発達障害も特別児童扶養手当の対象です。療育手帳がなくても申請でき、判断されるのは知能指数ではなく「日常生活にどれだけ援助が必要か」です。
「うちの子は知的な遅れはないけれど、集団になると全然動けない」「療育手帳が取れなかったから、手当は無理だと言われた」。発達のことで悩むご家庭から、こうしたお話をよく聞きます。
結論から言うと、特別児童扶養手当の認定基準には「発達障害」がはっきりと書かれています。そして国の通知には、知能指数が高くても認定の対象になりうることまで明記されています。にもかかわらず、「手帳がないから」「知的に問題ないから」と、申請の前にあきらめてしまう方がとても多いのです。
この記事では、国の認定基準の実際の文言、1級と2級の分かれ目、診断書のもらい方、申請の流れとお金の話までを整理します。作業療法士として12年、発達支援の現場でご家族の申請に伴走してきた立場から、診断書を書いてもらう前に親ができる準備もお伝えします。

特別児童扶養手当とは?金額と支給時期
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害のある20歳未満のお子さんを監護している父母、または父母にかわって養育している方に支給される国の手当です。窓口はお住まいの市区町村ですが、認定するのは都道府県知事(政令市等では市長)です。
手当の月額(2026年度/令和8年4月〜)
| 等級 | 月額 | 年額のめやす |
|---|---|---|
| 1級 | 58,450円 | 約70万円 |
| 2級 | 38,930円 | 約46万円 |
手当額は物価の変動に応じて毎年改定されます。2026年4月から、1級は56,800円から58,450円、2級は37,830円から38,930円に引き上げられました。この手当は非課税で、税金はかかりません。
支給は年3回
| 支給月 | 対象となる月分 |
|---|---|
| 4月 | 前年12月分〜3月分 |
| 8月 | 4月分〜7月分 |
| 11月 | 8月分〜11月分 |
4か月分がまとめて振り込まれます。支給日は自治体によって10日・11日などの違いがあります。
対象にならないケースもあります。お子さんが児童福祉施設等に入所しているとき、お子さん自身が障害を事由とする年金を受けられるとき、日本国内に住所がないときは支給されません。
発達障害は対象になる?——認定基準に明記されています
ここがこの記事の核心です。特別児童扶養手当の障害認定は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定について(児発第576号)という国の通知にもとづいて行われます。その「精神の障害」の節に、発達障害の基準がこう書かれています。
【発達障害】
1級:社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級:社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
読んでいただくと分かるとおり、基準に書かれているのは「知能指数」ではなく「日常生活への適応」と「援助の必要性」です。そしてこの通知には、さらに踏み込んだ一文があります。
「発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。」
知的な遅れがないタイプの自閉スペクトラム症やADHDのお子さんについて、「うちの子は勉強はできるから対象外だろう」と考える必要はない、ということです。見られているのは、学力ではなく暮らしです。

知的障害の基準もあわせて確認
知的障害を伴う場合は、次の基準で判断されます。
【知的障害】
1級:食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級:食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
なお、発達障害と他の精神疾患が併存している場合について、通知は「併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する」としています。診断名がいくつあるかではなく、全体としてどれだけ生活が制限されているかで見られます。
お子さんの特性そのものを整理したいときは、発達障害とは?小学生の特徴・種類・相談先をやさしく解説もあわせてご覧ください。
1級と2級は、どこで分かれるのか
基準の文言を、日常の言葉に置き換えて並べてみます。
| 1級 | 2級 | |
|---|---|---|
| 援助のかたち | 常時援助が必要 | 場面に応じて援助が必要 |
| 社会性・意思疎通 | 欠如している | 乏しい |
| 不適応な行動 | 著しく見られる | 見られる |
| 日常生活 | 適応が困難 | 適応にあたって援助が必要 |
判定の考え方について通知は、「身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める」としています。つまり、検査室でできるかどうかではなく、園や学校、家庭という実際の生活の場でどうかが問われます。
※ここで示したのは国の基準の考え方です。実際の等級は提出された診断書等をもとに個別に判断されます。
療育手帳がなくても申請できます
ここは誤解が多いところです。特別児童扶養手当の申請に、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳は必須ではありません。所定の様式の診断書があれば申請できます。
手帳が関係してくるのは、逆の方向です。多くの自治体で、療育手帳のA判定(重度)や身体障害者手帳の1〜3級などをお持ちの場合には、診断書を省略できる取り扱いがあります。手帳は「あれば手続きが省ける材料」であって、「ないと申請できない条件」ではありません。
ただし、診断書を省略できる範囲は自治体によって運用が異なります。手帳をお持ちの場合は、申請前に窓口へ「この手帳で診断書は省略できますか」と確認するのがいちばん確実です。
申請の流れと必要な書類
- 市区町村の窓口に相談する子育て支援課・障がい福祉課など、自治体によって窓口名が異なります。認定請求書と、その自治体指定の診断書用紙をここで受け取ります。
- 医療機関で診断書を書いてもらう所定の様式で作成してもらいます。診断書は作成日から2か月以内(自治体により3か月)に提出する必要があるため、受け取ったら早めに窓口へ。予約が取りにくい医療機関もあるので、用紙を受け取ったらすぐ受診予約をしておくと安心です。
- 書類をそろえて提出する認定請求書、診断書、戸籍謄本(発行から1か月以内など指定あり)、請求者名義の通帳、マイナンバーが分かるもの、本人確認書類。手帳があれば持参します。
- 審査・認定都道府県等で審査されます。結果が出るまで1〜3か月程度かかることが多く、混み具合によってはさらに待つこともあります。
- 認定されたら支給開始支給は認定請求をした月の翌月分から。審査に時間がかかっても、請求月までさかのぼって計算されます。
迷っているなら、早めに出すほうが得です。支給は請求した月の翌月分からで、それより前にさかのぼることはできません。「もう少し様子を見てから」と3か月迷えば、その3か月分は戻ってこない、ということになります。

所得制限——ここで対象外になる家庭もあります
受給者本人だけでなく、配偶者や同居の扶養義務者の所得も見られます。前年の所得が限度額以上の場合、その年の8月分から翌年7月分までが支給停止になります。
| 扶養親族等の数 | 受給者本人 | 配偶者・扶養義務者 |
|---|---|---|
| 0人 | 4,596,000円 | 6,287,000円 |
| 1人 | 4,976,000円 | 6,536,000円 |
| 2人 | 5,356,000円 | 6,749,000円 |
| 3人 | 5,736,000円 | 6,962,000円 |
大事なのは、この数字は「年収」ではなく、控除を引いたあとの「所得」だという点です。計算式は「年間収入金額 − 必要経費(給与所得控除額等) − 8万円 − 諸控除」。医療費控除や障害者控除、ひとり親控除なども差し引かれます。額面の年収だけを見て「うちは無理」と判断せず、源泉徴収票や課税証明書を持って窓口で確認してみてください。
認定されたあとに知っておきたいこと
期限つきの認定(有期認定)がある
障害の状態が変わりうる場合、おおむね1〜5年後を目安に再認定が必要になります。精神の障害については、原則としておおむね2年後に再認定と定められています。有期の期限は3月・7月・11月の末日のいずれかに設定されるのが一般的です。
更新を忘れると、手当が止まります。期限を過ぎて診断書を出した場合、正当な理由がなければ期限の翌月から提出月までの手当は支給されません。有期期限は届いた通知書に書かれているので、受け取った日にスマホのカレンダーへ「3か月前」と「1か月前」の2回リマインダーを入れておくことを、いつもおすすめしています。
毎年8月に「所得状況届」の提出がある
受給が続いている間は、毎年8月に所得状況届を出す必要があります。これも出し忘れると支給が止まります。
診断書を書いてもらう前に、親ができる準備
ここが、現場でいちばんお伝えしたいところです。
診断書を書くのは医師ですが、医師が診察室で見られるのは、お子さんの1日のうちほんの数十分です。しかも初めての場所で緊張していると、家や園とはまったく違う姿になる子も少なくありません。「病院ではおとなしくできていましたね」と言われて困った経験のある方は多いはずです。
認定で問われるのは日常生活での援助の必要性ですから、診察室では見えない日常を、こちらから手渡す必要があります。おすすめは、A4用紙1枚のメモです。
医師に渡すメモに書くとよいこと
- 朝の身支度:声かけが何回必要か。着替えに何分かかるか。声かけなしで最後までできるか
- 食事:偏食の程度、自分で食べられるか、食事中に離席するか
- 切り替え・こだわり:予定変更のときに何が起きるか。落ち着くまでどのくらいかかるか
- 対人関係:園や学校の集団でどう過ごしているか。トラブルの頻度
- 不適応な行動:かんしゃく、飛び出し、他害・自傷など。いつ・どこで・週に何回を具体的に
- 安全面:目を離せない場面があるか。ひとりで留守番や外出ができるか
コツは「頻度と場面を数字で書く」こと。「よく癇癪を起こします」より「予定が変わると週3〜4回、20分ほど泣き続けて次の行動に移れません」のほうが、認定基準の言葉に翻訳されやすくなります。園や学校の連絡帳、個別の教育支援計画のコピーを添えるのも有効です。
「大げさに書く」ということではありません。ふだん親御さんが当たり前にやっている介助を、当たり前にせず言葉にするということです。毎朝30分かけて起こして着替えさせていることは、他の家庭では起きていない援助かもしれない。そこを書き落とさないでほしいのです。
手当が通っても、通らなくても
申請の手続きは、どうしても「できないこと」を数え上げる作業になります。書類を書き終えたあと、なんとも言えない気持ちになる、という声を何度も聞いてきました。

だからこそ、と思うのです。手当は暮らしを支えるためのお金であって、お子さんの価値を決めるものではありません。等級がつかなかったとしても、その子が持っているものは何ひとつ変わりません。
制度の手続きと並行して、その子の「できること」「好きなこと」が伸びる場所を用意しておくこと。これが、長い目で見るといちばん効いてくると感じています。
「好き」を伸ばす放課後の場という選択肢

NIJIN放課後プロジェクトスクールは、いまの学校に通いながら、放課後と休日に「好き」を起点としたプロジェクトに挑戦する、全国の小中学生向けの場です。Vtuber配信、マインクラフトの建築、Scratchのゲーム制作、地域の課題解決。子ども自身が企画から実行まで動かします。
メタバース校舎はアバターで参加するので、顔出しや声出しが苦手な子でも、距離を自分で選びながら関われます。平日はいつでも入れて、週1回のクラス会議は17:00〜18:00。自宅から参加できるため、学校で体力を使い切ってしまう子も、家で回復しながら関わることができます。リアル校舎は全国42か所、週1回の開校です。
こんなお子さんに向いています
- 学校には通えているが、集団のなかで力を出しきれていない
- 好きなこと、やりたいことがはっきりある
- 学校ではできない経験をさせたい
- 将来につながる力やキャリア教育の機会がほしい
- 顔出し・声出しが苦手で、無理のない形で仲間とつながりたい
- 放課後に、同じ興味を持つ仲間と出会ってほしい
いま学校に通うこと自体がしんどくなっているお子さんには、平日の日中を過ごせるNIJINアカデミーのフリースクールという別の選択肢もあります。どちらが合うかは、体験のときに相談していただけます。
NIJIN放課後プロジェクトスクール公式サイト/全国42校舎・オンライン参加は全国どこからでも
日々の関わり方に迷いがあるときは、発達障害の子への接し方|家庭の声かけと関わりの基本もあわせてご覧ください。学びの場の費用を調べている方には、フリースクールの補助金・助成金 全国まとめが役に立つはずです。
よくある質問
Q. 診断名は「自閉スペクトラム症」ですが、知的な遅れはありません。対象になりますか?
A. なりえます。国の通知は「たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により…日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う」としています。診断書に日常生活の実態が書かれていることが重要です。
Q. グレーゾーンで確定診断がありません。申請できますか?
A. 診断書の作成には、医師による診断が前提になります。まずは受診と相談から始めてください。診断がついていない段階でも、自治体の窓口で「どういう状態なら対象になるのか」を聞いておくことはできます。
Q. 一度不認定になりました。もう申請できませんか?
A. 状態が変わったときや、日常生活の実態がより正確に伝わる資料をそろえられたときは、あらためて請求することができます。不認定の理由を窓口で確認しておくと、次の準備がしやすくなります。
Q. 障害児福祉手当とは違うものですか?
A. 別の制度です。特別児童扶養手当は保護者に支給されるもの、障害児福祉手当は重度障害のある20歳未満の本人に支給されるもの(2026年度は月16,560円)で、両方に該当すれば併給できます。
Q. 手当をもらうと、なにかデメリットはありますか?
A. 手当は非課税で、受給によって他の制度が使えなくなることは基本的にありません。負担があるとすれば、有期認定のたびに診断書代がかかること、毎年8月に所得状況届を出す手間があることです。
まとめ
- 発達障害は特別児童扶養手当の認定基準に明記された対象。判断されるのは知能指数ではなく日常生活への適応と援助の必要性
- 国の通知は「たとえ知能指数が高くても」認定の対象になりうると明記している
- 療育手帳は必須ではない。手帳は診断書を省略できる場合がある材料にすぎない
- 2026年度の月額は1級58,450円・2級38,930円。支給は4月・8月・11月の年3回
- 支給は請求した月の翌月分からでさかのぼれないため、迷っているなら早めの申請を
- 所得制限は「年収」ではなく控除後の所得で判定される
- 診断書の前に、日常生活の様子を頻度と場面つきで書いたメモを用意して医師に渡す
制度は使う人のためにあります。「うちは無理だろう」と思っていた方こそ、一度窓口で確認してみてください。聞くだけなら費用はかかりませんし、そこで得た情報は、この先の支援を考えるときにも必ず役に立ちます。

