放課後等デイサービスや児童発達支援は、国が決めた「障害福祉報酬」という単価にもとづいて運営されています。その次の改定——令和9年度改定に向けた議論が、いま進んでいます。厚生労働省とこども家庭庁は令和8年8月27日、検討の土台となる「主な論点(案)」を公表しました。この記事は、その資料と、同じ会議に出された統計資料を読んで、いま何が議論されているのかを整理したものです。制度と数字の話であり、お子さんの特性や診断の話ではありません。
1. 何が公表されたのか
令和8年8月27日に開かれた第62回「障害福祉報酬改定検討チーム」で、資料2「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(全10ページ)が配られました。次の報酬改定で何を検討するのか、その項目立てを示した資料です。
この検討チームは、厚生労働省とこども家庭庁が合同で開いているものです。開催要綱によれば、主査は厚生労働大臣政務官、副主査は厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長、副主査補はこども家庭庁長官官房審議官(支援局担当)で、構成員にはこども家庭庁支援局障害児支援課長も入っています。議事は公開とされています。
資料2は、論点を挙げたうえで、末尾にこう但し書きを置いています。
「上記の論点は現時点のものであり、今後議論を進めていく中で変更することがあり得る。」
つまり、ここに挙がっているのは「これから議論する項目」であって、決まったことではありません。
2. いつ決まって、いつから変わるのか
令和8年4月28日の第55回に出された資料5「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討の進め方について(案)」に、工程表が載っています。
| 時期 | 予定されている内容 |
|---|---|
| 令和8年4月 | 令和9年度報酬改定の検討開始 |
| 令和8年6〜7月 | 関係団体ヒアリング |
| 令和8年8月 | 関係団体ヒアリングの意見まとめ、論点整理 |
| 令和8年9月〜 | 各サービスの報酬等の在り方について検討 |
| 令和8年11月 | サービス横断的な報酬等の在り方について検討 |
| 令和8年12月 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめ/令和9年度政府予算編成 |
| 令和9年2月 | 障害福祉サービス等報酬改定案のとりまとめ |
| 令和9年3月 | 関係告示の改正、通知等の発出 |
| 令和9年4月以降 | 改定後の障害福祉サービス等報酬の適用 |
出典:第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料5(令和8年4月28日)。工程表は「案」として示されたものです。なお実際の関係団体ヒアリングは第56回(令和8年6月15日)から第61回(令和8年8月3日)まで行われました。
中身が固まるのは令和9年2月、正式なルールになるのは同年3月の告示改正、実際に適用されるのは令和9年4月以降、という段取りです。いまは「各サービスの報酬等の在り方について検討」の入口にあたります。
第63回 障害福祉報酬改定検討チーム/令和8年9月24日(木)10:00〜12:00。議題は「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(訪問系サービス)」です。YouTubeでライブ配信され、会場での傍聴はありません。資料と配信URLは当日9時45分までに厚生労働省のホームページに掲載される予定と案内されています。
3. 数字で見る、この3年の変化
同じ会議に出された参考資料「障害福祉サービス等の最近の動向(令和8年3月まで)」に、サービスごとの利用人数・事業所数・費用が載っています。数値はすべて「各四半期の3か月分の平均値」=1か月あたりの平均で、出典は国保連データです。
児童発達支援は年度の後半ほど利用人数が増え、4月に大きく減る動きがあります。そのため、ここでは令和5年1〜3月と令和8年1〜3月という、同じ四半期どうし(ちょうど3年差)で比べています。
| 項目 | 令和5年 1〜3月 | 令和8年 1〜3月 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 児童発達支援 利用人数 | 171,310人 | 218,510人 | 1.28倍 |
| 児童発達支援 事業所数 | 11,152か所 | 15,181か所 | 1.36倍 |
| 児童発達支援 総費用 | 192.7億円 | 269.6億円 | 1.40倍 |
| 放課後等デイサービス 利用人数 | 310,859人 | 408,790人 | 1.32倍 |
| 放課後等デイサービス 事業所数 | 19,720か所 | 24,525か所 | 1.24倍 |
| 放課後等デイサービス 総費用 | 394.7億円 | 547.8億円 | 1.39倍 |
| 障害児サービス全体 利用人数 | 488,748人 | 634,413人 | 1.30倍 |
| 障害児サービス全体 総費用 | 616.1億円 | 859.4億円 | 1.40倍 |
総費用は資料の「百万円」表記を億円に換算して表示しています(例:26,956百万円=269.6億円)。倍率は小数第3位を四捨五入。いずれも1か月あたりの平均値です。
3年間の増え方を並べると、次のようになります。
令和5年1〜3月から令和8年1〜3月までの増加率。バーの長さは+40%を最大としたときの比率です。
利用する人も、事業所も、費用も増えています。1人あたりの月額費用も、児童発達支援が112,465円から123,363円へ、放課後等デイサービスが126,970円から133,997円へと上がっています。
障害福祉サービス全体で見ると、資料2は冒頭でこう説明しています。利用者は約170万人、国の予算額は約2兆3千億円で、障害者自立支援法の施行時と比べると約4.5倍。令和6年度の報酬改定(改定率+1.12%)のあと、総費用額は+12.1%の伸び(1人あたり総費用額+6.0%、利用者数+5.8%)となり、令和8年度には臨時の報酬改定も行われました。
4. 国が示した4つの論点
資料2が挙げた論点は、次の4つです。
| 論点 | 資料に書かれている内容(要約) |
|---|---|
| 1. 持続可能なサービス提供体制の確保 | 物価高騰、賃金上昇、支え手が減る中での人材確保、経営の状況を踏まえた対応。他職種と遜色のない処遇改善の実現。介護テクノロジーの活用など生産性向上の取組 |
| 2. 希望する地域等での生活の支援や多様なニーズへの対応 | (1) 地域生活の実現に向けた支援/(2) 多様なニーズへの対応/(3) 障害児支援の質の向上と更なるサービスの充実 |
| 3. サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性の確保 | (1) 事業者の質の確保/(2) 各サービスにおける適正な評価。「メリハリのきいた報酬体系」とすること |
| 4. 地域差や人口減少への対応等 | 国家公務員の地域手当の級地区分見直しを踏まえた、障害福祉分野の地域区分の検討など |
このうち、資料2が「基本的な考え方」として一番前に置いているのは、質の確保の話です。原文を引用します。
「前回の令和6年度障害福祉報酬改定以降、障害者本位ではないサービス提供が行われている事案が相次いで明らかとなり、また、『特段の知識や経験は不要』『利益をあげることができる』として、新規の参入・事業実施等を働きかける例も見られている。十分に質が確保されていないサービスを提供する事業者も参入してきている中で、障害福祉に係る総費用の増加や人材確保の困難さといった課題に拍車がかかっており、令和9年度障害福祉報酬改定に当たっては、必要な支援を行っていない事業者ではなく、質の高い支援の提供にしっかりと資源が用いられるようにする見直しが、制度の持続可能性の観点からも必要不可欠である。」
論点3では、「営利法人を中心に、事業所数や利用者数が大幅に増加しているサービスが見られる」という書き方で、長期化した経過措置への対応も含めて「メリハリのきいた報酬体系とする必要があるのではないか」と述べられています。ただし、この資料に具体的なサービス名は一つも挙げられていません。
5. 障害児支援について、何が書かれているか
障害児支援は、論点2の(3)として1ページを使って書かれています。柱は4つです。
- 障害児支援を支える人材の育成やチーム支援の推進、支援体制の評価の在り方の検討
- 医療的ケア児・重症心身障害児等、支援ニーズの高い児への支援の充実
- 地域全体で障害のあるこどもと家族を支える体制の強化と切れ目のない支援のため、インクルージョンや家族支援の推進、児童発達支援センターの中核機能の更なる強化
- 「今後の障害児入所施設の在り方に関する検討会」報告書で整理された、こどもと家族のウェルビーイングを支える包括的な支援の実現
そのうえで、「想定される検討事項」として次の7つが並んでいます。
| # | 想定される検討事項(原文) |
|---|---|
| 1 | 障害児支援の質の向上のための人材育成、チーム支援の推進及び支援体制の評価の在り方に関する方策 |
| 2 | 児童発達支援センターの中核機能の更なる強化に向けた方策 |
| 3 | インクルージョン及び地域支援・地域連携の推進に向けた方策 |
| 4 | 医療的ケア児・重症心身障害児等の支援ニーズの高い児への支援の充実に向けた方策 |
| 5 | 家族支援の推進及びライフステージを通じた切れ目のない支援の実現に向けた方策 |
| 6 | 障害児入所施設における家庭的な養育環境の推進に向けた方策 |
| 7 | 障害児入所施設における機能強化に向けた方策 |
また論点2の(2)には、「障害児から障害者への移行にあたり、障害児支援施策から障害者支援施策への円滑な接続・移行等を促進するための検討が必要ではないか」という一文があります。18歳を挟んで支援が途切れる問題が、検討事項として明示されています。
6. ★ここは誤解されやすい
(1)「報酬改定」は、利用料が上がる・下がるという話とイコールではありません。障害福祉報酬は、事業所に支払われる公費の単価です。今回の資料2を最後まで読みましたが、利用者負担の仕組みそのものを見直すという記述は見つけられませんでした。
(2) 資料に「放課後等デイサービス」という言葉は一度も出てきません。論点3は「営利法人を中心に、事業所数や利用者数が大幅に増加しているサービス」という書き方で、どのサービスを指すのかは書かれていません。この記事で放課後等デイサービスと児童発達支援の数字を並べているのは、同じ会議の参考資料に載っている統計だからであって、「この2つが名指しされた」という意味ではありません。
(3) 数字は「1か月あたりの平均」です。参考資料の注記のとおり、各四半期の3か月分の平均値です。年間の合計ではありません。
(4) 増え方は、比べる時期で見え方が変わります。児童発達支援は年度の後半ほど利用人数が増え、4月に大きく減ります。4〜6月と1〜3月を比べると、増え方を実際より大きく見せてしまいます。この記事は令和5年1〜3月と令和8年1〜3月という同じ四半期どうしで比べています。
7. いま、できること/しなくていいこと
・会議はYouTubeで公開されています。資料も会議のたびに厚生労働省のホームページに載り、議事録も後日掲載されます。関心のある回だけ見ることができます。
・事業所から「報酬改定で変わるかもしれない」と説明があったときは、それが決まったことなのか、議論の段階の話なのかを確かめてください。工程表のとおりなら、改定案がまとまるのは令和9年2月、告示の改正は同年3月です。それまでは決まっていません。
・いま何か手続きをする必要はありません。受給者証やサービス利用の手続きが、この議論によって変わったわけではありません。
・通っている事業所を変えるかどうかを、いま判断する必要もありません。何がどう変わるかは、まだ決まっていないからです。
8. この記事に書かなかったこと
確認できなかったことは、書いていません。
- 障害児支援がどの回で議論されるのか。第63回(9月24日)の議題は訪問系サービスで、障害児支援を扱う回の日程は、この開催案内には書かれていませんでした。
- 改定率。何%上がる・下がるかは、まだ決まっておらず、資料にも記載はありません。
- 「営利法人を中心に大幅に増加しているサービス」が具体的に何を指すか。資料に記載がないため、推測では書いていません。
- 関係団体ヒアリング(第56〜61回)で各団体が述べた個別の要望。この記事で読んだのは、第62回の資料1・資料2・参考資料、第55回の資料5、第63回の開催案内だけです。
- 利用者負担(自己負担)の見直し。資料2の全10ページを通して、該当する記述を見つけられませんでした。
出典(いずれも一次情報にあたって確認しています)
- 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部/こども家庭庁支援局障害児支援課「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」第62回障害福祉報酬改定検討チーム 資料2(令和8年8月27日・全10ページ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742921.pdf - 同 参考資料「障害福祉サービス等の最近の動向(令和8年3月まで)」(出典:国保連データ/注:値は各3月分の平均値)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001743333.pdf - 同 資料1「『障害福祉報酬改定検討チーム』開催要綱」(平成30年8月13日/令和8年8月20日改正)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742920.pdf - 第62回「障害福祉報酬改定検討チーム」資料(掲載ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75819.html - 厚生労働省「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討の進め方について(案)」第55回 資料5(令和8年4月28日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001696206.pdf - 厚生労働省「第63回障害福祉報酬改定検討チームを開催します」(令和8年9月17日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76246.html - 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」会議一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai_446935_00001.html
※ 資料2と資料5のPDFには、表紙の左上に「2021年4月1日」という日付が印字されていますが、資料の標題にはそれぞれ「第62回(R8.8.27)」「第55回(R8.4.28)」とあり、掲載ページも当該回のものです。本記事はこの回次の日付を公表日として扱っています。
この記事は、制度と統計の話です。お子さん一人ひとりの特性や、診断・療育については書いていません。気になることがあるときは、お住まいの自治体の就学相談窓口、地域の発達障害者支援センター、かかりつけの小児科などにご相談ください。
公開日:2026年9月23日 / 最終更新:2026年9月23日
この記事は、にじいろ編集部が一次情報にあたって作成しています。編集の考え方は編集体制・編集方針をご覧ください。誤りが判明した場合は、記事を書き換えるのではなく、末尾に訂正を追記します。

