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文部科学省は2026年10月6日、次期学習指導要領等に向けた審議まとめに関する意見募集を開始しました。受付は11月5日午後11時59分まで。資料では、不登校の子どもや障害・認知特性のある子どもを含む多様な学習者に向け、授業時数の調整や個別の教育課程などを検討する方向が示されています。
ただし、これは新しい学習指導要領が決定したという発表ではありません。今後の制度づくりの材料となる審議まとめを公表し、意見を募っている段階です。今すぐ各学校の時間割や評価方法が変わるものではない点を押さえておきましょう。
この記事では、文科省とe-Govの一次資料をもとに、案の内容、家庭・学校にとっての意味、現時点での限界を整理します。本人の状況を決めつけず、いま使える支援と将来の制度案を区別しながら読んでください。
文科省が公表した内容と意見募集の日程
文部科学省は2026年10月6日、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」について、広く意見を募るパブリックコメントを開始しました。意見の受付期間は同日午後2時から11月5日午後11時59分までです。対象は、2028年度以降に順次実施する次期学習指導要領等に向け、中央教育審議会の教育課程部会が取りまとめた基本的な方向性です。
今回の審議まとめは、学校で教える内容をすでに確定した新ルールではありません。専門家や関係者による検討の現段階をまとめ、一般から意見を集める資料です。ここで提示された内容がそのまま決まり、直ちに来年度の授業や評価方法が変わるわけではありません。
一方、資料には、不登校の子ども、障害や認知特性のある子ども、日本語指導が必要な子ども、特定分野に強い関心や才能のある子どもなど、多様な実態に合わせて教育課程を柔軟にする論点が盛り込まれました。家庭や学校にとっては、将来の学校教育がどの方向へ進むかを知り、必要であれば意見を届ける機会です。
パブリックコメントは何を意味するのか
パブリックコメントは、行政機関が案や審議資料を公表し、広く意見を受け付ける手続きです。今回のe-Gov掲載では、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」が意見募集の対象となっています。受付期間中は、保護者、教職員、支援機関、子ども本人を含め、資料を読んだ人が考えを提出できます。
意見募集に参加したからといって、提出者の提案がそのまま採用されるわけではありません。提出された意見は、論点ごとに整理され、審議や今後の文書の検討に活用されます。どの意見をどう反映したかは、行政機関が後日示す結果や対応方針で確認することになります。
今回の手続きは、法律や省令の改正案に対する義務的な意見募集とは性格が異なり、e-Govの案件情報では「任意の意見募集」とされています。したがって、制度変更が確定したと受け取るのではなく、これから議論を深めるための材料を寄せる段階だと理解するのが適切です。
審議まとめが示す三つの基本方向
審議まとめの根底には、多様な子どもたちの「深い学び」を実現すること、子どもの多様性を包摂すること、学校で実行できる制度にすること、という三つの方向があります。学習内容を増やすだけではなく、必要な知識を結び付けて使う学び、問いを立てて考える学び、学びを支える環境や時間を整えることを並行して考えています。
ここでいう包摂は、全員に同一の方法を当てはめることとは違います。学級で共通して学ぶ土台を持ちながら、子どもの興味、習熟度、障害や認知特性、言語的な背景、欠席状況などに応じて学び方を調整する視点が示されています。必要な配慮は子どもごとに異なるため、単一のテンプレートで解決する話ではありません。
同時に、現場の実現可能性も重要な論点です。教師と子どもに時間的な「余白」をつくるには、授業時数や教科書の内容をどう整理するか、教師の研修・準備時間をどう確保するかを検討しなければなりません。方針の理念と、学校に人員・時間・設備があるかは分けて確かめる必要があります。
「調整授業時数制度」は何を変えようとしているか
審議まとめは、義務教育段階で、一定の条件のもと教科等の授業時数を調整し、他の教科への上乗せや学校独自の裁量的な時間に振り向ける「調整授業時数制度」の創設を提案しています。画一的な時間配分だけでは難しい学びを実現するため、学校が地域や子どもの実態に合わせて教育課程を組み立てる選択肢を広げる考え方です。
例えば、ある教科の内容を関連する領域と結び付けて扱う、探究や体験、学習の振り返りに時間を配分する、といった使い方が議論されています。ただし、どの学校でも自由に授業を減らせるという意味ではありません。最低限身に付ける内容や学習保障をどう保つか、制度を使う条件や学校の責任をどう定めるかが今後の検討事項です。
不登校や学習上の困難がある子どもにとっては、時間割の組み方に余裕が生まれれば、個別に取り組む時間や支援を受ける時間を設計しやすくなる可能性があります。しかし、審議まとめの段階で、利用できる学校、対象児童生徒、時間数、申請方法などが決まったわけではありません。現在の学校で特別な時間割が当然に実現する、と先取りして期待しないことが大切です。
子ども一人ひとりに応じた特別の教育課程
今回の資料では、学校全体の教育課程を柔軟にする案に加え、個別の児童生徒の実態に着目した特別の教育課程を新設・拡充する方向が示されています。通級による指導や日本語指導など既存の仕組みとの整理を行い、通常の教育課程だけでは学びを十分に支えにくい場合の対応を検討するものです。
資料の抜粋には、校内外の教育支援センター等に通う不登校児童生徒や、特定分野に特異な才能のある児童生徒を対象とする新たな仕組みが論点として挙げられています。これは、今まで学びの場が学校の教室だけに限られがちだった課題を見直し、学校外の支援と学校教育課程との関係を制度上どう扱うかを検討する動きと読めます。
「特別の教育課程」は、子どもの能力を決めつけたり、学習内容を一律に軽くしたりする制度ではありません。どのような教育目標を置き、何を学び、どのように評価するかを、子どもの状況に応じて設計する考え方です。具体的な対象や編成の手順、在籍校との連携、評価の扱いは、今後の制度設計や学校の実施体制を確認して判断する必要があります。
不登校の子どもに関わる論点と、現時点で分かること
不登校に関する提案で注目されるのは、校内外の教育支援センターに通う子どもを対象に、個別の教育課程を設ける可能性が示されていることです。学校の教室に戻ることだけを成果として置かず、学びの継続や子どもの実情に合う教育機会をどう整えるか、制度の側から考えようとしています。
学校外の施設やオンラインの学習を使う場合、在籍校との情報共有、学習内容の確認、出席や評価の扱い、支援者の役割分担など、現場で決める事項が多くあります。校外の場で過ごしていることだけで、自動的に学校の出席や成績として認められるわけではありません。現在の制度でも、校長や教育委員会が一定の要件を確認する場面があり、個別の状況に応じた相談が必要です。
今回の審議まとめが示すのは、制度を検討する方向性です。特定の子どもが新しい教育課程を利用できると約束したものではなく、支援センターへ行けば必ず単位や評定が得られるという発表でもありません。本人がどこで、どのような関わり方なら安心できるかを話し合いながら、現行制度で利用できる支援と、将来検討される仕組みを分けて整理しましょう。
発達障害・障害のある子どもへの影響をどう読むか
審議まとめは、障害や認知特性など、子どもの多様な実態を踏まえた学びやすい授業設計や環境整備にも触れています。教材の提示方法、学習の進め方、休憩の取り方、説明の仕方などを工夫することは、子ども本人が授業に参加しやすくなるだけでなく、学級全体の見通しを高めることにもつながる可能性があります。
一方、資料に発達障害や障害の言葉が出てくることを、診断の必要性や子どもの将来の成績を示すものとして読むことはできません。教育課程の議論は、医学的な診断や個別の予測を行うものではありません。診断の有無にかかわらず、本人が困っている場面、得意な方法、環境との相互作用を丁寧に確かめて支援を考えることが基本です。
特別支援教育の仕組みと、学級全体で学びやすさを整える取組は対立するものではありません。個別の指導計画や教育支援計画、通級による指導、校内委員会、保護者との相談など、既存の支援と新しい教育課程の案をどう結び付けるかが実務上の課題になります。具体的な配慮や相談先は、学校や教育委員会の現在の案内を確認してください。
高校段階の単位制を柔軟にする提案
義務教育だけでなく、高等学校段階では単位制の柔軟化も審議されています。高校には全日制、定時制、通信制など複数の課程があり、学習時間や履修の進め方が学校ごとに異なります。資料は、子どもが自分の状況に合わせて学べる教育課程を編成できるよう、制度の柔軟性を高める方向を示しています。
学校に通いづらい時期がある生徒、療養と学習を両立する生徒、得意分野を深めたい生徒などにとって、学習ペースや履修の組み方の選択肢が広がれば、学びを続ける方法を考えやすくなる可能性があります。ただし、単位認定の条件、在籍期間、必要な対面指導、卒業要件は学校種別や制度によって異なり、今回の公表だけで変わるものではありません。
通信制高校や定時制高校を検討する家庭は、「柔軟になるらしい」という説明だけで入学先を決めず、現在の募集要項と学則、授業の受け方、スクーリングの頻度・場所、試験の方法、支援体制を個別に確認してください。次期学習指導要領の提案が制度化された後も、各校の実施内容が同一になるとは限りません。
評価・探究・デジタル学習の議論
審議まとめには、学習の自己調整や学び方の指導、学習の途中でのアセスメントとフィードバック、探究的な学び、情報活用能力の育成なども含まれています。知識を暗記するだけでなく、知識を関連付け、別の課題や生活場面で使える形にすることを目指す方向です。
デジタル教材や端末は、読み上げ、拡大表示、入力方法の選択、教材へのアクセスなどを助ける場合があります。一方で、端末やアプリを導入すれば自動的に個別最適な学びが実現するわけではありません。教員の支援、教材のアクセシビリティ、通信環境、画面を使う時間、個人情報の管理などを合わせて整える必要があります。
学習評価については、子どもの能力や意欲を一つの数値だけで決めないよう、何を学び、どのような理解や表現が見られたかを適切に評価する方法が議論されています。ただし、評価方法の案が具体的な評定基準として確定したわけではありません。現行の評価が困りごとに合っていない場合は、学校に評価の観点、提出方法、学習成果の扱いを尋ね、今使える制度の範囲を確認してください。
家庭と学校が今から確認できること
保護者がすぐに取り組めるのは、資料の中で本人に関係しそうな論点を見つけ、現在の困りごとと希望を分けてメモすることです。「授業に参加しにくい」「登校日数を増やしたい」などの結果だけでなく、どの時間帯、場所、集団規模、教材、関わり方なら負担が軽くなるかを整理すると、学校との相談が具体的になります。
学校には、現行の教育課程の中で可能な配慮と、今後の制度改正を待つ必要がある事項を区別して聞くことができます。例えば、課題の提出方法、別室での学習、オンライン教材、休憩場所、担任以外の相談先などは、学校の状況によって対応が異なります。審議まとめの案を示しても、現在の学校が提案どおりの運用を義務付けられているわけではない点も共有しましょう。
子ども本人が意見を伝える方法は、面談で話すことだけではありません。家で書いたメモ、選択肢に丸を付ける方法、図や写真、本人が信頼できる人を通じて伝える方法などがあります。参加の仕方を本人に選んでもらい、発言の量や速さを理由に意思が弱いと判断しないことが、実質的に意見を尊重することにつながります。
学校との面談に臨む前には、困りごとを「いつ」「どこで」「どの活動のときに」「どのような支えがあると楽になるか」に分けて整理してみましょう。例えば、授業全体が難しいのか、特定の教科や音・光・人の多さが負担なのかで、相談する内容は変わります。できている場面や本人が安心できる条件も合わせて記録すると、課題だけでなく有効な工夫を共有できます。
意見を提出するときに押さえたいポイント
意見を提出する場合は、まずe-Govの案件ページから意見募集要領と対象資料を確認します。受付は2026年11月5日午後11時59分までです。締切間際は通信状況や送信操作の問題が起きる可能性があるため、提出を考えている場合は、資料を読んで早めに内容をまとめておくと安心です。
提出文では、賛成・反対の表明に加え、どの記述に対する意見か、どのような困りごとがあるか、どのように変えると改善するかを具体的に書くと伝わりやすくなります。ページや章、該当箇所を示し、子どもの個人情報や学校名など、本人が特定される情報は必要以上に書かないようにします。
専門用語を多く使う必要はありません。例えば、「校外の支援施設に通う子どもの学習成果を、在籍校と施設の双方が確認できる手順を明確にしてほしい」「休憩や教材の調整を相談する窓口を整備してほしい」のように、経験に基づく具体的な提案にできます。子どもの意見を提出する際は、本人の同意と負担を確かめ、保護者が代筆する場合も本人の意思と異ならないよう確認しましょう。
現段階の限界と注意点
今回の資料は中央教育審議会の審議まとめであり、学習指導要領の正式な告示、法令の改正、自治体の実施要項ではありません。今後、意見募集の結果や追加の審議、学習指導要領の具体的な作成、国の周知、自治体と学校の準備などを経て、実施内容が定まっていきます。現時点で学校に新制度の利用を求める根拠として使うことはできません。
「2028年度以降に順次実施予定」というのは、改訂後の指導要領を学校段階ごとに導入する見通しです。すべての学校で同じ年に同じ内容が始まるとは限らず、教科や学校段階によって時期が異なることがあります。発表後に更新される公式ページや通知を確認し、具体的な日程をその都度確かめてください。
また、制度の柔軟化だけでは、教員数、専門性、設備、地域の相談先、保護者との連携が自動的に確保されるわけではありません。制度に選択肢が書かれていても、地域や学校に担当者がいない場合、活用が難しいことがあります。理念と実施体制を分けて見て、必要な人員や相談窓口が整うかを今後の資料で確認する視点が欠かせません。
次の一歩を一緒に考える
資料を読み、いま必要な支援と将来の制度案を分けて確認してみましょう。
意見募集に参加したい方は、まずe-Govの募集要領と提出ページを開き、本人や家庭の経験から伝えたい点を一つ選んでみてください。受付は2026年11月5日午後11時59分までです。学校との相談を優先したい場合は、困りごとを具体的な場面に分けて、担任、特別支援教育コーディネーター、教育相談担当などに現在利用できる支援を尋ねる方法があります。
にじいろでは、不登校や発達障害、特別支援教育、学びの選択肢を、制度の一次情報に沿って紹介しています。将来の制度変更を待つだけでなく、現在の支援についても学校や自治体の公式窓口と一緒に確かめていきましょう。
意見を提出するかどうかは任意で、家庭や学校に提出を求められるものではありません。本人の経験を書く場合は、困った出来事だけでなく、役立った工夫や今後望む支援も合わせると、制度をどう改善してほしいかが伝わりやすくなります。提出前に、本人が書かれた内容を読んでよいか、個人が特定される情報が含まれていないか確認してください。
審議まとめの内容に疑問や賛同を持った時は、該当する箇所を示し、自分の経験と制度への提案を区別して整理します。家庭や学校で意見をまとめる場合も、異なる立場の人の考えを一つに丸めず、何に同意し、何が心配なのかを分けて書けます。意見の数や強さだけで結論が決まる手続きではありません。
一次情報・参考資料
一次情報として、文部科学省の報道発表、中央教育審議会の審議まとめ、e-Govの意見募集ページを確認しています。
- 文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」
- 文部科学省「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合等の出欠の取扱い」
- 文部科学省「パブリックコメント(意見公募手続)を実施します」
- e-Gov「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」の意見募集(締切・提出要領)
- 文部科学省・教育課程企画特別部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」抜粋資料
- 文部科学省・教育課程企画特別部会(審議まとめ・開催状況)
※この記事は2026年10月15日時点で公表された資料をもとに整理しています。審議内容や意見募集の扱い、制度化・実施時期は今後変わる可能性があります。最新の募集要領と文部科学省の公表情報をご確認ください。


