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文部科学省は2026年9月8日、2026年度第1回「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)」の実施結果を公表しました。受験者は8,090人、全科目に合格して大学入学資格を得た人は3,086人です。高校に在籍していない時期がある人や、学び直しを考えている人にとって、進路を考える材料になる発表です。
ただし、合格者数だけを見て「この人数が進学した」「不登校の人が何人いた」と判断することはできません。今回の公表資料は試験の実施結果であり、受験者の過去の在籍状況や、受験を選んだ背景、合格後の進路までを示す調査ではないからです。
この記事では、一次情報をもとに制度の位置づけ、2026年度からの変更点、学校に通いづらい時期のある人が考えるときの視点を整理します。高卒認定試験を受けるべきだと決めつけるのではなく、通信制高校、定時制高校、学びの多様化学校、教育支援センター、家庭での学習などと並べて、本人に合う道を検討するための情報としてお読みください。
まず知っておきたい今回の発表
文部科学省の発表日は2026年9月8日です。2026年度第1回試験は8月6日と7日の2日間に実施され、熊本地震や台風13号の影響でやむを得ず受験できなかった人を対象に、8月27日と28日に再試験も行われました。自然災害などの事情に対応する仕組みがあることも、今回の発表に含まれています。
公表された中心的な数字は、受験者数8,090人、高卒認定試験の合格者数3,086人です。ここでいう合格者とは、必要な全科目に合格し、大学入学資格を取得した人を指します。一部の科目だけに合格した人は、全科目合格者とは別に扱われ、科目合格通知書が送付されます。
試験は年2回実施されます。2026年度第2回は11月7日と8日に行われ、結果通知は12月8日発送予定と案内されています。第2回の出願期間は7月21日から9月11日までで、今年度分の出願はすでに締め切られていますが、来年度以降を検討する人は日程の考え方を早めに確認しておくと安心です。
受験者8,090人、合格者3,086人という数字
前年度の第1回と比べると、受験者数は403人減少し、合格者数は186人減少しました。数字の増減は制度への関心、年齢構成、学校在籍者の受験、科目構成、社会状況など複数の要因が影響する可能性があります。しかし、今回の資料だけでは、減少の原因を特定することはできません。
全科目合格者を受験者数で割ると、おおよその比率は38.2%になります。ただし、この計算は「全科目合格者数÷受験者数」という単純な比率で、途中の科目合格や過年度の合格科目の扱い、受験者の受験科目数の違いを反映した合格率ではありません。制度を比較するときに、単純な割合を合格しやすさの指標として使いすぎないことが大切です。
また、受験者8,090人は「高校に通えない子ども全体」の人数ではありません。高卒認定試験を知っていて、出願手続きをし、試験会場に行く、または必要な手続きを進めた人の集計です。情報にたどり着けなかった人、体調や経済的な理由で出願できなかった人、別の進路を選んだ人はこの数字に含まれません。
だからこそ、3,086人という結果は「一つのルートを利用して資格を得た人の数」として読むのが適切です。数字の多さを根拠に、特定の進路が優れていると判断するものではありません。本人の体調、学習経験、将来の希望、支援者の有無によって、同じ制度でも意味は変わります。
高卒認定試験は何のための試験か
高卒認定試験は、高校を卒業した人と同等以上の学力があると認められた場合に、大学・短大・専門学校などを受験するための大学入学資格を得られる制度です。高校の卒業証書を発行する試験ではありません。学校に在籍していない期間があっても、進学の入口を別の形で確保できる可能性があります。
制度の目的を考えると、「高校に戻るか、戻らないか」の二択にする必要はありません。高校へ再入学・転入学する、通信制高校で単位を積み上げる、定時制や全日制で学ぶ、高卒認定試験を使って進学資格を得る、といった選択肢が並びます。途中で計画を変更することもできます。
高卒認定試験の準備では、試験科目の学習だけでなく、出願書類、科目免除の確認、会場までの移動、当日の休憩や体調管理も必要です。独学で進められる人もいれば、学習支援事業、フリースクール、塾、家庭教師、学校の先生、自治体の相談窓口などの力を借りる人もいます。支援を利用することは、本人の努力が足りないという意味ではありません。
進学をすぐに目指さない場合でも、科目合格を積み上げておく意味がある人はいます。一方で、受験準備そのものが大きな負担になる場合もあります。資格を取ることを急ぐあまり、睡眠や食事、安心できる居場所を失うなら、いったんペースを落とす判断も必要です。
受験できる人と、できない人
文部科学省の案内では、受験する年度の終わりまでに満16歳以上になる人が受験できます。高校に在籍している人も受験可能です。高校に籍がない人だけの制度ではなく、在学中に将来の選択肢を増やすために受験する人もいます。
一方、高校卒業者、大学入学資格検定の合格者、高卒認定試験の合格者など、すでに大学入学資格を持っている人は受験できません。「高校を卒業していないから受けられる」と単純に考えず、自分がすでに持っている資格や単位、過去の科目合格を確認する必要があります。
受験資格があっても、出願期間を過ぎると、原則として受け付けられません。2026年度第2回の出願期間は9月11日まででした。試験日だけでなく、受験案内の入手、必要書類の準備、郵送方法、消印の期限までを含めて計画します。
過去に高校で修得した単位や、過去の高卒認定試験で合格した科目がある場合、科目免除が使える可能性があります。免除の可否は、学校が発行する単位修得証明書などの書類確認が必要です。記憶だけで判断せず、在籍していた学校や文部科学省の案内に問い合わせることが安全です。
2026年度から変わった試験科目
2026年度から、高卒認定試験の試験科目が変わりました。文部科学省の案内には、新科目「情報」のサンプル問題も掲載されています。科目の変更は、出題範囲や学習計画に関わるため、過去問題だけを見て準備するのではなく、今年度の受験案内と科目・合格要件を確認することが重要です。
試験科目は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語、情報などの組み合わせで構成されます。必要科目数や科目選択は、入学を目指す大学等、過去に修得した単位、科目免除の状況によって変わります。志望校の募集要項で、大学入学資格の扱いと出願時期も合わせて確認します。
新科目が加わったからといって、すべての人が同じ方法で学ぶ必要はありません。紙の教材、音声読み上げ、動画、問題を小分けにする方法、支援者との口頭確認など、理解しやすい手段を組み合わせられます。試験の制度は共通でも、準備の仕方は個別に工夫できます。
「情報」は、機器の操作だけを測る科目と決めつけないことも大切です。問題の内容、出題範囲、配点、解答方法は公式の案内を基準にします。SNSや塾の解説は参考になりますが、古い年度の説明が混ざっている可能性があるため、最後は文科省の資料で確認してください。
不登校や中退を経験した人にとっての意味
学校に行けない、教室に入れない、長期間休んでいる、といった経験がある人にとって、進路の選択肢が一つ増えることは心理的な支えになる場合があります。将来の大学進学や専門分野の学習を希望していても、在籍校での卒業時期や学習ペースが合わないことがあるからです。
ただし、不登校の経験がある人は高卒認定試験を受けるべきだ、という意味ではありません。不登校の背景には、対人関係、学習上のつまずき、発達特性、身体症状、家庭の事情、学校環境など多様な要素が関係することがあります。試験勉強を始めることが、必ず心身の回復につながるとは限りません。
先に必要なのは、受験勉強ではなく安心して過ごせる場所、医療や福祉との相談、学校との関係の調整、生活リズムの回復ということもあります。本人が「資格を取りたい」と言っていても、周囲が短期間で結果を求めると負担が増える場合があります。希望を尊重しながら、休む時間も含めて計画します。
反対に、試験という明確な目標が生活のリズムを作る人もいます。小さな目標を設定し、1日10分の学習から始める、科目合格を目指す、試験会場の下見をするなど、段階を刻むことで取り組みやすくなることがあります。どの方法が合うかは、本人との対話で決めます。
「高校卒業」と「大学入学資格」の違い
高卒認定試験に合格すると大学入学資格が得られますが、高校を卒業したことになるわけではありません。高校卒業資格と大学入学資格は似ているようで、制度上は別のものです。この違いを理解しないまま進路を決めると、就職や資格試験、奨学金の手続きで確認が必要になる場合があります。
大学、短大、専門学校等の入試では、高卒認定試験合格者を出願資格として認める学校が多くあります。ただし、募集要項の表現や提出書類は学校ごとに異なります。年齢、成績、科目、推薦・総合型選抜の条件、出願時期などを、志望校の公式サイトや募集要項で確認してください。
企業の採用試験や国家資格の受験要件で、高卒認定試験の合格を高校卒業と同等に扱う場合もありますが、すべての場面で自動的に同じ扱いになると考えてはいけません。文科省には、合格を高校卒業と同等とみなしている採用試験・国家資格の一覧への案内があります。必要な場面ごとに、実施主体へ確認しましょう。
進学希望がまだ決まっていない人は、資格の意味を一度で結論づけなくても構いません。今の学校で単位を取る、別の学校へ移る、試験科目を一つだけ学ぶ、情報収集だけをするなど、決断の前段階にも価値があります。
発達特性や体調に配慮が必要な場合
発達特性がある人や、長時間の外出・集団環境・筆記に負担がある人は、試験時の特別措置を申請できる場合があります。文科省の案内には、希望者向けに「試験時の特別措置」の項目があります。措置の内容や必要書類、申請期限は個別に確認が必要です。
配慮の申請では、診断名があるかどうかだけで決まるとは限りません。どの場面で何が難しいのか、どのような方法なら力を出しやすいのかを、具体的に整理することが大切です。読み書き、時間、休憩、座席、移動、音や光、体調の変動など、困りごとを本人の言葉で書き出します。
ただし、この記事は特別措置が必ず認められると約束するものではありません。審査や必要書類の基準があり、申請しても希望どおりにならない可能性があります。早めに受験案内を読み、学校や医療機関など必要な相談先に確認してください。
当日の困りごとを「気合いで乗り切る」ことにしないでください。会場までの経路、昼食や水分、トイレ、休憩場所、緊張したときの合図を事前に考えておくと、本人も付き添う人も見通しを持ちやすくなります。受験しない選択や、次回に回す選択も含めて本人の安全を優先します。
家庭・学校・支援者が確認したいこと
家庭で最初に確認したいのは、「本人は何を実現したいのか」です。大学に行きたいのか、就職の幅を広げたいのか、今の学校とは別の環境で学びたいのか、周囲に遅れたくない気持ちがあるのか。目的が違えば、選ぶ制度も学習量も変わります。
学校側は、高卒認定試験を「学校をやめるための制度」と決めつけないことが重要です。在籍を続けながら受験できる人もいますし、科目合格を進路の選択肢として検討する人もいます。担任、進路指導、養護教諭、教育相談担当が情報を共有し、本人が一人で手続きを背負わないようにします。
支援者は、試験の情報を一方的に渡すだけでなく、公式資料の読み方を一緒に確認します。申し込み期限、必要書類、免除科目、特別措置、結果通知、合格後の証明書など、制度の節目を一覧にすると見通しが立ちます。本人が読んで理解できる量に分けることも支援です。
進路の会話では、合格か不合格かだけを評価しないようにします。願書を取り寄せた、過去問を一度見た、会場まで行けた、科目合格を積み上げた、休む判断ができた、というプロセスも本人にとって大切な経験です。結果だけで自己評価を決めないことが、長い進路を支えます。
数字の読み方と制度の限界
今回の発表は、試験を実施した結果の公表です。受験者の年齢、都道府県、在籍状況、障害や病気の有無、不登校経験、学習支援の利用状況、合格後の進学状況までは、この発表だけから分かりません。3,086人という数字から、制度の利用者像を一つに決めつけることはできません。
また、高卒認定試験は知識・技能を試す仕組みであり、学校生活、対人関係、生活リズム、実習、部活動、居場所の機能までを代替するものではありません。資格取得の道が開いていても、人とのつながりや学びの体験が別途必要な人はいます。資格と居場所は同じものではありません。
逆に、高校に在籍していても、試験を進路の補助線として使える人はいます。制度を不登校の人だけに限定してしまうと、利用できる人を狭く捉えてしまいます。対象者の幅があることを踏まえ、本人の希望と状況を中心に情報を整理します。
公的な数字は、ニュースの入口です。家庭や学校が実際に動くときは、最新の受験案内、募集要項、会場案内、特別措置の案内を読み、必要なら窓口に確認してください。制度は年度ごとに変更される可能性があるため、古いブログ記事だけで判断しないことが大切です。
受験を検討するときの確認リスト
- 目的:資格取得の先に、進学・就職・学び直しのどれを考えているか。
- 現在の資格:高校の卒業資格、大学入学資格、過去の科目合格がないか。
- 学習量:全科目を一度に目指すのか、科目合格を積み重ねるのか。
- 日程:受験案内の配布、出願期間、試験日、結果通知日を確認したか。
- 書類:単位修得証明書など、免除申請に必要な資料をそろえられるか。
- 配慮:特別措置が必要なら、どんな困りごとがあり、いつ申請するか。
- 移動:会場までの経路、休憩、付き添い、体調不良時の対応を考えたか。
- 代替案:通信制高校、定時制高校、転入・編入、支援機関なども比較したか。
- 本人の意思:周囲の期待ではなく、本人が納得できる計画か。
このリストは、すべてを一度に決めるためのものではありません。分からない項目に印を付けて、学校や相談機関に質問するために使ってください。本人が話しにくい場合は、紙やメモ、選択肢のカードなど、言葉以外の方法で確認してもよいでしょう。
次の一歩を一緒に考える
学校に通いづらい時期の進路を、一人で決めなくて大丈夫です。
高卒認定試験は、進学の道を開く制度の一つです。ただ、今すぐ受験を決める必要はありません。通信制高校、学びの多様化学校、教育支援センター、フリースクール、家庭での学習など、本人の安心と希望を出発点に情報を集めていきましょう。
にじいろでは、不登校・発達特性・学びの選択肢について、制度の一次情報を確認しながら、家庭で考えるための記事を届けています。気になる制度があれば、公式資料を一緒に開き、期限や対象を確認するところから始めてみてください。
一次情報
- 文部科学省「令和8年度第1回高等学校卒業程度認定試験実施結果について」(2026年9月8日)
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」(日程・受験資格・科目・特別措置)
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験 報道発表一覧」
※この記事は公表された一次情報をもとに2026年10月14日時点で整理しています。個別の受験可否、科目免除、特別措置、進学資格の扱いは、必ず文部科学省や志望校などの公式窓口に確認してください。
学習費・生活費・時間も含めて計画する
高卒認定試験を進路の選択肢として考えるとき、受験料や教材費だけでなく、学習に使える時間と生活全体の負担も一緒に見積もる必要があります。合格後に進学する場合は、入学検定料、交通費、入学金、授業料、教材費などが加わる可能性があります。家庭の収入や利用できる制度によって条件は変わるため、金額を一つのモデルケースで決めつけないことが大切です。
たとえば、午前中に集中しやすい人と、夕方以降のほうが取り組みやすい人では、同じ科目数でも計画の立て方が変わります。通院、家族のケア、アルバイト、睡眠の調整などがある場合は、空いた時間をすべて勉強に充てるのではなく、休む時間を先に確保します。予定どおりに進まない日があっても、計画の失敗ではなく、今の状態を知るための情報として扱えます。
学習方法を選ぶときも、料金だけで比較しないようにします。教材の分かりやすさ、質問の方法、欠席や中断への対応、オンラインと対面の割合、保護者への連絡の仕方などを確認します。無料の資料や相談会を利用し、契約前に解約条件や追加費用を確認すると、あとから家庭の負担が増えることを防ぎやすくなります。
進学を希望する場合は、試験日から逆算して一気に決めるのではなく、志望校の募集要項を読み、必要な科目と出願時期を確認し、今期に受験する科目を絞るという順序も考えられます。大学や専門学校に問い合わせる際は、「高卒認定試験の合格者として、どの書類をいつまでに提出する必要があるか」「科目合格の状態で出願できるか」など、具体的に質問すると確認しやすくなります。
家庭や学校の大人ができるのは、本人に結論を迫ることではなく、選択肢を比較できる材料をそろえることです。資料を一緒に読む、電話やメールの質問を手伝う、会場への道を確認する、申請書類を保管するなど、手続きの一部を分担できます。本人が自分で決められる部分を残しながら、負担になりやすい事務作業を支えることが、継続しやすい環境につながります。
高卒認定試験は、人生の進路を一度で確定させる試験ではありません。今回受験しない、次回に回す、科目を減らす、別の学校や支援機関を利用するという判断も含めて、現在の安心と将来の希望を両方見ながら考えていきます。


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