女の子のADHDは見逃されやすい|不注意優勢型のサインと、気づいたらできること

「授業中に立ち歩くわけでもない」「先生からは“おとなしい子”と言われる」。それなのに、家では宿題に何時間もかかり、持ち物が毎日どこかへ消えていく——。そんな様子を見て、「ADHDかもしれない」と検索してこのページにたどり着いた方が多いかもしれません。

ADHD(注意欠如・多動症)というと、じっとしていられない、しゃべりすぎる、といった目に見える動きが想像されがちです。けれど実際には、不注意のほうが強く出ていて、動きの派手さがないタイプがあります。動きが目立たない子は、教室の中で困っていても「困っている子」として数えられにくく、気づかれるまでに時間がかかることがあります。

この記事は、その「気づかれにくさ」そのものをテーマにしています。「女の子だからこうだ」という決めつけではなく、不注意が中心に出るタイプは、性別にかかわらず周囲から見えにくい——という視点で、公的な調査や学会の資料をもとに整理しました。

この記事でわかること

  • 「不注意優勢型」とは何か。ADHDの現れ方の整理
  • 国の調査データが示す「気づかれ方の差」と、その数字の正しい読み方
  • 不注意が中心の子が、周囲から気づかれにくくなる6つの理由
  • 家庭では見えるのに学校では見えない(またはその逆の)サインの違い
  • 「女の子だから」と決めつけることの落とし穴
  • 気づいたあと、家庭で最初にできること・学校への伝え方・相談先

この記事の位置づけ

ADHDそのものの基礎(3つのタイプ・年齢別の現れ方)は ADHD(注意欠如・多動症)とは?特性の3タイプ・年齢別の現れ方と相談の目安、日常の声かけと叱り方は ADHDの子への接し方|やってはいけない叱り方と、届く声かけ、自己否定や不登校といった二次障害の予防は ADHDの二次障害とは?不登校・自己否定を防ぐために家庭でできること で扱っています。この記事は「気づかれにくさ」と、気づいたあとの最初の一歩に特化した内容です。

目次

まず前提:ADHDは「動きの派手さ」だけで判断されるものではありません

一般社団法人 日本発達障害ネットワークが国の事業で作成した「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」は、発達障害の困難度について「周囲の環境や状況の影響も受けやすく、同じ人であっても『できることとできないこと、できるときとできないとき、できる場所とできない場所』にムラがあります」と説明しています。そして、そのわかりにくさのために、家庭や学校での失敗に対して「わざとやっている」「やる気がない」といった叱責が繰り返されてしまいがちだ、と指摘しています(ペアレント・トレーニング実践ガイドブック/PDF)。

日本小児神経学会は、ADHDを「年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、および・または衝動性や多動性の問題のために社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、12歳以前にその特徴が現れ、その状態が持続する状態」と定義されると説明しています(日本小児神経学会「Q68:注意欠如・多動症(ADHD)とはどんな疾患ですか?」)。ここで注目したいのは、「および・または」という書き方です。多動・衝動性がなくても、注意力の問題だけで日常に支障が出ている状態は想定されています。

国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターも、AD/HDの特徴を「注意持続の欠如もしくは、その子どもの年齢や発達レベルに見合わない多動性や衝動性、あるいはその両方」と説明しています(発達障害情報・支援センター「各障害の定義」)。つまり、「落ち着きがない」は必須条件ではありません。

ADHDの現れ方のイメージ(比較表)
現れ方教室での見え方家庭での見え方気づかれやすさ
不注意が中心静かに座っている。ぼんやりしている時間が長い。板書が写しきれない。忘れ物が多い。宿題に時間がかかる。片づかない。持ち物が見つからない。声をかけても返事だけで動かない。気づかれにくい(授業を止めないため)
多動・衝動性が中心離席、私語、順番が待てない、思ったことをすぐ口に出す。じっとしていない。ケガが多い。きょうだいげんかが増える。気づかれやすい(周囲に影響が出るため)
両方が混ざって出る場面によって、静かなときと動きが大きいときの差が大きい。日や時間帯で調子の差が大きい。場面によって評価が割れやすい

この記事で「不注意優勢型」と呼ぶのは、1列目のような現れ方が中心になっている状態を指しています。診断名としてどう分類されるかは医師の判断によるものですが、保護者が最初に困るのは「うちの子の困りごとは、この列に近い」という気づきのほうです。

ランドセルを背負った女の子が、迎えに来た保護者に笑顔で手をふっている場面

数字で見る「気づかれ方の差」──文部科学省の全国調査から

文部科学省が令和4年に公表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」は、全国の通常の学級を対象にした大規模な標本調査です(文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」)。この調査の調査結果報告書(PDF)には、保護者が知っておくと役に立つ数字がいくつも載っています。

小学校・中学校 通常の学級での推定値(令和4年 文部科学省調査・表4より)
項目推定値95%信頼区間
学習面又は行動面で著しい困難を示す8.8%8.4%〜9.3%
「不注意」の問題を著しく示す3.6%3.3%〜3.8%
「多動性-衝動性」の問題を著しく示す1.6%1.4%〜1.7%
「不注意」又は「多動性-衝動性」の問題を著しく示す4.0%3.7%〜4.3%
「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示す1.7%1.5%〜1.9%

ここで目を引くのは、「不注意」の3.6%が「多動性-衝動性」の1.6%の2倍以上あるという点です。担任の先生から見て「困難が著しい」とされた子のうち、動きの派手さではなく不注意で困っている子のほうが多いという結果になっています。にもかかわらず、社会一般のADHDのイメージは多動のほうに寄りがちです。このズレが、「気づかれにくさ」の背景にあります。

同じ報告書には、男女別の集計も載っています。

小学校・中学校 男女別の推定値(令和4年 文部科学省調査・表5より)
項目男子女子
学習面又は行動面で著しい困難を示す12.1%(11.5〜12.8%)5.4%(5.0〜5.8%)
「学習面」で著しい困難を示す8.3%(7.8〜8.8%)4.5%(4.2〜4.9%)
「不注意」又は「多動性-衝動性」の問題を著しく示す6.6%(6.1〜7.0%)1.4%(1.2〜1.6%)
「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示す2.7%(2.3〜3.0%)0.7%(0.5〜0.8%)

この数字の読み方に、必ず添えたい注意書き

同報告書の留意事項には、この調査が「学級担任等による回答に基づくもので、発達障害の専門家チームによる判断や、医師による診断によるものではない」こと、したがって「発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すもの」であることに留意する必要がある、と明記されています。

つまりこの男女差は、「実際にADHDのある子の男女比」ではなく、「担任の先生から見て困難が目立った割合」の差です。困っている子の数そのものではなく、“どれくらい気づかれたか”を映した数字として読むのが正確です。

この読み方を補強する記述が、日本小児神経学会のQ&Aにもあります。同学会は、学習面または行動面で著しい困難を示す子の割合について触れたうえで、「男児が女児の約3-5倍とされていますが、思春期になると多動衝動性が軽減することもあり性差はほとんどなくなるとされています」と説明しています(日本小児神経学会 Q68)。学齢期に見える差が、そのまま生涯の差ではない、ということです。

高等学校段階の数字も示唆的です。同報告書によれば、高等学校では「不注意」の問題を著しく示すとされた割合が0.9%(0.7〜1.2%)、「多動性-衝動性」が0.2%(0.1〜0.4%)と、不注意のほうが目立つ形に変わっています。年齢が上がるほど、困りごとは「動き」ではなく「段取り・持続」の側に集まっていくと読めます。

女の子が机に向かい、鉛筆を持って一人で課題に取り組んでいる場面

不注意が中心の子が、周囲から気づかれにくくなる6つの理由

「なぜ見逃されるのか」を分解すると、多くは子ども側の問題ではなく、見る側の仕組みの問題です。6つに整理します。

気づかれにくさの構造(理由と、それが起きる場面)
理由何が起きているか典型的な場面
① 授業が止まらない離席や私語と違い、ぼんやりしていても授業運営に支障が出ません。先生の「気になる子リスト」に上がりにくくなります。一日中静かに座っていて、放課後に「今日も特に問題ありませんでした」と言われる
② 困りごとが自宅に集中する集中を保つ努力を学校で使い切り、帰宅後に疲れとして出ます。家庭と学校で見える姿が食い違います。学校では「しっかりした子」、家では宿題に取りかかれず崩れる
③ 表面上は結果が出てしまう手先の器用さやまじめさで補えているうちは、テストの点や提出物が「なんとかなって」しまいます。成績は悪くないので、努力の量が誰にも見えない
④ 本人が助けを求めない「みんなも同じくらい大変なはず」と思い込み、困っていること自体を言葉にできないことがあります。「困ってる?」と聞かれて「大丈夫」と答えてしまう
⑤ 周囲の評価語が肯定的「おっとりしている」「マイペース」「天然」といった言葉に置き換えられ、支援の話につながりません。面談で「性格ですね」で終わる
⑥ ADHD=多動という思い込み保護者自身も「うちの子は落ち着いているからADHDではない」と判断してしまいます。チェックリストの多動の項目に当てはまらず、調べるのをやめる

③と④は、二次的な問題につながりやすい組み合わせです。日本小児神経学会は、ADHDの中核となる症状以外にも、その特徴を理解されないまま不適切な状況・対応が続くと、叱られ続けることなどで自尊心・自己評価が低くなるなど二次的な問題が生じる可能性があると説明しています。そして「ADHDの診断と治療が早期に適切に行われるほど予後が良いというのはこのためです」としています(同 Q69 も参照)。

サインは「家で見えるもの」と「学校で見えるもの」に分かれます

気づかれにくいタイプの場合、ひとつの場所だけを見ていても像が結びません。家と学校の両方から情報を集めて、はじめて「同じ困りごとが場所を変えて出ている」ことが見えてきます。

場面別に現れやすいサインの例(診断のためのものではありません)
場面見えやすいサイン見落とされやすい言い換え
朝の支度声をかけないと進まない。途中で別のことを始める。「朝が弱いだけ」
学校の授業板書が最後まで写せない。話の途中から内容が抜ける。「ノートが苦手なだけ」
持ち物教科書・体操服・提出物が繰り返しなくなる。ランドセルの底に紙が溜まる。「だらしないだけ」
宿題取りかかるまでが長い。始めれば早い日と、まったく進まない日の差が大きい。「気分屋」
友だち関係会話の流れを取り違える。約束の時間や場所を忘れる。「マイペース」
帰宅後玄関で力尽きる。学校の話を聞くと不機嫌になる。「反抗期」
気持ち「私はダメだ」「みんなはできるのに」と口にする。「思春期だから」

保護者が今日から1週間だけ記録してみるとよいこと

  • 声をかけた回数ではなく、「どの場面で」止まったか(朝/宿題/片づけ/就寝前)
  • できた日と、できなかった日の違い(睡眠・予定の量・前日の出来事)
  • 学校から持ち帰るもの(連絡帳・プリント)がそろっている日の割合
  • 本人が口にした自己評価のことばをそのまま書き留める
  • できていることも同じ数だけ書く(記録が責める材料にならないように)

この記録は、診断のためのものではありません。担任や相談機関に「困りごとを具体的に伝えるための材料です。「よく忘れ物をします」より、「1週間で、体操服2回・宿題プリント3回。朝は自分で確認していますが、前日に用意した分は忘れません」のほうが、次の一手につながります。

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「女の子だから」と決めつけないために

この記事のタイトルには「女の子」という言葉が入っています。検索する方がその言葉で探しているためですが、内容としては性別で分けて理解することを勧めていません。理由は3つあります。

性別で決めつけないほうがよい3つの理由

1

① 数字は「気づかれ方」を映している

前掲の文部科学省調査は担任等の回答に基づくもので、報告書自身が「発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではない」と明記しています。男女差をそのまま特性の差と読むことはできません。

2

② 不注意が中心の男の子も、当然います

「男の子=多動」という枠に当てはめると、静かに困っている男の子が同じように見落とされます。困りごとの形で見るほうが、取りこぼしが減ります。

3

③ 期待の差が、判断をゆがめることがある

「女の子なんだからきちんと」「男の子は落ち着きがなくて当たり前」といった周囲の期待は、同じ行動でも受け取られ方を変えます。子どもの特性ではなく、大人の側のものさしの話です。

ですから、この記事で伝えたいことは「女の子はこうです」ではなく、「動きが目立たない子は、性別にかかわらず気づかれにくい。だから意識して見にいく必要がある」という一点です。

ありがちな言い換えに注意

  • 「おとなしい=困っていない」ではありません
  • 「成績がよい=支援が要らない」ではありません
  • 「家でだけ荒れる=甘え」ではありません(学校で使い切っている可能性があります)
  • 「診断がない=支援が受けられない」ではありません(相談は診断前からできます)

見落とされたまま時間が経つと、何が起きるのか

前掲のペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、困難が理解されないまま叱責が繰り返されると、子どもは「一生懸命がんばっているのに、周りの子と同じようにはできない」「親や先生に叱られてばかり」と自尊感情(セルフエスティーム)を低下させ、やる気を失ったり、イライラが強まったりすることもよくある、と説明しています。そして、そのような状態が続くと、本人の日常生活・社会生活の困難が増していってしまう、としています。

気づかれにくいタイプで起きやすい積み重なり
段階起きていること周囲からの見え方
1. 努力で埋める人の何倍も確認・見直しをして、なんとか間に合わせている「問題なくやれている」
2. 疲れが家に出る帰宅後に動けない。宿題で崩れる。感情の起伏が大きくなる「家でだけわがまま」
3. 自己評価が下がる「私は要領が悪い」「みんなより頭が悪い」と本人が言い始める「自信がないだけ」
4. 回避が始まる苦手な教科・場面を避ける。朝の体調不良が増える「怠けている」
5. 学校に行きづらくなる登校しぶり、欠席が増えるここで初めて相談につながることが多い

5の段階で初めて気づかれるケースは、決して珍しくありません。だからこそ、1や2の段階で「気のせいかもしれないけれど」と相談してよいのです。くわしくは ADHDの二次障害とは?不登校・自己否定を防ぐために家庭でできることADHDと不登校の関係|二次障害を防ぐために親ができること で扱っています。

子どもが庭先の机で、好きな工作に夢中になって手を動かしている場面

気づいたあと、家庭でまず変えるとよい3つのこと

診断の有無にかかわらず、今日から動かせるところから始めます。ポイントは「本人を変える」より先に「場面を変える」ことです。

順番のある3ステップ

1

① 責める言葉を、事実の言葉に置き換える

「またなくしたの?」→「体操服、今どこにあるか一緒に探そう」。責任の追及をやめると、本人が困りごとを口に出せるようになります。

2

② できている25%を口に出す

前掲ガイドブックの「25%ルール」は、できていない部分に目を向けるのではなく、やるべきことの25%でもできていればその部分をすかさずほめる、という考え方です。「宿題を出した」だけでも声に出します。

3

③ 記憶に頼る場面を減らす

持ち物や手順を、頭の中ではなく紙・ボード・アラームに預けます。「覚えていられない」を叱る対象から外します。

具体的な仕組みのつくり方(置き場所の決め方、チェックリストの作り方、タイマーの使い方など)は、ADHDの子の宿題・忘れ物が減る仕組みづくり|叱らずに続く工夫 にまとめています。日常の声かけ・叱り方については ADHDの子への接し方|やってはいけない叱り方と、届く声かけ をあわせてご覧ください。

学校に相談するときの、伝え方の型

「診断がないと相談できない」と思われがちですが、そうではありません。学校への相談は「困っている場面」を具体的に共有するところから始まります。

担任・学校に伝えるときの4ステップ

1

① 事実だけを、場面ごとに

「1週間で、板書が最後まで写せなかった日が4日ありました」のように、回数と場面をセットにします。評価語(だらしない、集中力がない)は使いません。

2

② 家での様子とセットにする

「学校では静かに座っていると聞いていますが、帰宅後は玄関で30分動けない日があります」。学校からは見えない情報を渡します。

3

③ 相談したい相手を確認する

担任だけでなく、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、養護教諭など、校内に相談の窓口があります。「どなたに相談すればよいですか」と聞いて構いません。

4

④ お願いは小さく、ひとつずつ

「板書の写真を撮らせてもらえないか」「提出物の締切を連絡帳に一行書いてもらえないか」など、実行できる大きさで具体的に。

学校での支援の枠組みとしては、通常の学級に在籍しながら一部の時間に特別な指導を受ける「通級による指導」があります(文部科学省「通級による指導について」)。また、障害者差別解消法にもとづく合理的配慮の考え方については 内閣府「障害者差別解消法」 と、具体例をまとめた 内閣府「合理的配慮の提供等事例集」 が参考になります。校内体制の整え方は 文部科学省「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」 に示されています。

相談先の使い分け(比較表)

「どこに行けばいいかわからない」で止まってしまうことが多いので、目的別に整理します。診断がなくても相談できる窓口がほとんどです。

目的別の相談先(比較表)
相談したいこと主な窓口特徴
学校での困りごと担任/特別支援教育コーディネーター/スクールカウンセラー最も早く動ける。まずはここから
学校以外で第三者に聞きたい市区町村の教育委員会 教育相談・教育支援センター(適応指導教室)就学・不登校・学びの場の相談ができる
発達特性の相談全般発達障害者支援センター(都道府県・指定都市)本人・家族の相談、関係機関の紹介。診断がなくても相談可
子育て・福祉の手続きこども家庭庁「障害児支援」/市区町村の障害福祉担当児童発達支援・放課後等デイサービス等の制度
医療機関を探したい小児科・児童精神科・かかりつけ医からの紹介受診の前に、上記の窓口で相談先を教えてもらうのが近道
子ども本人がつらいとき24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310子ども本人・保護者どちらでも。24時間・通話料無料

全国の相談窓口や制度は、国立障害者リハビリテーションセンターと国立特別支援教育総合研究所が共同運用する 発達障害ナビポータル にまとまっています。学齢期・思春期の情報は 同ポータル「学齢期・思春期」 が入口になります。

受診を考える目安と、受診で分かること

受診するかどうかで迷ったときは、「特性があるかどうか」ではなく「今、生活に支障が出ているかどうか」で考えると判断しやすくなります。

受診・専門相談を検討する目安(ひとつでも当てはまれば相談してよい状態です)

  • 本人が「自分はダメだ」と繰り返し口にする
  • 登校前の体調不良、登校しぶりが週単位で続いている
  • 宿題や支度で毎日1時間以上、親子ともに消耗している
  • 眠れない・食べられないなど、体の症状が出ている
  • 学校での様子と家での様子の差が大きく、家庭で説明できない
  • 保護者自身が限界を感じている(これも十分な理由です)

日本小児神経学会は、ADHDの診断について「関連・類似するその他の発達に関わる疾患を除外しつつ、2つ以上の状況(自宅と学校など)において同じような症状が存在することなど、こどもの発達を見守りつつ診断します」と説明しています。家庭の記録が役に立つのは、この「2つ以上の状況」を伝えるためでもあります。

治療については、同学会 Q69「注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?」 をご覧ください。当サイトでも ADHDの治療法・薬物療法とは?コンサータ等の違いをやさしく解説ADHDのセルフチェックリストと診断基準|何歳でわかる? で整理しています。薬を使うかどうかを含め、治療の判断は主治医との相談によるものです。この記事は診断・治療の助言を目的としたものではありません。

思春期以降に変わること、変わらないこと

国立障害者リハビリテーションセンターは、「一般的に多動や不注意といった様子が目立つのは学齢期ですが、思春期以降はこういった症状が目立たなくなるともいわれています」と説明しています。日本小児神経学会も、思春期になると多動衝動性が軽減することがあり、性差はほとんどなくなるとされる、としています。

年齢が上がるにつれて変わりやすい困りごと
時期目立ちやすくなること家庭でできる備え
小学校 低・中学年忘れ物、板書、宿題への取りかかり記憶に頼らない仕組みを作る(置き場所・チェック表)
小学校 高学年提出物の管理、友だち関係の行き違い、自己評価の低下「できている部分」を言葉にする習慣。相談先を確保する
中学生定期テストの計画、部活と学習の両立、進路の情報量見通しを紙にする。中学生のADHD|提出物・計画・進路の支援 も参照
高校生以降長期課題の管理、生活リズム、進路選択本人が自分の取扱説明書を持てるように(合う環境の言語化)

「大人になれば自然に治る」という話でも、「一生このまま」という話でもありません。困りごとの形が変わっていくと考えて、その時期に合った仕組みを更新していくのが現実的です。

動画で考える:特性のある子と、学校という環境

特性そのものより、環境との相性で困りごとの大きさが変わる、という視点について、NIJIN代表・星野達郎(元小学校教員)が話しています。

発達障害ADHDは「天才」である理由を解説(脱・学校のタツロー校長)

「困りごとが目立たない子ほど、合う環境の中では力を発揮する」という場面は、実際の教室でもよく起きます。見えにくいタイプの子ほど、本人の努力量が正しく評価される場所を持てるかどうかが分かれ目になります。

学校が合わないと感じたときの、環境という選択肢

「支援をお願いしても学級の中では難しい」「本人がもう限界」という段階になったとき、環境そのものを変えることも選択肢に入ります。フリースクール、オンラインスクール、通信制高校など、いまは学びの場の種類が増えています。フリースクール完全ガイド発達障害の子の「居場所がない」を解く発達障害の子の通信制高校の選び方 もあわせてご覧ください。

NIJINアカデミーは、不登校や発達特性のある子が全国から通うオンラインのオルタナティブスクールです。少人数で、その子のペースを前提に学びます。「静かにがんばりすぎてしまう子」ほど、力を抜ける場所を持つことが支えになります。

困ったときの相談先

よくある質問(FAQ)

Q. おとなしくて成績も悪くないのですが、それでもADHDの可能性はありますか?
「落ち着きがない」はADHDの必須条件ではありません。日本小児神経学会は、ADHDを「注意力、および・または衝動性や多動性の問題」で支障をきたす状態と説明しており、国立障害者リハビリテーションセンターも「注意持続の欠如もしくは……あるいはその両方」と定義を紹介しています。成績で判断することもできません。判断は医師によるものですが、生活に支障が出ているなら相談してよい、というのが実務的な考え方です。
Q. 「女の子はADHDが少ない」と聞いたことがありますが、本当ですか?
文部科学省の令和4年調査では、「不注意」又は「多動性-衝動性」の問題を著しく示すとされた割合は男子6.6%・女子1.4%でした。ただし同調査は学級担任等の回答に基づくもので、医師の診断によるものではなく、発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではないと明記されています。また日本小児神経学会は、男児が女児の約3-5倍とされる一方、思春期には性差がほとんどなくなるとされる、と説明しています。数字は「気づかれ方の差」を含んだものとして読む必要があります。
Q. 診断がなくても学校に配慮をお願いできますか?
相談すること自体に診断は必要ありません。校内には担任のほか、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーがいます。文部科学省の教育支援体制整備ガイドラインも、校内での気づきと支援体制づくりを前提に組み立てられています。「板書を写真で撮らせてほしい」など、実行できる大きさのお願いをひとつずつが現実的です。
Q. 家では荒れるのに、学校では「問題ありません」と言われます。どちらが本当ですか?
どちらも本当であることが多いです。学校で集中を保つ努力を使い切り、安心できる家庭で疲れが出る、という形はよく見られます。ペアレント・トレーニング実践ガイドブックも、困難度は環境や状況の影響を受けやすく「できる場所とできない場所」にムラがあると説明しています。家庭の様子を学校に伝えることには、それ自体に意味があります。
Q. 本人に「ADHDかもしれない」と伝えるべきでしょうか?
伝え方とタイミングは、年齢や本人の状態、診断の有無によって大きく変わります。医療機関や発達障害者支援センターなど、経過を知っている専門職と相談しながら決めることをおすすめします。伝える場合も、「できない子だ」ではなく「こういう場面が苦手だから、こう工夫すると楽になる」という対処とセットにするのが基本とされています。
Q. 親である自分の関わり方が原因だったのでしょうか?
ペアレント・トレーニング実践ガイドブックをはじめ、公的な資料は発達障害について、本人の努力不足でも親の養育の失敗でもないと説明しています。日本小児神経学会も、脳機能の発達・成熟のかたよりが関係すると考えられているが原因は確定していない、としています。ご自身を責める必要はありません。

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参考にした資料

※この記事は医療的な診断・治療の助言を目的としたものではありません。お子さんの状態については、主治医や地域の相談機関にご相談ください。

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