子どもが日本語を嫌がる・やりたがらない…海外で「日本語ぎらい」にさせない関わり方

海外×日本語・親子の関わり方
子どもが日本語を嫌がる・やりたがらない…海外で「日本語ぎらい」にさせない関わり方

「日本語やろう」と言うたびにケンカになる。ドリルを開いた瞬間に子どもの機嫌が悪くなる。土曜の朝、「補習校行きたくない」と布団から出てこない——海外で子どもを育てていると、こんな日が続く時期があります。その焦りの奥にはたいてい、「このままだと日本語が消えてしまう」「祖父母と話せなくなってしまう」という不安があるはずです。この記事では、教材や学校を比べる前に、子どもはなぜ日本語を嫌がるのか、そして親子の関係を壊さずに日本語を残すにはどう関わればいいのかを、公的機関や研究の一次情報を確認しながら整理します。

海外・国際教育 執筆 にじいろ編集部 最終更新 2026.09.04

この記事の結論

  • 「日本語をやりたくない」は日本語そのものが嫌いなのではなく、「使う相手がいない」「できない自分を見るのがつらい」「親の期待が重い」のどれかであることが多いです。
  • 家庭のことば(継承語)は放っておくと失われやすい一方で、親が焦って量を増やすほど、子どもは日本語から遠ざかるというジレンマがあります。
  • 会話の日本語と、教科の日本語は育つ速さが違います。文部科学省の研修資料では、生活言語能力の習得に2年程度、学習言語能力には5〜10年とされています。「話せているのに読み書きが進まない」のは想定内です。
  • 最初にやることは教材選びではなく、「日本語=叱られる時間」になっていないかを点検し、量を思い切り減らして続く形に落とすことです。
  • 家庭の中だけで背負わないこと。日本語を「使う相手」が家の外にいるかどうかが、続くかどうかを分けます(→8章)。

「日本語やりたくない」と言う子は、めずらしくありません

まず知っておいていただきたいのは、これがあなたの家だけで起きていることではない、ということです。国際交流基金の「2024年度 海外日本語教育機関調査」によると、海外で日本語を学んでいる人は143の国・地域で4,000,750人にのぼります。また文部科学省「在外教育施設の概要」(令和6年)によれば、日本人学校は世界49カ国・1地域に94校(在籍 約1万6千人)、補習授業校は51カ国・1地域に242校(在籍 約2万1千人)あります。それだけの数の家庭が、日本語をどう続けるかという同じ課題に向き合っています。

そして、子どもが日本語を嫌がるという現象は、研究の世界でもよく知られたものです。長年バイリンガル教育を研究してきた中島和子氏は、「家では継承語しか話さなかった子どもが地域のディケアや保育園・幼稚園などに通い始めて現地語に頻繁に触れるようになると、流暢に話していた継承語を失って現地語しか話さなくなるという状況は、さまざまな言語で報告されている」と述べ、「継承語は放置すれば1世代で消滅するものである」と指摘しています(『母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究』第13号/大阪大学リポジトリ公開)。

この一文を読むと、余計に焦る方もいるかもしれません。けれど同じ論文の中で、著者は具体的な打ち手についてこうも書いています。「親が心して自分の母語で話しかけ、話し合いをしていれば幼児は自然にその言語を話すようになるし、母語で書かれた本の読み聞かせをしていればいつのまにか子どもが自分で読むようになる」。つまり鍵になっているのは、ドリルの冊数ではなく、日常の中で日本語がどれだけ使われているかのほうなのです。

子どもが日本語を嫌がるときに、起きていること

「日本語やりたくない」は、多くの場合ひとつの言葉に複数の理由が混ざっています。まず、その言葉の下で何が起きているのかを分けて見てみましょう。

子どもの言葉と、その裏側にありがちな気持ち
子どもの言葉裏にありがちな気持ち親の最初の一手
「わかんない」現地校では年相応に力を出せているのに、日本語になると急に「小さい子」扱いになる。プライドが傷ついている内容の難易度を下げる。ただし題材は年齢相応のままにして、やさしい日本語で扱う
「めんどくさい」平日は現地語での学校生活でフル稼働している。日本語が嫌なのではなく、単純に容量が残っていないやる時間帯と量を見直す。夜より朝、まとめてより小分けに
「なんでやらなきゃいけないの」日本語を使う相手・使う場面が生活の中に見えていない。意味づけができていない将来の必要性を説明するより先に、「今日使える相手」を1人つくる
「ママとやるのはイヤ」日本語の時間=注意される時間・叱られる時間になってしまっている教える役を、いったん親以外に移す。親は「話す相手」に戻る
「補習校行きたくない」日本語ではなく、その場で起きていること(友だち・宿題の量・土曜がつぶれること)がしんどい言語の問題と場の問題を切り分けて聞く(→7章

3つめの「なんでやらなきゃいけないの」は、とくに軽視されがちですが本質的です。タイの「バイリンガルの子どものための日本語教室」の実践をまとめた研究論文(西島阿弥子ほか「『言語と文化の継承』を超えた継承日本語教育とは」『Journal for Children Crossing Borders』第12号、2021年)は、「子ども自身が親の気持ちと同様に、親の言語を継承したいと思っているとは限らない」と率直に指摘しています。そして複数言語の環境で育つ子どもは「家庭外で使用しない日本語に価値を見出せなくなる」ため、「親が努力し子どもにも頑張らせなければ学習が継続しない」状況に陥りやすい、とも書かれています。

ここが分かれ道

「頑張らせないと続かない」構造のままだと、親も子も消耗し続けます。この記事が提案したいのは、頑張らせる力を強くすることではなく、頑張らなくても続く形に組み替えることです。5章以降で、その具体的な手順を扱います。

机に頭をつけて、勉強をやりたがらない様子の子ども

「話せているのに読み書きが進まない」は、ふつうのことです

海外で子育てをしている保護者からよく聞くのが、「日常会話はぺらぺらなのに、漢字も作文もまるで進まない」という悩みです。ここで知っておくと気持ちがずいぶん楽になるのが、「生活のことば」と「学習のことば」は、育つ速さがまったく違うという点です。

文部科学省が委託して作成した研修用動画コンテンツ「外国人児童生徒等教育の考え方」では、この2つが次のように整理されています。

生活言語能力と学習言語能力の違い(文部科学省 研修用動画コンテンツ2「外国人児童生徒等教育の考え方」より作成)
 生活言語能力(日常生活のことば)学習言語能力(授業のことば)
ことばの例「温める」「冷たくなる」「熱する」「冷却される」
文の例「それ、持ってきて!」「三角形ABCで、辺BCを底辺とする時…」
習得にかかる期間2年程度5〜10年

この資料はもともと日本国内で日本語指導が必要な子どもを想定したものですが、海外で日本語を育てている家庭にとっても示唆は同じです。「1年やったのに漢字が身につかない」のは失敗ではなく、そもそも5〜10年かかる領域に手をつけているということ。親の側が時間軸を1年から5〜10年に引き延ばすだけで、日々の焦りはかなり減ります。

「ダブルリミテッド」への不安について

現地語も日本語もどちらも中途半端になるのではないか——という不安を口にされる方もいます。この言葉は保護者の間で不安を強くかき立てやすい一方、子どもの言語の状態は家庭の言語環境・滞在年数・学齢・特性によって大きく異なり、記事や体験談から自己判断できるものではありません。気になる場合は、現地校の担任、補習校や日本語教室の先生、日本語教育や言語発達の専門家に、両方の言語での様子を具体的に伝えて相談してください。「日本語で話しているときはこう」「現地語だとこう」と場面ごとにメモを残しておくと、相談がぐっと具体的になります。

いちばん日本語を遠ざけるのは、親の焦りかもしれません

先に書いておきたいのは、保護者が日本語を残したいと願うことは、まったく正当な願いだということです。前出の文部科学省の資料でも、母語・継承語は「思考力の基礎」「アイデンティティを確立させるためのツール」「家族とのつながりを作る」「集団としての民族文化を維持する」ものとして位置づけられ、日本語教育推進法第三条第7項でも「家庭における教育等において使用される言語の重要性」への配慮が定められています。あなたの心配は、公的にも裏づけのある心配です。

ただ、その正当な焦りが「量」に化けてしまうと、家庭の中で日本語は「ケンカの原因」という顔を持つようになります。にじいろに寄せられる海外在住のご家庭の相談でも、日本語が嫌いになった時期をさかのぼると、たいてい「日本語をめぐって強く言った経験」が積み重なっているという話をよく聞きます。

いったんやめてよい3つのこと

①会話中の言い直しをさせる……せっかく日本語で話しかけてくれた瞬間に訂正が入ると、次から現地語で話すほうが安全になります。会話は内容に反応し、直すのは書く時間だけに限定します。
②きょうだいや、他の家の子と比べる……「お姉ちゃんはできたのに」は、日本語ではなく自分自身が否定されたと受け取られます。
③将来の不安で動かす……「日本語ができないと将来困る」は、子どもには「今のあなたではダメだ」としか届きません。

行き渋りや不登校の相談の現場で私たちが繰り返しお伝えしているのは、守る順番を間違えないということです。①親子の関係、②その子が日本語を嫌いにならないこと、③日本語の量——この順番です。①が壊れると、②も③も一緒に失われます。逆に①さえ残っていれば、10代後半や大人になってから本人の意思で日本語を学び直す道は、いつでも開かれています。

量より継続|まず「1日5分」まで落としてみる

「関係を守る」と言われても、具体的に何をすればいいのか。いちばん効くのは、思い切って量を落として「続く形」を先につくることです。順番はこうです。

1

今やっている量を3分の1にする

「週1回30分」より「週3回5分」のほうが続きます。回数を増やし、1回を短くするのがコツです。1回が短ければ、子どもも「始める」ハードルが下がります。

2

「終わり」を子どもに決めさせる

「今日は3分と5分、どっちにする?」と選択式にします。決定権が子ども側にあるだけで、同じ内容でも受け取り方が変わります。決めた時間で必ず終わることが大切です。

3

できた・できないを評価しない

正答率や進度を見ず、「やった日にカレンダーへ丸をつけるだけ」にします。評価をやめると、日本語の時間から緊張が抜けます。

4

続く形が見つかるまで、教材を変えない・増やさない

うまくいかないと新しい教材を探したくなりますが、教材の乗り換えは子どもにとって「またやらされる」の再開です。まず2〜3か月、同じ形で回してみます。

そして、机の上の5分と同じくらい大切なのが、机を離れた日本語の量です。中島和子氏が挙げていた「話しかける」「読み聞かせをする」は、子どもにとって課題ではありません。寝る前の絵本、料理をしながらの会話、写真を見ながらの思い出話——こうした時間はドリルより負担が軽く、しかも会話量としてはずっと多くなります。

テーブルで向かい合って穏やかに話す母親と子ども

日本語は「勉強」より「関係」で伸びていく

国際交流基金の「日本語教育通信」に掲載された、ハワイの継承語教育に関する報告(尾関史氏、2024年2月)は、この点をはっきり書いています。継承語教育というと「親から子に受け継ぐことばを家庭を中心に育てていく」というイメージがありますが、著者は現在必要なのは「親子の関係だけにとどまらず、友人やコミュニティ、そして、広く社会とのつながりの中でことばの力を育んでいく視点」だと述べています。

同じ報告の中では、日本語を学び続けている子どもたちが「他者との関係性の中で複数言語を自分にとって意味のあるものとして意味づけながら使用」しており、その意味づけこそが「複数言語を学ぶ意義となり、複数言語使用や彼らの学習を支え、彼らの人生を支えていた」とも書かれています。日本語が続く子は、日本語が上手だから続いているのではなく、日本語を使いたい相手や場面があるから続いているということです。

そう考えると、家庭でできることの重心は「教える」から「使う相手を増やす」へ移ります。

  • 祖父母とのビデオ通話に「役割」を与える……「話しなさい」ではなく「今日の天気と給食を伝える係」のように、短くて具体的な仕事にすると子どもは動きやすくなります。
  • 日本のいとこ・友だちとつながる……同世代とのやりとりは、大人との会話より強い動機になります。文字数の少ないチャットやゲームからで十分です。
  • 好きなものを日本語の入口にする……アニメ、マンガ、ゲーム、アイドル、料理、鉄道。本人の「好き」の側から入るほうが長持ちします。ただし、見るだけ・聞くだけの受け身の時間より、見たあとに誰かとその話を日本語でするほうが力になります。
  • 日本語で「勝てる」場面をつくる……しりとり、なぞなぞ、カルタなど、親が本気を出さなくても子どもが勝てる遊びを混ぜます。「日本語=できない自分に会う時間」を上書きしていく作業です。

なお、日本語が生活言語になっている環境から日本へ戻る場合は、逆の課題が出ることもあります。日本の学校で日本語につまずくケースについては日本語がわからないまま日本の学校へもあわせてご覧ください。

補習校を行き渋ったとき、どう考えるか

補習授業校について、文部科学省「在外教育施設の概要」は「現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)等に通学している日本人の子どもに対し、土曜日や放課後などを利用して国内の小学校又は中学校の一部の教科について日本語で授業を行う教育施設」と説明しています。この定義をあらためて読むと分かるのは、子どもは平日フルタイムで現地校に通ったうえで、土曜や放課後にもう一つの学校に通っているということです。行き渋りが出るのは、意欲の問題というより容量の問題であることが少なくありません。

行き渋りが出たとき、私たちが日本国内の不登校の相談でもお伝えしている考え方は、次の3つです。

行き渋りが出たときの考え方

①「日本語」がイヤなのか、「その場」がイヤなのかを切り分ける。宿題の量なのか、友だち関係なのか、先生との相性なのか、土曜がつぶれることなのか。子どもは全部まとめて「行きたくない」と言いますが、原因が違えば打ち手も変わります。責める調子にならないよう、「どこがいちばんしんどい?」と一つずつ聞いていきます。

②「やめる/続ける」の二択にしない。今日だけ休む、回数を減らす、宿題は出さずに授業だけ出る、学年を下げてもらう——中間案は意外とあります。まずは補習校の先生に、いまの様子を率直に相談してみてください。

③決めるのは今日でなくていい。1か月区切りで様子を見る、と決めるだけで、親も子も追い詰められにくくなります。

無理を重ねて通い続けた結果、「もう日本語の話は一切しないで」という状態まで行ってしまうと、そこから戻すのに何年もかかります。早めに踏みとどまる場所をつくったほうが、長い目で見れば日本語は残ります。学校に行けない・行きたくないという状態そのものへの向き合い方については、海外で子どもの居場所がない…も参考になるはずです。

自宅のパソコンでオンラインの授業に参加し、画面に向かって手を振る子ども

家の外に「日本語を使う相手」をつくるという選択肢

6章で見たとおり、日本語が続くかどうかを分けるのは「使う相手がいるか」です。家庭と補習校だけで抱えきれないと感じたら、家の外に相手をつくる方法を探すことになります。大きく分けると次の3つです。

  • 対面の補習校・日本語教室……同じ地域に日本語で話す仲間ができるのが最大の強み。一方で通学の負担が大きく、土曜がまるごと埋まります。
  • オンラインの1対1レッスン……時間と内容を柔軟に組めますが、相手が先生一人なので「同世代の友だち」にはなりにくい形です。
  • 日本の同世代とつながるオンラインスクール……送迎がいらず、日本語を「勉強」ではなく「話す相手のいることば」として使えます。近年出てきた選択肢です。

ともだちじゃぱん(TOMODACHI JAPAN)

株式会社NIJINが運営する、子ども向けのオンライン日本語スクールです。キャッチコピーは「にほんごで、ともだちになる。」。対象は年長(5歳ごろ)〜高校3年生が中心で、年齢ではなく「今どのくらい話せるか」の会話レベルでクラス分けされます。日本語ゼロ・ひらがなが読めない状態からでも参加でき、1クラスは8名の少人数。文法の暗記ではなく「今日なにが楽しかった?」といった対話そのものが学びになる設計です。メタバース(仮想空間)の校舎があり、朝の会や放課後に日本の同世代の子どもと過ごせます。担任は日本の現役の教員で、講師採用の合格率は約2%と公表されています。月およそ100コマの中から選べる「通い放題」で、時間帯は住んでいる地域の時差に合わせて設定。送迎はゼロで、補習校との併用も歓迎とされています。

ただし、ともだちじゃぱんは2026年12月にパイロット開校予定で、まだ開校していません。料金はシンプルな定額(通い放題)に、居住地に応じた「ともだちじゃぱんスカラシップ」が自動で適用される仕組みですが、具体的な金額は公表されておらず、無料の学校案内で案内されます(申請や所得証明は不要、きょうだい割あり)。1期生限定で、2027年3月31日までの申し込みは入会金無料。開校前のため内容・料金は変更の可能性があると公式が注記しています。

NIJIN GLOBAL ACADEMY(NGA)

同じく株式会社NIJINが準備しているオンライン・インターナショナルスクールです。対象は6〜18歳で、1クラス8名の対話型。入学試験・選考・英語要件はなく、英語が話せなくても日英バイリンガルのメンターが伴走します。「学校に行きづらかったお子さんも対象」と明記されており、日本語も英語も両方の環境で育つ子の受け皿として検討する家庭もあります。

こちらも2027年9月開校予定で、まだ開校していません。無料体験クラスは2026年9月から毎月開催予定です。日本の「一条校」ではないため、日本の高校卒業資格は発行されません。学費も未公表です。また、在籍校での「出席扱い」について公式サイトに記載は確認できませんでした。出席扱いの可否は在籍校の校長判断となるため、必ず在籍校・教育委員会にご相談ください。なお「累計入学者1,000名超」といった数字は母体であるNIJINアカデミー(日本国内)の実績であり、NGAやともだちじゃぱんの実績ではありません。

正直にお伝えしておきたいこと

上記2校はいずれも開校前です。今まさに日本語のことでご家庭が消耗しているなら、これらは「今日の解決策」にはなりません。まずは在籍校・現地校の先生、補習校、日本語教室、お住まいの地域の日本人会や在外公館の相談窓口など、いま使える相談先に一度話してみてください。そのうえで、来年以降の選択肢として情報を集めておく、という位置づけが現実的です。

NIJIN GLOBAL ACADEMY NIJIN GLOBAL ACADEMY|6〜18歳

英語も日本語も、「話したい」から伸びていく

6〜18歳が対象のオンライン・インターナショナルスクール。1クラス8名の対話型で、順位をつけません。入学試験・英語要件なし。2027年9月開校予定。

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TOMODACHI JAPAN|にほんごで、ともだちになる。

「勉強」だからしんどい。「ともだち」だから続く

文法ドリルではなく、8人の少人数で「今日なにが楽しかった?」を話すことから始まるオンライン日本語スクール。日本の同世代とメタバース校舎でつながれます。送迎ゼロ、補習校との併用も歓迎。2026年12月パイロット開校予定。

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1年後に振り返るための、家庭の「ものさし」

最後に、続けるためにいちばん効く工夫をお伝えします。親が見るものさしを、点数から関係の指標に取り替えることです。漢字の数や進度を見ていると、5〜10年かかる学習言語の伸びは短期間では見えず、焦りだけが積み上がります。代わりに、次のような項目を月1回、3行だけメモしてみてください。

  • 日本語で話しかけたとき、日本語で返ってきた回数は増えたか(減っていないか)
  • 日本語を使う相手は何人いるか(家族以外に1人でも増えたら大きな前進です)
  • 日本語の時間に、子どもが笑った日があったか
  • 親が日本語のことで怒った回数は、先月より減ったか

この4つが保たれていれば、たとえ今年の漢字が進まなくても、日本語は失われていません。逆にこの4つが崩れているときは、教材や学校を変えるより先に、量を落として関係を立て直すサインだと考えてください。

そして、ひとりで抱えないでください。現地校の担任、補習校や日本語教室の先生、日本語教育や言語発達の専門家、地域の日本人会、在外公館の相談窓口——相談先は思っているより複数あります。お子さんの状態について気がかりがある場合は、必ず専門機関や在籍校にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

子どもが日本語をまったくやりたがりません。無理にでもやらせるべきでしょうか?

「無理にでも」を続けた結果、日本語そのものを避けるようになってしまうご家庭は少なくありません。おすすめしたいのは、量を思い切って減らし(週3回5分など)、日本語の時間から評価と叱責を外すことです。中島和子氏の論文でも、家庭で話しかけたり読み聞かせをしたりする日常の言語使用の重要性が指摘されています。まずは「続く形」を先につくり、量を戻すのはそのあとです。

日常会話はできるのに、読み書きがまったく進みません。遅れているのでしょうか?

文部科学省の研修用動画コンテンツ「外国人児童生徒等教育の考え方」では、生活言語能力の習得に2年程度、学習言語能力には5〜10年かかるとされています。「話せているのに読み書きが進まない」のは、育つ速さが違う2種類の能力を同時に見ているためで、多くの場合は想定内です。ただし気になる様子が続く場合は、現地校や日本語教室の先生に両方の言語での様子を伝えて相談してください。

補習校を行き渋っています。やめさせたほうがいいですか?

「やめる/続ける」の二択で決める前に、まず「日本語がイヤなのか、その場がイヤなのか」を切り分けてみてください。宿題の量、友だち関係、先生との相性、土曜がつぶれること——原因によって打ち手は変わります。回数を減らす、宿題は出さずに授業だけ出る、といった中間案が可能かどうか、補習校の先生に相談してみる価値があります。判断は1か月区切りで、と決めるだけでも親子とも楽になります。

親が教えようとすると必ずケンカになります。どうすればいいですか?

日本語の時間が「注意される時間」になっているサインかもしれません。教える役をいったん親以外(オンラインの先生、日本語教室、祖父母など)に移し、親は「日本語で話す相手」に戻るのが有効なことがあります。会話中の言い直しをやめ、内容そのものに反応する。それだけでも家庭内の日本語の量は増えていきます。

下の子だけ日本語が伸びません。上の子と比べてしまいます。

きょうだいの間では、上の子が現地語を持ち込むことでその後の家庭内言語が変わるという現象がよく知られています。下の子は「日本語を使う必然性」が上の子より少ない環境で育っていることが多く、本人の努力の差ではありません。比較の言葉は日本語ではなく本人そのものを否定するものとして届きやすいので、下の子には下の子だけの「日本語を使う相手」を用意するほうが効果的です。

アニメやYouTubeを日本語で見せていれば日本語は身につきますか?

入口としては有効ですが、それだけで十分とは言えません。国際交流基金の日本語教育通信に掲載された報告では、子どもたちが「他者との関係性の中で」複数言語を意味づけながら使っていることが、学習を支えていたと述べられています。見せっぱなしにするより、見たあとにその内容を家族や友だちと日本語で話す時間をつくるほうが、ことばとしては定着しやすくなります。

両方の言語が中途半端になるのが心配です。日本語をあきらめたほうがいいのでしょうか。

安易に「あきらめる」「続ける」を判断できる問題ではありません。子どもの言語の状態は、家庭の言語環境・滞在年数・学齢・特性によって大きく異なります。文部科学省の資料では母語・継承語が「思考力の基礎」「アイデンティティを確立させるためのツール」と位置づけられており、日本語を保つこと自体には意義があります。不安が強い場合は自己判断せず、現地校の担任や日本語教育・言語発達の専門家にご相談ください。

海外で日本語を学んでいる子どもは、どのくらいいるのですか?

国際交流基金「2024年度 海外日本語教育機関調査」によると、海外の日本語学習者は143の国・地域で4,000,750人です。また文部科学省「在外教育施設の概要」(令和6年)によれば、日本人学校は世界49カ国・1地域に94校(在籍 約1万6千人)、補習授業校は51カ国・1地域に242校(在籍 約2万1千人)となっています。

補習校のかわりになるオンラインの選択肢はありますか?

株式会社NIJINが「補習校の代わり」と位置づけて準備している子ども向けオンライン日本語スクール「ともだちじゃぱん」があります。1クラス8名の対話中心で、年齢ではなく会話レベルでクラス分けし、補習校との併用も歓迎とされています。ただし2026年12月にパイロット開校予定で、まだ開校していません。料金は定額+居住地に応じたスカラシップの仕組みですが具体的な金額は未公表で、無料の学校案内で案内されます。

日本語をやめてしまったら、もう取り戻せませんか?

「今すぐ全部を取り戻せる」とは言えませんが、いったん距離を置いた子が、思春期以降に本人の意思で学び直す例はあります。そのとき効いてくるのが、日本語に対して嫌な記憶が積み上がっていないこと、そして家族との関係が保たれていることです。だからこそ、目先の量よりも「日本語を嫌いにさせないこと」を優先する意味があります。

執筆|にじいろ編集部

「学校に合わない個性を応援する」教育情報サイト「にじいろ」の編集部。不登校・発達特性・オルタナティブな学びの選択肢について、公的機関や学校の公式情報など一次情報を確認しながら記事を作成しています。海外在住のご家庭の状況は国や地域によって大きく異なります。制度や支援の内容は変更されることがあるため、必ず在籍校・現地校および公的機関の最新の公式情報をご確認ください。

この記事の内容を確かめるための一次資料

子どもの日本語については、不安をあおる情報も、根拠のはっきりしない「これをやれば伸びる」という情報も多く流通しています。学校や専門家と話すときは、下記の一次資料を手元に置いておくと話が具体的になります。

このテーマに関わる公的資料・研究資料
資料何がわかるか
文部科学省 研修用動画コンテンツ2「外国人児童生徒等教育の考え方」生活言語能力(2年程度)と学習言語能力(5〜10年)の違い、母語・継承語の重要性、日本語教育推進法の規定
文部科学省「在外教育施設の概要」日本人学校94校・補習授業校242校の設置状況、補習授業校の定義(令和6年)
国際交流基金「2024年度 海外日本語教育機関調査」海外の日本語学習者数 4,000,750人(143の国・地域)
国際交流基金 日本語教育通信「海の向こうの継承語教育」(尾関史、2024年2月)継承語を家庭だけで抱えず、友人・コミュニティ・社会とのつながりの中で育てるという視点
中島和子「継承語ベースのマルチリテラシー教育」『母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究』第13号継承語が失われる過程、家庭での話しかけ・読み聞かせの役割
西島阿弥子ほか「『言語と文化の継承』を超えた継承日本語教育とは」『Journal for Children Crossing Borders』第12号(2021年)子ども自身の動機づけ、家庭外で使わない言語に価値を見出しにくくなる構造

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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の学校・サービスへの入学や、特定の学習方法を推奨するものではありません。言語の発達には個人差が大きく、本記事の内容は診断や専門的助言に代わるものではありません。お子さんの言語やこころの状態について気がかりがある場合は、必ず在籍校・現地校の教員、日本語教育や言語発達の専門機関にご相談ください。ともだちじゃぱん・NIJIN GLOBAL ACADEMYはいずれも開校前であり、記載の内容・時期・料金体系は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。