いじめをする子の特徴と背景|「する側/される側」は入れ替わる。親ができる6つの手順

 「いじめをする子には、どんな特徴があるのか」。この問いを検索する人の多くは、加害の側を非難したいのではなく、わが子を守る手がかりを探しています。あるいは、自分の子が誰かを傷つけているかもしれないと気づいて、青ざめている保護者かもしれません。

 最初にお伝えしたいことがあります。「いじめをする子」という固定した人格タイプは、公的な資料のどこにも定義されていません。いじめは、特定の子の性格の問題というより、関係と環境の中で起きる出来事として扱われています。だからこそ、環境を変えれば止まることがあります。

保護者と子どもが向き合って話している場面。いじめの背景を知ることは、責めることとは違う
保護者と子どもが向き合って話している場面。いじめの背景を知ることは、責めることとは違う

この記事の要点(30秒)

  • 法律上の「いじめ」は加害者の意図ではなく、受けた側が心身の苦痛を感じているかで判断される
  • 「する側/される側」は入れ替わる。固定した性格タイプとして語ることには根拠がない
  • 背景として語られやすいのは①ストレスのはけ口 ②集団の力学 ③家庭での関わり ④特性の見落としの4つ
  • わが子が加害側だと分かったときの最初の72時間の対応を手順にしました
  • いじめが不登校につながったときの学びの場と相談先も最後にまとめています
目次

1. そもそも「いじめ」は、どう定義されているのか

 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第2条は、いじめを次のように定義しています。「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」e-Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」)。

 ここで決定的に重要なのは、「やった側にいじめる意図があったか」は要件に入っていないという点です。判断の基準は、受けた側が心身の苦痛を感じているかどうか。「そんなつもりはなかった」「じゃれていただけ」は、法律上の反論になりません。

よくある誤解 法律・国の資料での扱い
本人にいじめる意図がなければいじめではない 意図は要件に含まれない。受けた側の苦痛で判断される
一度きりならいじめではない 継続性は法律上の要件ではない
遊びやふざけの範囲なら問題ない 受けた側が苦痛を感じていれば該当しうる
ネット上のことは学校の管轄外 インターネットを通じて行われるものも明文で含まれる
当事者同士が納得すれば終わり 国は「解消」の判断に一定期間の状況確認を求めている(文部科学省「いじめの問題に対する施策」

 学校がいじめを認知した件数や、その後の対応状況は、文部科学省が毎年文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」として公表しています。国は令和6年度の結果を受けて、各自治体・学校に対応の充実を求める通知も出しています(文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」)。

2. 「いじめをする子」に固定したタイプはない——入れ替わるという事実

 保護者向けの記事では「攻撃的な子」「支配的な子」といった人物像が並べられがちです。しかし、いじめの当事者は固定されず、時期や集団が変われば立場が入れ替わることが知られています。国立教育政策研究所をはじめとする研究機関でも、いじめは特定の子の資質より集団の状況から説明されることが多くなっています。

 実際、加害側にいた子が、別の学年で被害側になることは珍しくありません。「あの子はいじめっ子だ」というラベルは、状況を固定してしまい、変化のきっかけを奪います。

この記事が「特徴」を扱う立場

以下で挙げるのは、「こういう子がいじめをする」という人格の話ではなく、「こういう状況で、いじめが起きやすい」という条件の話です。子どもを見分けるためではなく、環境を変えるために読んでください。特定の性格・家庭・特性を「いじめる側」と結びつける見方は、誤解と差別を生みます。

3. 背景として語られやすい4つの条件

① ストレスのはけ口がない

 学業、部活、家庭、習い事。負荷が高く、それを言葉にできる相手がいないとき、より弱い立場に向かうという形で発散が起きることがあります。「加害側の子も苦しい」と言うと被害側の家庭には受け入れがたいものですが、止めるための手がかりとしては重要です。

② 集団の力学——「やらないと次は自分」

 いじめは、直接手を下す子だけで成立しません。はやし立てる観衆、見て見ぬふりをする傍観者を含めた構造として理解されています。「やらないと次は自分が標的になる」という恐怖が、加担を生みます。この構造では、個人を叱っても再発が止まりません。

立場 実際の行動 介入のポイント
加害 直接、言葉や行動で傷つける 行為を止める。人格ではなく行為を明確に否定する
観衆 笑う、はやし立てる、動画を撮る ここが減ると加害は続かない。「面白くない」と言える空気をつくる
傍観 見ているが何もしない 「言っていい」と伝える。通報先を子どもが知っているかが鍵
仲裁 止める、大人に伝える 守られる仕組みが必要。仲裁した子が次の標的にならない配慮

③ 家庭での関わり——ただし「親のせい」ではない

 家庭で強い叱責や力による解決が日常になっていると、子どもがその方法を学習することがある、と言われています。ただしこれは「いじめる子の親はこういう人だ」という話ではありません。同じ環境でもそうならない子は多く、単純な因果で語ることはできません。断定を避けつつ、「家の中で、力で解決している場面がないか」を点検するという使い方が現実的です。

④ 特性の見落とし——悪意ではなく、伝わり方の問題

 距離感や言葉の強さの調整が苦手な特性があると、本人に悪意がなくても相手を傷つけてしまうことがあります。この場合、必要なのは叱責ではなく具体的な言い換えの練習と環境調整です。学校での配慮については特別支援教育の枠組みが使えることがあります。詳しくは発達障害とは?小学生の特徴と相談先をご覧ください。

 ただし、特性があることは加害を正当化しません。「特性のせいだから仕方ない」と説明されると、被害側は二重に傷つきます。行為は止める、そのうえで背景に応じた支援をする。この順番を崩さないことが大切です。

4. わが子が「する側」だと分かったとき——最初の72時間

 学校から連絡が来た、あるいはSNSで気づいた。頭が真っ白になる場面ですが、ここでの対応が、その後を大きく分けます。

わが子が加害側だと分かったときの手順

STEP 1

まず事実だけを聞く(責めない)

「本当なの!?」と詰めると、子どもは嘘で身を守ります。「何があったか、順番に教えて」と、時系列だけを聞き取ります。

STEP 2

行為を明確に否定する(人格ではなく)

「あなたは最低だ」ではなく「その行為は相手を傷つけた。だから止める」。人格を否定すると、反省ではなく自己防衛に入ります。

STEP 3

学校と事実認識をそろえる

学校側の把握内容と、家庭で聞き取った内容を突き合わせます。食い違いは隠さず共有します。

STEP 4

謝罪は相手の意向を最優先に

「早く謝らせて終わらせたい」は加害側の都合です。相手が会いたくない場合、対面の謝罪は二次被害になります。学校を介して意向を確認します。

STEP 5

背景を一緒に探す(再発防止)

なぜそうしたのか。ストレス、集団の圧力、特性、家庭の何か。ここを飛ばすと、形式的な謝罪で終わり、再発します。

STEP 6

必要なら第三者を入れる

スクールカウンセラー、自治体の教育相談(文部科学省「教育相談」)、法務省「こどもの人権110番」など。家庭だけで抱え込まないことです。

 なお、行為の内容によっては暴行・傷害・恐喝・名誉毀損などの法に触れることがあります。金品を奪う、身体を傷つける、ネット上に個人情報や画像を拡散するといった段階では、学校の指導だけでは収まりません(参考:警察庁「少年非行防止対策」)。

5. 「される側」の家庭が知っておきたいこと

 加害側の背景を知ることは、被害側が我慢する理由にはなりません。「相手にも事情がある」は、大人が構造を理解するための視点であって、子どもに伝える言葉ではありません。

場面 避けたい対応 取りたい対応
子どもが打ち明けた 「気にしすぎ」「やり返せ」 まず「話してくれてありがとう」。事実を日付つきで記録する
学校に伝える 感情だけをぶつける 日時・場所・内容・目撃者を書面で。記録の取り方と学校への伝え方を参照
ネット上の場合 本人にアカウントを消させて終わり スクリーンショットで証拠を保全してから対応。ネットいじめの証拠の残し方を参照
学校が動かない 諦める 教育委員会、法務省「こどもの人権110番」、法テラス等の外部窓口へ
子どもが行けなくなった 無理に登校させる 安全の確保が最優先。学びの場は学校だけではない(次章)

 被害を受けやすい状況についてはいじめられやすい子の特徴と、親ができること、小学校での学年別の傾向は小学校のいじめ|学年・性別別の特徴と対応にまとめています。

6. いじめから不登校になったとき、学びの場は複数ある

 いじめが理由で教室に行けなくなったとき、「元のクラスに戻す」以外の選択肢を、早い段階で知っておくことが子どもを守ります。無理な復帰は、二次的な傷を残すことがあります。

選択肢 費用 出席扱い 特徴
別室登校・保健室 無料 認められることが多い 在籍校のまま、教室以外で過ごす
教育支援センター
(適応指導教室)
原則無料 認められることが多い 自治体が設置。加害側と会わずに済む
転校 公立は無償 通常の出席 環境ごと変える。手続きは自治体に相談
学びの多様化学校 公立は無償 在籍を移すため「出席」 通学圏に設置がある場合
フリースクール 月1〜5万円台 校長判断 本人に合う居場所を選べる
オンラインの学び場 月1〜3万円台 要件を満たせば認められる場合がある 家から出られない時期でも始められる
親子が並んで本を読んでいる場面。教室に戻ること以外にも、学びを続ける方法はある
親子が並んで本を読んでいる場面。教室に戻ること以外にも、学びを続ける方法はある

 それぞれの詳細は不登校の基礎知識ガイドにまとめています。公的な選択肢は教育支援センター(適応指導教室)、民間はフリースクールとは?完全ガイドをご覧ください。

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7. 相談できる窓口(24時間・無料のものを含む)

 いま危険を感じている場合は、迷わず連絡してください。被害側からも、加害側の保護者からも相談できます。

窓口 対象・内容 連絡先
24時間子供SOSダイヤル 子ども本人・保護者。いじめや悩み全般。24時間 0120-0-78310
文部科学省「子供のSOSの相談窓口」
こどもの人権110番(法務省) 人権に関わる相談。いじめ・体罰・虐待 0120-007-110
法務省「こどもの人権110番」
チャイルドライン 18歳までの子ども。電話とチャット childline.or.jp
まもろうよ こころ(厚生労働省) 電話・SNS相談の一覧 厚生労働省「まもろうよ こころ」
自治体の教育相談センター いじめ・不登校・就学の相談。多くは無料 文部科学省「教育相談」
文部科学省のいじめ関連ページ 国の取組と相談先の案内 文部科学省「いじめ問題を含む子供のSOSに対する文部科学省の取組」
こども家庭庁 子ども・子育てに関する国の窓口 こども家庭庁

よくある質問(FAQ)

いじめをする子には共通の性格があるのですか?

公的な資料で「いじめをする子の性格類型」が定義されているわけではありません。当事者の立場は時期や集団で入れ替わることが知られており、性格より状況で説明されることが多くなっています。

うちの子が加害側だと言われました。まず何をすべきですか?

責める前に、時系列の事実だけを聞き取ってください。そのうえで行為を明確に否定し、学校と事実認識をそろえます。謝罪は相手の意向を最優先にしてください(4章の手順)。

「そんなつもりはなかった」と言っています。それでもいじめですか?

いじめ防止対策推進法の定義に、加害側の意図は含まれていません。受けた側が心身の苦痛を感じていれば該当しうる、というのが法律の考え方です(e-Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」)。

発達特性が背景にある場合はどうすればいいですか?

叱責より、具体的な言い換えの練習と環境調整が有効とされています。学校での配慮は特別支援教育の枠組みで相談できます。ただし特性は加害を正当化する理由にはなりません。

学校が「いじめではない」と言います。

認知の判断は学校が行いますが、保護者は教育委員会や外部の相談窓口に申し立てることができます。日時・場所・内容・目撃者を記録した書面が有効です。

加害側の子が転校すれば解決しますか?

環境が変われば止まることはありますが、背景が手つかずだと繰り返すことがあります。行為を止めることと、背景に手を入れることの両方が必要です。

いじめが原因で学校に行けません。出席はどうなりますか?

教育支援センターやフリースクールに通った日を、在籍校の校長の判断で出席扱いにできる場合があります。詳しくは不登校の基礎知識ガイドをご覧ください。

校長が解説する動画で理解する

 いじめが不登校につながっていく過程は、文章より映像のほうが伝わることがあります。オルタナティブスクール校長・星野達郎による解説です。

子どもが学校に行けなくなるまでの本当の理由|「急に行きたくなくなる」のではありません

【危険信号】子どもの不登校SOSサイン|あなたは気付けていますか?

動画の要点を、この記事の文脈で読み直す

 子どもが学校に行けなくなるまでには、たいてい段階があります。「急に行きたくなくなる」のではなく、小さな我慢が積み重なった結果として、ある朝、体が動かなくなる。いじめが背景にある場合、その積み重ねの期間はさらに長くなります。「言えなかった期間」が先にあるからです。

 だからこそ、加害の側を特定して終わりにするのではなく、その子が「言えなかった」環境そのものを点検する必要があります。通報の入口が担任ひとりしかない、相談したことが本人に伝わってしまう、相談しても「様子を見ましょう」で終わる——こうした条件が揃っているとき、子どもは黙ります。

 保護者にできるのは、学校以外の相談先を、子ども自身が知っている状態にしておくことです。電話番号を紙に書いて家に貼っておくだけでも、「いざとなれば自分で連絡できる」という感覚が残ります。この記事の7章にまとめた窓口は、すべて子ども本人から直接かけられます。

まとめ|見分けるためではなく、変えるために

 「いじめをする子の特徴」を知りたいという気持ちの奥には、たいてい「もう二度と、うちの子に同じことを起こしたくない」という願いがあります。ですが、子どもをタイプで見分けようとすると、たいてい外れます。立場は入れ替わり、環境が変われば行動も変わるからです。

 代わりに見るべきは、その集団に、逃げ場があるか。言っていい相手がいるか、観衆が減る空気があるか、大人が事実として受け取ってくれるか。ここが変われば、加害も被害も減ります。

 そして、いま傷ついている子がいるなら——その教室に戻すことだけが解決ではありません。学びの場は複数あります。安全を確保してから、次を考えて大丈夫です。

ここまでは制度の話でした。ただ、保護者の方がいちばん知りたいのは「実際にその子はどうなったのか」だと思います。NIJINアカデミーに通う子どもたちと保護者の話を、そのまま記事にしています。

実際に通っている子どもたち・保護者の話

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