海外で子どもが日本語を嫌がるとき、まず「日本語が嫌い」と決めつけず、学習内容・時間帯・通う場所・親子のやり取りのどこに負担があるかを分けて聞きましょう。短く楽しめる会話を残しつつ、読み書きの目標は別に整えます。補習授業校、地域の教室、オンラインの選択肢を現在の利用条件まで確認し、本人に合う形を考えます。
目次
- 「日本語が嫌い」と決める前に、疲れ・教材・読み書き・通う場・人間関係を分けて聞く。
- 会話ができても読み書きには別の練習が必要。現地校と帰国・進学の予定に合わせて目標を選ぶ。
- まず本人が選べる短い日本語の場面を試し、親子の会話を評価の時間にしない。
- 補習授業校、地域の教室、個別・交流型オンラインは役割が違う。現在使える内容と費用を確認して比べる。
「日本語やりたくない」と言われたときに最初にすること
「日本語の宿題をしよう」と声をかけるたびに口論になるなら、まず宿題を進めることより、何が嫌なのかを子ども自身の言葉で確かめることを優先してください。「日本語そのものが嫌い」とは限りません。現地校のあとで疲れている、漢字だけ難しい、補習授業校で居心地が悪いなど、理由によって必要な対応は変わります。
今日からできる順番は三つです。①その日は課題をいったん止めて落ち着いて話す。②会話・読み書き・通う場所のどこが負担か分ける。③本人が選べる小さな日本語の場面を一つ残す。たとえば寝る前に好きな本を一緒に読む、祖父母に写真を送る、ゲームの話を日本語で聞く、といった方法です。日本語で話すと叱られる時間を増やさないことが、次の一歩を考える土台になります。
海外の子どもの日本語には、家庭内で使う言葉、現地校で使う言葉、帰国後に必要な読み書きなど複数の目標があります。国際交流基金の継承語教育に関する報告も、子どもごとに日本語との関わり方や学ぶ意味が異なることを示しています。家庭の目的を決める前に、本人が今どんな日本語を使いたいかを聞きましょう。
子どもが日本語を嫌がる理由を、場面別に聞く
「やりたくない」を一つの理由に決めつけないために、最近の様子を場面別に聞きます。質問は一度に重ねず、本人が答えやすいものを一つだけ選んでください。答えたくない日は、話す時間を改めても構いません。
| 困っている場面 | 確かめる質問 | 試せる調整 |
|---|---|---|
| 現地校のあと | 「今は疲れている? 別の時間ならどう?」 | 休息を先に取り、学習時間を短くする |
| 読み書き | 「話すのと書くの、どちらが大変?」 | 会話と文字の目標を別にし、難しい教材を見直す |
| 補習授業校 | 「授業・宿題・友だち・移動のどこがつらい?」 | 学校に宿題量や参加方法を相談する |
| 親と学ぶ時間 | 「一緒に読むのと、誰かに教わるのはどちらが楽?」 | 親は会話相手に戻り、教える役を分ける |
この表は診断ではありません。たとえば「面倒」と言っても、疲労、内容の難しさ、対人関係などが重なることがあります。子どもの答えに応じて負担を一つずつ変え、変化を見てから次を決めるのが実用的です。言語を問わず会話や理解に気がかりがある場合は、現地校の教員や言語発達の専門家に、両方の言語での様子を具体的に伝えて相談してください。
聞くときは「日本語が嫌いなの?」と二択にしないほうが、答えを探しやすくなります。たとえば「今日は書くのが大変だった? 時間が遅かった?」と場面を挙げ、子どもが違うと言えばそのまま受け止めます。言葉にしにくい年齢なら、好き・普通・疲れるの三つから選んでもらう方法もあります。保護者が考えた原因と本人が感じる負担は違うことがあるため、答えを直さずに記録することが次の調整につながります。
話せるのに読み書きが難しいときの考え方
家庭で日本語の会話ができても、教科書を読んだり漢字で作文したりする力は別の経験を必要とします。会話が得意だから文字も同じ速さで進む、という前提を置かないでください。逆に、漢字が苦手なだけで日常の日本語や現地語まで「足りない」と決めつけることも避けます。
| 目標 | 家庭で見られる場面 | 合う練習の例 |
|---|---|---|
| 会話 | 気持ちや出来事を伝える | 好きな話題でやり取りし、内容に反応する |
| 読む | メッセージ、漫画、本を楽しむ | 本人が選んだ短い文章を一緒に読む |
| 書く | 短い返信や説明を書く | 相手に伝える一文から始める |
| 学校の学習 | 国語の文章や教科用語を扱う | 学年相当の目標を学校・先生と調整する |
文部科学省の研修資料は日常会話に用いる言葉と、授業で必要な言葉を区別しています。ただし国内で日本語指導を受ける子どもを想定した資料であり、海外の継承日本語を学ぶ全員に同じ習得年数を当てはめるものではありません。今できる会話を強みとして認め、読み書きは目的に合わせて別の計画を立てることが大切です。
就学前なら、文字を急ぐ前に絵本や遊びで話したいことが増えているかを見ます。小学生は現地校の課題と日本語の課題が重なりやすいため、読む量・宿題量を調整します。中高生は本人の関心と進路がはっきりしてくるので、友人とのやり取り、帰国・進学で必要な文章、資格などから目標を選びます。これは年齢だけで決める区分ではなく、本人の経験と希望を聞くための目安です。
二つの言語が心配なとき
「どちらの言語も伸びないのでは」と不安なときは、単一のテスト結果や家庭内の印象だけで判断しないでください。現地校では理解・発表・友人との会話がどうか、家庭ではどんな話題なら日本語で話せるかをメモし、教員や専門家と共有します。必要な支援は年齢、滞在歴、使用する言語、学習環境で変わります。
親子関係を守りながら、日本語への圧力を減らす
子どもに日本語を残したいという思いは、家族との会話や将来の選択肢を大切にする気持ちから生まれます。ただ、毎回の会話が訂正や評価で終わると、子どもが日本語で話す前に身構えることがあります。親子の会話と「教える時間」を分けるところから始めましょう。
- 話の途中ですべての言い間違いを直す。まず内容に答え、練習したい表現だけ別の時間に扱う。
- きょうだいや同学年の子と進度を比べる。比べる対象は本人の先週の様子にする。
- 「将来困るから」と繰り返し説得する。今使いたい相手や話題があるかを聞く。
保護者だけで毎日の学習を支える必要はありません。補習授業校の先生に家庭学習の量を相談する、親以外の大人と話す機会を作る、同世代と交流できる場を探すといった分担ができます。学校やオンラインの場を選ぶ際も、子どもの意思と生活時間を先に確かめてください。
量を減らして続ける|5分から試す家庭の実践
「毎日必ず5分」が全員に合うわけではありません。まず一週間、すでにある日本語の時間と、子どもが疲れる時間帯を書き出します。その上で、負担の小さい試行を一つ選びます。5分は目安で、本人が嫌がらずに終われる長さを優先してください。
会話を残す、祖父母とつながる、帰国に備えて読む力をつけるなど、今の家庭に必要な目的を言葉にします。
「絵本を一緒に読む」「好きな動画の話をする」など、どちらも短く終えられる案から選んでもらいます。
毎日が負担なら週二回でも構いません。終わる時刻を守り、できなかった日を埋め合わせの宿題にしません。
正答数だけでなく「またやりたいか」「終えたあと親子が疲れていないか」を聞き、量や内容を変えます。
読み書きを伸ばしたい家庭は、会話の時間だけで教科学習の代わりになると考えず、学校や日本語教育の先生と目標を相談します。一方、文字練習が原因で日本語の会話まで止まりそうなら、練習量をいったん減らす判断もできます。
| 期間 | すること | 確かめること |
|---|---|---|
| 最初の三日 | 宿題を増やさず、どんな場面で嫌がるか観察する | 時間帯、課題、人間関係のどれが負担か |
| 四〜十日目 | 子どもが選んだ短い会話・読書を週二〜三回試す | 始めやすさと終わったあとの気持ち |
| 十一〜十四日目 | 本人と振り返り、続けることを一つ決める | 学習量を戻す必要があるか、先生に相談するか |
これは家庭で試す例で、効果を保証する方法ではありません。子どもが強い苦痛を示す場合や、学校生活にも影響が出ている場合は、二週間待たずに在籍校の相談先につないでください。
日本語を使う相手と場面を増やす
日本語を使う理由は、親から説明される将来の必要性だけでは生まれません。友だちに話したい、祖父母に伝えたい、好きな作品を楽しみたい、といった本人の関心からも生まれます。国際交流基金の報告では、継承語を使う意味が友人・地域社会との関係によって異なることが紹介されています。
- 家族との通話に役割を作る。「何か話して」ではなく、今日の写真を一枚選んで説明するなど、短い目的を設ける。
- 本人の好きな話題に乗る。ゲーム、料理、スポーツなどの話を聞き、言い方より内容への質問を増やす。
- 同世代との接点を確かめる。現地の日本語教室、補習授業校、オンラインの交流などを、時間帯・安全管理・本人の相性で比べる。
- 使う言語を一律に決めない。現地語でしか説明できない気持ちも受け止め、日本語に言い換える練習は本人が望む場面で行う。
「友だちができれば日本語が必ず伸びる」とは言えません。それでも、話したい相手がいることは日本語を使う機会を増やす一つの方法です。場を選ぶときは、会話中心か読み書き中心か、本人が安心して参加できるかを確認しましょう。
補習校を行き渋ったとき、どう考えるか
文部科学省の説明によると、補習授業校は現地校やインターナショナルスクールに通う子どもが、土曜や放課後などに日本の小中学校の一部教科を日本語で学ぶ施設です。国語の読み書きや日本の教科内容を継続したい家庭にとって重要な選択肢です。一方で、現地校との二重の予定になるため、負担は各家庭で異なります。
| 確認すること | 家庭・学校で話す例 |
|---|---|
| 何がつらいか | 授業、宿題、友人関係、移動、土曜の予定を分けて聞く |
| 調整できるか | 宿題量、課題の難易度、参加日、先生との相談方法を学校に尋ねる |
| 何を残したいか | 教科学習、会話、友人関係のうち、家庭が優先する目的を決める |
| 代わりの方法 | 地域の教室、家庭での読み書き、オンラインの対話を比較する |
休む・続けるの二択を急がず、まず学校の先生と調整できる範囲を確認してください。もし安全上の心配や強い苦痛がある場合は、参加方法だけでなく学校の相談窓口にも早めにつなぎます。補習授業校で扱う教科と、会話を中心にしたオンラインの場は役割が違うため、代替を選ぶときは「何を補いたいか」を明確にします。
転校や帰国の予定がある家庭は、補習授業校で学ぶ内容が次の学校でどう扱われるかも確認します。補習授業校は日本人学校の全日制課程とは異なり、授業科目や時間も施設ごとに違います。地域の学校で学籍・出席・進級に関わる事項は在籍校の規則に従うため、オンラインの学習時間をそのまま出席とみなせるとは考えないでください。費用、教材、欠席時の扱いも各施設に確認します。
家の外に「日本語を使う相手」をつくるという選択肢
家庭外で日本語を使う場には、地域の補習授業校・日本語教室、個別のオンライン授業、同世代と話すオンラインの場があります。子どもの目標と現在使えるサービスを分けて比較してください。どの方法も、子どもに合うかは参加してみて確かめる必要があります。
| 方法 | 合いやすい目的 | 確かめること |
|---|---|---|
| 補習授業校 | 日本の教科内容・読み書き | 学年、宿題、通学時間、現地校との両立 |
| 地域の日本語教室 | 近隣の人との交流 | 対象年齢、継承語か外国語か、授業内容 |
| 個別オンライン | 本人に合わせた読み書き・会話 | 講師、教材、回数、費用、友人との交流の有無 |
| 交流型オンライン | 同世代と日本語で話す機会 | 現在参加できる内容、時差、安全管理、費用 |
ともだちじゃぱんを検討する場合
ともだちじゃぱんは、同世代との日本語での対話を軸にしたオンラインスクールを目指しています。ただし、2026年10月20日時点の入学案内では、本来の8人制クラスはまだ開校前と明記されています。現在案内されているのは、先生が一人ひとりを専任で受け持つ体験プランと無料の体験・相談です。今すぐ8人制のクラスや日本の同世代との毎日の交流に参加できると受け取らないでください。
公式料金ページでは、開校前の専任サポート体験プランは月16,500円(税込)で、開校後の学費とは別とされています。公式トップには2026年12月のパイロット開校予定とありますが、入学案内はクラスを組める人数が集まる前の準備期間と説明しています。開始時期、クラス、時差、費用は申し込み前に最新の公式情報で確認してください。
日本語で話す相手を増やしたい家庭には比較候補になります。一方、現在すぐに同世代の集団授業が必要な家庭や、日本の教科書に沿った読み書きの授業を優先する家庭は、現地の補習授業校や他の教室も検討してください。ともだちじゃぱんを在籍校や補習授業校と同じ制度上の学校として扱わず、現地校の在籍・出席や帰国後の編入は各校に確認します。
オンラインの場を比較するときは、宣伝上の「友だちになれる」という表現だけで決めず、体験で子どもの反応を見ます。事前に確かめたいのは、①住んでいる地域の時差で無理なく参加できるか、②先生が会話に入りにくい子をどう支えるか、③困ったときに保護者がどこへ相談できるか、④録画やチャットなど個人情報の扱い、⑤欠席・退会・料金変更の条件です。無料相談では、今参加できる内容と開校後に予定している内容を分けて聞くと比較しやすくなります。
1年後に振り返るための、家庭の「ものさし」
短期間の正答数だけで、日本語への気持ちは測れません。振り返るときは、家庭が最初に決めた目的に戻り、本人の感想と実際に使った場面を一緒に見ます。目標は一度に増やさず、会話・読み書き・友人との交流を分けて考えてください。
- 会話:本人から話しかける場面、話したい相手、話題は増えたか。
- 読み書き:自分で選んだ文章を読めるか、誰かに伝える短文を書けるか。
- 負担:日本語の時間の前後で、親子の口論や疲れが増えていないか。
- 学びの場:補習授業校やオンラインの利用目的が、今の本人の希望と合っているか。
一か月ごとに「続けたいこと」「変えたいこと」を一つずつ聞き、必要なら方法を変えます。将来の帰国や進学が近い場合は、必要な読み書きの水準を在籍校・転入先に早めに確認します。日本語を続ける道は一つではなく、本人が安心して使える形を更新していくことが大切です。
記録は長い学習日誌にしなくても構いません。「今週は祖母に写真を説明した」「学校の宿題は半分に調整した」「日本語を使ったあと疲れた」といった一行で十分です。次に学校や専門家へ相談するときにも、何を変えてどう感じたかを具体的に伝えられます。できなかった日を数えるためではなく、家庭に合う方法を探すために使ってください。
よくある質問(FAQ)
子どもが日本語を一切話したがりません。家庭では日本語だけにすべきですか?
家庭内の言語を一律に決める前に、いつ・誰と・どんな話題で話したくないのかを聞きます。現地語なら伝えられる気持ちまで止めないでください。言語を問わず理解や会話に心配があるときは、現地校の教員や言語発達の専門家に両方の言語での様子を相談します。
会話はできますが、ひらがなや漢字を嫌がります。
会話と読み書きの目標を分けます。本人が読みたい短い文章や、実際に送る一文から始め、教科学習が必要なら補習授業校や先生に学習計画を相談してください。会話ができることは強みとして扱います。
補習授業校を休むと日本語を忘れてしまいますか?
一度休んだことだけで将来の日本語力を決めつけることはできません。宿題・友人関係・通学負担のどこがつらいかを聞き、学校と調整できるか相談します。必要な教科学習は、家庭や別の教室でどう補うかも考えます。
ともだちじゃぱんの8人制クラスに今すぐ参加できますか?
2026年10月20日時点の公式入学案内では、8人制クラスは開校前です。現在は先生の専任サポート体験プランと無料相談が案内されています。開校時期と参加条件は公式案内で確認してください。
現在の体験プランはいくらですか?
公式料金ページでは月16,500円(税込)です。開校前だけの特別プランで、本来の8人制クラスの学費とは別です。費用と提供内容は申し込み前に最新情報を確認してください。
日本語のオンライン授業だけで補習授業校の代わりになりますか?
目的によります。会話の機会を増やす方法と、日本の教科書に沿った国語などの授業は内容が異なります。帰国・進学を見据える家庭は、必要な学習内容を転入先や補習授業校に確認してから組み合わせを決めてください。
子どもが体験授業も嫌がるときはどうすればよいですか?
申し込みを急がず、何が不安かを聞きます。画面で話すこと、知らない人に会うこと、日本語で評価されることなど、理由は異なります。保護者だけ先に無料相談を利用できるか公式案内で確かめ、本人が参加するなら短時間の見学から始められるか相談してください。
この記事の内容を確かめるための一次資料
本文の制度・事業内容は、次の一次情報を2026年10月20日に確認して記しました。家庭での試し方は一般的な選択肢であり、子どもの言語発達を診断するものではありません。
- 文部科学省「在外教育施設の概要」:日本人学校と補習授業校の位置づけ。
- 文部科学省「外国人児童生徒等教育の考え方」研修資料:生活言語と学習言語の区別。海外の子どもに習得年数を一律に当てはめない。
- 国際交流基金「海の向こうの継承語教育」:子どもごとに異なる日本語との関わり方。
- ともだちじゃぱん「入学案内」:開校前の状態と現在の案内。
- ともだちじゃぱん「料金」:開校前の体験プランと開校後学費の区別。


