結論:すべての子どもに塾が必要なわけではありません。一方で、AIがあるから「もう塾も学力も必要ない」というわけでもありません。
塾は、目的を達成するための一つの手段です。
受験情報が必要なのか。基礎学力につまずいているのか。一人では学習計画を立てにくいのか。それとも、周りが通っているから何となく不安なのか。
「塾へ行くか」より先に、「この子は今、何を伸ばしたいのか」を決める。
2026年、AIとオンライン教材が身近になった今だからこそ、この順番が重要になっています。
「周りが塾に通い始めたけれど、うちの子も行かせるべき?」「AIで勉強できるなら塾はいらない?」「偏差値を上げる勉強は、将来本当に役立つ?」
子どもの教育を考える保護者にとって、塾は大きなテーマです。
そんな中、学習塾業界では大きな変化も起きています。
2025年の学習塾の倒産件数は過去最多を更新。2026年2月には、オンライン家庭教師「メガスタ」を運営していた株式会社バンザンが破産し、多くの利用者にも影響が出ました。
ただし、
「塾が倒産している=塾はもう不要」
という単純な話ではありません。
この記事では、塾業界の変化を入口に、
- 塾は本当に必要なのか
- 小学生・中学生・高校生で判断基準はどう違うのか
- 偏差値や学力はAI時代でも必要なのか
- AIに任せてよい学習・任せない方がよい学習
- これから子どもに必要な力
- 失敗しない塾の選び方
を2026年の最新情報から整理します。
元小学校教員。全国の小中学生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長として、学校とは異なる教育の選択肢をつくっている。
オンライン授業だけでなく、少人数・異年齢クラス、探究、企業・自治体との社会共創など、「知識を覚える」だけではない学びを実践している。
にじいろは株式会社NIJINが運営し、この記事で紹介するNIJINアカデミーも同社の事業です。
学習塾の倒産が過去最多|本当に「塾離れ」が起きている?
まず、現在の学習塾業界で何が起きているのかを確認しましょう。
東京商工リサーチによると、2025年の学習塾倒産は55件。
2024年の53件を上回り、過去最多を更新しました。
学習塾倒産
過去最多
「販売不振」の割合
バンザンの負債総額
背景として指摘されているのは、主に、
- 少子化による生徒数の減少
- 塾同士の競争激化
- 講師確保や人件費の問題
- 物価高・運営コスト上昇
- 無料動画・オンライン教材など学習手段の多様化
です。
2026年2月には、オンライン家庭教師「メガスタ」などを運営していた株式会社バンザンが破産。
東京商工リサーチによると、2025年1月期には約35億円を売り上げていましたが、設備投資や広告費、資金繰りなど複数の問題が重なりました。
ここで注意したいのは、「AIの登場によって塾が倒産した」と単純には言えないことです。
少子化、競争、コスト、経営判断、オンライン教材の普及など複数の要因があります。
塾業界の変化と「子どもに学力が必要か」は、分けて考える必要があります。
参考: 東京商工リサーチ|2025年「学習塾」倒産動向 / 東京商工リサーチ|株式会社バンザン
結局、塾は必要?|5つの判断基準
塾へ行くかどうかを、成績だけで決める必要はありません。
まず次の5つを見てください。
- 受験の情報・戦略を家庭だけで集めにくい
- 特定教科につまずきがあり、個別の説明が必要
- 一人だと学習計画を立てて続けるのが難しい
- 定期的なフィードバックがある方が伸びる
- 本人が「行きたい」「教えてほしい」と感じている
- 自分で学習計画を立て、継続できている
- 学校・家庭・教材だけで疑問を解決できている
- 本人が強く嫌がっている
- 睡眠・遊び・好きな活動がすでに不足している
- 「周りが行っているから」以外に目的がない
タツロー校長
塾に行くこと自体を目的にしないことです。その子に今どんな学びが必要なのかが先で、塾はそのための選択肢の一つです。
小学生・中学生・高校生|塾が必要かは年齢でも違う
| 時期 | 塾を検討しやすいケース | 塾以外でも対応しやすいケース |
|---|---|---|
| 小学生 | 中学受験をする/算数・国語など基礎につまずきがある/家庭では学習習慣をつくりにくい | 学校の内容を理解できている/読書・遊び・体験などに十分取り組めている/本人が学ぶことを楽しめている |
| 中学生 | 高校受験の情報が必要/定期テスト・内申対策をしたい/苦手教科の遅れが大きい/自学だけでは計画管理が難しい | 学校教材で自走できる/受験情報を家庭で収集できる/オンライン教材等を使いこなせる |
| 高校生 | 大学受験の科目戦略が複雑/難関大・専門科目対策が必要/添削や記述指導が必要 | 志望校・受験科目が明確/参考書や学校の講習で自走できる/必要な部分だけオンライン等で補える |
小学生は「塾に行くのが早いほど有利」とは限らない
小学生、とくに受験を予定していない場合は、塾に通い始めることより、
- 読む
- 話す
- 考える
- 遊ぶ
- 失敗する
- 興味を深掘りする
時間も大切です。
塾へ通うことでこうした時間が極端に減ってしまうなら、本当に今必要なのかを一度考えてみてください。
中学生は「塾なし高校受験」も可能。ただし情報差には注意
中学生になると、塾の価値は「教えてもらうこと」だけではありません。
地域ごとに異なる高校入試制度、内申、模試、志望校情報などを整理してもらえることにも価値があります。
逆に、学校や家庭で必要な情報を集められ、自分で学習を進められるなら、塾なしで受験することも可能です。
高校生は「全部を塾に任せる」より必要な部分を選ぶ
高校生になると、映像授業、AI教材、参考書、学校講習、オンライン個別指導など選択肢が増えます。
英語だけ、数学だけ、添削だけ、進路相談だけ。
必要な機能だけを利用する考え方もできます。
偏差値は意味ない?|便利な指標だが「子どもの価値」ではない
「AI時代には偏差値なんて意味がない」という意見もあります。
ここも、0か100かで考えない方がよいでしょう。
偏差値は、同じテストを受けた集団の中で、自分の得点がどの位置にあるかを示す相対的な指標です。
平均点を偏差値50として、おおよその位置を比較できるため、受験では今も便利な指標です。
偏差値が役立つ場面
模試で現在地を見る/志望校との距離を見る/学習成果の変化を見る。
偏差値では分からないこと
創造性/好奇心/協働性/優しさ/リーダーシップ/好きなことへの集中/本人が何を実現したいか。
つまり、
偏差値は「学力の一部を見る道具」ではありますが、「その子そのものを評価する物差し」ではありません。
AI時代でも「基礎学力」は必要|価値がなくなったわけではない
元の記事では、AIの進化によって暗記力や情報処理能力の価値が大きく下がるという問題提起をしていました。
ただ、2026年現在の研究・教育政策を見ると、もう少し丁寧に考える必要があります。
AIが計算・要約・文章作成をできるようになっても、人間側に知識が不要になるわけではありません。
むしろ、AIの答えが正しいか判断するにも、基礎知識や論理的に考える力が必要です。
OECDの「Digital Education Outlook 2026」は、一般的な生成AIを使うことで課題の成果物がよくなる場合があっても、それがそのまま本人の学習成果になるとは限らないと指摘しています。
考える作業そのものをAIへ任せすぎれば、長期的な技能習得を妨げる可能性もあります。
- 分からない言葉を調べる
- 問題の別解を聞く
- 練習問題をつくる
- 文章の改善点を聞く
- アイデアを広げる
- 考える前に答えだけ出してもらう
- 作文やレポートをそのまま生成する
- AIの回答を確認せず信じる
- 自分の意見までAIに決めてもらう
- 「分かったつもり」で終える
AI時代に変わるのは、「学力がいらなくなること」ではなく「学力の使い方」です。
覚えるだけではなく、知識を使って問いを立て、AIも使いながら考え、判断し、誰かと協働して形にする力が重要になります。
参考: OECD|Digital Education Outlook 2026 / 文部科学省|学校現場における生成AIの利用について
これからの子どもに必要な力|「知識か人間性か」の二択ではない
では、これから何を伸ばせばよいのでしょうか。
OECDのLearning Compass 2030や、日本の学習指導要領を見ると、求められているのは「知識を捨てて人間性だけを育てる」ということではありません。
知識・技能を土台にしながら、自分で考え、人と協働し、新しい価値をつくる力です。
読む、書く、計算する。物事を理解し、AIの回答を判断するためにも必要な土台です。
情報を比較し、「本当にそうか?」と考え、自分で結論を出す力。
何を学ぶか、何をやりたいかを自分で選び、行動する力。
違う考えを持つ人と話し、一人ではできないものを一緒につくる力。
正解を再現するだけでなく、新しい問い、アイデア、価値を生み出す力。
環境や技術が変わったとき、自分の学び方そのものを更新できる力。
文部科学省も、これからの教育で「主体的・対話的で深い学び」を重視し、知識・技能だけでなく思考力、判断力、表現力、学びに向かう力、人間性等を育てる方向を示しています。
「人と一緒に学ぶ」は、AIだけでは代替しにくい
例えば、オンライン教育でも、動画を見るだけの学びと、仲間と議論する学びでは体験が違います。
NIJINアカデミーでは、全国から集まる8〜10人の少人数・異年齢クラスを基本にしています。
正解を先生から受け取るだけではなく、子ども同士で話し、考え、選ぶ時間をつくっています。
「勉強したことを社会で使う」経験も大切
これからの学力を考えるうえでは、覚えた知識を学校のテストだけで終わらせず、実際に使う経験も重要です。
NIJINアカデミーでは、企業・自治体・大学等と連携し、子どもが実社会の課題を考えるプロジェクトも行っています。
調べる、話す、企画する、つくる、伝える。教科で学んだ知識を、社会の中で使う経験です。
社会につながる学びを見る →参考: OECD|Learning Compass 2030 / 文部科学省|育成を目指す資質・能力
「学校+塾」の往復はダメ?|問題は塾ではなく時間の使い方
元の記事では、学校で勉強した後、塾でも同じようなテスト対策を繰り返すことに疑問を投げかけていました。
この問題提起には、大切な部分があります。
ただし、
学校+塾=悪い
ではありません。
本人が目標を持って塾へ通い、その学習が必要なら価値があります。
問題になるのは、学校と塾だけで1週間が埋まり、
- 睡眠
- 自由な遊び
- 読書
- 好きなこと
- スポーツ
- 家族との時間
- 地域や社会との体験
がほとんどなくなってしまう場合です。
塾を増やす前に、「何を追加するか」だけでなく「何の時間が減るか」も見てください。
教育には、機会費用があります。塾に3時間使えば、その3時間に別の経験はできません。
「塾なし」なら何をする?|代わりになる6つの選択肢
塾へ行かない=何もしない、ではありません。
目的によっては、別の方法で十分なことがあります。
| 目的 | 塾以外の選択肢 |
|---|---|
| 基礎学力 | 学校教材、市販教材、学習アプリ、AI教材 |
| 質問したい | 学校の先生、オンライン個別、生成AI、家庭教師を必要な時だけ利用 |
| 受験情報 | 学校説明会、公式募集要項、模試、進路指導 |
| 学習習慣 | 図書館、自習室、家庭の時間設計 |
| 探究・好奇心 | 習い事、地域活動、オンラインコミュニティー、博物館、社会科見学 |
| 人との学び | 少人数スクール、サークル、スポーツ、プロジェクト学習 |
塾が合わなければ、塾以外の組み合わせをつくって構いません。
「どこへ通うか」ではなく、「必要な学びをどう満たすか」で考える方が選択肢は広がります。
塾を選ぶなら、偏差値・合格実績以外も見る
塾が必要だと判断した場合も、「有名だから」「合格実績が高いから」だけで決める必要はありません。
- 目的が明確か
受験、苦手克服、学習習慣など、通う理由を本人と共有できているか。 - 本人と先生の相性がよいか
質問できる、失敗できる、分からないと言える雰囲気か。 - 一方的に説明するだけになっていないか
子ども自身が考える時間があるか。 - AI・ICTを適切に使っているか
単なる効率化ではなく、学習を深めるために使っているか。 - フィードバックが具体的か
点数だけでなく、「どこでつまずいているか」が分かるか。 - 通塾時間まで含めて続けられるか
睡眠や生活を圧迫しないか。 - 本人が納得しているか
保護者の不安だけで通わせていないか。
塾の倒産から保護者が学べること|前払いにも注意
塾業界の倒産増加は、教育論だけでなく、契約面でも重要です。
2026年に破産したバンザンでは、東京商工リサーチによると、生徒約1,800人を含め債権者が3,000人を超える可能性がありました。
前払い授業料に頼った資金繰りも報じられています。
年間料金をまとめて支払う場合、途中解約や事業停止時の扱いを確認します。
退会時、未受講分がどう扱われるかを契約前に確認します。
まず体験や短期利用で、本人との相性を見る方が安心です。
月謝だけでなく、教材費、講習費、模試、管理費まで年間総額を確認します。
大手だから絶対安全、小規模だから危険という意味ではありません。
教育内容だけでなく、契約条件や支払い方法も含めて判断することが大切です。
AI時代の教育で、保護者ができること
これからの教育を考えるとき、「偏差値を捨てる」「塾をやめる」のような極端な選択をする必要はありません。
むしろ、
必要な基礎学力は身につける。
AIも使えるようになる。
好きなことを持つ。
人と協働する。
実際の社会へ出る。
こうした学びを組み合わせることが重要です。
タツロー校長
偏差値や学力を否定する必要はありません。でも、それだけを子どもの可能性だと思わないこと。勉強で得た力を、誰のためにどう使うのかまで教育にしていきたいと思っています。
よくある質問(FAQ)
まとめ|「塾へ行くか」ではなく「何を学ぶか」から考える
学習塾の倒産は増えています。
AIも急速に進化しています。
だからといって、
塾はいらない。
偏差値は意味がない。
学力は不要。
ということではありません。
変わっているのは、学ぶ目的と手段の選択肢です。
タツロー校長
塾に行くかどうかより、この子がどんな世界を知り、誰と出会い、何をやってみたいと思えるかを大切にしてほしいです。
基礎学力を身につける。
必要なら塾を使う。
AIも使う。
好きなこともやる。
社会へ出る。
違う世代や価値観の人とも出会う。
教育を「学校+塾」という二つの箱だけで考えなくていい。
それが、AI時代の子どもの学びを考える第一歩です。
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動画でも詳しく|大手塾倒産から考える教育の未来
株式会社NIJIN代表取締役・NIJINアカデミー校長の星野達郎が、学習塾の倒産、少子化、AI時代に必要な学びについて独自の視点から解説しています。
動画公開後、2025年の学習塾倒産件数が確定し、2026年には生成AIをめぐる教育研究・政策もさらに進んでいます。
そのため、現在のデータやAIと学力の関係については、2026年9月時点へ更新した本記事とあわせてご覧ください。
参考・一次資料
- 東京商工リサーチ|2025年「学習塾」倒産動向
- 東京商工リサーチ|株式会社バンザン
- 帝国データバンク|学習塾の倒産動向(2025年)
- 厚生労働省|2025年人口動態統計
- 文部科学省|学校現場における生成AIの利用について
- 文部科学省|育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び
- 文部科学省|主体的・対話的で深い学び
- OECD|Digital Education Outlook 2026
- OECD|Learning Compass 2030
- NIJINアカデミー|教育モデル
- NIJINアカデミー|社会につながる学び
NIJIN関連画像:株式会社NIJIN/NIJINアカデミー公式サイト掲載画像


