自己申告書は、志願者及び保護者が記入し、厳封して在学している中学校の校長に提出する。」
ここで正確に押さえておきたいのは、東京都の自己申告書は「不登校の生徒向けの制度」とは書かれていないという点です。対象を限定しない、誰でも出せる任意の書類として定められています。そして「選抜の資料とする」とも「点数化する」とも書かれていません。出せば加点される、という仕組みではないのです。
それでも意味がないわけではありません。国も、次のように各都道府県に求めています。
「生徒の自己申告書や学校以外の場(家庭におけるオンライン学習を含む。)における学習状況に係る資料等を選抜において適切に勘案したり、不登校生徒が志願しやすいように募集時の内容を工夫したりするなど、配慮を行うことが望まれます。」
(令和8年6月30日 8文科初第882号「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」7(6))
制度の強さは、都県によってまったく違う
同じ「自己申告書」という言葉でも、中身は地域ごとに別物です。首都圏4都県を比べると、その差がはっきりします。
| 都県 | 書類の名前 | 選抜での扱い(公表資料より) |
|---|---|---|
| 東京都 | 自己申告書(様式13) | 「理解してほしい事情を説明する必要がある場合」に提出できる。扱いについての定めは要綱・細目にない |
| 埼玉県 | 自己申告書(様式6) | 「不登校の生徒などを対象とした特別な選抜」の出願書類。第1次選抜で、調査書の学習の記録・出欠の記録を資料に使わない選抜を行う |
| 千葉県 | 自己申告書(様式4) | 「選抜の資料としない」と明記。ただし「提出されたことにより、不利益な取扱いをすることのないよう十分に留意する」とも明記 |
| 神奈川県 | 自己申告書はない | 長期欠席については第7〜9号様式を提出でき、「資料の整わない者として取り扱う」 |
※東京都・千葉県は令和8年度(2026年春)入試、埼玉県は令和8年度実施要項、神奈川県は令和9年度(2027年春)入試の資料に基づきます。年度で変わる可能性があるため、必ず最新版で確認してください。
いちばん踏み込んでいるのは埼玉県
埼玉県には、実施要項に「不登校の生徒などを対象とした特別な選抜」という項目そのものがあります。対象は「中学校在学中に一過性のつまずきなどにより不本意な中学校生活を送った者で、在学中学校長が出願に該当すると認めた者」。この選抜を希望する人が出すのが自己申告書(様式6)です。
県教育委員会のQ&Aによれば、第1次選抜において、自己申告書を提出した人を対象に、調査書の学習の記録および出欠の記録の得点を資料とせず、学力検査の得点などと自己申告書の内容を資料とする特別な選抜が行われます。内申点と欠席日数を計算から外すという、かなり踏み込んだ仕組みです。
千葉県は「資料にしない」と明記している
千葉県の実施要項は、自己申告書について「選抜の資料としない」とはっきり書いています。一見すると冷たく見えますが、同じ文に「提出されたことにより、不利益な取扱いをすることのないよう十分に留意する」と続きます。読んだうえで点数には反映しない、という整理です。県教育委員会は別の文書で、欠席が多い理由を説明するために自己申告書を提出できると案内しています。
神奈川県は別の様式で対応している
神奈川県の実施要領に「自己申告書」という書類はありません。代わりに、長期の欠席について第7号様式(長期の欠席を理由とする選抜方法申請書)・第8号様式(欠席状況証明書)・第9号様式(長期の欠席を理由とする選抜方法の取扱い申請書)が用意されています。高校長が長期欠席者と認めた場合、申請書の記載内容に基づいて「資料の整わない者として取り扱う」とされています。名前は違いますが、目的は同じです。
何を書けばいいのか
様式の欄はシンプルです。東京都の様式13は「1 本人記入欄」「2 保護者記入欄」の2つで、どちらも「高等学校に理解してほしい事柄」を書く欄です。埼玉県の様式6は「特別な選抜を希望する理由」「学校・学科等志願の理由、高校生活への抱負など」「保護者記入欄」に分かれています。
白紙の欄を前にすると手が止まりますが、書く内容は大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
① 何があったのか(事実)。いつからどのくらい学校に行けなかったか。理由は書ける範囲で構いません。診断名や家庭の事情など、書きたくないことは書かなくて大丈夫です。
② その間、何をしていたか。ここがいちばん大事な部分です。教育支援センターやフリースクールに通っていた、家庭でオンライン教材を続けていた、検定を受けた、興味のあることを深めていた——文部科学省の通知が「学校以外の場(家庭におけるオンライン学習を含む。)における学習状況に係る資料等」と書いているのは、まさにここです。
③ これからどうしたいか。その高校を選んだ理由と、入学後にやりたいこと。短くて構いません。
「中学2年の秋から学校に行けない日が続きました。3年生の5月からは市の教育支援センターに週3日通い、国語と数学を中心に学習を進めています。7月には英語検定3級に合格しました。貴校を志望したのは、少人数で学べる環境があると説明会で伺ったからです。入学後は、まず毎日通うことを目標にしたいと考えています。」
——うまく書こうとしなくて大丈夫です。事実と、続けてきたことと、これからの見通し。この3つが伝われば十分です。
いつ、誰に出すのか
自己申告書は出願書類の一つなので、出願の時期に合わせて準備します。東京都の場合、志願者と保護者が記入し、厳封して在学している中学校の校長に提出します。都内の中学校に在学していない人は、中学校長を経由する必要はありません。埼玉県は、在学中学校長を経て志願先の高校長に提出する流れです。
いずれの県も中学校が関わるため、出願の直前ではなく、2学期のうちに進路担当の先生に相談しておくのが現実的です。「うちの県に自己申告書はありますか」「うちの子は対象になりますか」の2つを聞くところから始められます。
よくある質問
まとめ
自己申告書は、調査書だけでは伝わらない事情を志望校に届けるための書類です。ただし「出せば加点される」制度ではなく、埼玉県のように選抜方法そのものを変える県、千葉県のように資料にしないと明記する県、神奈川県のように別の様式で対応する県と、地域差がとても大きいのが実際のところです。
だからこそ、まず確かめるのは「お住まいの都道府県に、その仕組みがあるか」の一点です。あるなら早めに準備し、ないなら別の道(学力検査の比重が高い高校、調査書を使わない選抜)を探す。どちらにしても、確かめてから動くほうが早く落ち着きます。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 東京都教育委員会「令和8年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱の細目(出願書類についての注意事項等)」 PDF
- 東京都教育委員会「志願者が提出する様式について」(令和8年度) ページ
- 埼玉県「令和8年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施要項」 PDF/様式6(自己申告書)/入試Q&A
- 千葉県「令和8年度千葉県公立高等学校入学者選抜(一般入学者選抜)要項」 ページ/令和8年度以降の改善点
- 神奈川県「令和9年度神奈川県公立高等学校入学者選抜実施要領(一般募集)」 PDF
- 文部科学省「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」令和8年6月30日 8文科初第882号 PDF
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