発達特性のある子と海外生活|駐在先で相談先が見つからないときにできることと、学びの続け方

海外生活・発達特性
発達特性のある子と海外生活|駐在先で相談先が見つからないときにできることと、学びの続け方

日本では通級や放課後等デイサービス、療育につながっていた。担任の先生も、主治医も、子どものことをわかってくれていた。——それが、海外への赴任が決まった瞬間にいったん白紙になる。この記事は、発達特性のあるお子さんを連れて海外に住む(あるいはこれから住む)ご家庭に向けて、「日本で受けていた支援は海外でどうなるのか」「渡航前に何を用意しておけばいいのか」「現地で日本語で相談できる先はどう探すのか」を、公的機関の一次情報にあたりながら順番に整理したものです。国によって制度がまったく違うテーマなので、「必ず自分で確認すべきこと」も一緒にお伝えします。

海外・帰国子女 執筆 にじいろ編集部 最終更新 2026.09.04

この記事の結論

  • 通級・特別支援学級は日本の学校制度、放課後等デイサービスや児童発達支援は日本の福祉制度です。海外に出ると、これらがそのまま続く仕組みは基本的にありません。「途切れる」ことを前提に準備するほうが、現地で慌てずにすみます。
  • 渡航前にいちばん効くのは、「これまでの記録を、持ち運べる形にしておくこと」です。診断書・検査結果・個別の教育支援計画・サポートブックを、日本語と英語の両方で手元に置いておきます。
  • 薬は国によって持ち出し・持ち込みのルールが違います。向精神薬・医療用麻薬・覚醒剤原料にあたる薬は、日本から持ち出す時点で手続きが必要になる場合があります(厚生労働省・地方厚生局)。渡航先の規制は在日大使館に確認が必要です。
  • 現地校の支援制度は国ごとにまったく違い、インターナショナルスクールや私立校は公的な支援義務の対象外であることが多いため、入学前に各校へ直接確認するしかありません。
  • 日本語で相談できる先はゼロではありません。海外子女教育振興財団(JOES)の教育相談はオンライン(ZOOM)・メールでも受け付けています(→7章)。

海外では、支援は「自動的には」続かない

海外赴任が決まったご家庭から、にじいろによく届くのは「学校のことより先に、支援のことが心配」という声です。日本では、担任の先生と支援の先生、療育の事業所、主治医が、それぞれ子どものことを知っていてくれた。その全部が、引っ越しと同時に一度リセットされる——この不安は、とても現実的なものです。

最初に、いちばん大事な前提をお伝えします。日本の「通級による指導」「特別支援学級」は学校教育法にもとづく日本国内の学校の制度であり、「放課後等デイサービス」「児童発達支援」は児童福祉法にもとづく国内の福祉サービスです。どちらも、海外に住所を移した先でそのまま使える仕組みにはなっていません。渡航先で受けられる支援は、その国・その地域・その学校のルールに従うことになります。

これは残念な話に聞こえるかもしれませんが、裏を返せば「渡航前に日本でやっておけることが、はっきりしている」ということでもあります。以下の章では、その「やっておけること」を具体的に見ていきます。

この記事で扱わないこと

この記事は、診断や治療についての判断をするためのものではありません。お子さんの状態や必要な支援については、必ず主治医・かかりつけの専門機関にご相談ください。また、制度は国・地域・年度によって変わります。ここに書いたことは「確認するための出発点」として使い、最終的な判断は必ず渡航先の在外公館・学校・自治体の最新の情報でご確認ください。

日本で受けていた支援は、海外に出るとどうなるか

まず、いま利用している支援を一つずつ棚卸ししてみましょう。「何を、どの制度にもとづいて、誰から受けていたか」を書き出すと、渡航前に確認すべきことが見えてきます。

参考までに、文部科学省の「令和5年度 通級による指導実施状況調査」によると、通級による指導を受けている児童生徒は全国で203,376人(小学校166,556人・中学校34,449人・高等学校2,371人)にのぼります。決して珍しい制度ではなく、多くの家庭が「この支援がなくなったらどうなるのか」という同じ問いに直面しています。

日本で受けていた支援と、海外に出たときの基本的な考え方
日本で受けていた支援制度の根拠海外に出たときの基本的な考え方
通級による指導学校教育法施行規則(日本の小・中・高の制度)日本国内の学校の仕組みのため、現地校・インター校には引き継がれません。在籍校に「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の写しをもらえるかを、転出前に相談しておきます。
特別支援学級・特別支援学校学校教育法同様に、海外には引き継がれません。帰国後に再開するには、あらためて自治体の就学相談を受けるのが一般的です(→10章)。
放課後等デイサービス・児童発達支援(通所受給者証)児童福祉法。市区町村が支給決定を行うお住まいの市区町村が決定している国内の福祉サービスです。海外転出のときの受給者証の扱い(返還が必要か、帰国後は再申請かなど)は自治体によって運用が異なるため、必ず障害福祉担当課に確認してください。
医療機関での診療・服薬医療保険制度渡航後は現地の医療機関・保険が中心になります。公的医療保険の資格や海外での取り扱いは、勤務先・保険者によって異なります。渡航が決まったら、まず主治医に伝えることが最優先です(→4章)。
発達検査・心理検査の結果制度ではなく「記録」なので、これは持ち運べます。数値だけでなく、所見の部分まで含めて手元に置いておくと、現地の学校や医療機関に説明するときの土台になります。

この表を見てわかるのは、「制度」は持ち出せないけれど、「記録」と「関係」は持ち出せるということです。渡航前の準備は、この2つを厚くしておく作業だと考えるとわかりやすくなります。

渡航前に、日本でやっておきたい5つのこと

ここからは具体的な準備です。赴任の内示から出発までの期間は短いことが多いので、優先順位をつけて進めましょう。

1|在籍校から、支援の記録をもらう

通級や特別支援学級を利用していた場合、学校には「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」といった書類があります。まずは担任や特別支援教育コーディネーターに、「海外に行くので、これまでの支援の記録を家庭で持っておきたい」と伝えて相談してみてください。書類そのものが渡せない場合でも、どんな配慮をしてきたか(板書を写す代わりに写真でよい、指示は一つずつ、など)を文章でまとめてもらえることがあります。

この記録は、現地の学校に「うちの子にはこういう配慮が効きます」と伝えるときの、いちばん強い材料になります。

2|診断書・検査結果を、日本語と英語の両方でそろえる

診断がある場合、主治医に英文の診断書(medical certificate)を書いてもらえるか相談します。発達検査・知能検査の結果も、可能であれば英訳を用意しておくと、現地校での面談がスムーズになります。英訳は医療機関が対応してくれる場合もあれば、翻訳会社に依頼する場合もあります。時間もお金もかかるので、渡航が決まった段階で早めに動くのがおすすめです。

なお、診断がまだない、あるいは「様子を見ましょう」と言われている段階のご家庭もあると思います。その場合も、「困っている場面」と「うまくいく工夫」を家庭の言葉で書き出しておくだけで、現地で説明する助けになります。診断の有無にかかわらず、記録は財産になります。

3|サポートブック(子どもの取扱説明書)を英語でも用意する

サポートブックは、お子さんの得意・苦手、苦手な音や場面、落ち着く方法、パニックになったときの対応などを、家庭がまとめた1〜2枚の資料です。自治体や支援センターが様式を配布していることも多く、日本で使っていたものがあれば、それを英訳するだけで十分に役立ちます。

英訳するときは、専門用語で説明するより「何が起きるか」「どうすると落ち着くか」を短い文で並べるほうが伝わります。たとえば「大きな音が苦手」ではなく「消防訓練のサイレンで教室から出てしまうことがある。事前に予告があれば、耳栓をつけて参加できる」と書くイメージです。国が変われば「発達障害」という言葉の指す範囲も、その受け止め方も変わります。診断名で説明するより、具体的な場面で説明したほうが、どの国でも通じやすくなります。

4|「支援が途切れる期間」の見通しを立てる

渡航してすぐに現地の支援につながることは、まずありません。学校探し、住居、ビザ、生活の立ち上げが優先になり、支援の話が動き出すのは数か月先ということも珍しくないからです。この「空白の期間」を最初から見込んでおくと、「まだ何も進んでいない」という焦りが少し減ります。

その期間に何で支えるか(家庭でできること、オンラインで続けられること、日本の主治医とのつながりなど)を、渡航前に一つでも決めておけると安心です。

5|帰国後のことも、少しだけ考えておく

矛盾するようですが、出発前に「帰るときのこと」を少し考えておくと、記録の残し方が変わります。現地での学習内容や、受けた支援の記録を残しておけば、帰国後の就学相談で使えます。詳しくは10章で扱います。

スーツケースを引いて空港の外を歩く母親と子どものうしろ姿

薬と主治医のことは、早めに確認する

服薬しているお子さんの場合、ここは絶対に後回しにできない項目です。日本から薬を持ち出すときと、渡航先に持ち込むときの、両方にルールがあります。

日本から持ち出すときの手続き

厚生労働省は「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」で、医薬品を海外に持参する場合は「医師の診断書などの書類を携帯したり、持ち込んだり持ち出したりすることができる数量に制限があったり、事前に許可申請をする必要がある」場合があると案内しています。同ページでは、薬は本来の容器のまま持参すること、他の容器に移し替えると渡航先によっては持ち込めない可能性があること、郵送は避けて渡航者本人が持ち込むこともあわせて案内されています。

さらに、医療用麻薬・覚醒剤原料にあたる薬を携帯して出入国する場合は、事前に地方厚生局長の携帯輸出(輸入)許可が必要とされています。向精神薬については事前の許可は不要とされていますが、注射剤の場合や総量が一定量を超える場合には、処方箋の写しや「患者の氏名、住所、携帯を必要とする向精神薬の品名及び数量が記載された」医師の証明書などが必要になることがあります(地方厚生局麻薬取締部の案内より)。申請は郵送のやりとりを含めて時間がかかるとされているため、渡航日から逆算して早めに動く必要があります。

お子さんの薬が対象になるかどうかは、必ず確認を

どの薬が医療用麻薬・覚醒剤原料・向精神薬にあたるかは、薬の成分によって決まります。この記事で個別の薬について判断することはできません。まずは処方している主治医と薬局に「海外に持って行きたい」と伝え、必要な手続きがあるかを確認してください。地方厚生局麻薬取締部の窓口でも案内を受けられます。

渡航先に持ち込むときのルール

もう一つ、見落としやすいのが渡航先の国のルールです。厚生労働省の案内でも「渡航先の国においては日本と異なる法規制を行っている場合」があるため、事前に渡航先の大使館に確認するよう求められています。日本では普通に処方される薬が、国によっては持ち込みに事前許可を求められたり、そもそも認められていなかったりすることがあります。「日本で処方されているから大丈夫」とは考えず、必ず渡航先の在日大使館・領事館に問い合わせてください。

主治医との関係を、渡航前に整理する

渡航してからも、日本の主治医とのつながりが残っていると心強いものです。渡航が決まったら、次のようなことを相談しておくとよいでしょう。

  • 渡航先で現地の医師にかかるときのために、これまでの経過をまとめた文書(英文)を書いてもらえるか
  • 薬をどのくらいの期間分、処方してもらえるか(保険や制度上の上限があります)
  • 一時帰国のときに受診できるか、その間隔はどのくらいがよいか
  • 現地で困ったときに、メールなどで相談できる余地があるか

また、渡航先の医療事情は外務省の「世界の医療事情」である程度調べられます。外務省によると、これは医務官が実地調査した国・地域について、2年ごとに全面改訂しながら掲載しているもので、すべての国・地域を網羅しているわけではないと明記されています。掲載がない国もあるため、あわせて外務省 海外安全ホームページの「医療・健康関連情報」や、渡航先の在外公館(大使館・総領事館)のウェブサイトも確認してください。

渡航先の学校で「特別な教育的ニーズ」がどう扱われるかは、国と学校で大きく違う

ここがこのテーマでいちばん誤解されやすいところです。「海外は日本より支援が進んでいる」とも「海外は日本より遅れている」とも、一概には言えません。国によって、また同じ国でも州や学区、公立か私立かによって、まったく事情が違うからです。

いくつか例を挙げます。アメリカには IDEA(Individuals with Disabilities Education Act)という連邦法があり、米国教育省の説明によれば、3歳から21歳までの障害のある子どもに対する「無償の適切な公教育(FAPE)」が法の中核とされ、その提供手段として IEP(個別教育計画)が位置づけられています。イギリスには教育省の「SEND Code of Practice: 0 to 25 years」があり、学校が特別な教育的ニーズにどう対応すべきかの枠組みと、EHC plan という仕組みが定められています。

ただし、こうした公的な仕組みは基本的にその国の公立学校(州立学校)を対象にした制度です。日本人駐在家庭が選ぶことの多いインターナショナルスクールや私立校は、こうした制度の対象外であることが少なくありません。支援の内容も費用も、学校ごとの方針次第になります。

学校の種類別・「特別な教育的ニーズ」への対応の考え方
学校の種類支援の位置づけ入学前に確認したいこと
渡航先の公立校(現地校)その国・州の法制度にもとづく支援の仕組みがある場合があります(例:米国のIEP、英国のEHC plan)。ただし対象の範囲・評価の手続き・待ち時間は国や地域によって大きく異なり、評価がその国の言語で行われることも多いです。誰が窓口か(SENCO、school counselor、special education coordinator など呼び方が違います)/評価に何が必要か/日本で作った書類は使えるか
インターナショナルスクール・私立校公的な支援義務の対象外であることが多く、受け入れの可否や配慮の内容は学校ごとの方針で決まります。支援スタッフがいる学校もあれば、まったくいない学校もあります。どんな配慮が可能か/支援スタッフの有無/追加費用がかかるか/過去に同じような配慮をした例があるか(できれば書面で)
日本人学校・補習授業校日本の学習指導要領に準じた教育を行いますが、規模も教員数も学校ごとに大きく違います(→6章)。各校に直接、受け入れ体制と過去の対応例を/補習授業校は週1回程度の運営が中心である点
オンラインの学校・学習サービス通信環境があれば居住地に左右されにくく、日本語で学べるものもあります。ただし少人数かどうか、相談体制があるかは提供者ごとに違います。1クラスの人数/日本語で相談できるか/時差に合う時間帯があるか/体験できるか

学校見学や面談では、「支援はありますか?」という聞き方だと「あります」で終わってしまいがちです。「うちの子はこういう場面で困ります。この学校では、そのときどうなりますか?」と場面で聞くほうが、実態がわかります。すでに現地校に通っていて子どもがなじめずにいる場合は、海外赴任・駐在中に子どもが現地校になじめないときもあわせてご覧ください。

日本人学校・補習授業校を考えるときに知っておきたいこと

「日本語で、日本の教育を受けられる場所」として、日本人学校や補習授業校を検討するご家庭は多いと思います。文部科学省「在外教育施設の概要」によれば、日本人学校は世界49カ国・1地域に94校(令和6年4月15日現在)、在籍児童生徒数は約1万6千人補習授業校は世界51カ国・1地域に242校(令和6年7月1日現在)、在籍児童生徒数は約2万1千人です。

ただし、支援という観点では、正直にお伝えしておきたいことがあります。文部科学省が令和5年4月に策定した「在外教育施設における教育の振興に関する基本的な方針」では、「就学前の子供、高等学校段階の子供、障害のある子供等は、不利な教育条件に置かれてきた」と記されており、今後の施策として「特別支援教育の充実方策の検討」が挙げられています。つまり、国としても在外教育施設における特別支援教育は「これから検討していく」段階だと位置づけているということです。

これは「日本人学校では受け入れてもらえない」という意味ではありません。学校によって規模も体制も違い、丁寧に対応している学校もあります。ただ、日本の公立小中学校と同じ支援体制を期待して渡航すると、ギャップに驚くことがある——という前提は持っておいたほうがよさそうです。検討する際は、必ず個別の学校に直接、次のようなことを確認してください。

  • 1クラスの人数と、学年ごとの児童生徒数
  • これまでに、配慮が必要な子を受け入れた例があるか
  • スクールカウンセラーや養護教諭の配置状況
  • 入学の際に、日本での支援の記録を共有できるか
  • 途中で通えなくなったとき、どんな対応があるか
自宅のソファで向き合って話している母親と娘

現地で「日本語で相談できる先」を探す5つのルート

「現地に日本語で相談できるところがない」——これが、海外で発達特性のある子を育てるご家庭のいちばんの孤立要因です。ゼロではないので、ルートを整理しておきます。

1|海外子女教育振興財団(JOES)の教育相談

公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)は、海外・帰国子女教育の専門機関です。教育相談は「対面相談」(東京本部・関西支部・福岡支部)だけでなく、「オンライン相談」(ZOOMを使用)と「メール相談」でも受け付けています(JOES「教育相談」ページより)。相談時間の枠は日本時間で設定されているため、時差のある地域からでも申し込みやすいのが特徴です。学校選びだけでなく、子ども本人や親子関係の悩みに対応する「こころの相談」も別に用意されています。

渡航前でも渡航後でも利用できるので、「まだ何も決まっていないけれど、話を聞いてほしい」という段階でも構いません。費用や申し込み方法は変更されることがあるので、必ず公式サイトで最新の案内をご確認ください。

2|在外公館(大使館・総領事館)

渡航先の日本大使館・総領事館は、在留邦人向けに医療機関の情報などを提供しています。外務省の「世界の医療事情」は医務官が実地調査した国・地域を対象に掲載されており、掲載がある国であれば、現地の医療体制のおおまかな全体像をつかめます。あわせて、外務省 海外安全ホームページの「医療・健康関連情報」も確認できます。在外公館は医療機関の紹介や診断を行う機関ではありませんが、「どこから調べ始めればいいか」の入り口としては有効です。

3|現地の日本人会・日本人コミュニティ

多くの都市には日本人会や日本語の保護者コミュニティがあります。制度の情報より、「あの学校のこの先生は相談に乗ってくれる」「この病院に日本語がわかるスタッフがいる」といった生きた情報が得られるのが強みです。一方で、うわさや個人の体験が事実として広がりやすい面もあるので、制度に関わることは必ず一次情報で裏を取ってください。

4|日本の主治医・発達障害者支援センターとのつながりを残す

日本国内には、都道府県・指定都市が設置する発達障害者支援センターがあります。国立障害者リハビリテーションセンターの案内によれば、発達障害児(者)とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行う専門的機関とされています。海外在住者への対応可否や相談方法はセンターごとに異なりますが、渡航前に一度つながっておくと、帰国時の相談先としても使えます。

5|学校の中の相談窓口

意外と見落とされがちですが、現地校やインター校にも、school counselor、SENCO、learning support teacher といった相談担当がいることがあります。担任だけに話すより、こうした専門の担当につないでもらったほうが話が進むケースが多いです。初回の面談で「相談の担当はどなたですか」と聞いておくだけでも違います。

それでも「どこにもつながれない」という状態が続いているときは、学校の外に居場所をつくる発想も必要です。海外で子どもの居場所が見つからないときもあわせてご覧ください。

学校や相談先に、困りごとをどう伝えるか

言語の壁があるなかで、子どもの特性を伝えるのは簡単ではありません。翻訳アプリを使うにしても、伝え方の「型」を持っておくと格段に楽になります。

1

診断名より「場面」から話す

診断名の理解や訳語は国によって差があります。「授業中に立ち歩くことがある」「切り替えに時間がかかる」など、実際に起きる場面を短く伝えるほうが正確に伝わります。診断がある場合は、そのうえで書類を渡します。

2

「困ること」と「うまくいく工夫」をセットで渡す

困りごとだけを伝えると、学校側は「受け入れが難しい」と身構えることがあります。「事前に予定を伝えてもらえると落ち着きます」のように、すでに家庭や日本の学校で効果があった工夫を一緒に渡すと、話が前に進みやすくなります。

3

口頭で終わらせず、書面とメールで残す

面談で合意したことは、その日のうちにメールで「今日はこういう話をしました」と送って記録に残します。担当者が変わっても引き継がれ、後で「聞いていない」となるのを防げます。転校や帰国のときにも、この記録が役立ちます。

4

子ども本人の言葉も残しておく

親から見た困りごとと、本人が困っていることは違うことがあります。「学校のどこがしんどい?」「どうなったら行きやすい?」と本人に聞いて、その言葉をそのまま記録に残しておくと、支援の方向がずれにくくなります。

自宅の机でノートパソコンを開いてオンライン授業を受ける子ども

場所に縛られない「少人数・オンライン」という選択肢

現地の学校が合うかどうかは、通ってみないとわからない部分があります。だからこそ、「学校がうまくいかなかったときに、学びと人とのつながりがゼロにならない状態」を、あらかじめ一つ持っておく家庭が増えています。オンラインの学びは、その候補になり得ます。

オンラインが向く理由は「便利だから」だけではありません。通学の移動がない、教室の音や人の多さから離れられる、時差に合わせて時間を選べる——こうした条件が、感覚の負担や場面の切り替えに時間がかかるお子さんにとって、結果的に負担を減らすことがあります。もちろん、画面越しのやりとりが苦手なお子さんもいます。どちらが良い・悪いではなく、体験してみて本人がどう反応するかで判断してください。

ここでは、海外に住みながら使える選択肢の一つとして、株式会社NIJINが準備している2つのオンラインスクールを紹介します。どちらもまだ開校していませんし、学費・料金は公表されていません。「発達特性のある子に適している」と言い切れる根拠もありません。あくまで、選択肢を知っておくための情報としてご覧ください。

NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)は、2027年9月開校予定のオンライン・インターナショナルスクールです。対象は6〜18歳で、1クラス8名の少人数制。入学試験・選考・英語要件はなく、まず対話(面談)から始まる設計だと公式に案内されています。公式サイトでは「一人ひとりのペースや特性を尊重し、少人数で心理的に安全な環境づくりを最優先」とし、学校に行きづらかった子も対象だと明記しています。ただし日本の「一条校」ではないため、日本の高校卒業資格は発行されません。また、在籍校での「出席扱い」について公式サイトに記載は確認できませんでした。出席扱いの可否は在籍校の校長判断となるため、必ず在籍校・教育委員会にご相談ください。無料体験クラスは2026年9月から毎月開催予定とされています。

ともだちじゃぱん(TOMODACHI JAPAN)は、2026年12月にパイロット開校予定の、子ども向けオンライン日本語スクールです。対象は年長(5歳ごろ)〜高校3年生が中心で、年齢ではなく「今どのくらい話せるか」の会話レベルでクラス分けをします。1クラス8名の少人数・対話中心で、月およそ100コマの中から選べる通い放題。時間帯は住んでいる地域の時差に合わせて設定され、送迎はありません。日本の現役の教員が担任を務め、補習授業校との併用も歓迎とされています。料金は居住地に応じた奨学金による自動割引があるとされていますが、具体的な金額は未公表で、無料の学校案内で案内されるとのことです。

国内でホームスクールという形を検討している場合は、発達障害・HSC・ギフテッドの子とホームスクールもあわせてご覧ください。

NIJIN GLOBAL ACADEMY NIJIN GLOBAL ACADEMY|6〜18歳

1クラス8名。心理的安全性を、いちばん下に置く学校

一人ひとりのペースや特性を尊重し、少人数で心理的に安全な環境づくりを最優先にすると公式に明記しているオンライン・インターナショナルスクール。入学試験・英語要件はなく、まず対話から始まります。2027年9月開校予定。

開校の最新情報を受け取る ▶

入会前の相談・見学だけでも大丈夫です。

TOMODACHI JAPAN|にほんごで、ともだちになる。

日本語で、安心して話せる相手がいる

海外にいても、日本の同世代と日本語で毎日話せるオンライン日本語スクール。8人の少人数で、時差に合わせた時間帯。送迎ゼロで、通い方も選べます。2026年12月パイロット開校予定。

学校案内を受け取る(無料) ▶

資料請求は1分・メールだけで完了します。

帰国が決まったら:日本で支援を再開する流れ

帰国は「元に戻る」ことではありません。日本の支援制度は、住んでいる自治体の窓口を通じてもう一度つなぎ直す必要があります。おおまかな流れは次のとおりです。

1

帰国日と住む場所が決まったら、転入予定の自治体に連絡する

教育委員会の就学相談(自治体によって「教育支援委員会」「就学支援委員会」などと呼ばれます)は、実施時期が決まっていることが多く、年度途中の申し込みが難しい場合もあります。住む場所が決まった段階で早めに問い合わせるのが安全です。

2

海外での記録を、日本語でまとめ直す

現地で受けた評価やIEP等の書類、学校とのやりとりの記録は、要点だけでも日本語にまとめておくと相談がスムーズです。海外の制度名をそのまま伝えても伝わりにくいため、「何に困り、何をしてもらっていたか」の形に直します。

3

医療・福祉の窓口にも並行して相談する

通級や特別支援学級は教育委員会、放課後等デイサービス等の障害児通所支援は市区町村の障害福祉担当課と、窓口が分かれています。受給者証は再申請が必要になることが多いので、こちらも早めに確認してください。発達障害者支援センターは、どこに相談すればよいかの交通整理をしてくれる場合があります。

4

「学校に戻れるか」を急がない

帰国直後は、言葉・生活リズム・友人関係が一度に変わります。海外生活が長かった子ほど、日本の学校での違和感が強く出ることがあります。学校に行きしぶりが出ても、それは失敗ではありません。

帰国後のなじみにくさについては、帰国子女が日本の学校になじめず不登校になったときで詳しく扱っています。引っ越しそのものの手続きが気になる場合は、不登校のまま引っ越すときの手続きもあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

日本で受けていた通級や特別支援学級の支援は、海外でも続けられますか?

通級による指導や特別支援学級は、学校教育法にもとづく日本国内の学校の制度です。そのまま海外の学校に引き継がれる仕組みはありません。渡航前に在籍校から「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」などの記録をもらい、渡航先の学校に自分たちで説明していくことになります。

放課後等デイサービスの受給者証は、海外に行くとどうなりますか?

放課後等デイサービスや児童発達支援は児童福祉法にもとづく国内の福祉サービスで、お住まいの市区町村が支給決定を行っています。海外転出の際の受給者証の扱いや、帰国後の再申請の手続きは自治体によって運用が異なるため、必ず市区町村の障害福祉担当課にご確認ください。

子どもの薬を海外に持って行くとき、手続きは必要ですか?

薬の種類によって異なります。厚生労働省は、医薬品を海外に持参する場合に医師の診断書などの携帯や数量制限、事前の許可申請が必要になる場合があると案内しています。医療用麻薬・覚醒剤原料にあたる薬は事前に地方厚生局長の携帯輸出(輸入)許可が必要とされ、向精神薬も注射剤や一定量を超える場合は処方箋の写しや医師の証明書が求められることがあります。お子さんの薬が該当するかは主治医・薬局・地方厚生局麻薬取締部にご確認ください。

渡航先の国で、日本の薬が持ち込めないことはありますか?

あります。厚生労働省の案内でも、渡航先の国が日本と異なる法規制を行っている場合があるため、事前に渡航先の大使館に確認するよう求められています。日本では一般的に処方される薬でも、国によっては持ち込みに許可が必要だったり、認められていなかったりすることがあります。必ず在日大使館・領事館に問い合わせてください。

海外の学校には、日本の「通級」のような仕組みがありますか?

国によって仕組みが大きく異なります。たとえばアメリカにはIDEAという連邦法があり、無償の適切な公教育(FAPE)とその手段としてのIEP(個別教育計画)が定められています。イギリスには教育省の「SEND Code of Practice: 0 to 25 years」があり、EHC plan という仕組みがあります。ただしこれらは基本的に公立(州立)学校を対象とした制度で、インターナショナルスクールや私立校は対象外であることが多いため、学校ごとの確認が必要です。

日本人学校なら、日本と同じ支援が受けられますか?

学校によります。文部科学省が令和5年4月に策定した「在外教育施設における教育の振興に関する基本的な方針」では、障害のある子供等が不利な教育条件に置かれてきたことに触れ、「特別支援教育の充実方策の検討」が施策として挙げられています。国としても検討段階と位置づけられているため、日本の公立小中学校と同じ体制を前提にせず、必ず個別の学校に受け入れ体制を確認してください。

現地で日本語で相談できるところはありますか?

公益財団法人 海外子女教育振興財団(JOES)の教育相談は、対面(東京本部・関西支部・福岡支部)のほか、オンライン(ZOOM)とメールでも受け付けています。学校選び以外の悩みに対応する「こころの相談」も用意されています。このほか、渡航先の日本大使館・総領事館、現地の日本人会、日本国内の主治医や発達障害者支援センターとのつながりも相談先の候補になります。

診断はまだないのですが、渡航前に何かしておいたほうがよいですか?

診断の有無にかかわらず、「どんな場面で困るか」「どうすると落ち着くか」を家庭の言葉で書き出しておくことをおすすめします。国が変われば診断名の指す範囲や受け止め方も変わるため、診断名よりも具体的な場面のほうが伝わりやすい場面が多くあります。診断や検査の必要性については、必ず主治医・専門機関にご相談ください。

現地校が合わないとき、学びを止めない方法はありますか?

オンラインの学校や学習サービスは、居住地に左右されにくい選択肢の一つです。通学の移動がない、教室の音や人の多さから離れられる、時差に合わせて時間を選べるといった条件が、結果的に負担を減らすことがあります。ただし画面越しのやりとりが負担になるお子さんもいるため、体験や面談で本人の反応を確かめてから判断してください。

帰国後、日本の支援をすぐに再開できますか?

自動的には再開されません。通級・特別支援学級については転入予定の自治体の教育委員会で就学相談を受けるのが一般的で、実施時期が決まっている自治体もあります。障害児通所支援の受給者証も市区町村への再申請が必要になることが多いため、帰国日と住む場所が決まった段階で、教育委員会と障害福祉担当課の両方に早めに問い合わせてください。

執筆|にじいろ編集部

「学校に合わない個性を応援する」教育情報サイト「にじいろ」の編集部。不登校・発達特性・オルタナティブな学びの選択肢について、公的機関や学校の公式情報など一次情報を確認しながら記事を作成しています。制度や費用に関する情報は変更されることがあるため、必ず該当する自治体・学校・在外公館の最新の公式情報をご確認ください。

この記事の内容を確かめるための一次資料

このテーマは、国・自治体・学校ごとに扱いが変わるため、伝聞や体験談だけで判断すると危険です。学校や役所と話すときは、下記の一次資料を手元に置いて進めることをおすすめします。

このテーマに関わる公的資料
資料何がわかるか
文部科学省「令和5~6年度 特別支援教育に関する調査の結果について」(通級による指導実施状況調査)通級による指導を受けている児童生徒数(令和5年度・203,376人)と障害種別の内訳
文部科学省「在外教育施設の概要」日本人学校94校(令和6年4月15日現在)・補習授業校242校(令和6年7月1日現在)の設置状況と在籍者数
文部科学省「在外教育施設における教育の振興に関する法律・基本方針について」令和5年4月策定の基本方針。障害のある子供等の教育条件と「特別支援教育の充実方策の検討」
厚生労働省「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」薬を海外に持参するときの基本ルール(書類・数量・容器・郵送の可否)
地方厚生局麻薬取締部「医療用麻薬・覚醒剤原料・向精神薬を携帯して海外へ渡航する際の手続きについて」携帯輸出(輸入)許可が必要な薬の範囲、申請方法、渡航先への確認の必要性
外務省「世界の医療事情」医務官が実地調査した国・地域の医療事情(2年ごとに全面改訂・全ての国を網羅するものではない)
外務省 海外安全ホームページ「医療・健康関連情報」国・地域別の医療および健康に関する情報、安全対策基礎データへの導線
海外子女教育振興財団(JOES)「教育相談」対面(東京本部・関西支部・福岡支部)/オンライン(ZOOM)/メールでの相談方法と申し込み
国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センター・一覧」都道府県・指定都市が設置する相談機関の所在地と連絡先
米国教育省「About IDEA」アメリカの特別支援教育の枠組み(FAPE・IEP)と対象年齢
英国教育省「SEND Code of Practice: 0 to 25 years」イギリスの特別な教育的ニーズへの対応の枠組みとEHC plan

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療・投薬に関する助言ではありません。お子さんの状態や必要な支援については、必ず主治医・専門機関にご相談ください。また、支援制度・医薬品の携行に関する規制・学校の受け入れ体制は、国・地域・自治体・年度によって異なり、変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、必ず渡航先の在外公館、渡航先国の在日大使館、お住まいの自治体、各学校の最新の公式情報をご確認ください。