「保育園には入れたのに、学童で在宅勤務がひっかかった」——これには理由があります。保育園と学童では、要件の根拠になっている条文が別のことを見ているからです。保育園は「働いているか」を見ますが、学童の根拠条文は「保護者が労働等により昼間家庭にいない」と書かれています。在宅勤務が引っかかるのは、この一語の差です。
ただし実際の利用要件を決めているのは市町村で、国は在宅勤務を対象外とする基準を示していません。在宅勤務でも普通に入れる自治体もあります。この記事では、なぜ引っかかるのかという構造と、自治体に何を聞けばいいのかを整理します。
保育園と学童は、要件の立て方が違います

それぞれの条文を並べてみます。
| 保育園 | 学童(放課後児童クラブ) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5第1号 | 児童福祉法 第6条の3第2項 |
| 条文 | 「一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること」 | 「小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」 |
| 判定しているもの | 働いているか(場所は問うていない) | 家にいないか |
保育園の事由は労働時間で書かれていて、どこで働いているかは書かれていません。だから在宅勤務でも要件を満たします。
いっぽう学童の条文は「昼間家庭にいない」です。自治体が利用要件をつくるときの土台がこの文言なので、在宅勤務がグレーになりやすい構造があります。
ただし、この条文は事業の定義であって、利用要件そのものを定めたものではありません。実際の要件は市町村が決めます。だから「条文がこうだから在宅勤務は入れない」と一般化することはできません。
国は在宅勤務の扱いを決めていません
こども家庭庁の全国調査で分かるのは、利用に係る優先的な取扱いをどんな事由に設けているか、までです。その9つの事由に「在宅勤務」は含まれていません。優先もしないし、除外もしていない、という状態です。
選考のしくみそのものも自治体ごとです。利用決定を市町村のみで行うのが985市町村(60.3%)、利用申込みの受付は市町村のみ510(31.2%)、クラブのみ525(32.1%)、両方598(36.6%)と分かれています。
つまり在宅勤務の扱いは、住んでいる自治体に聞く以外に確かめようがありません。

自治体に聞くべき3つのこと
| 聞くこと | なぜ |
|---|---|
| ①在宅勤務は就労として認められるか | 認められる自治体がほとんどですが、まずここを確認する。「認められない」と言われた場合は、その根拠も聞く |
| ②点数の付け方に差はあるか | 通勤時間を加算する自治体では、通勤のない在宅勤務は結果的に点数が伸びにくいことがある |
| ③就労証明書の就労場所はどう書くか | 様式に就労場所の欄があるか、備考で補足できるかを確認する |
②は見落とされがちです。「在宅勤務だから減点」という規定がなくても、通勤時間の加算がつかないぶん、結果的に差がつくことがあります。これは規定の書き方の問題なので、聞かないと分かりません。
就労証明書の書き方そのものは、学童の就労証明書はどう書くかの記事にまとめました。
「家にいる」と「見られる」は別のことです
在宅勤務の家庭がいちばん困るのは、「家にいるなら子どもを見られるでしょう」と受け取られることです。
ここは制度の言葉で説明できます。育児・介護休業法の改正で、事業主が講ずべき「柔軟な働き方を実現するための措置」の選択肢のひとつにテレワークが入りましたが、その定義は「1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの」です。
つまりテレワークは働く時間を減らす制度ではありません。所定労働時間はそのままで、場所だけが変わる働き方です。打ち合わせも締切も、出社しているときと同じようにあります。
申請書に書くときも、この事実をそのまま書くのが有効です。
- 勤務時間中にオンライン会議・来客・電話対応があること
- 締切前など、手が離せない時間帯が具体的にあること
- 子どもが在宅していると業務に支障が出ること
「在宅だから見られる」という前提に対しては、見られない時間の具体性で答えるのが一番伝わります。
入れても続かないことがあります
もうひとつ、在宅勤務の家庭でよく起きるのが「学童には入れたのに、子どもが行かなくなる」という展開です。親が家にいるので、子どもは家に帰ってきてしまいます。
これは特別なことではありません。学童に通う子は、3年生の33万8,356人から4年生の19万8,714人へ、1年で約14万人減っています。全員が落ちたわけではなく、自分から行かなくなる子も含まれます。
そうなると、結局親が仕事をしている横で、子どもが家で過ごすという状態になります。国のアンケートでも、学童の待機になった子の63.9%が自宅で留守番をして過ごしています。
放課後の選択肢の全体像は、小4の壁とは?学童に入れなくなった放課後をどうするかで7つを費用と時間帯つきで比較しています。
働いている横で、子どもの時間をどうするか
在宅勤務の家庭に必要なのは、「預ける場所」より「子どもがひとりで過ごす時間の中身」であることが多いです。同じ家にいても、親は仕事をしていて相手はできないからです。
そこで現実的になるのが、自宅から参加するオンラインの放課後です。「オンライン学童」と呼ばれることもあります。

| 在宅勤務の家庭に効くところ | 中身 |
|---|---|
| 送迎がゼロになる | 仕事を中断して連れて行く必要がない |
| 週1回から使える | 会議が多い曜日だけ、といった使い方ができる |
| 大人が見守っている | 親が仕事に集中している時間も、画面の向こうに大人がいる |
| 参加したかどうかが見える | 記録が残るので、あとから確認できる |
ただし正直に書いておくと、身体は家にひとりのままです。火の元や来客、体調不良への物理的な対応はできません。ひとりで留守番ができることが前提で、それが難しい年齢・状況なら、民間学童やファミリー・サポート・センターを先に検討してください。
実際にどう過ごしているのかは、マイクラ好きの小学生向けオンラインサークルの記事で紹介しています。

よくある質問
在宅勤務でも学童に申し込めますか?
申し込めます。学童の利用要件は市町村が定めていて、国は在宅勤務を対象外とする基準を示していません。ただし就労場所の扱いや点数の付け方は自治体ごとに違うため、募集要項と点数表で確認してください。
在宅勤務だと点数が下がりますか?
自治体によります。通勤時間を加算する自治体では、通勤のない在宅勤務は結果的に点数が伸びにくくなることがあります。全国共通のルールはないので、お住まいの自治体の点数表で自分の条件を計算するのが確実です。
保育園は入れたのに、学童で断られることがあるのはなぜですか?
要件の根拠が違うためです。保育園の事由は「月48〜64時間以上労働することを常態とすること」で、働いているかどうかを見ます。いっぽう学童の根拠となる児童福祉法第6条の3第2項は「その保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」と書かれています。判定しているものが違います。
在宅勤務であることを申告しないほうがいいですか?
申告してください。虚偽の記載は取り消しの理由になりますし、後から在宅と分かって問題になるほうが不利です。在宅であっても手が離せない時間は実際にあるので、それを具体的に書くほうが伝わります。
就労証明書に在宅勤務であることを書く欄はありますか?
様式は自治体ごとに違います。就労場所の欄がある場合は正確に書いてください。欄がない場合でも、備考欄や別紙で「勤務時間中は打ち合わせ・来客等があり保育できない」旨を補足できることがあります。
学童に入れたのに、子どもが行きたがりません
高学年ではよくあることです。学童の待機は小4が最多で全体の34.2%を占めますが、いっぽうで登録児童数も3年生の33万8,356人から4年生の19万8,714人へと1年で約14万人減っています。全員が落ちたわけではなく、自分から行かなくなる子も含まれます。
在宅勤務なら学童に入れなくても大丈夫ですか?
仕事の内容によります。テレワークは所定労働時間を変更しない働き方なので、その時間は働いている時間です。打ち合わせや締切のある時間帯に子どもを見るのは現実的ではないため、預け先や過ごし方は別に用意しておくほうが安全です。
夏休みなど長期休みはどうすればいいですか?
在宅勤務の家庭でいちばん厳しいのが長期休みです。国のアンケートでも「夏休みなど長期休みだけでも利用できる場所が欲しい」が約160件と最多クラスの要望でした。自治体の夏季限定の居場所事業や、民間学童の単発利用を5〜6月には確認しておいてください。
学童以外にどんな選択肢がありますか?
放課後子供教室、児童館、習い事、民間学童、ファミリー・サポート・センター、そして自宅から参加するオンラインの活動があります。待機児童がいる377市町村のうち205市町村(54.4%)が学童以外の居場所を用意しています。
まとめ
保育園の要件は「働いているか」、学童の根拠条文は「昼間家庭にいないか」。在宅勤務が引っかかるのは、この差です。
ただし実際の要件を決めているのは市町村で、国は在宅勤務を除外していません。だから「在宅だと入れない」と諦める前に、自治体に3つ聞いてください。在宅勤務は就労として認められるか。点数の付け方に差はあるか。就労場所はどう書くか。
そして申請書には、「家にいる」と「子どもを見られる」は別だということを、具体的な時間帯で書いてください。テレワークは所定労働時間を変えない働き方です。働いている時間は、働いています。
この記事について
文:佐藤仁美(にじいろ編集部 記者)
児童福祉法・子ども・子育て支援法施行規則の条文はe-Gov法令検索から引用し、統計はこども家庭庁の公表資料をもとに構成しました。学童の利用要件・選考基準・必要書類は市町村ごとに異なります。実際の申し込みにあたっては、お住まいの市区町村の募集要項を必ずご確認ください。
出典
- 児童福祉法(第6条の3第2項)/e-Gov法令検索
- 子ども・子育て支援法施行規則(第1条の5第1号)/e-Gov法令検索
- こども家庭庁「令和7年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和7年5月1日現在)」PDF
- こども家庭庁「放課後のこどもの過ごし方に関する保護者アンケート結果」PDF
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」PDF


