- 学校が「話すこと」に求めている水準は、学年ごとにどう違うか(原文)
- スライドを使ったプレゼンは、何年生から求められるのか
- 緊張と、専門家に相談したほうがよい状態の見分け方
- 場面緘黙(選択性かん黙)とは何か、文部科学省の定義
- 文部科学省が公開している「人前に立たずに発表する」方法
- 家庭でできる5つのステップ
- 公的な相談窓口
この記事は医学的な診断を目的としたものではありません。気になる様子が続く場合は、学校の先生やスクールカウンセラー、専門機関へご相談ください。記述は文部科学省・厚生労働省・こども家庭庁の公表資料に基づいています。
まず、学校が求めている水準を確認する
国語の「A 話すこと・聞くこと」で求められていることを、学習指導要領の原文から抜き出します。まず「話題の設定・情報の収集・内容の検討」にあたる部分です。
| 学年 | 学習指導要領の記述(原文) |
|---|---|
| 小1・2 | 「身近なことや経験したことなどから話題を決め,伝え合うために必要な事柄を選ぶこと。」 |
| 小3・4 | 「目的を意識して,日常生活の中から話題を決め,集めた材料を比較したり分類したりして,伝え合うために必要な事柄を選ぶこと。」 |
| 小5・6 | 「目的や意図に応じて,日常生活の中から話題を決め,集めた材料を分類したり関係付けたりして,伝え合う内容を検討すること。」 |
| 中1 | 「目的や場面に応じて,日常生活の中から話題を決め,集めた材料を整理し,伝え合う内容を検討すること。」 |
| 中2 | 「目的や場面に応じて,社会生活の中から話題を決め,異なる立場や考えを想定しながら集めた材料を整理し…」 |
| 中3 | 「目的や場面に応じて,社会生活の中から話題を決め,多様な考えを想定しながら材料を整理し…」 |
並べると、3つの軸で進んでいくのが分かります。
①話題の範囲が「身近なこと → 日常生活 → 社会生活」へ。②材料の扱いが「選ぶ → 比較・分類 → 分類・関係付け」へ。③想定する相手が「なし → 異なる立場 → 多様な考え」へ。
注目したいのは、どこにも「堂々と話す」「大きな声で話す」とは書かれていないことです。求められているのは、話題の選び方と材料の整理のしかた。つまり、人前で話すことは「学ぶ対象」であって、生まれつきの資質ではない——これが制度の側の前提です。
スライドを使ったプレゼンは、中学2年から
これは知っておくと家庭での見通しが立ちます。「表現」にあたる指導事項を見ると、資料や機器の使用が出てくるのは中学2年です。
| 学年 | 表現について求められていること |
|---|---|
| 小1・2 | 「伝えたい事柄や相手に応じて、声の大きさや速さなどを工夫する」 |
| 小3・4 | 「話の中心や話す場面を意識して」表現を工夫する |
| 小5・6 | 「資料を活用するなどして、自分の考えが伝わるように表現を工夫する」 |
| 中1 | 「自分の考えや根拠が明確になるように,話の中心的な部分と付加的な部分,事実と意見との関係などに注意して,話の構成を考えること。」 |
| 中2 | 「資料や機器を用いるなどして,自分の考えが分かりやすく伝わるように表現を工夫すること。」 |
| 中3 | 「場の状況に応じて言葉を選ぶなど,自分の考えが分かりやすく伝わるように表現を工夫すること。」 |
低学年で求められているのは「声の大きさや速さを工夫する」であって、「堂々と上手に話す」ではありません。そしてスライドを使うプレゼンは中2の指導事項です。
逆に言えば、小学生のうちは「資料に頼る」ことは正式な技術として認められています。小5・6の項目にはっきり「資料を活用するなどして」と書かれています。紙を見ながら話す、絵を見せながら話す。これは逃げではありません。

緊張と、相談したほうがよい状態を分ける
人前で緊張すること自体は、誰にでもあります。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、不安症・不安障害について「不安が伴う様々な症状が通常の限度を超えてしまい、行動や心理的に障害をもたらす」状態と説明され、専門医の診断が必要としています。緊張することイコール病気ではありません。
厚生労働省の保護者向けページ「こころもメンテしよう」では、不安障害にあたるのは「不安や心配する気持ちが過剰に強くなって、やりたいこと、やるべきことができなくなっている場合」とされ、「成長とともに自然に軽くなる場合が多い」としつつ、「こころの専門家のもとでメンテしてもらうと早く良くなります」と案内されています。
発表の前日から眠れない、学校を休みたがる、腹痛や頭痛が続く、以前はできていたのにできなくなった。こうした状態が続いているなら、家庭で練習を重ねるより先に、担任の先生やスクールカウンセラーに相談するほうが早く解決することがあります。
「話せない」が特定の場面だけなら、別の見方が必要です
家では普通におしゃべりするのに、学校では声が出ない。仲のよい友達とは話せるのに、授業中だけ固まってしまう。こうした「特定の場面だけ話せない」状態は、性格の内気さとは分けて考えられています。
文部科学省『障害のある子供の教育支援の手引』は、場面緘黙(選択性かん黙)について次のように説明しています。
「周囲が本人の話さないことだけに着目し過ぎるために、何とか話させようという働きかけが多くなることがある」
つまり、「話させよう」とする働きかけ自体が、状況を固くしてしまうことがある、という指摘です。もし家庭で「練習しよう」と誘うたびに子どもが強く拒む、あるいは学校の特定の場面だけ完全に声が出ないという状態なら、家庭での練習量を増やす方向ではなく、担任やスクールカウンセラーを通じて学校全体の関わり方を調整する方向に切り替えたほうが早いことがあります。
「人前だと緊張する」は、練習と経験で変わっていく領域です。一方「特定の場面で声が出ない」は、練習量の問題ではないことがあります。この2つを混ぜたまま家庭で練習を重ねると、子どもにとっては「できないことを繰り返し突きつけられる時間」になってしまいます。
人前に立たずに発表する方法が、国の資料にも載っています
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「人前で話すのが苦手」という課題に対して、いきなり「人前で話せるようになる」ことを目標にしなくてもよい、という考え方が、文部科学省の資料の中にすでにあります。
文部科学省が公開しているGIGAスクール構想の実践事例集「StuDX Style」には、「プレゼンテーションを動画配信してみよう」という実践が掲載されています。対象は小学校5学年以上。子どもが自分の発表を動画に録画し、それを配信するかたちで発表する、という方法です。
- 聞き手の反応をその場で受け止めなくてよいので、話すことだけに集中できる
- 失敗しても撮り直せる。「一発勝負」のプレッシャーがない
- 自分の発表を自分で見返せるので、どこを直せばよいか本人が気づける
- 準備の段階で何度も繰り返すことが、そのまま練習になる
- 人前に立つ場面は、慣れてきてから段階的に増やせばよい
家庭でも同じことができます。スマートフォンやタブレットで発表を録画し、家族に見てもらう。この方式なら、「人前に立つ」という最大のハードルを後回しにしたまま、話す内容を組み立てる力・声の出し方・間の取り方だけを先に鍛えられます。

そのうえで、録画を見てもらう相手を、家族だけ→祖父母→仲のよい友達→少人数のグループ、と少しずつ広げていきます。「人前で話す」を一段階ずつに分解する、という発想です。
家庭でできる5つのステップ
学習指導要領が求めている力を、家庭で無理なく積み上げる順番として、次の5段階をおすすめします。どの段階も、上の段階に進むことを急がないのがコツです。
- いちばん言いたいことを1つだけ決める。これが「中心」にあたります
- その理由を2つ書き出す。3つ以上は覚えきれません
- 理由それぞれに、実際にあった出来事を1つずつ添える
- 最後にもう一度、いちばん言いたいことを書く
この時点で、学習指導要領が小学校中学年以降で求めている「理由や事例を挙げながら話す」形になっています。話す練習の前に、話す中身を固める。緊張しやすい子ほど、この順番が効きます。
- 紙を見ながら、声を出さずに最後まで口を動かす
- 詰まったところに印をつける。そこだけ言い方を変える
- これを2〜3回。まだ「発表の練習」という感じにしないのが大事です
- 誰にも見せない前提で、スマートフォンで録画する
- 撮り終わったら、まず本人だけが見る。保護者は見ない
- 本人が「これなら見せてもいい」と思えたものだけ、次の段階へ
ここで保護者が先に見てしまうと、子どもにとっては「評価される場」に変わります。誰にも見せなくていい録画を何本か撮れることが、この段階の目的です。
- 見る側のルールを先に決める。「よかったところを2つだけ言う」
- 直したほうがいい点は、本人から聞かれたときだけ答える
- 拍手で終わる。感想戦を長くしない
- 紙は手に持っていてよい。見てもよい。ただし一度は見ずに通してみる
- 途中で詰まったら紙を見る。それでよい、と先に伝えておく
- ここまで来れば、学校の発表で必要な水準にはほぼ届いています
「本番を想定して、わざと緊張する状況をつくる」「わざと途中で質問して慌てさせる」といった負荷の高い練習は、緊張しやすい子には逆効果になりやすい方法です。本番で起きてほしくないことを、練習で先に経験させる必要はありません。
オンラインなら話せる、という子もいます
教室では手を挙げられないのに、オンラインの画面越しなら発言できる。この差は珍しくありません。画面越しの場面には、教室にはない条件がいくつかあります。
- 全員の視線が一斉に集まる感覚がない。カメラを見れば済む
- チャットで先に書いてから話す、という順番が取れる
- 自分の顔が画面の小さな枠に収まるので、注目されている感覚が薄い
- 話し終わったあとの沈黙が、教室ほど重く感じられない
- 音声だけで参加する選択肢がある場合、見られる緊張がなくなる
もし子どもにこの傾向があるなら、それは伸ばせる入口です。「教室で話せるようになってから、オンラインでも」ではなく、話せる場所から先に経験を積んで、あとから教室に持ち帰るほうが順番として自然です。

困っているときに使える、公的な相談窓口
発表が怖い、学校に行きたくない、という気持ちが強くなったとき、家庭と学校以外にも相談先があります。子ども本人からかけられる窓口を、保護者が先に知っておくと安心です。
| 窓口 | 内容 |
|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル 0120-078310 | 実施主体は各都道府県・指定都市の教育委員会。24時間対応で、子どもからも保護者からもかけられます |
| こども家庭庁「相談窓口」ページ | 悩みの種類ごとに、電話・SNS・チャットなどの相談先がまとめられています |
| 学校のスクールカウンセラー | 担任を通さずに直接予約できる学校もあります。まず学校に確認を |
0120-078310は「なやみ言おう」の語呂で覚えられる番号です。かけた時点で必ず何かが動くわけではありませんが、家庭の外に話せる人がいる、と子ども本人が知っていること自体に意味があります。
小中学生が「発表する場」として使えるもの
学校の授業以外にも、子どもが人前で話す経験を積める場があります。いきなり大きな大会を目指す必要はありませんが、こういう場があると知っておくと、練習の目的が「授業でうまくやること」だけに閉じなくなります。
| 名称 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 少年の主張全国大会 | 中学生 | 主催は独立行政法人国立青少年教育振興機構。市町村・都道府県の予選を経て全国大会へ進む形式です |
| 高円宮杯全日本中学校英語弁論大会 | 中学生 | 英語でのスピーチ大会。都道府県大会からの積み上げ形式です |
| こどもエコクラブ | 3歳〜18歳 | 登録料・年会費無料。2024年度は2,403クラブ・96,463名が登録。活動の発表・交流の機会があります |
| 全国中学・高校ディベート選手権(ディベート甲子園) | 中学生から | チーム戦のため、ひとりで全部を背負わずに参加できます |
少年の主張全国大会の応募総数・参加費については、主催者である国立青少年教育振興機構の公式サイトが確認時点でアクセスできず、数値の裏取りができませんでした。参加を検討される場合は、お住まいの市区町村の教育委員会または主催団体に直接ご確認ください。

「話すのが苦手」を、話さずに始められる場所もあります。
子どもが自分の好きなことを、自分のペースで人に伝える経験から始めたいなら、こんな選択肢もあります。
NIJIN放課後プロジェクトスクールという選択肢
ここまで、家庭でできる練習と、人前に立たずに発表する方法をお伝えしてきました。ただ、練習だけでは埋まらないものが1つあります。「話したい中身」がその子の中にあるかどうかです。
与えられたテーマについて上手に話す練習は、いくらやっても「うまく話す技術」までしか育ちません。一方、自分がどうしても伝えたいことがあるとき、子どもは驚くほど話せるようになります。プレゼンが苦手な子に本当に必要なのは、話し方の矯正ではなく、話したくなるほど夢中になれる中身のほうかもしれません。
NIJIN放課後プロジェクトスクールは、子どもが自分でプロジェクトを立ち上げ、それを進めていく放課後のスクールです。ここでのプレゼンは、授業の課題としてやらされるものではなく、自分が進めているプロジェクトを前に進めるために必要だからやるものになります。この違いは大きいです。
「人前で話せなかった子」が、実際に変わった記録があります
公式サイトのトップページに、小学4年生の子どもの記録が掲載されています。
小学4年生「ウルトラあっきー」。人前で話すことが苦手で、学校では手を挙げることができなかった。YouTube配信でのプレゼンに挑戦した結果、学校でも発言ができるようになった。
注目したいのは順番です。学校で話せるようになってから配信に挑戦したのではなく、配信で話せたことが学校での発言につながっています。先ほど「オンラインなら話せる子もいる」とお伝えしましたが、まさにその経路をたどった例です。
画面越し・録画という、人前に立たずに済む形式から始めて、そこで「伝わった」という手応えを得る。その経験が、教室という別の場面にも波及していく。これは家庭での練習だけではなかなか起きにくい変化です。
「話す技術」ではなく「話したい中身」から始まる
このスクールの特徴は、プロジェクトを子ども自身が立ち上げるところにあります。決められたカリキュラムを順番にこなすのではなく、その子が今いちばんやりたいことを起点にします。
プレゼンが苦手な子の場合、これは次のように働きます。
- テーマが自分のものなので、「何を言えばいいかわからない」が起きにくい
- 詳しいのは自分なので、聞き手より知っている状態で話せる。この立場の逆転が緊張を下げます
- 発表の目的が「評価されること」ではなく「協力してくれる人を増やすこと」になる
- 一度で完成させる必要がない。プロジェクトが続く限り、何度でも話す機会がある
- うまくいかなかった発表も、次に活かせる材料として扱われる
実際、このスクールでは小学5年生が沖縄の観光にまつわる課題解決に取り組み、企業に向けてプレゼンを行った例があります。企業の大人を相手にした発表です。これは「プレゼンの練習をした結果できるようになった」というより、本気で進めたいことがあったから、必要に迫られて話したという順番でしょう。

その子の「やりたい」が、もう一段伸びる場所として
もしお子さんに、すでに夢中になっていることがあるなら——ゲームでも、生き物でも、電車でも、絵でも——それはプレゼンの材料としてすでに十分です。問題は、それを人に伝える必然性のある場が、日常にないことのほうです。
学校の発表は年に数回、テーマも決められています。好きなことについて話す機会は、意外なほど少ない。放課後プロジェクトスクールは、その「好き」をプロジェクトの形にして、伝える相手と伝える理由を用意する場所だと考えるとわかりやすいと思います。
また、地方創生をテーマにした「せれてぃクラス」のように、テーマ性のあるクラスも用意されています。自分のやりたいことが社会のどこかとつながっている、という感覚は、話す動機をいちばん強くするものです。
このスクールに「プレゼン講座」や「話し方コース」があるわけではありません。プロジェクトは子ども自身が立ち上げるものなので、上に書いた内容は「プレゼンが苦手な子にとって、この仕組みがどう働きうるか」という説明です。実際にどんなプロジェクトになるかは、その子次第です。
また、「累計入学者数900名超」「リアル教室52か所」といった数字は、母体であるNIJINアカデミー全体の実績です。
学費ページには「追加費用はいただきません」とある一方、FAQには「備品・教材費や、希望選択制の特別行事で追加費用が必要になる場合があります」という記載もあります。記載に幅があるため、実際にかかる費用は体験会で直接ご確認ください。
まずは、どんなプロジェクトが動いているのかを見てみてください。
「うちの子が話せるようになるか」より先に、「うちの子が夢中になれるテーマがあるか」を見るほうが、判断しやすいはずです。
よくある質問
発表の前になると腹痛を訴えます。仮病でしょうか。
強い不安があるとき、体の症状として出ることは珍しくありません。仮病かどうかを判断しようとするより、「そういうことが起きている」という事実として扱うほうが対応しやすくなります。発表のたびに繰り返す、あるいは発表以外の日にも続くようであれば、担任やスクールカウンセラー、必要に応じて小児科への相談をご検討ください。
家では普通に話すのに、学校では一言も話しません。
特定の場面だけ話せない状態は、性格の内気さとは分けて考えられています。文部科学省の資料も、周囲が「何とか話させよう」とする働きかけが増えることの問題を指摘しています。家庭で練習量を増やす方向ではなく、学校側の関わり方を調整する方向で、担任やスクールカウンセラーに相談することをおすすめします。
スライドをつくる練習は、何年生から必要ですか。
学習指導要領で、資料や機器を用いて効果的に話すことが指導事項として明記されるのは中学校第2学年です。小学校段階では、スライドの操作より「何を、どんな順番で話すか」を組み立てる力のほうが先です。ただし、GIGAスクール構想により小学校でも端末を使った発表は行われているので、学校の実態に合わせてお考えください。
録画して発表する方法は、学校でも認めてもらえますか。
学校ごとの判断になりますが、文部科学省の実践事例集「StuDX Style」に「プレゼンテーションを動画配信してみよう」という実践が小学校5学年以上を対象として掲載されています。国の資料に載っている方法だと伝えたうえで相談すると、話が進みやすいことがあります。
練習に付き合うとき、何をアドバイスすればいいですか。
最初のうちは、よかったところを2つ伝えて終わりにするのが無難です。直したほうがよい点は、本人から聞かれたときだけ答えます。話し方の細かい指摘(声が小さい、目を見ていない、など)は、本人が「もっとうまくなりたい」と言い出してからで間に合います。
オンラインなら話せるのですが、それでは意味がないのでしょうか。
意味はあります。むしろ、話せる場所から経験を積むほうが順番として自然です。NIJIN放課後プロジェクトスクールの公式サイトには、人前で話すのが苦手で学校では手を挙げられなかった小学4年生が、YouTube配信でのプレゼンに挑戦した結果、学校でも発言できるようになったという記録が掲載されています。
人前で話すのが苦手なままだと、将来困りますか。
困る場面はありますが、「大勢の前で即興で話す」能力が必須の仕事ばかりではありません。文章で伝える、少人数で伝える、資料で伝える、録画で伝える。伝える手段は増えています。今の学校生活で困っていることを減らすことと、将来の心配は、分けて考えたほうが対応しやすくなります。
何度練習しても本番で失敗します。続ける意味はありますか。
本番でうまくいくことだけを成果とすると、練習が報われにくくなります。話す内容を組み立てられるようになった、紙を見ずに半分まで話せた、といった途中経過を成果として扱ってください。学習指導要領が求めているのも、まずは「話題を決め、伝え合うために必要な事柄を選ぶ」という組み立ての力です。

発表の前に、学校と「伝え方の選択肢」を相談する
家庭で練習しても教室では声が出ないとき、練習を増やす前に発表の条件を分けてみましょう。話したい内容はあるのか、聞き手の人数が負担なのか、発表する順番を待つ時間がつらいのか。子どもが言葉にしにくければ、「紙に書く」「録音する」「先生一人に話す」のうち、どれなら試せそうかを選んでもらいます。本人の答えを評価せず、そのまま学校に伝える材料にします。
学校へは「今回の発表の目的と、評価する点を教えてください。本人は内容を考えていますが、大勢の前で話すことに強い負担があります。少人数、録画、資料での提出など、学習目標を満たす別の方法を相談できますか」と連絡できます。代替方法が使えるかは授業の目標や学校の判断によるため、先に決めつけず相談してください。選んだ方法が合わなければ、次の発表で見直せるようにしておきます。
発表後の振り返りも「上手に話せた?」だけでは終えません。「伝えたいことを一つ選べた」「質問を一つ受け取れた」など、本人が手応えを感じた部分を聞きます。失敗したと感じている日は、すぐに反省会をせず、落ち着いてから次に変えたい条件を一つだけ聞いてください。特定の場面で話せない状態が続き、生活全体に困りごとが広がる場合は、学校の相談員や医療機関など専門の窓口にも相談できます。
好きな題材について少人数で伝える経験を探すなら、NIJIN放課後プロジェクトスクールの活動方法を親子で見てみるのも一案です。発表を入会の条件や成果と考えず、企画のどの部分なら本人が関わりたいかを確認します。説明会では「見学だけできるか」「文章や資料から参加できるか」「発言を求める場面はどこか」を質問すると、本人に合うか判断しやすくなります。
今週は、次の発表について学校に目的を一つ尋ね、本人に選べそうな伝え方を二つ示してください。大勢の前で話す練習に進むかどうかは、その後に決められます。
まとめ
人前で話すのが苦手な子への対応で、いちばんやりがちなのは「場数を踏ませる」ことです。ですが、苦手なまま場数を踏むと、苦手な経験だけが積み上がります。
- 学校が求めている水準は学習指導要領に書かれていて、小学校段階では「うまく話すこと」より「話す中身を組み立てること」が中心
- スライドを使った発表が指導事項に入るのは中学校第2学年から
- 「特定の場面だけ話せない」は、練習量の問題ではないことがある
- 人前に立たずに録画で発表する方法は、文部科学省の実践事例集にも載っている
- 家庭では、中身の整理→黙読→ひとりで録画→家族ひとり→家族全員、の順で段階を分ける
- オンラインなら話せる子は、話せる場所から経験を積むほうが早い
- 困ったときは24時間子供SOSダイヤル(0120-078310)など、家庭と学校以外の相談先もある
そして、練習だけでは埋まらないのが「話したい中身」でした。その子がすでに夢中になっていることがあるなら、それを起点にするほうが、話し方を直すより近道になることがあります。

好きなことを、伝える理由がある場所へ。
NIJIN放課後プロジェクトスクールでは、子どもが自分で立ち上げたプロジェクトを前に進めるために発表します。「やらされる発表」ではない場を、まず見てみてください。
この記事の一次資料
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』国語
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』国語
- 文部科学省『障害のある子供の教育支援の手引』
- 文部科学省「StuDX Style」(GIGAスクール構想 実践事例)
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」
- 厚生労働省「こころもメンテしよう」
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
- こども家庭庁「相談窓口」
- 独立行政法人国立青少年教育振興機構「少年の主張全国大会」
- こどもエコクラブ 公式サイト
- NIJIN放課後プロジェクトスクール 公式サイト


