文部科学省と独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は、官民協働の海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」について、第2ステージの実施期間を2028年度まで1年間延長すると発表しました。あわせて、高校生等を対象とする第12期、大学生等を対象とする第19期の派遣留学生募集が始まります。
高校生等は600人、大学生等は250人を募集。高校生向けには、STEAM、スポーツ・芸術、マイ好奇心、社会課題の4コースが用意されています。特別支援学校高等部の生徒も対象に含まれており、いわゆる進学校や、海外経験の多い家庭だけに限られない制度です。
この記事では、2026年10月1日に公表された文部科学省の公式発表と募集要項をもとに、今回の変更点、対象となる学び、応募の時期、家庭や学校が確認しておきたいことを整理します。
今回、何が決まったのか
「トビタテ!留学JAPAN」は、2013年度から始まった官民協働の海外留学支援制度です。文部科学省とJASSOだけでなく、企業や団体からの寄附を活用し、若者の海外留学を経済面と学びの面から支援してきました。
2023年度からは「第2ステージ」として、留学を通して得た経験を社会に還元する人材や、社会にイノベーションを起こす人材の育成を掲げています。もともと第2ステージは2027年度までの5年間として実施される予定でしたが、今回、2028年度まで1年延長されることになりました。
延長に伴い、2027年度に留学を開始する高校生等と大学生等の募集が行われます。つまり、今回の発表は単なる制度の継続発表ではなく、これから応募できる具体的な募集枠とスケジュールが示されたものです。
高校生等は600人。4つの探究コースから選ぶ
高校生等を対象とする第12期では、合計600人を募集します。対象となるのは、日本の高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等専門学校の第3学年以下、専修学校の高等課程などに在籍する日本人生徒等です。
今回の制度で特徴的なのは、留学先や語学力だけを先に決めるのではなく、自分なりの「問い」を持った探究型の留学計画を立てることです。公式発表では、次の4コースが示されています。
STEAM探究コース
科学・技術・工学・芸術・数学の領域で問いを設定し、AIやIoT、理科・数学的な見方や考え方を活用した探究活動を含む留学計画が対象です。将来の進路や職業と結び付くテーマを考えている人にも向いています。募集人数は140人です。
スポーツ・芸術探究コース
スポーツや芸術をさらに深く学び、その分野の発展につながる問いを設定するコースです。公式発表では、実技経験や実績の有無にかかわらず応募できるとされています。競技成績や受賞歴だけで判断される枠ではなく、自分の関心をどのように探究へつなげるかが重要になります。募集人数は120人です。
マイ好奇心探究コース
「知りたい」「明らかにしたい」という自分の興味や関心を出発点に、疑問を解明したり、未知を既知に変えたりする探究活動を行うコースです。学校の教科名にそのまま当てはまらないテーマでも、自分の問いとして説明できれば、学びの計画にしやすいコースです。募集人数は210人で、4コースのなかでは最も多い枠となっています。
社会課題探究コース
世界、日本、地域が抱える社会課題を自分ごととして捉え、課題解決や地域の活性化、社会貢献につながる活動を計画するコースです。福祉、環境、教育、まちづくり、貧困、文化継承など、テーマは幅広く考えられます。募集人数は130人です。
留学期間と支援内容
高校生等の留学は、留学先での活動期間が14日以上1年以内の計画が対象です。留学開始時期は2027年7月10日から2028年3月31日までとされています。短期の探究型留学だけでなく、一定期間現地に滞在して学ぶ計画も対象になり得ます。
支援内容は、留学先の国や地域に応じた月額奨学金、留学準備金などです。月額奨学金は12万円または16万円で、家計基準を超える場合は6万円となります。留学準備金は、アジア地域が15万円、その他の地域が25万円です。円安や物価高騰を踏まえた増額分も示されていますが、支給には募集要項に記載された条件があります。
支援があるとはいえ、渡航費や滞在費のすべてが無条件に無料になる制度ではありません。留学先、期間、家計状況、授業料の扱いなどによって、必要な自己負担は変わります。応募を考える場合は、金額だけで判断せず、学校の担当者と総費用を確認することが大切です。
応募はいつ、どこから行うのか
高校生等の募集要項は、2026年10月1日に公開されました。応募申請は個人が直接行うのではなく、在籍校を通じてJASSOへ申請する仕組みです。
- 新高校2年生・3年生:第一日程に応募
- 新高校1年生:進学先の学校に確認のうえ、第一日程または第二日程に応募
- 第一日程:2026年12月上旬から2027年1月21日までの予定
- 第二日程:2027年4月1日から4月21日までの予定
日程は今後変更される可能性があります。特に新高校1年生は、進学先が決まる時期と応募時期が関係するため、現在の中学校だけでなく、進学予定の高等学校や高等専門学校にも早めに確認しておく必要があります。
また、学校によっては留学制度を担当する窓口がすぐに分からない場合があります。担任、進路指導担当、国際交流担当、管理職などに「トビタテ!留学JAPANの第12期に応募したい」と具体的に伝えると、校内での確認が進みやすくなります。
このニュースが、子どもの学びにとって持つ意味
海外留学というと、語学力が高い子、成績の良い子、費用を準備できる家庭の子が利用するものだと思われがちです。しかし今回の制度は、語学試験の点数だけでなく、本人が何を問い、何を学び、帰国後にどう生かすかという探究の計画を重視しています。
たとえば、学校の授業で扱った地域課題が気になった子、好きなスポーツの背景にある文化を知りたい子、絵や音楽を通して海外の同世代と交流したい子、発達特性や不登校の経験から「学び方そのもの」を研究したい子など、出発点は一人ひとり違って構いません。
もちろん、誰もが海外へ行かなければならないわけではありません。海外留学は選択肢の一つであり、本人が望むか、心身の状態に合うか、家族や学校が支えられるかを含めて考える必要があります。大切なのは、学校の成績や一般的な進路だけでは見えにくい興味を、学びの計画として言葉にできる機会が広がったことです。
特別支援学校高等部の生徒も対象に含まれている点は、制度の入り口を考えるうえで重要です。ただし、対象に含まれることと、実際に安全に参加できることは同じではありません。医療的ケア、移動、コミュニケーション、環境調整、同行者の必要性など、個別の条件は学校・家庭・受入先で早めに相談しなければなりません。
「応募できる」と「採用される」は違う
今回の発表で注意したいのは、対象要件を満たせば必ず支援を受けられるわけではないことです。募集人数には上限があり、留学計画の内容や実現可能性などを含む選考があります。
また、制度の趣旨に合う計画であっても、留学先の情勢、学校の校内手続き、保護者の同意、健康面・安全面の確認など、複数の条件を整える必要があります。応募を考えた時点で、まず「行けるか、行けないか」を決めつけるのではなく、次のような問いから始めると整理しやすくなります。
- 本人は、何を見たい、知りたい、試したいと思っているのか
- その問いは、なぜ日本ではなく海外で学ぶ必要があるのか
- 帰国後、その経験を誰に、どのように還元したいのか
- 滞在中に困りそうなことは何か。どんな支援があれば安心できるのか
- 留学期間、費用、学校生活への影響を家庭で現実的に確認できているか
「海外に行きたい」だけでも、最初の動機としては十分です。ただし、応募書類では、そこから一歩進んで「何を問いにするのか」「どんな方法で探究するのか」を具体化していく必要があります。
保護者が確認しておきたいこと
保護者にとって、最初から完成した留学計画を子どもに求める必要はありません。子どもが普段から夢中になっていること、何度も話題にすること、学校では評価されにくくても本人が大切にしていることを聞き取るところから始められます。
一方で、費用や安全面を曖昧にしたまま、子どもの期待だけを膨らませることも避けたいところです。募集要項を読んだうえで、支援対象となる費用、自己負担が必要な費用、キャンセル時の扱い、保険、緊急時の連絡方法などを確認しましょう。
不登校や発達特性のある子どもの場合、長時間の移動、慣れない食事や音、集団生活、言語環境の変化が大きな負担になることもあります。だからといって、最初から「難しい」と決める必要はありません。短期滞在、オンライン交流、家族や支援者との事前練習、合理的配慮の相談など、本人に合う形を学校や受入先と一緒に考えることが大切です。
学校が担う役割
この制度では、学校が応募の入口になります。学校には、募集情報を生徒に届けるだけでなく、本人の関心を尊重しながら計画づくりを支える役割が期待されます。
特に、普段の教室で発言することが苦手な生徒や、欠席が多く学校との接点が少ない生徒の場合、情報が届かないまま終わる可能性があります。学年集会や進路指導だけでなく、校内ポータル、個別面談、保護者への案内など、複数の方法で情報を届ける工夫が必要です。
また、応募を希望する生徒に対して、学校生活の状況だけで参加の可否を判断しないことも重要です。出席日数、成績、発表の得意不得意だけでは、その子の探究心や計画を十分に捉えられません。本人が安心して相談できる担当者を決め、必要な配慮や安全面も含めて一緒に計画をつくることが、制度を生かす土台になります。
今回の発表から分かること、まだ分からないこと
今回の公式発表から分かるのは、第2ステージが2028年度まで延長され、高校生等600人、大学生等250人の募集が始まったことです。高校生向けのコース、対象となる学校種、応募の予定時期、支援内容の大枠も示されています。
一方で、実際の応募書類の書き方、選考の詳細、説明会の日程、学校ごとの校内締切などは、募集要項や公式サイト、在籍校からの案内を確認する必要があります。発表時点の情報だけで「この条件なら必ず採用される」「この金額だけで留学できる」と判断することはできません。
制度は大きな可能性を持っていますが、制度があるだけで学びの格差や参加の壁が自動的になくなるわけでもありません。情報が届くこと、学校に相談できること、個別の配慮が検討されること、家庭が費用と安全を見通せること。その一つひとつがそろって、初めて応募のスタートラインに立てます。
まとめ:海外留学を「自分の問いから始まる学び」に
「トビタテ!留学JAPAN」の第2ステージが2028年度まで延長され、2027年度に留学を始める高校生等・大学生等の募集が行われます。高校生等は600人の募集で、STEAM、スポーツ・芸術、好奇心、社会課題という4つの探究コースから計画を考えます。特別支援学校高等部の生徒も対象です。
このニュースを見て、すぐに応募を決める必要はありません。まずは、本人が何に心を動かされているのか、どんな問いを持っているのかを話してみてください。その問いが海外でなければ学べないものなのか、国内やオンラインでもできるのか、本人に合う方法を一緒に考えることから始められます。
留学は目的ではなく、学びの手段です。行くことそのものよりも、本人が自分の関心を言葉にし、必要な支援を得ながら学びを広げ、帰ってきたあとに次の一歩を選べることが大切です。制度の対象や条件を正確に確認し、無理のない計画を学校・家庭・支援者でつくっていきましょう。
出典・参考情報
注意:この記事は2026年10月1日に公表された一次情報をもとに作成しています。募集人数、応募期間、支援内容、対象条件は今後変更される可能性があります。応募を検討する場合は、必ず最新の募集要項と在籍校からの案内を確認してください。
