- 学習指導要領が「文字入力」を求めているのは、どの校種か
- 小5・中2・高2の平均入力速度(文部科学省の調査)
- 小5の約半数がどの水準にいるか
- 2027年度から学力調査がCBTに全面移行するという事実
- 無料で使える練習サイトと、検定の実際
この記事の数字は、文部科学省「情報活用能力調査(令和3年度実施)」および学力・学習状況調査のCBT移行に関する公表資料から引用しています。よく見かける「小5は1分5.9文字」といった数字は、今回の取材では公式資料で裏が取れなかったため使っていません。
「文字を入力する」を求めているのは、小学校だけ
小学校学習指導要領(平成29年告示)の総則には、次の学習活動が挙げられています。
「児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動」
解説編にはもう少し踏み込んだ記述があります。「小学校段階ではそれらの情報手段に慣れ親しませることから始め、学習活動を円滑に進めるために必要な程度の速さでのキーボードなどによる文字の入力…確実に身に付けさせるための学習活動を…計画的に実施していくことが重要である」。
一方、中学校学習指導要領の同じ箇所には「文字を入力する」に相当する文言がありません。情報手段を活用した学習活動の充実を図ること、とあるだけです。
つまり制度としては、小学校で文字入力を身につけ、中学校以降は「できている前提」で進む構造になっています。ここでつまずくと、その後ずっと引きずることになります。
実際の速度は、どれくらいか
文部科学省「情報活用能力調査(令和3年度実施)」の結果は、この記事でいちばん重要な数字です。調査は令和4年1月〜2月、小学校第5学年4,486人・中学校第2学年4,846人・高等学校第2学年4,887人を対象に行われました。
| 校種 | 1分間あたりの平均文字入力数 |
|---|---|
| 小学校(第5学年) | 15.8文字 |
| 中学校(第2学年) | 23.0文字 |
| 高等学校(第2学年) | 28.4文字 |
そして分布です。1分間に15文字未満しか入力できない児童生徒の割合は、小学校51.2%、中学校23.3%、高等学校9.3%。
小5の約半数が、1分間に15文字に届いていません。原稿用紙の1行が20字ですから、1行を打ち終わるのに1分以上かかる計算になります。
なお平成25年度の調査では、ローマ字入力のつまずきの傾向として「小学生については、濁音・半濁音、促音の組合せからなる単語の入力に時間を要している」「中学生については、ひらがなとアルファベットの入力切り替えに時間を要している」ことが報告されています。「じゃ」「っ」でつまずく、というのは個人の問題ではなく、全体の傾向です。

2027年度、学力調査が全面CBTになる
ここが「いつから練習するか」の答えを決める事実です。
文部科学省「今後の全国学力・学習状況調査のCBTでの実施について」(令和8年6月改定)によると、移行のスケジュールは次のとおりです。
| 年度 | 実施方式 |
|---|---|
| 令和7年度 | 中学校調査のうち理科のみCBT |
| 令和8年度 | 中学校調査のうち英語のみCBT。小学校児童質問調査もMEXCBTで実施 |
| 令和9年度 | 全面移行(小・中の教科調査および児童生徒質問調査すべて) |
そして同資料には、こう書かれています。「短答式・記述式問題については、児童生徒自身がキーボード操作等での文字入力により解答」。
つまり2027年度(令和9年度)以降、小学6年生・中学3年生は、記述式の答えを自分でキーボードで打って提出することになります。考える時間とは別に、打つ時間がかかるということです。
端末はすでに行き渡っています。文部科学省の公表資料によると、義務教育段階の1人1台端末は1,810自治体等(99.9%)で整備が完了しています。令和5年度補正予算では公立学校の端末更新に2,643億円が計上され、GIGAスクール構想は第2期(更新フェーズ)に入っています。
家庭でできること
1|ホームポジションから始める。ここを飛ばして自己流で速くなった子は、あとで伸びが止まります。最初の数週間は遅くなりますが、そこは我慢どころです。
2|毎日5分にする。週末に30分やるより、毎日5分のほうが定着します。時間を決めるより「起動したら必ず1セット」と行動に紐づけるほうが続きます。
3|打つ内容を、本人が興味のあるものにする。好きなゲームの名前でも、飼っている生き物の名前でも構いません。練習用の文章が退屈だと、それだけで続かなくなります。
無料で使える練習サイト
| サイト | 運営 | 特徴 |
|---|---|---|
| プレイグラムタイピング | 株式会社Preferred Networks | 小学生から始める無料のローマ字タイピング練習。五十音から段階的に進み、苦手なキーを重点反復 |
| キーボー島アドベンチャー | スズキ教育ソフト株式会社 | 全国小学生向けキーボード検定サイト。30の級。学校単位で登録し、発行されたIDで家庭からも利用可 |
| 寿司打 | Neutral | ふりがなつきモードあり。ゲーム形式で時間を区切って取り組める |
| myTyping | マイタイピング | 投稿型。「こどもタイピングれんしゅう」などひらがな・カタカナのみの入門コンテンツあり |
投稿型のサイトは内容の質に幅があるので、最初は保護者が見てから使わせることをおすすめします。

検定という目標の立て方
目標があると続きやすい子には、検定という選択肢があります。日本情報処理検定協会の「文章入力スピード認定試験(日本語)」は、10分間の実技試験で、純入力文字数によって級が決まります。
| 級 | 10分間の入力文字数 |
|---|---|
| 6級 | 50文字以上 |
| 5級 | 100文字以上 |
| 4級 | 250文字以上 |
| 3級 | 350文字以上 |
| 2級 | 600文字以上 |
受験料は1科目1,500円(税込)。受験資格に年齢制限はありません。ただし注意点があります。原則として団体受験で、「受験者が10名以上であることを要します」とされており、試験会場は「受験者が属する各大学、各学校および教室」です。家庭から個人で気軽に申し込める試験ではなく、パソコン教室や学校を通すのが基本になります。
参考までに、先ほどの調査の小学校平均15.8文字/分を10分に換算すると約158文字。5級(100文字)は超えるが、4級(250文字)にはまだ届かないあたりです(この換算は本記事による計算で、公式の対応表ではありません)。

よくある質問
まとめ
学習指導要領で文字入力の習得を求めているのは小学校だけで、中学校以降は「できている前提」で進みます。それなのに小5の51.2%は1分15文字未満。そして2027年度から全国学力・学習状況調査は全面CBTになり、記述式は自分でキーボードを打って答えることが決まっています。やるなら小学校のうち、ホームポジションから、毎日5分。無料の練習サイトで十分に始められます。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』総則(PDF)/解説 総則編 抜粋(PDF)
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』(PDF)
- 文部科学省「情報活用能力調査(令和3年度実施)」調査結果(PDF/一覧ページ)
- 文部科学省「情報活用能力調査(平成25年度実施)」結果の概要(PDF)
- 文部科学省「今後の全国学力・学習状況調査のCBTでの実施について(令和8年6月改定)」(PDF)
- 文部科学省「令和8年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」(PDF)
- 文部科学省「義務教育段階における1人1台端末の整備状況」(PDF)/GIGAスクール構想(令和5年度補正予算)(PDF)
- 株式会社Preferred Networks「プレイグラムタイピング」(ページ)
- スズキ教育ソフト株式会社「キーボー島アドベンチャー」お知らせ(ページ)
- 日本情報処理検定協会「文章入力スピード認定試験 日本語」(ページ)/「試験日・受験料」(ページ)
NIJIN放課後プロジェクトスクールでは、Scratchでゲームを作って全国の子に遊んでもらったり、マイクラで作った世界を社会とつなげたりと、パソコンを「使う」から「作る」に変えるプロジェクトが動いています。今の学校に通いながら参加でき、メタバース校舎は入学金22,000円・月額12,683円(税込)。

