ADHDの二次障害とは?不登校・自己否定を防ぐために家庭でできること

ADHD(注意欠如・多動症)の子育てで、多くの保護者がいちばん恐れているのは、特性そのものよりも「この子が自分を嫌いになってしまうこと」ではないでしょうか。忘れ物やトラブルが続き、注意され続けるうちに、明るかった子が「どうせ自分なんて」と言い始める。学校に行きたがらなくなる。家で暴れるようになる——。

こうした状態は、特別支援教育や児童精神医学の分野で「二次障害」と呼ばれています。そしてこの二次障害は、あらかじめ予防することが重視されている領域でもあります。この記事では、国立特別支援教育総合研究所の研究報告書などの一次資料をもとに、二次障害とは何か、どんなサインで気づけるのか、家庭で何ができるのかを整理します。

この記事でわかること

  • 「一次障害」と「二次障害」は何が違うのか
  • 二次障害が現れる2つの方向(外在化/内在化)と、具体的な状態像
  • 早めに気づきたいサインと、年齢ごとの現れ方
  • 「診断がつく前」から動いてよいとされる理由
  • 家庭でできる3つのこと(叱られる場面を減らす/自己評価を戻す/居場所を増やす)
  • 学校への伝え方、受診を考える目安、相談先

先に、いちばん大事なことを

二次障害の予防を扱う研究報告書は、「二次障害の直接原因だけにこだわり、それを親なり、教師なり、級友なりのある一つの振る舞いに帰し、それに関与した人を責めるという一般には陥りやすい姿勢は支援のためにも、予防のためにも『百害あって一利なし』である」と明確に述べています(「二次障害の予防的対応を考えるために」(国立特別支援教育総合研究所、2012年/研究代表 笹森洋樹) 所収・齊藤万比古氏の論考)。この記事は、保護者の関わりを責めるためのものではありません。

目次

ADHDの「二次障害」とは?──一次障害との違い

「二次障害の予防的対応を考えるために」(国立特別支援教育総合研究所、2012年/研究代表 笹森洋樹) は、二次障害を次のように整理しています。発達障害のある子どもが本来抱えている様々な障害特性を「一次障害」と捉えると、環境やかかわりに起因する適応困難の状態が「二次障害」である、という捉え方です。

一次障害と二次障害のちがい(比較表)
一次障害二次障害
中身不注意・多動性・衝動性など、ADHDそのものの特性それに対して適切な支援がなされない、あるいは不適切な対応が重なることで生じる情緒や行動面の問題
原因の所在脳機能の特性。本人の努力不足でも育て方の失敗でもないとされています環境やかかわりとの相互作用の中で生じるとされています
変えられるか特性そのものが消えるわけではありません同報告書は「子どもが安心して生活することができる環境へと改善を図ることで、比較的短時間で改善する可能性もある」としています
学校生活への影響場面によってムラがある同報告書は、二次障害が「発達障害の特性自体よりも大きな影響を及ぼすことが少なくない」と指摘しています
対応の方向特性に合った支援・環境調整・必要に応じた治療安心できる環境への改善、自己肯定感・自尊感情が高まる支援、そして予防的対応

ここで注目したいのは、報告書が「予防」を前面に置いている点です。同報告書は、学校現場では二次障害が起きてしまった後で対症療法的な対応がされがちだと指摘したうえで、「自己肯定感や自尊感情が高まる支援を工夫するとともに、二次障害を生起させないような予防的対応を常に意識しておくことが重要である」と述べています。

二次障害は2つの方向に現れる──外在化と内在化

同報告書は、二次障害の状態像を大きく2つの方向に分けて説明しています。外に向かって現れるもの(外在化障害)と、自分の内側に向かって現れるもの(内在化障害)です。

二次障害の2つの現れ方(比較表)
外在化(外向性)内在化(内向性)
向かう先外界(人・物・場面)に向かう自己の内界に向かう
報告書が挙げる状態像すぐ怒ったり興奮する情動面の不安定さ/同級生等とのトラブルの頻発/大人への反抗的言動/反社会的な言動 など心身症/意欲低下/抑うつ的な気分/不登校傾向もしくは不登校 など
家庭で見えやすい形家で物にあたる、暴言、きょうだいへの攻撃、指示への全面的な拒否朝の頭痛・腹痛、笑わなくなる、部屋から出てこない、「消えたい」と言う
気づかれやすさ目立つため周囲が早く気づきやすい「おとなしい子」「まじめな子」とされ、気づかれにくい
注意したいこと叱責の強化で悪循環に入りやすい見過ごされたまま長期化しやすい

ここが分かれ目

外在化のほうが深刻に見えますが、支援が遅れやすいのは内在化のほうです。「手がかからない」「文句を言わない」子ほど、困りごとを内側にためている場合があります。学校での様子と家での様子が大きく違うときは、どちらか一方だけで判断しない、という視点が役に立ちます。

なぜ二次障害が起きるのか──積み重なりの仕組み

国の事業でつくられた「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」は、この積み重なりの過程をわかりやすく説明しています。発達障害は「見えづらい障害」であるため、障害によるものか本人のわがままなのか周囲からはわかりにくく、失敗に対して「わざとやっている」「やる気がない」などの叱責が繰り返されてしまいがちだ、というものです。

二次障害が生まれる、よくある流れ

1

① 特性ゆえのつまずきが起きる

忘れ物、離席、指示の聞き逃し、順番が待てないなど。本人は努力していても起きます。

2

② 「わざと」「やる気がない」と受け取られる

見えづらい障害であるため、意欲や態度の問題として扱われがちです。

3

③ 注意・叱責が繰り返される

家でも学校でも同じ内容で注意が続き、成功体験より失敗体験が多くなります。

4

④ 自尊感情が下がる

前掲ガイドブックは「一生懸命がんばっているのに、周りの子と同じようにはできない」「親や先生に叱られてばかり」と自尊感情を低下させ、やる気を失ったりイライラが強まったりすることもよくある、としています。

5

⑤ 外在化/内在化の形で表面化する

反抗・攻撃として外に出るか、意欲低下・抑うつ・不登校として内に向かうかは、その子と環境によって変わります。

6

⑥ さらなる適応困難を招く

前掲の研究報告書は、こうした積み重なりが「さらなる適応困難を招いてしまうことにもなる」と説明しています。

この流れを見ると、介入できる場所が②と③にあることがわかります。特性そのもの(①)を消すことはできませんが、「わざとだ」という解釈を外し、叱責の回数を減らすことは、家庭でも学校でも今日から始められます。具体的な方法は ADHDの子への接し方|やってはいけない叱り方と、届く声かけ にまとめています。

学校から帰った子どもがランドセルを置き、家のソファで静かに休んでいる場面

早めに気づきたいサイン

サインが表に出にくく、気づかれるまでに時間がかかる子もいます。とくに不注意が中心のタイプについては 女の子のADHD|不注意優勢型が見落とされやすい理由とサイン で詳しく扱っています。

二次障害は、ある日突然始まるものではありません。多くは小さな変化の積み重ねとして現れます。以下は、保護者が気づきやすいサインの例です。当てはまる項目があるからといって二次障害だと決まるわけではありませんが、複数が続いているときは、環境の見直しを考えるタイミングかもしれません。

内側に向かうサイン(内在化)

  • 朝になると頭痛・腹痛・吐き気を訴えることが増えた
  • 「どうせ自分なんて」「バカだから」と口にするようになった
  • 好きだったことに興味を示さなくなった
  • 寝つきが悪い/夜中に目が覚める/朝起きられない日が増えた
  • 学校の話題を避ける、行事の前に体調を崩す
  • 表情が乏しくなり、笑うことが減った
  • 「消えたい」「いなくなりたい」といった言葉が出る

外に向かうサイン(外在化)

  • 注意された瞬間に爆発するようになった
  • 家で物を壊す、きょうだいへの当たりが強くなった
  • 「うるさい」「関係ない」など、大人への拒否が強まった
  • 学校でのトラブルの連絡が増えた
  • ルールを破ることが増え、悪びれる様子が減った
  • 嘘やごまかしが増えた(叱責を避けるための行動である場合があります)
年齢による現れ方のちがい(一般的に指摘される傾向)
時期現れやすい形見落としやすいポイント
小学校低学年登校しぶり、腹痛・頭痛、教室からの飛び出し、かんしゃく「まだ幼いから」と成長待ちにされやすい
小学校高学年自己否定的な発言、宿題の放棄、友人関係からの撤退「反抗期」と混同されやすい
中学生不登校、昼夜逆転、抑うつ的な気分、強い反抗思春期の一過性の変化と区別しにくい
高校生以降ひきこもり傾向、進路の停滞、対人不安これまでの積み重ねが表面化する時期でもあります

中学生の時期の特徴については 中学生の発達障害|思春期の特性・二次障害・進路と相談先 も参考にしてください。

「診断がつく前」から動いてよい理由

「病院で診断が出てから対応しよう」と考える方は多いのですが、前掲の研究報告書は、この点についてはっきりした立場を示しています。教育的な視点からは「二次障害は医学的診断の有無を問わずに対処することが求められている」とし、「学校ではできるだけ早く的確に気付き、二次障害のできるだけ早期から対処することが重要と考えられている」と述べています。

その理由として、同報告書は具体的な例を挙げています。たとえば反抗挑戦性障害と診断されるには診断基準を満たしたうえで医師の診断が必要ですが、医療機関の受診に至るまでには時間がかかることも多く、また診断基準を満たす状態になる前に、反抗的な言動等はある程度出現していることが多い。この段階で適切に対処されていれば、診断が可能な状態に至ることを予防できる可能性が高い、というものです。そして「長期的な予後を考えた場合、医学的診断の有無にかかわらず、できるだけ早く適切な支援を開始することが必要と考えられる」と結論づけています。

つまり

  • 受診の予約が数か月先でも、家庭と学校でできることは今日から始めてよい
  • 「診断がつかなかったから何もしなくていい」ではない
  • 同時に、必要な受診を先延ばしにする理由にもしない(受診の目安は後述)

診断の受け方や流れについては ADHDのセルフチェックリストと診断基準|何歳でわかる? を、グレーゾーンの場合は 発達障害グレーゾーンの子が学校でつまずくとき をあわせてご覧ください。

不登校との関係──二次障害の代表的な現れ方のひとつ

前述のとおり、研究報告書は不登校傾向・不登校を内在化障害の状態像のひとつとして挙げています。同報告書は、学校現場では行動問題や不登校等の二次障害に対して対症療法的な対応が多く、予防的対応という視点での支援が十分とはいえない、とも指摘しています。

文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、小・中学校における不登校児童生徒数は353,970人(前年度346,482人)と報告されています。この数字のすべてが発達特性に関係するわけではありませんが、教室に居づらさを抱えている子が決して少数ではないことを示しています。

不登校は「失敗」ではありません

同じ報告書に収録された論考では、学校の枠組みや価値観が相対化された環境が、発達障害のある子どもにとって「今、何をしてよいかわからない」「ここではどうふるまうべきかわからない」という当惑と混乱を引き起こしやすい要因になっている、という見方が示されています。つまり登校できないことは、その子と環境との相性の問題として理解しうるということです。すでに登校がつらい段階にある場合は ADHDと不登校の関係|二次障害を防ぐために親ができることADHDの中学生が不登校になる理由と親の関わり でくわしく扱っています。

思春期の子どもと保護者が、責めずに落ち着いて向き合って話している場面

家庭でできること①「叱られる場面」そのものを減らす

叱られる場面の多くは、宿題と忘れ物に集中しがちです。この2つを仕組みで減らす方法は ADHDの子の宿題・忘れ物|「やる気」ではなく仕組みで減らす にまとめています。

二次障害の予防で最初に効くのは、注意や叱責の総量を減らすことです。「叱り方を上手にする」より、「叱る場面が起きない設計にする」ほうが確実です。前掲のペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、コアエレメントのひとつ「環境調整(行動が起きる前の工夫)」について、子どもの周囲の環境(人や物)を整え、適応的な行動をしやすくする工夫を考えるものと説明し、刺激となるようなものを減らしたり、見てわかりやすいスケジュールやルールを提示したりする、としています。

叱る場面を減らす、家の中の工夫
よく叱ってしまう場面起きている可能性環境の側でできること
朝の支度が進まない手順が多く、注意が途中でそれる前夜に服を1セット出す/やることを絵と短い文で貼る/残り時間が見えるタイマー
宿題に取りかからない開始のハードルが高い、周囲の刺激が多いテレビと動画を消す/机の上を今使うものだけにする/「1問だけ一緒に」から始める
忘れ物が続く段取りの記憶に苦手さ持ち物リストを玄関に貼る/前夜に玄関へ置く/連絡帳を写真で共有
ゲームや動画をやめない切り替えの負荷が大きい終了5分前に予告/終わったあとの予定をセットで伝える
きょうだいげんかが絶えない刺激が重なりやすい時間帯がある時間帯を分ける/物理的に部屋を分ける/個別に話を聞く時間をつくる

この段階で意識したいのは、成果を「子どもが変わったか」で測らないことです。まず変わるのは、親が怒鳴る回数のほうです。それだけでも、失敗体験の積み重なりは確実に減ります。

家庭でできること②自己評価が戻る関わりを増やす

研究報告書に収録された論考は、予防について次のように述べています。発達障害のある子どもは幼い頃から自尊心を踏みにじられる体験を反復的に経験している場合が多いことから、親も教師もその他の支援者も構造的に良いところを見出してよく褒めることに努め、従来むやみに多かった叱る場面は無視するなど、行動統制をめぐる自尊心の向上を図る努力は「二次障害の見出される前から始めてよい」というものです。そしてこれは、ADHDのペアレント・トレーニングが目指している方向とまったく一致している、とも述べられています。

自己評価が戻る関わり/逆効果になりやすい関わり(比較表)
場面逆効果になりやすい自己評価が戻りやすい
できていない部分がある「まだ全部終わってないでしょ」「ここまでできてる」と、できている部分を先に言う
同じ失敗を繰り返した「何回言えばわかるの」(過去の蒸し返し)「次はどうすればできそう?」と未来の行動に向ける
他の子と比べたくなる「〇〇ちゃんはできてるのに」その子の1か月前と比べる
成果が出ない結果だけを評価する取りかかったこと・続けたこと自体を認める
得意なことがある「そんなことより勉強を」得意を人に見せる場をつくる(家族に披露する、発表する)
自分を否定する言葉が出た「そんなこと言わないの」と打ち消す「そう思うくらいしんどかったんだね」と受け止めてから話す

ペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、ほめ方について「25%ルール」——できていない部分に目を向けるのではなく、やるべきことの25%でもできていればその部分をすかさずほめる——という考え方を示しています。また、親子の「ほめる⇔ほめられる」という関係が2〜3か月で終わるのと半年続くのとでは大きな違いがある、として、続ける期間の重要性にも触れています。

家庭でできること③家の外に、もうひとつ居場所を持つ

前掲の研究報告書に収録された、情緒障害児短期治療施設からの論考は、学校における二次障害の予防について具体的な視点を示しています。まず、子ども集団の中に居場所があるかどうかが重要で、学校で成功するか否かは子どもの自己評価を大きく左右し、特に子ども集団の中に居場所があるか否かは、その後の社会参加に大きな影響を与える、というものです。

さらに、気持ちを立て直すことなどが不得手な子どもに対しては、「学級だけで子どもを抱えようとせずに、他に頼れる居場所や頼れる人のネットワークを作っていくことが望ましい」とし、状況に応じて「彼らが場所や人を選べるような環境」が、穏やかな社会参加を促すとも述べられています。

「もうひとつの居場所」の候補

  • 学校の中:通級による指導、特別支援学級、別室登校、保健室、相談室
  • 公的な場:教育支援センター(適応指導教室)、児童発達支援・放課後等デイサービス
  • 地域:習い事、スポーツクラブ、地域の子ども食堂、図書館
  • 学校外の学びの場:フリースクール、オンラインスクール
  • オンライン:同じ興味でつながれるコミュニティ(安全面の確認は必要です)
  • :担任以外の先生、スクールカウンセラー、親戚、習い事のコーチ

大事なのは「学校の代わり」を探すことではなく、評価される場所を1つに集中させないことです。学校でうまくいかない日があっても、別の場所で認められる経験があれば、自己評価は保たれやすくなります。居場所の選び方は 発達障害の子の「居場所がない」を解く|家・学校・地域・オンラインの居場所の作り方 でくわしく扱っています。

不登校・発達特性のある子が全国から通っています

「失敗し続けなくていい場所」を、もうひとつ

二次障害の予防でいちばん効くのは、安心して過ごせる環境です。ADHDをはじめ発達特性のある子・グレーゾーンの子が多数在籍。得意を伸ばし、苦手には配慮しながら学べる場です。

小学生・中学生

NIJINアカデミー

「ALL HAPPY」を掲げ、自分が幸せになる力・人を幸せにする力を育てる、日本最大級のオルタナティブスクール(小中一貫)。累計1,000名以上が入学。

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高校生

ニジ高(NIJIN高等学院)

ユニークな個性を持つ高校生のための、通信制・高校サポート校。自分のペースで高卒資格と進路をめざせます。

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💬 まずはLINEで気軽に相談する

入会前の相談・見学だけでも大丈夫です。まずはお子さんの様子をお聞かせください。

学校に相談するときの伝え方

二次障害の予防には、学校との情報共有が欠かせません。ただ、伝え方によっては「クレーム」と受け取られてしまうこともあります。事実 → 困りごと → お願いの順に整理すると、対応の話に進みやすくなります。

学校への伝え方の型
ステップ避けたい言い方伝わりやすい言い方
① 事実を伝える「先生の指導が厳しすぎます」「先週から、朝に腹痛を訴える日が3回ありました」
② 背景を共有する「うちの子は繊細なので」「注意が続いた日に、家で自分を責める発言が出ています」
③ お願いを具体的にする「もっと配慮してください」「注意は個別に、短く伝えていただけると助かります」
④ 家庭でやることも伝える(学校任せにする)「家では朝の支度を減らす工夫をしてみます」
⑤ 次の確認日を決める(言いっぱなしにする)「2週間後に、様子を共有させてください」

話す相手は担任だけではありません。特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーが窓口になる場合もあります。学校での支援の枠組みについては、文部科学省「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン」「通級による指導について」 が参考になります。合理的配慮の考え方は 内閣府「障害者差別解消法」 のページで確認できます。

受診・専門機関を考える目安

「診断がなくても動いてよい」ことと、「受診しなくてよい」ことは別です。以下のような状態が見られるときは、早めに専門機関に相談することをおすすめします。

相談・受診を検討したいサイン

  • 「死にたい」「消えたい」という発言がある(この場合はすぐに相談してください)
  • 眠れない・食べられない状態が2週間以上続いている
  • 腹痛・頭痛などの身体症状が繰り返し出ている
  • 自分や他人を傷つける行動が見られる
  • 登校できない状態が続き、家でも表情が乏しい
  • 家庭内での暴力・破壊行為が続いている
  • 保護者自身が限界を感じている
どこに相談するか
機関扱うこと入り口
発達障害者支援センター特性の相談、地域の支援情報、ペアレント・トレーニングなどの案内全国一覧(国立障害者リハビリテーションセンター)
小児科・児童精神科診断、身体症状の評価、必要に応じた治療かかりつけ医から紹介を受けるとスムーズな場合があります
学校教室での様子の共有、配慮、通級等の検討担任/特別支援教育コーディネーター/スクールカウンセラー
自治体(こども家庭センター等)子育て全般の相談、福祉サービスへの接続こども家庭庁「相談窓口」
教育センター・教育支援センター就学相談、不登校の相談、適応指導お住まいの自治体の教育委員会

治療についての基本的な考え方は、日本小児神経学会の解説(Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?)で、環境調整・ペアレントトレーニング・ソーシャルスキルトレーニングといった心理社会的治療と、薬物療法が柱として説明されています。薬の適否や効果・副作用には個人差があり、判断は必ず主治医と行ってください。くわしくは ADHDの治療法・薬物療法とは? をご覧ください。

「併存症」について知っておく

二次障害と近い言葉に「併存症」があります。前掲の研究報告書は、両者の関係を丁寧に整理しています。医学の分野で用いられる comorbidity(併存症)は、複数の障害が同時に起きていることを意味し、一般的には一次障害と二次障害の因果関係があることは意味されていない、とされます。一方、日本の児童精神医学分野の「二次障害」は、その発現に一次障害が関与していることを含めた意味で用いられることが多い、と説明されています。

二次障害と併存症の関係
二次障害(教育分野で使われる意味)併存症(comorbidity)
意味一次障害への支援が不十分/不適切な対応により生じる情緒・行動面の問題複数の障害が同じ人に同時に起きていること
因果関係一次障害の関与を含む意味で使われることが多い一般に因果関係は前提としない
医学的診断同報告書は「主として教育的な概念であり…医学的診断は必須とはいえない」としています診断カテゴリーとして診断されるものを指すことが多い
家庭での実務上診断を待たず、環境と関わりを整えることが有効受診し、必要に応じて治療の対象になりうる

併存の頻度について、同報告書は海外の研究を引用し、ADHDは併存症を伴うことが多いとされ、その割合は報告によって幅があるものの、気分障害や不安障害等の内在化障害が併存する割合は13〜51%、反抗挑戦性障害や行為障害等の外在化障害が併存する割合は43〜93%とされている(Ollendick, 2008)と紹介しています。これらは主に医療機関を受診している人を対象にした海外の研究で、幅も非常に大きい数値です。「ADHDなら必ずこうなる」という意味ではまったくありません。ただ、気分や不安の問題が重なることは珍しくないという前提を持っておくと、サインを見逃しにくくなります。

子どもが自分の部屋の机で、模型づくりに集中して取り組んでいる場面

すでに二次障害が起きているときにできること

予防の話をしてきましたが、すでに登校できない、家で荒れている、という段階にいる方もいると思います。その場合も、やることの方向は同じです。前掲の研究報告書は、二次障害について「子どもが安心して生活することができる環境へと改善を図ることで、比較的短時間で改善する可能性もある」と述べています。

いま、優先順位が高いこと

1

① 安全と睡眠・食事を確保する

学習や登校より先に、生活の土台を戻します。眠れない・食べられない状態が続く場合は受診を検討してください。

2

② 追いつめる要求をいったん下ろす

「明日は行こう」「宿題だけでも」という要求を減らします。回復には時間の余白が必要です。

3

③ 叱責の総量を減らす

注意する項目を減らし、安全に関わることだけに絞ります。

4

④ 学校と情報を共有する

欠席の扱い、家庭学習の扱い、再登校の条件などを、事実ベースで整理します。

5

⑤ 評価されない時間をつくる

成果を求められない活動(散歩、料理、ゲーム、動物の世話など)を日課に入れます。

6

⑥ 家の外に、支援者を1人増やす

担任以外の大人、支援センター、医療機関など。保護者が一人で全部を担う形から抜けます。

同報告書に収録された論考は、支援者に求められることを「二次障害の出現を発達障害児の育ちの危機としてデリケートに受け止め、冷静に評価し、穏やかに支えていく」営みだと表現しています。短期間で元に戻すことではなく、育ちが再開することがゴールだという考え方です。

動画で考える:発達特性と学校環境

にじいろ・タツロー校長の解説動画「不登校に発達障害が多い理由」。二次障害の背景にある、環境との相性という視点から解説しています。
「発達障害なら支援級に入れるべき?」——学校内の選択肢を検討するときの考え方について。

相談先一覧

公的な相談窓口
窓口連絡先・リンクこんなときに
24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)0120-0-78310(24時間・年中無休)
案内ページ
子ども本人からも保護者からも。夜間・休日も通話料無料
発達障害者支援センター全国一覧特性・二次障害・地域の支援についての相談
こどもの人権110番(法務省)0120-007-110(平日8:30〜17:15)
案内ページ
いじめ・体罰など、子どもの人権にかかわる相談
児童相談所虐待対応ダイヤル189
こども家庭庁の案内
家庭が限界に近いと感じたとき。通告だけでなく相談にも使えます
まもろうよ こころ(厚生労働省)相談窓口まとめ死にたい気持ちがあるとき、SNS相談を含めた窓口を探したいとき
こころもメンテしよう(厚生労働省)若者向けサイト子ども本人が、自分の気持ちを整理したいとき
発達障害ナビポータル学童期・思春期のページ国の2機関が共同運用する情報サイト

急を要するとき

「死にたい」「消えたい」という言葉が出たときは、様子を見るより先に相談してください。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は24時間・年中無休で、保護者からの相談も受け付けています。厚生労働省の 「まもろうよ こころ」 には、電話・SNSの相談先がまとまっています。

よくある質問(FAQ)

Q. 二次障害は、親の関わり方が原因なのでしょうか?
いいえ。前掲の研究報告書に収録された論考は、二次障害の原因を「親なり、教師なり、級友なりのある一つの振る舞いに帰し、それに関与した人を責める」姿勢について、支援のためにも予防のためにも「百害あって一利なし」と明確に述べています。二次障害は、特性と環境の相互作用の中で生じるものとして理解されています。責任の所在を特定することより、これから環境をどう整えるかに焦点を当てるほうが、実際の改善につながります。
Q. 二次障害は治りますか?
「治る」という言い方は適切ではありませんが、同報告書は二次障害について「子どもが安心して生活することができる環境へと改善を図ることで、比較的短時間で改善する可能性もある」と述べています。ただし回復の速さや経過には大きな個人差があり、期間を約束できるものではありません。あわせて、うつ状態や不安が強い場合は医療的な評価が必要になることもあります。
Q. 二次障害と反抗期の区別がつきません。
線引きは専門家でも簡単ではありません。目安になるのは「持続」「範囲」「本人の苦しさ」です。特定の場面だけでなく生活全般に広がっているか、数週間以上続いているか、本人が自分を責めるような発言をしているか。判断に迷う段階でも、学校のスクールカウンセラーや発達障害者支援センターに相談して構いません。
Q. 診断がついていませんが、相談してよいのでしょうか?
はい。前掲の研究報告書は、二次障害への対処は医学的診断の有無を問わずに求められるとし、「長期的な予後を考えた場合、医学的診断の有無にかかわらず、できるだけ早く適切な支援を開始することが必要」と述べています。発達障害者支援センターは、診断の有無にかかわらず相談を受け付けている場合が多い窓口です。
Q. 学校に行けない状態が続いています。無理にでも行かせたほうがよいですか?
一般的に、追いつめる形での登校刺激は、内在化のサインが出ている段階では逆効果になりやすいとされています。まずは睡眠・食事といった生活の土台と、安心して過ごせる時間の確保を優先し、学校とは欠席の扱いや情報共有について事実ベースで相談していくのが現実的です。判断に迷うときは、学校・医療・地域の支援機関のうち複数に相談してみてください。
Q. 兄弟姉妹への影響が心配です。
ペアレント・トレーニング実践ガイドブックのQ&Aでも触れられている論点です。同ガイドブックは、ペアレント・トレーニングで学ぶ考え方や対応法は障害がなくても子育て一般に役立つことが多く、好ましい行動を見つけてほめる、落ち着いた冷静な指示を出す、「スペシャルタイム」を使うといった方法は、きょうだいにも使えて自信を与えたり、きょうだい間の葛藤を減らしたりするのに役立つ、としています。

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参考にした資料

※この記事は医療的な診断・治療の助言を目的としたものではありません。お子さんの状態については、主治医や地域の相談機関にご相談ください。

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