子どもがいじめられたら親はどうする?記録の取り方から学校への伝え方まで

明るいリビングで、子どもの話を目線を合わせて聴く保護者

子どもから「いじめられている」と打ち明けられた夜、多くの保護者がまず検索するのは「いじめ 親 対応」という言葉です。頭が真っ白になり、学校に電話すべきか、明日休ませていいのか、証拠は何を残せばいいのか——判断すべきことが一度に押し寄せます。

この記事は、気づいたあとに親が具体的に何をするかだけに絞ってまとめました。「いじめられやすい子に特徴はあるのか」「どんなサインで気づくか」については別記事の「いじめられやすい子に特徴はある?親が気づけるサインと対応」で扱っています。

最初に、いちばん大事なこと

いじめを受けた子どもの側に、原因や落ち度はありません。いじめ防止対策推進法(e-Gov法令検索)第2条は、いじめを「行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義しています。つまり「本人がつらいと感じているかどうか」が基準であり、行為の大きさや、被害を受けた子の性格・特徴で決まるものではありません。まずこの前提を、親自身が手放さないことが出発点になります。

目次

この記事でやることの全体像(親の動きは5つ)

やるべきことは多く見えますが、整理すると次の5つです。順番にも意味があります。記録を先に始めておくと、学校に伝えるときも、あとで相談先を増やすときも、話が早く正確になります。

いじめに気づいたあと、親が動く5ステップ

1

① 安全を確認する(今すぐ)

けが・暴力・脅迫・金銭の要求・性的な被害があれば、学校より先に警察や医療機関につなぐ場面があります。判断の目安はこの記事の次の章にまとめました。

2

② 子どもの話を聞き、その日のうちに記録する

聞き取りは「事実の確認」ではなく「安心の確保」が先です。聞いた内容は、記憶が新しいその日のうちにメモに落とします。

3

③ 証拠になるものを保全する

壊された持ち物、けがの写真、SNSのスクリーンショット、診断書。捨てない・消さない・上書きしないの3原則です。

4

④ 学校に伝える(担任だけで終わらせない)

いじめ防止対策推進法は、学校に「いじめ対策の組織」で対応することを求めています。担任個人への相談で止めず、組織に上げてもらう伝え方をします。

5

⑤ 学校の対応を記録し、動かないときは次の窓口へ

学校の設置者(教育委員会など)、人権相談、警察、法律相談と、相談先は段階的に増やせます。

この記事では、③の「記録の取り方」と④の「学校への伝え方」をいちばん詳しく書きます。ここが実際にいちばん困るところだからです。

まず判断する:すぐ学校以外に連絡する場面

多くのいじめは学校との話し合いから始めますが、先に別の窓口につないだほうがよい場面があります。迷ったときは「取り返しがつくか」を基準に考えてください。

状況別・最初にどこへ連絡するかの目安
子どもの状況まず連絡する先補足
殴られた・蹴られた・けがをしている119番(救急)/医療機関受診時に「いつ・どこで・何をされたか」を医師に伝え、診断書の発行が可能か相談します。写真も受診前に撮っておきます。
暴力・脅迫・金銭やアイテムの要求が続いている110番、または最寄りの警察署・少年相談窓口文部科学省も、犯罪行為にあたり得る事案は警察に相談・通報するよう学校に求めています(文部科学省「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(PDF))。
性的な写真・動画を撮られた、送らされた警察(110番・少年相談窓口)拡散が始まると回復が難しくなります。学校への連絡と並行して、すぐ警察に相談してください。
「死にたい」と言っている/自傷がある24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310、いのちの相談窓口、医療機関子ども本人が話せる窓口として文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」厚生労働省「まもろうよ こころ」があります。
家庭内での暴力・ネグレクトが疑われる189(児童相談所虐待対応ダイヤル)「いじめの相談をしていたら家庭の問題が見えてきた」という場合も含みます(こども家庭庁「児童虐待防止対策」)。
命の危険を感じる緊急事態110番/119番ためらう必要はありません。学校の始業時間を待つ必要もありません。

緊急時の連絡先(この記事の中でいちばん先に覚えてほしい番号)

  • 110番…暴力・脅迫・恐喝・性的被害など、犯罪にあたり得る行為
  • 119番…けが・体調の急変
  • 189(いちはやく)…虐待の疑い(児童相談所虐待対応ダイヤル)
  • 0120-0-78310…24時間子供SOSダイヤル(子ども本人・保護者どちらもかけられます)
明るいリビングで、保護者が子どもと目線を合わせて話を聴いている場面

子どもが話してくれた「最初の30分」にやること

打ち明けてくれた瞬間は、子どもにとって非常に勇気のいる場面です。ここでの親の反応が、その後も話し続けてくれるかどうかを大きく左右します。

話を聞くときに意識したいこと

  • まず「話してくれてありがとう」と伝える。評価も助言も、そのあとで構いません。
  • 「あなたは悪くない」とはっきり言葉にする。子どもは高い確率で「自分にも原因がある」と考えています。
  • 質問は open に、詰問にしない。「どうしてもっと早く言わなかったの」は責める言葉として届きます。
  • その場で結論を出さない。「学校に言う/言わない」を即決せず、「一緒に考えよう」と保留にしてよい場面です。
  • 学校に伝えるときは、伝える範囲を子どもと相談する。ただし命や体に関わる危険があるときは、本人が嫌がっても大人が動く必要があります。
  • その日のうちにメモを残す。翌日には細部が曖昧になります。

反対に、悪気なく言ってしまいがちで、子どもが口を閉ざす原因になりやすい反応もあります。

言いがちな言葉と、言い換えの例
言いがちな言葉なぜつらいのか言い換えの例
「やり返せばいい」解決を子ども個人の力に押し戻してしまい、「できない自分が悪い」と感じさせます。「これは君ひとりで何とかする話じゃない。大人が動く場面だよ」
「気にしすぎじゃない?」法律上のいじめの基準は「本人が心身の苦痛を感じているか」です。感じ方を否定すると相談が止まります。「つらいと感じたなら、それはもう十分な理由だよ」
「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」被害を受けた子に原因を求める言い方で、最も避けたい反応です。「何があったか、分かる範囲で教えてくれる?」
「先生に言えば解決するよ」結果を保証できません。裏切られたときのダメージが大きくなります。「先生に伝えてみよう。どう進んだか、毎回あなたにも共有するね」
「明日も行きなさい」安全が確保されないまま登校を促すと、逃げ場がなくなります。「明日は休んでいい。休んでいる間に、大人が動く順番を決めよう」
学校に行けなくなった子どもが、環境を変えて少しずつ変化していった様子(NIJINアカデミー)。「学校を離れる=終わり」ではないことが伝わる映像です。
机の上に置かれた数冊のノートと色鉛筆。出来事を書き留めて記録に残す場面

記録の取り方——いつ・どこで・誰が・何を

親ができる支援のなかで、もっとも効果があり、かつ今日から必ずできるのが「記録」です。記録があると、学校への説明が具体的になり、話が「感情の訴え」ではなく「事実の共有」になります。学校が対応を検討する場面でも、あとから相談窓口を増やす場面でも、同じ記録がそのまま使えます。

記録の基本は、報告書のような難しい形式ではありません。5W1Hを、その日のうちに、一つのノート(またはスマホのメモ)にまとめて書く。これだけです。

いじめの記録に必ず入れる項目(そのまま写して使えます)
項目書き方記入例
① 記録した日時「出来事の日」と「書いた日」の両方を書きます出来事:10月14日(火)昼休み/記録:10月14日 21:30
② どこで教室・廊下・部活・登下校・オンラインなど、場所を具体的に3年2組の教室後方、掃除の直前
③ 誰が(相手)分かる範囲で。分からなければ「同学年の男子3人」でも構いませんA(同じクラス)、ほか2名(名前は本人も不明)
④ 誰がいたか(周囲)見ていた人は、あとで学校が事実確認をする手がかりになります同じ班のBさんが近くにいた
⑤ 何をされたか評価語(ひどい・最悪)ではなく、動作で書きます教科書を床に落とされ、拾おうとしたら足で押さえられた
⑥ 子どもの言葉本人が話した言葉は、要約せずそのまま「 」で残します「またやられると思うと、朝おなかが痛くなる」
⑦ 心身の変化睡眠・食事・腹痛・頭痛・欠席など、日付とセットで10/13から寝つけない、10/14朝は腹痛で30分遅れて登校
⑧ 誰に連絡したか相手・日時・手段・伝えた内容・返答をセットで10/14 17:05 担任◯◯先生に電話。「明日、本人から聞き取る」との返答
⑨ 保存した証拠スクショや写真のファイル名と保存場所を書いておきますIMG_0142.jpg(教科書の破れ)/LINEスクショ3枚

記録のコツ:3つだけ守れば十分です

  • その日のうちに書く。まとめて書くと日付の記憶が混ざり、正確さが落ちます。
  • 推測と事実を分けて書く。「たぶんAが主導した」は「本人の話では、最初に声をかけたのはA」と書き分けます。
  • 消さない・書き直さない。あとで内容が変わった場合は、上書きせず「10/20追記」として書き足します。

記録の媒体はノートでもスマホのメモでも構いませんが、時系列が保てる形にしてください。日付ごとに1ページ、あるいはメモアプリで日付を先頭に書く。それだけで十分に使えます。学校とやり取りが始まったら、電話・面談・メールもすべて同じノートに追記していきます。

学校とのやり取りを記録に残す手順

1

電話をする前に、伝えることを3行で書く

「いつ・何が起きたか」「今日いちばん頼みたいこと」「いつまでに返事がほしいか」。話しながら考えると、感情が先に出て要点が伝わりにくくなります。

2

電話中に、相手の名前と時刻をメモする

「誰と話したか」が残っていないと、あとで確認する際にやり取り自体を再構成できなくなります。

3

通話が終わったら、返答をそのまま書く

「確認します」なのか「明日◯時に聞き取ります」なのかで意味が違います。曖昧なら、その場で「いつ頃ご連絡いただけますか」と聞いて構いません。

4

面談は、可能ならメールで日時と出席者を確認しておく

記録が双方に残る形になり、行き違いを減らせます。

5

面談後、その日のうちに「聞いた内容」を書き出す

学校側の説明・約束された対応・次回の予定を、箇条書きで残します。

証拠として残すもの——種類別の保存方法

「証拠」と聞くと身構えてしまいますが、特別なことをする必要はありません。いま手元にあるものを、変えずに残すのが基本です。

証拠の種類別・残し方
種類具体例残し方のポイント
壊された・汚された持ち物破れた教科書、切られた体操服、壊れた自転車捨てず、直さず、そのまま保管します。合わせて日付が分かるように写真も撮っておきます。
けが・体の変化あざ、傷、火傷同じ場所を「全体が分かる写真」と「近づいた写真」の2枚。医療機関を受診し、診断書が出せるか相談します。
SNS・チャットの書き込みLINE、X、Instagram、オンラインゲームのチャット投稿を消す前にスクリーンショット。詳しい手順は「ネットいじめ(SNS・LINE)の見つけ方と親の対応」にまとめました。
手紙・落書き机への落書き、まわされたメモ現物を保管。学校の備品で持ち帰れない場合は、日付が分かる形で写真に残します。
子どもの話本人が語った内容本人の言葉を「 」でそのまま記録。無理に何度も聞き直すのは負担になるため、一度で書き取ります。
学校とのやり取り電話・面談・メール日時・相手・内容・返答。メールは削除せずフォルダにまとめます。
欠席・遅刻・保健室利用出席簿に残る事実日付をメモしておくと、心身への影響を時系列で説明できます。

やってはいけないこと

  • 相手の子や、その保護者に直接連絡して問い詰める。事実確認が混乱し、当事者同士の争いになりやすく、子どもがさらに孤立する場合があります。いじめ防止対策推進法第23条第5項も、保護者同士の争いが起きないよう学校が情報共有の措置をとることを定めています。
  • SNSに実名や写真を書く。別の権利侵害になり、子どもが特定される二次被害につながる場合があります。
  • 子どもに無断で端末の中身をすべて調べる。安全確認のために必要な場面はありますが、無断で行うと相談してもらえなくなる恐れがあります。「一緒に見よう」と声をかけるのが基本です。
教室で保護者と担任が、ノートを見ながら子どもの様子を話し合っている場面

学校への伝え方——担任だけで終わらせない

いじめ防止対策推進法は、学校に対して個人ではなく組織で対応することを求めています。第22条は、学校に「複数の教職員、心理・福祉等の専門的な知識を有する者その他の関係者」で構成するいじめの防止等の対策のための組織を置くと定めています。つまり、担任ひとりが抱え込む形は、法律が想定している姿ではありません。

また第23条第2項は、学校が通報を受けたときなどに速やかに事実の有無の確認を行い、その結果を学校の設置者(教育委員会など)に報告すると定めています。保護者としては、この2つを前提に伝えると話が通りやすくなります。

学校に伝えるときの順番

1

① 担任に連絡する(電話+できれば書面)

「相談」ではなく「いじめとして対応をお願いしたい」と言葉にします。伝えたい事実は、記録から日付順に3〜5件に絞ると伝わりやすくなります。

2

② いじめ対策の組織で扱ってほしいと明確に伝える

「学校のいじめ防止等の対策のための組織で共有していただけますか」と具体的に言います。第22条に基づく組織です。

3

③ 事実確認の方法と時期を確認する

「いつまでに」「誰に」「どのように」聞き取るのかを確認します。周囲の子への聞き取りは、子どもが特定されない配慮も併せてお願いします。

4

④ 子どもの安全確保の措置を相談する

第23条第4項は、必要があるときに、いじめを行った児童等を別の場所で学習させるなど、被害を受けた子が安心して教育を受けられるための措置を講ずると定めています。席替え・別室・登下校の見守りなど、具体的にお願いできます。

5

⑤ 経過報告の間隔を決める

「毎週金曜に一度、状況を教えてください」と間隔を決めておくと、こちらから催促し続ける負担が減ります。

6

⑥ 学校いじめ防止基本方針を見せてもらう

第13条により、各学校は基本方針を定めることになっています。学校がどう動く決まりになっているかが分かります。

連絡の文面に迷ったら、次のような型をそのまま使ってかまいません。

学校への連絡文の型(メール・連絡帳)

◯年◯組 ◯◯(児童生徒名)の保護者の◯◯です。

◯月◯日ごろから、本人が学校で受けている行為について相談させてください。本人からは、次のような話を聞いています。

・◯月◯日(◯)昼休み、教室で、◯◯をされた
・◯月◯日(◯)放課後、◯◯と言われた
・◯月◯日以降、朝に腹痛を訴え、◯回遅刻しています

本人が心身の苦痛を感じている状態です。いじめとしてご対応いただき、学校のいじめ防止等の対策のための組織で共有していただけますでしょうか。

お願いしたいのは次の3点です。
1. 事実確認の実施と、その方法・時期のご共有
2. 本人が安心して過ごせるようにするための当面の措置のご相談
3. 経過を◯曜日に一度、ご連絡いただくこと

記録とスクリーンショットを保管しています。必要であればお持ちします。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

学校が動かないと感じたときの次の一手

残念ながら、最初の相談で学校が十分に動かないことはあります。そのときは、相談先を「上に」ではなく「横に増やす」イメージで進めます。並行して相談してよく、順番を守る義務もありません。

学校の次に相談できる先(比較表)
相談先できること向いている場面費用
学校の設置者(市区町村教育委員会・私立は学校法人/都道府県私学担当課)学校への指導・助言、事実確認の実施状況の確認学校に伝えたが事実確認が進まない、報告が来ない無料
24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)子ども本人・保護者からの相談を24時間受け付け夜間・休日にとにかく話したい、どこに相談すべきか整理したい無料(通話料も無料)
こどもの人権110番/人権相談窓口(法務局)人権侵害の相談、調査・救済手続き、関係機関への調整学校との話し合いが行き詰まった、第三者に入ってほしい無料
警察(110番・少年相談窓口)犯罪にあたり得る行為の相談・被害届の受理暴力・脅迫・金銭要求・性的被害・執拗な誹謗中傷無料
法テラス法制度や相談窓口の案内、条件を満たす場合は無料法律相談損害賠償や学校の対応の是非など、法的な整理をしたい案内は無料
スクールカウンセラー/スクールソーシャルワーカー子どもと保護者の心理的支援、校内外の資源との接続子どもの心身の負担が大きい、家庭だけで支えきれない無料(学校配置)
医療機関(小児科・児童精神科)心身の症状の診療、必要に応じ診断書腹痛・不眠・食欲低下などが続いている保険診療

相談先については文部科学省「いじめ問題を含む子供のSOSに対する取組」こども家庭庁「いじめ防止対策」にも案内があります。子ども本人が直接話せる窓口としてチャイルドラインのような民間相談もあります。

弁護士への相談を検討する段階になったら、法テラス(日本司法支援センター)で制度や窓口の案内を受けられます。地域の弁護士会でも子どもの人権に関する相談を扱っている場合があります(日本弁護士連合会)。ただし、この記事は法的助言をするものではありません。個別の事案でどう主張できるかは、必ず専門家に直接相談してください。

「重大事態」という枠組みを知っておく

いじめ防止対策推進法第28条第1項は、次のいずれかの場合を重大事態として、学校の設置者または学校が調査を行うと定めています。

重大事態の2つの類型(法第28条第1項)
条文が定める場合保護者にとっての意味
第1号いじめにより児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるときけが、金品の被害、心身への深刻な影響などが「疑われる」段階で該当し得ます
第2号いじめにより児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるときいじめが背景にあって学校を休んでいる状態が続いている場合が含まれ得ます

条文が「疑いがあると認めるとき」と書いている点が重要です。いじめの事実が確定してから始まる手続きではありません。文部科学省の文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(令和6年8月改訂・PDF)は、被害を受けた児童生徒や保護者に寄り添った対応を求めています。

また、同条第2項は、調査を行ったときは、いじめを受けた児童等およびその保護者に対し、重大事態の事実関係等の必要な情報を適切に提供すると定めています。「調査の結果を教えてもらえない」という状態は、法律の想定とは異なります。

実際の統計を見ると、この枠組みが十分に機能していない面もうかがえます。文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の令和6年度の結果(令和6年度調査結果の概要(PDF))では、重大事態1,404件のうち490件(34.9%)は、重大事態として把握する以前にはいじめとして認知されていなかったと報告されています。だからこそ、保護者の側で早い段階から記録を残しておくことに意味があります。

数字で見る:いま、いじめはどう扱われているか

文部科学省の調査(令和6年度/令和7年10月公表、令和8年1月一部修正)から、保護者が知っておくと判断の助けになる数字を抜き出します。

令和6年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より
項目数値読み取り
いじめの認知件数(小・中・高・特別支援)769,022件(前年度732,568件)前年度から5.0%増え、過去最多。1,000人当たり61.3件です
年度末時点で解消していたいじめ585,349件(76.1%)約4分の1は年度末時点で「取組中」です
重大事態の発生件数1,404件(前年度1,306件)過去最多。うち490件(34.9%)は事前にいじめとして認知されていませんでした
重大事態(第1号)の被害の態様精神的苦痛が479件(62.4%)で最多けががなくても深刻な被害になり得ることを示しています
パソコンや携帯電話等での誹謗中傷等27,365件H25の8,788件から一貫して増加傾向にあります
小・中学校の不登校児童生徒数353,970人過去最多。学校を離れることは例外的な選択ではなくなっています

注目したいのは「認知件数が過去最多」という点の読み方です。令和6年度調査結果を踏まえた対応の充実について(通知)は、増加の背景として、いじめの定義や積極的な認知に対する理解が広がったこと、1人1台端末を活用した心の健康観察の導入、アンケートや教育相談の充実などを挙げています。件数が増えていること自体は、必ずしも「悪化」だけを意味しません。学校が拾い上げる網が細かくなった側面もあります。

一方で、文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針」(PDF)は「解消している」状態の判断について、①いじめに係る行為が止んでいること(少なくとも3か月を目安)②被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないことの2要件を示し、②は本人および保護者への面談等で確認するとしています。学校から「解消しました」と言われたときに、本人の実感と食い違うなら、その違和感を伝えてよい根拠になります。

休ませる判断と、休んでいる間の学び

「明日、学校を休ませていいのか」は、多くの保護者が最初に迷うところです。結論から言えば、安全が確保できていない間、休ませることは十分に妥当な選択です。いじめ防止対策推進法第9条第2項も、保護者は「その保護する児童等がいじめを受けた場合には、適切に当該児童等をいじめから保護するものとする」と定めています。

休むことを決めたら、次の3つを学校に伝えておくと、その後がスムーズになります。

休ませるときに学校へ伝えること

  • 欠席の理由:「いじめによる心身の負担のため」と明確に伝えると、記録上も理由が残ります。
  • 連絡の方法:毎日の欠席連絡をどうするか、担任からの家庭連絡をどの頻度で受けるか。
  • 学習の扱い:課題の受け取り方、オンラインでの参加可否、出席の取り扱い(校長の判断で指導要録上出席扱いとなる仕組みがあります)。

休んでいる期間が長くなりそうなときは、学びの場を学校の外にも広げて考える段階です。教育支援センター(適応指導教室)、フリースクール、オンラインの学校など、選択肢は年々増えています。詳しくはフリースクールの完全ガイドにまとめました。中学生・高校生それぞれの進路については不登校の中学生の進路と支援不登校からの高校進学・高校生活も参考にしてください。

学校以外の居場所で過ごした子どもたちが、どんな進路を選んでいったのか。

「学校を離れると勉強が遅れる」という不安はもっともですが、安全でない場所に居続けることのコストのほうが大きい場面があります。まず心身を回復させ、そのうえで学びをどう続けるかを考える——この順番で構いません。

親自身が消耗しないために

いじめへの対応は、短期間で終わらないことがあります。学校との連絡、記録、子どものケアが重なると、保護者の側が先に限界を迎えることも珍しくありません。

保護者の負担を減らす工夫
負担具体的な工夫
学校との連絡に毎回消耗する連絡は曜日と時間を決める。用件は3行で先に書いてから電話する。可能ならメールに切り替える
ひとりで判断を抱える配偶者・親族・スクールカウンセラー・相談窓口のいずれかと、必ず一度は共有する
夜になると不安で眠れない24時間対応の相談窓口を使う。厚生労働省「まもろうよ こころ」に窓口の一覧があります
仕事を休めない面談の日時調整はメールで交渉してよい。オンライン面談が可能か聞いてみる
子どもに何もしてやれないと感じる記録を続けること自体が、すでに具体的な支援です。毎日の「おかえり」を続けることにも意味があります
不登校・発達特性のある子が全国から通っています

学校を離れて過ごす時間にも、学べる場所があります

いじめや不登校を経験した子どもたちが全国から通う、小中一貫のオルタナティブスクール。休んでいる間の学びの選択肢として、見学・相談だけでもご利用いただけます。

小学生・中学生

NIJINアカデミー

「ALL HAPPY」を掲げ、自分が幸せになる力・人を幸せにする力を育てる、日本最大級のオルタナティブスクール(小中一貫)。累計1,000名以上が入学。

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高校生

ニジ高(NIJIN高等学院)

ユニークな個性を持つ高校生のための、通信制・高校サポート校。自分のペースで高卒資格と進路をめざせます。

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入会前の相談・見学だけでも大丈夫です。まずはお子さんの様子をお聞かせください。

よくある質問

Q. 子どもが「学校に言わないで」と言います。どうすればいいですか。
まずは理由を聞いてください。「言うと余計にひどくなる」「自分が言ったと分かってしまう」という不安が多くを占めます。その不安は学校に伝えるときに一緒に相談できます(誰から聞いたか分からない形での聞き取りを依頼する、など)。ただし、暴力・脅迫・性的な被害・命に関わる兆候があるときは、本人の同意を待たずに大人が動く必要があります。その場合も「あなたを守るために動く」と理由を伝えてから動いてください。
Q. 証拠がないと学校は取り合ってくれませんか。
いじめ防止対策推進法第23条第2項は、学校が通報を受けたときなどに「速やかに、いじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずる」と定めています。事実確認は学校が行うものであり、保護者が証拠をそろえることが前提ではありません。ただし記録があると、確認すべき日時や場面が具体的になり、対応が進みやすくなります。
Q. 学校から「解消しました」と言われましたが、子どもはまだつらそうです。
文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」は、解消の要件として①行為が止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3か月が目安)続いていること、②被害を受けた児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと、の2つを挙げ、②は本人・保護者への面談等で確認するとしています。本人の実感と違うのであれば、その旨を学校に伝えて差し支えありません。
Q. 相手の保護者に直接連絡してもいいですか。
おすすめしません。同法第23条第5項は、被害を受けた児童等の保護者と、いじめを行った児童等の保護者の間で争いが起きることのないよう、学校が情報を共有するための措置その他の必要な措置を講ずるとしています。当事者同士のやり取りは感情的な対立になりやすく、事実確認も難しくなります。学校を通す形が基本です。
Q. 転校を考えたほうがよいでしょうか。
安全が確保できない状態が続くなら、選択肢として十分に検討する価値があります。ただし転校は手続きと環境の変化を伴うため、まず「休む」「別室で過ごす」「学校外の居場所を使う」といった段階を挟んでから判断しても遅くありません。学校・教育委員会・スクールソーシャルワーカーに、地域で取り得る選択肢を確認してください。
Q. 警察に相談すると、大ごとになりませんか。
相談=即立件ではありません。まずは話を聞いてもらう段階から始められます。文部科学省は、犯罪行為にあたり得る事案について、学校が警察に相談・通報すべき場合があるとする通知を出しています。判断が難しいときは、少年相談窓口で状況を説明するところから始めてください。なお、どの行為がどの罪にあたるかの判断は捜査機関や裁判所が行うものであり、この記事で断定することはできません。
Q. 発達特性のある子で、トラブルの背景が複雑です。
いじめと、特性による困りごとが重なっている場合、学校への伝え方も変わってきます。特性への配慮と、いじめへの対応は別々に整理して依頼するのがおすすめです。発達特性のある子の学校・居場所の情報も参考にしてください。

🔗 いじめについて、あわせて読みたい

いじめの中身と件数の統計はいじめの原因・理由ランキング|文科省調査で最も多い「いじめの態様」に、加害の側の背景はいじめをする子の特徴と背景|「する側/される側」は入れ替わるにまとめています。被害を受けやすい状況はいじめられやすい子の特徴と、親ができること、ネット上のものはネットいじめ(SNS・LINE)の見つけ方と親の対応をご覧ください。

まとめ:今日できることは「聞く」と「書く」

この記事の内容を、もう一度だけ短くまとめます。

今日やること

  • 子どもに「話してくれてありがとう」「あなたは悪くない」と伝える
  • 安全に関わる場面(暴力・脅迫・性的被害・自傷)なら、学校より先に110番・119番・相談窓口へ
  • 聞いた話を、その日のうちに5W1Hで書く
  • 写真・スクリーンショット・現物を、変えずに保存する
  • 学校には「いじめとして、対策の組織で対応してほしい」と明確に伝える
  • 学校とのやり取りも、日時と相手と返答をセットで記録する
  • 相談先は横に増やしてよい(教育委員会・人権相談・警察・法テラス・24時間子供SOSダイヤル)

いじめの対応は、親が「正解」を出す作業ではありません。子どもの安全を確保しながら、事実を残し、動くべき人に動いてもらう——その積み重ねです。一人で抱えず、今日のうちに一つの窓口に連絡するところから始めてください。

相談先(もう一度)

※この記事は、公的機関が公表している資料をもとに、家庭でできる対応を整理したものです。法律の解釈や個別の事案への当てはめについては、弁護士など専門家にご相談ください。制度や統計は文部科学省「いじめの問題に対する施策」文部科学省「いじめ防止対策推進法」などで最新の情報をご確認ください。

関連記事:いじめられやすい子に特徴はある?親が気づけるサインと対応ネットいじめ(SNS・LINE)の見つけ方と親の対応フリースクール完全ガイド発達特性のある子の居場所

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