2040年の学校は、今とまったく同じ形ではない可能性があります。
大きな理由は、少子化・人口減少と、通信技術・AIの進化です。
子どもの数が減り、小さな学校を地域ごとに維持することが難しくなる一方、オンラインで離れた学校・教師・専門家・子ども同士をつなぐことは、すでに始まっています。
ただし、未来が「全部オンライン授業」になるとは限りません。むしろ、オンラインでできる学びと、その地域・その場でしかできないリアルな体験を分けていくことが、2040年の教育を考えるポイントになりそうです。
2040年、今のような学校は残っているのでしょうか。
同じ地域に住む、同じ年齢の子どもが、毎朝同じ建物へ集まり、同じ教室で同じ時間割を学ぶ。
私たちにとっては当たり前の学校の姿です。
しかし、子どもの数が急速に減り、6Gをはじめとする通信技術が発達していけば、その「当たり前」を維持する理由そのものが変わる可能性があります。
この記事では、成毛眞さんの著書『2040年の未来予測』で示される社会変化も手がかりにしながら、最新の人口統計、文部科学省の政策、すでに始まっている遠隔授業の実例、そして学校運営に携わる星野達郎(タツロー校長)の視点から、2040年の教育を考えます。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長。元小学校教員としての経験を生かし、学校の内外から教育の選択肢をつくっている。
オンライン教育だけでなく、自治体・企業・大学・地域と連携しながら、「教育を社会と共につくる」仕組みづくりに取り組んでいる。
2040年の教育を変える2つの大きな変化
これからの学校の形を考えるうえで、特に大きな影響を与えるのが人口動態と通信技術です。
子どもの数が減り、地域ごとに従来型の学校を維持することが難しくなる。
離れた場所でも、教師・専門家・仲間と高品質につながれるようになる。
知識・専門性はネットで共有し、地域では体験・対話・協働を担う形へ。
タツロー校長
人口動態の変化と通信速度の向上。この2つが組み合わさることで、公教育そのものに大きな変化が起きると見ています。
なぜ「2040年」なのか?国も2040年以降を見据えている
2040年という年は、単なるSF的な区切りではありません。
文部科学省の教育振興基本計画でも、「2040年以降の社会を見据えた教育政策」が示されています。
少子化・人口減少、グローバル化、デジタル技術の発達、社会の多様化などを前提に、これからの教育を設計し直す必要があります。
高校教育でも、文部科学省は「N-E.X.T.ハイスクール構想」を進め、2040年を見据えた高校改革を始めています。
「2040年の学校を考える」ことは、すでに国の教育政策でも重要なテーマになっています。
参考: 文部科学省「教育振興基本計画」 / 文部科学省「N-E.X.T.ハイスクール」
変化① 少子化で「今の学校数」を維持することが難しくなる
まず、最も確実性の高い変化が人口です。
2026年度の学校基本調査では、小学校・中学校の在学者数はともに過去最少になりました。
小学生
中学生
0〜14歳
65歳以上
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には人口の約3分の1が65歳以上になる一方、0〜14歳は約1割です。
子どもが減れば、当然、地域ごとの学校規模にも影響します。
文部科学省も現在、公立小中学校の「適正規模・適正配置」を検討しています。
つまり、学校統廃合は「遠い未来の話」ではなく、すでに進んでいる現在の課題です。
参考: 文部科学省「令和8年度学校基本調査」 / 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
東京でも2040年を見据えた学校再編が進んでいる
これは地方だけの問題ではありません。
東京都町田市では、2040年度までを見据え、市立小中学校の再編を進めています。
少子化に加え、校舎の老朽化や整備費の問題も重なっています。
全国すべての地域が同じようになるわけではありませんが、「一つの地域に一つの学校を置き続ける」ことそのものが再検討され始めているのです。
そもそも学校は「同じ地域の子どもが集まる」仕組みだった
近代の学校では、同じ地域に住む子どもたちが一つの建物へ集まり、教師から一斉に学ぶ仕組みが広がりました。
この仕組みは、多くの子どもに教育を届ける上で大きな役割を果たしてきました。
しかし、
- 地域の子どもの数が減る
- 専門の教師を全校に配置するのが難しくなる
- 遠くにいる専門家ともオンラインでつながれる
ようになれば、「全員が同じ建物にいること」を前提にした教育だけではなくなる可能性があります。
変化② 通信速度の進化|5Gから6Gへ
もう一つの大きな変化が、通信技術です。
モバイル通信が日常化
低遅延・多数接続
100Gbps超などを研究
NTTドコモは、5Gの研究段階でLTEに対して100倍の伝送速度などを目標に掲げていました。
さらに現在は、2030年頃のサービス提供開始を見据えて6Gの研究開発を進めています。
6Gでは、ピーク速度100Gbps超や、5Gに対して100倍規模の通信容量などが研究されています。
ただし、「6Gなら現在のスマートフォンが必ず100倍速くなる」という意味ではありません。
研究上の目標性能と、一般利用者が日常で感じる通信速度は別です。
2040年には6Gのさらに先へ?
移動通信は、世代を重ねながら大きく進化してきました。
2030年頃に6Gの実用化が進んだとすれば、その先の2040年代には、現在まだ名前も仕様も決まっていない次世代通信が登場している可能性があります。
ただし、2026年時点で「2040年に7Gが実用化する」と正式に決まっているわけではありません。
重要なのは名称ではなく、距離による情報格差がさらに小さくなる方向へ技術が進んでいることです。
義務教育は本当にオンライン化するのか?
ここで考えたいのが、通信技術の進化が義務教育そのものにどこまで影響するのかです。
タツロー校長
少子化と通信速度の変化が重なると、義務教育でもオンラインを活用する領域が大きく広がっていくと予測しています。
現時点で、国が「義務教育を全面的にオンラインへ移行する」と決めているわけではありません。
一方で、その方向につながる仕組みはすでに始まっています。
文部科学省は、中山間地域や離島などの小規模校を含め、オンラインを使って学校同士や外部人材をつなぐ遠隔教育を進めています。
すでに始まっている「学校を越えた授業」
鹿児島県垂水市立松ケ崎小学校は、児童数8人の極小規模校です。
近隣の牛根小学校も児童数11人。
この2校では、オンラインを使って継続的に遠隔合同授業を行っています。
たとえば算数では、2校の5年生同士、6年生同士をオンラインでつなぐことで、少人数でも同学年の仲間と意見を交わせます。
一つの学校の人数が少なくても、「学校同士をつなげれば、学習集団を広げられる」わけです。
これは、人口減少時代の公教育を考えるうえで重要な実例です。
出典: 文部科学省|鹿児島県垂水市立松ケ崎小学校「遠隔合同授業」
2040年に「全部オンライン」になるわけではない
では、未来の子どもたちは家から一歩も出ず、すべてオンラインで学ぶのでしょうか。
その可能性は高くありません。
知識の共有や専門家との接続にはオンラインが力を発揮する一方、身体を動かす体験、人間関係、地域との関わりには、リアルな場所だからこその価値があります。
タツロー校長
ネットに相性のいい領域はネットで。ネットでは置き換えられないリアルの体験価値は、地域で行う。そんな形になっていくと考えています。
| オンラインと相性がいいこと | リアルだからこそ価値が高いこと |
|---|---|
| 専門家の授業を全国へ届ける | 自然体験・運動・ものづくり |
| 地域を越えた子ども同士の交流 | 地域の人との関係づくり |
| 個人に合わせた学習 | 偶然の出会い・雑談・遊び |
| 教材・学習コンテンツ・AIによる支援 | 身体を使った共同作業 |
| 希少な専門科目へのアクセス | 地域文化・祭り・仕事の体験 |
オンラインで「距離」をなくし、リアルで「体験」を深める。
この組み合わせが、未来の公教育を考える一つの方向になりそうです。
2040年の学校は「建物」から「学びのネットワーク」へ?
ここまでを整理すると、未来の学校には次のような変化が考えられます。
| 今までの学校 | 2040年に考えられる姿 |
|---|---|
| 同じ地域の子ども | 地域+全国・海外の仲間 |
| 同じ年齢の集団 | 異年齢・興味別の集団も活用 |
| 自校の教師が教える | 他校の教師・専門家ともつながる |
| 学校内で完結 | 企業・大学・地域とも学ぶ |
| 教室で知識を受け取る | オンラインで知識、地域で体験 |
| 学校=一つの建物 | 学校=学びを支えるネットワーク |
教師の仕事はなくなる?むしろ「役割」が変わる
オンライン授業やAIが普及すると、
「先生はいらなくなるのでは?」
という疑問も出てきます。
しかし、知識を説明する機能の一部をテクノロジーが担ったとしても、
- 子どもの変化に気づく
- 対話する
- 学びを設計する
- 人と人をつなぐ
- 挑戦を後押しする
- 安心できる関係をつくる
といった役割は残ります。
むしろ教師は、「知識を一方的に伝える人」から「子どもの学びをつなぎ、設計する人」へ変化していく可能性があります。
NIJINでは「オンライン×リアル」の教育がすでに始まっている
こうした学びの形は、2040年を待たなくても一部で始まっています。
NIJINアカデミーでは、自宅からオンラインの校舎へ参加しながら、全国の子ども・教師・専門家とつながることができます。
一方で、オンラインだけで完結させるのではなく、全国のリアル教室、企業とのプロジェクト、修学旅行、地域活動など、実際に人と会い、身体を動かす学びも組み合わせています。
現在のNIJINアカデミーでも、週4日のメタバースと週1日のリアル教室を組み合わせ、その日の状態や学びたい内容に応じて場所を選ぶスタイルが用意されています。
オンラインだからこそ全国の仲間や専門家とつながれる。
リアルだからこそ地域の人と出会い、料理、運動、ものづくり、社会活動などを体験できる。
オンライン教育は「リアルの代用品」ではありません。
これまで一つの地域、一つの学校だけでは用意できなかった教師・仲間・専門家・学びへ接続し、リアルな体験の選択肢まで広げるための手段にもなります。
参考: NIJINアカデミー|全国のリアル教室 / NIJINアカデミー|企業共創
未来の学びを、今から体験してみませんか?
NIJINアカデミーは、オンラインで全国の仲間や専門家とつながり、 地域ではリアルな体験を重ねるハイブリッド型の学び場です。 「今の学校が合わない」「別の学び方も知っておきたい」という段階でも大丈夫です。 まずは授業や休み時間の雰囲気を体験してみてください。
オンライン体験会は無料です
「学校に行く意味」も2040年には変わるかもしれない
学校の役割を考えるうえで、もう一つ大きいのが「情報」の変化です。
かつて、学校には「そこへ行かなければ得られない情報」がありました。
しかし現在は、情報そのものなら自宅からでもアクセスできます。
さらに2040年へ向け、場所の制約が小さくなっていけば、学校の価値はますます、
- 誰と出会えるか
- どんな体験ができるか
- 何に挑戦できるか
- 誰が自分を見てくれるか
- 社会とどうつながれるか
へ移っていく可能性があります。
2040年の教育で大切になる5つの力
では、今の子どもたちは何を学んでおけばよいのでしょうか。
未来の職業や技術を正確に予測することはできません。
だからこそ、特定の知識だけでなく、次のような力が重要になります。
答えのない問題に、自分なりの問いを持つ。
AIやネットの情報を鵜呑みにせず確かめる。
地域・年齢・国境を越えて一緒に学ぶ。
知識を組み合わせ、実際に形にする。
「自分はどうしたいか」を起点に行動する。
よくある質問(FAQ)
まとめ|2040年の学校は「オンラインかリアルか」ではない
2040年の教育を考えるとき、
「学校がなくなる」
「全部オンラインになる」
と単純に考える必要はありません。
大きな変化は、
「どの学びをオンラインで共有し、どの学びをリアルな場所に残すのか」
を、これまで以上に選べるようになることなのかもしれません。
タツロー校長
ネットで置き換えられるものと、リアルだからこそ価値があるものを分けていく。人口とテクノロジーが変われば、公教育も変わらざるを得ないと思っています。
子どもの数が減っても、住んでいる地域によって教育の質が決まらない。
地方にいても、全国の教師や専門家、仲間と学べる。
そして地域では、人と会い、自然に触れ、社会の中で学ぶ。
オンラインで世界を広げ、リアルで人間らしく学ぶ。
そんな教育が、2040年の学校の一つの姿になっているかもしれません。
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動画でも詳しく|2040年の教育・学校はどう変わる?
ここまで紹介した少子化、通信技術、オンラインとリアルの役割について、株式会社NIJIN代表取締役・NIJINアカデミー校長の星野達郎が約13分で解説しています。
記事を読んだ上で、タツロー校長自身の言葉でも聞いてみたい方はこちらからご覧ください。
参考・一次資料
- 文部科学省|教育振興基本計画
- 文部科学省|N-E.X.T.ハイスクール
- 文部科学省|令和8年度学校基本調査
- 国立社会保障・人口問題研究所|日本の将来推計人口
- 文部科学省|公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等
- 文部科学省|鹿児島県垂水市立松ケ崎小学校・遠隔合同授業
- 文部科学省|遠隔教育制度
- デジタル庁|教育DX
- NTTドコモ|5G Evolution & 6G
- 日本経済新聞出版|成毛眞『2040年の未来予測』
- NIJINアカデミー|全国の教室
- NIJINアカデミー|社会共創
画像出典:1874年「訓童 小学校教導之図」/Wikimedia Commons、遠隔合同授業/文部科学省、オンライン授業/NIJINアカデミー

