- 内申点は「定期テストの点数」そのものではなく、評定(5段階)を点数化したものだということ
- 内申点が入試でどれくらい効くかは都道府県でまったく違い、「内申が全て」も「内申は関係ない」もどちらも不正確だということ
- 国は「欠席日数だけで不利益な取扱いをしない」よう都道府県に求めていること(文部科学省通知)
- 調査書を提出しない入試、評定を使わない入試が実在すること(都立チャレンジスクールなど)
- それでも定期テストを受ける意味が残る場面と、受けられないときに学校へ確認したいこと
制度に関する記述は、各都道府県教育委員会が公表している入学者選抜の実施要綱・要領と、文部科学省の通知にあたって確認しています。根拠にした資料は記事の最後にすべて並べていますので、お住まいの地域の情報を確かめるときの入り口としても使ってください。
そもそも内申点とは何なのか——定期テストの点数がそのまま入るわけではない
「内申点」という言葉は、入試のときに中学校から高校へ提出される調査書に書かれた、各教科の評定(5段階の数字)を点数化したもののことを指します。世間話のなかでは「内申書」「調査書点」など、いろいろな呼び方が混ざりますが、指しているのはおおむねこの評定です。
ここで大事なのは、評定は定期テストの点数を足し算したものではないということです。たとえば東京都の「調査書の作成について」には、第3学年の評定について「中学校学習指導要領に示された目標に照らして、その実現状況をみる観点別学習状況の評価及び観点別学習状況の評価を総括した評定(いわゆる絶対評価による評定)を5段階で記入する」と書かれています。(東京都教育委員会・令和8年度)
順番にほどくと、こういう構造になっています。
① 学習指導要領に書かれた「目標」がまずある。
② その目標にどれくらい到達しているかを、観点別(「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」)で評価する。
③ それを総括して、5段階の評定が決まる。
定期テストは、この②の材料のひとつです。とても大きな材料ではありますが、唯一の材料ではありません。提出物、授業中の記述、実技、ノートやレポート、単元テストなども、何をどう見るかは学校ごとに定められた評価計画によります。だから「テストを1回受けられなかった=評定が確実に下がる」とは、制度上は決まっていません。実際に何が起きるかは、その中学校が評定をどう出しているかによります。
また、評定は他の子と比べて決まる相対評価ではなく、目標に照らした絶対評価です。「クラスの上位何%が5」という仕組みではないので、周りと競って順位を上げないと数字が上がらない、というものでもありません。
学校に行けていない期間があると、評定そのものが付かない(斜線になる)ことがあります。これは「オール1」とは違う扱いで、2024年に成績評価のルールが法令上はっきりした部分でもあります。詳しくは 不登校の通知表はどうなる?「斜線」「オール1」の実際 にまとめています。
内申点がどれくらい効くかは、都道府県でまったく違う
ここが、いちばん誤解の多いところです。内申点の重みは、全国共通ではありません。どの学年の成績を使うか、何倍にするか、学力検査とどう組み合わせるかは、都道府県ごと、さらに高校ごとに決められています。
代表的な地域の扱いを、各教育委員会が公表している要綱・要領から整理すると次のようになります。
| 都府県 | 使う学年 | 特徴(公表資料より) |
|---|---|---|
| 東京都 | 中3のみ | 学力検査を実施しない教科の評定を2倍。全日制は原則、学力検査:調査書=7:3(合計1000点満点) |
| 神奈川県 | 中2・中3 | 「中2の9教科の合計+中3の9教科の合計×2」。学力検査との比率は高校ごとに設定 |
| 埼玉県 | 中1・中2・中3 | 学年の比率を1:1:1/1:1:2/1:1:3の中から各校が選択 |
| 千葉県 | 全学年 | 全学年の評定合計に、各校が定めるK(原則1、0.5〜2.0の範囲)を掛ける |
| 愛知県 | 中3のみ | 評定合計を2倍して最高90点。学力検査は最高110点。組み合わせ方をⅠ〜Ⅲから各校が選択 |
| 大阪府 | 中1・中2・中3 | 「中3×6+中2×2+中1×2」=比率3:1:1。さらに学力検査と調査書の倍率をⅠ〜Ⅴから各校が選択 |
| 福岡県 | 中3のみ | 第3学年の評定の合計によって序列を定める |
※東京都・千葉県・福岡県は令和8年度(2026年春)入試、そのほかは令和9年度(2027年春)入試の資料に基づきます。令和9年度の要綱が未公表の地域があるため、必ずお住まいの地域の最新版で確認してください。出典は記事末尾にまとめています。
この表から読み取ってほしいのは、細かい計算式ではありません。「中1の成績で人生が決まる」わけでも、「内申なんて関係ない」わけでもないということです。東京都や愛知県や福岡県のように中3の成績しか使わない地域もあれば、埼玉県や大阪府のように中1から積み上がる地域もある。同じ日本でも、前提がまるで違います。
そして、東京都のように学力検査:調査書=7:3と決まっている地域では、配点の7割は当日の学力検査です。内申点が思うように取れていなくても、当日の点数で挽回できる余地は、制度としてはっきり残されています。
国は「欠席日数だけで不利益な扱いをしない」よう求めている
もうひとつ、知っておくと立ち位置が変わる事実があります。文部科学省は毎年、都道府県教育委員会などに向けて「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」を出しています。最新のものは令和8年6月30日付の8文科初第882号です。
その「7 その他御配慮いただきたいこと」の(6)には、次のように書かれています。
「不登校経験のある生徒の教育機会の確保の観点からも、在籍する学校における出席の状況のみをもって不利益な取扱い(例えば、欠席日数のみをもって出願を制限するなど)をしないようにするとともに、(中略)生徒の自己申告書や学校以外の場(家庭におけるオンライン学習を含む。)における学習状況に係る資料等を選抜において適切に勘案したり、不登校生徒が志願しやすいように募集時の内容を工夫したりするなど、配慮を行うことが望まれます。」
(令和8年6月30日 8文科初第882号「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」7(6))
ここには3つのことが書かれています。欠席日数だけで出願を制限しないこと。自己申告書や、学校以外の場での学習の記録を選抜で勘案すること。家庭でのオンライン学習も、その「学校以外の場」に含まれること。
「望まれます」という表現のとおり、これは各高校に義務づけられたものではなく、実際にどう運用されるかは都道府県によって差があります。それでも、国が「欠席が多いことだけを理由に締め出さないでほしい」と明文で言っているという事実は、志望校に相談するときの足場になります。
内申点を使わない・ほとんど使わない入試は、実際にある
ここからが本題です。「内申にこだわらなくても進路はある」は気休めではなく、選抜要綱に書かれた事実として存在します。ただし、地域と学校によって中身がかなり違うので、正確に見ていきます。
調査書そのものを出さない——東京都立チャレンジスクール
東京都立のチャレンジスクールは、学力検査を実施せず、そして調査書の提出も必要としません。代わりに学校所定の志願申告書を提出し、個人面接と作文で選考されます(令和8年度 東京都立高等学校チャレンジスクール入学者選抜実施要綱)。
令和8年度時点の設置校は、総合学科が六本木・大江戸・世田谷泉・稔ヶ丘・桐ヶ丘・小台橋・立川緑の7校、そして八王子拓真高校にチャレンジ枠が置かれています。1部〜3部の三部制で、午前・午後・夜間から生活に合う時間帯を選べる形です。
評定が付いていなくても、欠席が多くても、出願そのものが成立する入試——これは全国的に見てもかなり明確な選択肢です。
評定は使わないが、観点別の評価は見る——エンカレッジスクール/クリエイティブスクール
東京都立のエンカレッジスクール(蒲田・足立東・東村山・秋留台、および中野工科・練馬工科)は、学力検査を実施しません。調査書は提出しますが、5段階の評定ではなく「各教科の観点別学習状況の評価」を使って調査書点を算出します。選考は調査書・面接・小論文または作文(実技検査を行う学校もあります)で行われます。
神奈川県のクリエイティブスクール(釜利谷・横須賀南・小田原北・大和東・青葉総合)も同じ考え方で、学力検査を行わず、調査書の「評定」は取り扱わずに「観点別学習状況」を活用して総合的に選考します(令和9年度)。
つまり、「内申点(評定)は使わないが、調査書は使う」タイプです。チャレンジスクールとは違うので、ここは分けて理解しておくと混乱しません。
エンカレッジスクールは全日制で、毎日登校することが前提の学校です。「学習面でつまずいた子の学び直し」に軸足があり、不登校経験のある生徒を主に想定しているのはチャレンジスクールのほうです。名前が似ていますが役割が違います。
また、大阪府のエンパワメントスクールは「内申を見ない学校」ではありません。5教科の学力検査を実施し、調査書の必修全教科の評定も使います。学び直しのカリキュラムが特色の学校で、選抜方法は一般的な公立高校と同じ枠組みです。
定時制・通信制は、都道府県によって扱いが真逆
「通信制なら学力検査はないだろう」と思われがちですが、これは地域によります。
東京都立の通信制課程(一橋・新宿山吹・砂川)は、国語・数学・外国語(英語)を総合した学力検査を実施します。調査書も使います。一方、大阪府立桃谷高校の通信制は学力検査を実施せず、面接を行う方式で、「面接と調査書による選抜」のほかに「面接による選抜」という区分もあります(いずれも令和8年度)。
神奈川県の通信制は作文を実施します。同じ「公立の通信制」でも中身が違うので、必ず志望する学校の募集要項を見てください。
私立の通信制高校・サポート校は、書類と面接を中心とした選考が一般的で、公立とはまた条件が異なります。学費や仕組みは 不登校でも高校には行ける|進路5つの選択肢 で整理しています。
私立高校の一般入試という道
私立高校は学校ごとに募集要項が大きく違うため、一般化はできません。ただ、出願資格に評定の数値基準を設けていない入試は実在します。たとえば神奈川県の鵠沼高等学校の「オープン入試」は、学科試験(国語・英語・数学)と面接によって選考すると募集要項に明記されています。
いわゆる「併願優遇」「単願推薦」は評定の基準が設けられていることがほとんどですが、評定の基準を使わない一般入試の枠がある学校を探すという進め方はできます。中学校の進路担当の先生か、地域の私立中高協会の相談会で確認するのが確実です。
高校を経由しない道もある——高等学校卒業程度認定試験
文部科学省の高等学校卒業程度認定試験(高認)は、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験」です。受験する年度の終わりまでに満16歳以上になる人が受験でき、高等学校等に在籍したままでも受験できます。合格すると大学・短大・専門学校の受験資格が得られ、就職や資格試験にも活用できます。年2回実施で、科目の選び方によって必要な合格科目数は8〜9科目です。
今すぐ使う制度ではないかもしれませんが、「高校に入れなかったら終わり」ではないと知っておくだけで、中学生の時期の選択の重さは少し変わります。
では、定期テストは受けなくていいのか
ここまで読んで「じゃあテストは無視していいのか」と思われたかもしれません。そうではありません。内申にこだわらない進路があることと、定期テストに意味がないことは別の話です。定期テストを受ける意味が残るのは、おもに次の3つの場面です。
1つめは、志望校の選抜方法が評定を使う場合。お住まいの地域の公立高校を第一志望に考えているなら、評定は現実に点数として効きます。表のとおり、どの学年から効き始めるかは地域によって違うので、まずそこを確認するのが先です。
2つめは、高校に入ってからの土台の確認として。定期テストは範囲が区切られているので、「どこまでは分かっていて、どこから分からなくなったか」を把握しやすい道具です。点数ではなく、つまずきの場所を知る材料として使えます。
3つめは、子ども自身が「受けたい」と思っている場合。友達と同じ土俵に立ちたい、自分の力を測ってみたい——その気持ちがあるなら、受けられる形を探す価値はあります。
逆に言えば、体調やこころを削ってまで受けなければならないものではありません。テストの日に無理をして、その後2週間動けなくなるくらいなら、受けない判断のほうが合理的な場面は普通にあります。
中間考査の時期に、家庭で確認しておきたいこと
不安なまま考えるより、事実を1つずつ確かめるほうが早く落ち着きます。学校に聞けることは、だいたい次の3つです。
① 別室受験・後日受験ができるか。教室に入れなくても、保健室や相談室、別の日程で受けられる運用をしている学校は珍しくありません。「制度としてあるか」ではなく「うちの学校でできるか」を聞くのがコツです。
② テストを受けなかった場合、評定はどう扱われるか。「テストを受けないと1になりますか」ではなく、「評定を出す材料として、テスト以外に何を見ていただけますか」と聞くと、話が具体的になります。提出物やレポート、家庭での学習記録が材料になる場合があります。
③ 志望する高校の選抜で、調査書がどう使われるか。中学校の進路指導の先生は、地域の選抜方法をいちばん正確に把握しています。「内申が足りない」と言われたときも、その高校がどのタイプの選抜をしているのか(学力検査の比重、調査書の学年、自己申告書の有無)まで確認すると、打てる手が見えてきます。
「テストを受けられない日が続いていて心配しています。評定を出していただくときに、テスト以外でどんなものを見ていただけるか教えていただけますか。家でやっている学習の記録があれば、お渡しできればと思っています。」
——責める形ではなく、材料を持ち込む形で相談すると、学校側も動きやすくなります。文部科学省の通知にも「学校以外の場(家庭におけるオンライン学習を含む。)における学習状況に係る資料等」という表現があるので、記録を残しておくことには意味があります。
よくある質問
まとめ
内申点は、定期テストの点数そのものではなく、学習指導要領の目標に照らした評定を点数化したものです。その重みは都道府県によって大きく異なり、中3しか見ない地域もあれば中1から積み上がる地域もあります。だから「内申が全て」も「内申は関係ない」も、どちらも正確ではありません。
そのうえで、調査書の提出そのものを求めない入試(東京都立チャレンジスクール)、評定を使わず観点別の評価を使う入試(エンカレッジスクール、神奈川県のクリエイティブスクール)、面接中心の通信制、評定基準のない私立の一般入試、そして高等学校卒業程度認定試験と、内申点を主軸にしない道は現実に複数あります。国も、欠席日数だけで不利益な取扱いをしないよう求めています。
定期テストは、志望校の選抜方法によっては確かに効きますし、つまずきの場所を知る道具としても役に立ちます。それでも、受けられない時期があることが進路を閉ざすわけではありません。まずは、お住まいの地域の選抜方法を1つ確かめるところから始めてみてください。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 文部科学省「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」令和8年6月30日 8文科初第882号 PDF
- 東京都教育委員会「令和8年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目」 公表ページ/実施要綱PDF
- 東京都教育委員会「調査書の作成について」(令和8年度) 資料
- 東京都教育委員会「令和8年度東京都立高等学校チャレンジスクール入学者選抜実施要綱」 PDF
- 東京都教育委員会「令和8年度東京都立高等学校通信制課程入学者選抜実施要綱」 PDF
- 神奈川県「令和9年度公立高等学校入学者選抜実施要領」 ページ/入学者選抜制度の概要(クリエイティブスクール)
- 埼玉県「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施要項・選抜要領」 ページ
- 千葉県「令和8年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項」 ページ
- 愛知県「令和9年度愛知県公立高等学校入学者選抜」 ページ/校内順位の決定方式
- 大阪府「令和9年度大阪府公立高等学校入学者選抜」 ページ/令和8年度実施要項(エンパワメントスクール・桃谷高校通信制)
- 福岡県「令和8年度福岡県立高等学校入学者選抜要項」 ページ
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」 ページ
- 鵠沼高等学校「入試要項」 ページ
テストや評定とは別のものさしで学びを積み上げる場もあります。中学生ならオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」、高校の段階なら通信制サポート校「NIJIN高等学院」。まずは中身を見てみるところから。

