「なぜ、いじめは起きるのか」。この問いに、感情論ではなく公的な統計で答えるページです。ネット上には根拠不明の「原因ランキング」が並んでいますが、ここで扱うのは文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」という、国が毎年公表している実際のデータです。
結論から言うと、いじめの中身は「暴力」ではなく「言葉」が圧倒的多数です。そして、その事実を知っているかどうかで、家庭でのサインの拾い方が変わります。

この記事の要点(30秒)
- 国の調査でいちばん多いいじめは冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる(58.5%)
- いじめの認知件数は769,022件(過去最多・4年連続の増加)(令和6年度(2024年度)調査)
- 発見のきっかけはアンケート調査など学校の取組により発見が最多。本人の訴えだけを待っていると気づけない
- 「原因ランキング」として語られる理由(動機)は統計では取られていない——ここを混同しない
- 気づいたときにやること、相談窓口、学びの場までを最後にまとめています
1. 統計でいちばん多い「いじめの態様」ランキング
文部科学省の調査では、いじめを「態様(どんな行為だったか)」という区分で集計しています。令和6年度(2024年度)調査の結果は次のとおりです。
いじめの態様(令和6年度・小中高・特別支援学校の合計/複数回答)
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」。認知件数769,022件に対する構成比(複数回答のため合計は100%を超えます)。
| 順位 | いじめの態様 | 構成比 | 件数 | 家庭で気づけるサイン |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる | 58.5% | 450,177件 | 口数が減る、特定の子の名前を出さなくなる、あだ名を嫌がる |
| 2 | 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする | 22.4% | 172,258件 | 「ふざけているだけ」と説明する、体育や休み時間を嫌がる |
| 3 | 仲間はずれ、集団による無視をされる | 11.6% | 89,081件 | 休み時間の話をしなくなる、班・グループ決めの日を休みたがる |
| 4 | 嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする | 11.2% | 86,448件 | お金の減りが早い、決まった役割を押しつけられている様子 |
| 5 | ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする | 6.8% | 52,647件 | あざ・傷の説明があいまい、服の汚れや破れ |
| 6 | 金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする | 5.4% | 41,902件 | 文房具や体操着を頻繁になくす、買い直しが増える |
| 7 | パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる | 3.6% | 27,365件 | スマホを見たあとに表情が変わる、通知を隠す、SNSをやめる |
| 8 | 金品をたかられる | 1% | 7,884件 | 財布の中身が合わない、おごった話をする |
上位を占めるのは、目に見える暴力ではなく「言葉」です。あざや破れた服のような物的な痕跡が残らないため、保護者も教員も気づきにくい。これが、いじめの発見が遅れる最大の理由です。出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(同調査結果の概要(PDF))。
小学校・中学校・高校で、いじめの中身は変わる
同じ調査を学校種別に見ると、年齢が上がるほど「ネット上のいじめ」の割合が跳ね上がることが分かります。
| いじめの態様 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|---|
| 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句 | 57.5% | 63.3% | 62.0% |
| 軽くぶつかる・遊ぶふりをして叩く・蹴る | 24.5% | 14.8% | 8.5% |
| 仲間はずれ、集団による無視 | 12.2% | 8.5% | 15.5% |
| 嫌なこと・恥ずかしいこと・危険なことをさせられる | 11.7% | 9.5% | 8.3% |
| ひどくぶつかる・叩く・蹴る | 7.0% | 6.3% | 4.0% |
| 金品を隠す・盗む・壊す・捨てる | 5.6% | 4.9% | 4.8% |
| パソコンや携帯電話等でのひぼう・中傷 | 1.9% | 9.3% | 13.9% |
| 金品をたかられる | 1.0% | 1.1% | 2.1% |
中学校・高校ではネット上のいじめの割合が小学校の5〜7倍。高校だけは2番目に多いのが「仲間はずれ・無視」です。スマホを持ち始める時期と重なるため、中学入学のタイミングで見るべきものが変わります。ネット上のものへの対応はネットいじめ(SNS・LINE)の見つけ方と親の対応にまとめています。
2. 「原因ランキング」と「態様ランキング」は違う
検索でよく使われる「いじめの原因ランキング」という言葉には、注意が必要です。国の調査は「どんな行為だったか(態様)」は集計していますが、「なぜやったか(動機)」は集計していません。
| よく混同されるもの | 中身 | 公的な統計は? |
|---|---|---|
| いじめの態様 | 悪口、無視、たたく、ネットでの中傷など、行為の種類 | あり(文科省の調査) |
| いじめの原因・動機 | なぜその子がやったのか、という理由 | なし(全国調査としては集計されていない) |
| いじめのきっかけ | 外見、成績、転校、グループの変化など | なし(個別事案の調査で扱われる) |
| 発見のきっかけ | 誰が、どうやって気づいたか | あり(文科省の調査) |
つまり、ネット記事にある「いじめの原因ランキング1位は〇〇」の多くは、民間アンケートか、書き手の経験にもとづく整理です。それが無価値というわけではありませんが、国の統計と同じ重みで扱うべきではありません。この記事では、統計で確認できることと、現場で語られることを分けて書きます。
3. 現場で語られる「いじめが起きやすい条件」
動機の全国統計はありませんが、学校現場と研究の蓄積から、いじめが起きやすい条件はある程度共有されています。以下は原因の断定ではなく、環境を点検するためのチェックリストとして読んでください。
| 条件 | 具体的な状況 | 大人が打てる手 |
|---|---|---|
| 集団が閉じている | クラス替えが少ない、人間関係が固定、逃げ場がない | 委員会・部活・校外など、別の所属をつくる |
| 同調圧力が強い | 「みんなと同じ」が求められる。違いが目立つと標的化 | 違いを前提にした学級運営。個別の配慮を可視化する |
| ストレスが高い | テスト前、行事前後、部活の勝敗など負荷が集中する時期 | 負荷が高い時期に、意図的に相談の機会を増やす |
| 大人の目が届かない | 休み時間、登下校、SNS上、オンラインゲーム内 | 通報の入口を複数用意する(担任以外・匿名・外部窓口) |
| 傍観が黙認になっている | 「関わると自分が標的」という空気 | 傍観者に働きかける。守られる仕組みを先に示す |
| 特性が理解されていない | 距離感や言葉の調整が苦手/こだわりが強い | 特別支援教育の枠組みで環境調整を相談 |
なぜ「する側」になるのかについてはいじめをする子の特徴と背景、「される側」の状況についてはいじめられやすい子の特徴と、親ができることで詳しく扱っています。
4. いじめはどうやって見つかっているのか
文部科学省の調査では、「発見のきっかけ」も集計されています。ここは、家庭にとってきわめて実用的なデータです。
| 順位 | 発見のきっかけ | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | アンケート調査など学校の取組により発見 | 48% |
| 2 | 本人からの訴え | 19.6% |
| 3 | 本人の保護者からの訴え | 13.9% |
| 4 | 学級担任が発見 | 9.3% |
| 5 | 本人以外の児童生徒からの情報 | 3.9% |
| 6 | 学級担任以外の教職員が発見 | 3.1% |
| 7 | 本人の保護者以外の保護者からの情報 | 1.4% |
| 8 | 養護教諭が発見 | 0.3% |
| 9 | スクールカウンセラー等の相談員が発見 | 0.2% |
注目すべきは、「本人からの訴え」で見つかったのは19.6%にすぎないという点です。最も多いのは学校のアンケート(48.0%)。つまり子どもの多くは、自分からは言い出しません。一方で「本人の保護者からの訴え」が13.9%を占めており、家庭が気づいて動いたケースが約7件に1件あることも分かります。なお、いじめを受けた子のうち4.0%は誰にも相談していません。
家庭でできる、いちばん現実的な備え
- 「話してくれてありがとう」を先に用意しておく。打ち明けた瞬間の第一声で、次に話すかどうかが決まります
- 「言いつけ」ではないと伝えておく。子どもは「チクった」と思われることを最も恐れます
- 学校以外の相談先を、子ども自身が知っている状態にする。電話番号を家に貼っておくだけでも違います
- 変化は「持ち物・食欲・睡眠・スマホの使い方」に出る。言葉より先に生活に出ます
5. いじめの認知件数と、重大事態
令和6年度(2024年度)調査の調査では、いじめの認知件数は769,022件(過去最多・4年連続の増加)でした。
| 学校種 | 認知件数 |
|---|---|
| 小学校 | 610,612件(児童1,000人あたり101.9件) |
| 中学校 | 135,865件(生徒1,000人あたり42.6件) |
| 高等学校 | 18,891件(生徒1,000人あたり5.9件) |
| 特別支援学校 | 3,654件(1,000人あたり23.8件) |
| 合計 | 769,022件(1,000人あたり61.3件) |
前年度から36,454件(5.0%)増えて過去最多です。いじめを認知した学校は全36,003校のうち30,204校=83.9%。圧倒的に多いのは小学校で、全体の約8割を占めます。「いじめは中学生の問題」というイメージとは実態が違います。
重大事態は過去最多。しかも3件に1件は「気づかれていなかった」
重大事態(いじめ防止対策推進法第28条第1項)の発生件数は1,404件で、こちらも過去最多でした。深刻なのは、そのうち34.9%が「いじめとして認知していなかった」事案だったという点です。重大化するまで気づかれていなかったケースが、3件に1件あります。また、警察に相談・通報された件数は3,272件(全体の0.4%)でした。
「解消」は謝罪した時点ではない
同じ調査で、年度末時点で「解消している」とされたのは76.1%(585,349件)です。国の基本方針では、解消の判断に「いじめに係る行為が止んでいる状態が少なくとも3か月継続していること」と「被害を受けた子が心身の苦痛を感じていないこと」の2つが求められています。謝罪した時点では解消ではありません。
なお、認知件数が多い学校=いじめが多い学校、ではありません。国は小さな事案も見逃さず把握することを求めており、認知件数の増加は把握の精度が上がった結果としても説明されます(文部科学省「いじめの問題に対する施策」)。国立教育政策研究所「いじめ追跡調査 2019-2022」(PDF)も、認知件数は「学校が把握できた件数」であって「実際に起きた数」ではないと明記しています。
追跡調査が示す「特別な子の問題ではない」という事実
国立教育政策研究所は、同じ地域の小中学校を長期にわたって追跡する「いじめ追跡調査」を続けています。2016-2018年版では、小学4年生から6年生までの3年間で「仲間はずれ・無視・陰口」の被害を経験した子は87%、加害を経験した子は86%という結果が公表されています(国立教育政策研究所「いじめ追跡調査 2016-2018」(PDF))。中学1年から3年の3年間でも、被害71%・加害72%です。
この数字が意味するのは、暴力を伴わないいじめは、特定の「いじめっ子」だけが起こしている問題ではないということです。ほとんどの子が、どこかの時点で被害側にも加害側にもなりうる。だからこそ、犯人探しではなく環境の設計が効きます。
6. 気づいたときに、家庭がやること
「いじめかもしれない」と思ったときの動き方です。順番を守ることが、子どもを守ります。
いじめに気づいたときの5ステップ
まず安全を確保する
身体的な危険がある、死にたいという言葉が出ている場合は、登校より安全が最優先です。その日は休ませて構いません。
事実を日付つきで記録する
いつ・どこで・誰が・何を・目撃者。記憶ではなく記録にします。スマホのメモで十分です。
ネット上のものは証拠を保全する
本人にアカウントを消させる前に、スクリーンショットを撮ります。消すと立証できなくなります。
学校へ書面で伝える
感情ではなく事実で。「対応をお願いしたい」ではなく「この事実をどう扱うかご相談したい」の形が通りやすいです。
学校が動かないときは外部へ
教育委員会、こどもの人権110番、自治体の教育相談など。家庭だけで抱えないことです。
具体的な書き方と学校への伝え方は子どもがいじめられたら親はどうする?記録の取り方から学校への伝え方まで、SNS・LINE上のものはネットいじめの見つけ方と証拠の残し方にまとめています。
7. 学校に行けなくなったとき——選択肢は複数ある
いじめが理由で教室に行けなくなったとき、「同じ教室に戻す」以外の道を早く知っておくことが、子どもを守ります。無理な復帰は二次的な傷を残すことがあります。
| 選択肢 | 費用 | 出席扱い | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 別室登校・保健室 | 無料 | 認められることが多い | 在籍校のまま、教室以外で過ごす |
| 教育支援センター (適応指導教室) |
原則無料 | 認められることが多い | 自治体が設置。相手と会わずに済む |
| 転校 | 公立は無償 | 通常の出席 | 環境ごと変える。手続きは自治体に相談 |
| フリースクール | 月1〜5万円台 | 校長判断 | 本人に合う居場所を選べる |
| オンラインの学び場 | 月1〜3万円台 | 要件を満たせば認められる場合がある | 家から出られない時期でも始められる |
全体像は不登校の基礎知識ガイド、公的な選択肢は教育支援センター(適応指導教室)、民間はフリースクールとは?完全ガイドをご覧ください。

同じ教室に戻ることだけが、解決ではありません
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8. 相談できる窓口(24時間・無料のものを含む)
いま危険を感じている場合は、迷わず連絡してください。子ども本人からも、保護者からも相談できます。
| 窓口 | 対象・内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル (文部科学省) |
子ども本人・保護者。いじめや悩み全般 | 0120-0-78310 24時間・年中無休・無料 公式ページ |
| こどもの人権110番 (法務省) |
人権に関わる相談。いじめ・体罰・虐待 | 0120-007-110 平日 8:30〜17:15 公式ページ |
| チャイルドライン | 18歳までの子ども本人。電話とチャット | 0120-99-7777 毎日 16:00〜21:00 公式サイト |
| いのちの電話 | つらい気持ちを聞いてほしいとき | 0120-783-556 毎日 16:00〜21:00 公式サイト |
| こどもの相談窓口 (こども家庭庁) |
子どもと家庭に関する相談の総合案内 | 公式ページ |
| 都道府県警察の少年相談窓口 | 犯罪に当たりうる行為が含まれるとき | 警察庁の一覧 |
| 自治体の教育相談センター | いじめ・不登校・就学の相談。多くは無料 | 文部科学省「教育相談」 |
| まもろうよ こころ (厚生労働省) |
電話・SNS相談窓口の一覧 | 公式ページ |
よくある質問(FAQ)
いじめでいちばん多いのは、どんな行為ですか?
国の調査では「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多く、58.5%を占めています(令和6年度(2024年度)調査/文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)。暴力より言葉によるものが圧倒的多数です。
「いじめの原因ランキング」は公的に発表されていますか?
いいえ。国が集計しているのは「態様(どんな行為か)」と「発見のきっかけ」で、動機の全国統計はありません。原因ランキングを名乗る情報の出典は必ず確認してください。
一度きりの行為でも、いじめになりますか?
いじめ防止対策推進法の定義に継続性の要件はありません。受けた側が心身の苦痛を感じていれば該当しうる、というのが法律の考え方です(e-Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」)。
子どもが何も言いません。どうやって気づけばいいですか?
国の調査でも、本人の訴えより学校のアンケートで見つかる割合のほうが高くなっています。持ち物・食欲・睡眠・スマホの使い方など、言葉より先に生活に出る変化を見てください。
学校が「いじめではない」と言います。
認知の判断は学校が行いますが、保護者は教育委員会や外部窓口に申し立てできます。日時・場所・内容・目撃者を記録した書面が有効です。
いじめが理由で不登校になりました。出席はどうなりますか?
教育支援センターやフリースクールに通った日を、在籍校の校長の判断で出席扱いにできる場合があります。詳しくは不登校の基礎知識ガイドをご覧ください。
校長が解説する動画で理解する
統計で全体像をつかんだあとは、現場の視点も合わせて見てみてください。オルタナティブスクール校長・星野達郎による解説です。
【危険信号】子どもの不登校SOSサイン|あなたは気付けていますか?
子どもが学校に行けなくなるまでの本当の理由|「急に行きたくなくなる」のではありません
まとめ|「言葉」が最多だと知っているだけで、拾えるサインが増える
いじめの中身は、ドラマで描かれるような暴力ではなく、冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われるが最も多い。この一点を知っているだけで、家庭で見るポイントが変わります。あざを探すのではなく、言葉数、表情、スマホを見るときの顔つきを見る。
そして、動機の統計はありません。「なぜやったのか」を突き止めることに時間を使うより、いま起きている行為を止め、子どもの安全を確保するほうが先です。
もし学校に行けなくなったとしても、学びの道は複数あります。焦らず、安全を確保してから次を考えて大丈夫です。
ここまでは制度の話でした。ただ、保護者の方がいちばん知りたいのは「実際にその子はどうなったのか」だと思います。NIJINアカデミーに通う子どもたちと保護者の話を、そのまま記事にしています。
実際に通っている子どもたち・保護者の話
※ 統計と制度について
このページの数値は文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和6年度(2024年度)調査)の公表値です。調査は毎年更新されるため、最新の数値は必ず出典元でご確認ください。また、個別の事案の判断・制度の適用については、在籍校およびお住まいの自治体にご相談ください。

