- 学校で調理を学ぶ時間は年間どれくらいか(標準授業時数)
- 台所での子どもの事故は、どの製品で起きているか
- 「危ないから」を「見守る」に変える、任せる順番の作り方
- 小中学生が応募できる料理コンテスト5つと、学年ごとの違い
- 料理が次につながる方向
にじいろでは「料理が好き」を入り口に自信を取り戻した子どもを取材してきました。この記事はその続きとして、家庭でどう任せていくかを、公的資料にあたって具体化したものです。
学校で料理を学ぶ時間は、意外と短い
学校教育法施行規則の別表で定められた標準授業時数を見ると、小学校の家庭科は第5学年60時間・第6学年55時間で、2年間の合計は115時間。しかも家庭科には衣・食・住・消費生活が含まれるため、調理はそのうちの一部です。
中学校の技術・家庭は第1学年70・第2学年70・第3学年35で3年間175時間ですが、これは技術分野と家庭分野の合計です。家庭分野だけの時数は施行規則では定められていません。
学習指導要領解説を見ると、小学校の「調理の基礎」で扱うのは「材料に適したゆで方、いため方」「伝統的な日常食である米飯及びみそ汁の調理の仕方」。中学校では「材料に適した加熱調理の仕方、基礎的な日常食の調理」「地域の食文化、地域の食材を用いた和食の調理」です。
つまり、学校で身につくのは土台の部分だけ。包丁を持つ回数も、火を使う回数も、家庭でどれだけやったかで差がつきます。好きな子にとっては、学校の時間だけでは明らかに足りません。

心配の正体を、数字で確認する
製品評価技術基盤機構(NITE)の公表資料によると、2010年度からの10年間で、0〜15歳の子どもが関係する台所用品の事故は49件ありました。うち死亡4件、重傷8件。製品別で最も多かったのはガスこんろの15件です。
この資料が保護者に求めているのは「使わせない」ことではありません。「保護者が製品の正しい使い方、危険性を認識する」「一緒に料理する際は、子どもから目を離さないように注意する」「刃物や火を扱う際の危険性について、子どもと一緒に確認する」——つまり、教えて、見守る、です。
国民生活センターも、こんろのグリルによるやけど事故を報告しています。グリル窓の表面は調理中に最高150℃に達し、使用後も約15分間は50℃を超えるとのこと。「使用中はもちろんのこと、使用後であってもしばらくは、グリル窓が高温です」と注意喚起しています。
任せる順番の作り方
「今日から包丁を持たせる」のではなく、段階を分けます。次の順番は、危険度の低いものから並べたものです。
| 段階 | 任せること | 大人がやること |
|---|---|---|
| 1 | 洗う・ちぎる・混ぜる・計る | 刃物と火は大人が担当 |
| 2 | ピーラーで皮をむく/包丁で押し切り | まな板の横につく。手の添え方を毎回声に出す |
| 3 | 包丁で切る(同じ食材を繰り返す) | 同じ部屋にいる。目を離さない |
| 4 | 火を使う(ゆでる・いためる) | そばにいる。柄の向き・持ち手の熱さを確認 |
| 5 | 1品を最初から最後まで作る | 聞かれるまで口を出さない |
段階を上げる基準は年齢ではなく、同じ作業を「一度も危ない持ち方をせずに」3回できたかどうかです。3回できたら次へ。できなかったら戻る。この基準を先に子どもと共有しておくと、「まだ危ないから」という曖昧な理由で止めずに済みます。
最初に任せる1品は、失敗しても食べられるものにしてください。みそ汁、野菜いため、ゆで野菜。焦げても、切り方がそろわなくても成立します。逆に、計量が厳密なお菓子や、失敗が見た目に出る料理を最初に持ってくると、うまくいかなかったときに「向いていない」と本人が結論づけてしまいます。
腕を試せる場は、学年で分かれている
作れるようになると、次は「誰かに評価してほしい」が出てきます。公式サイトで応募資格を確認できたコンテストを挙げます。
| コンテスト | 主催 | 応募資格 | 形式 |
|---|---|---|---|
| インスタントラーメン 小学生レシピコンクール | 一般社団法人日本即席食品工業協会 | 小学校4・5・6年生 | レシピ+完成写真。全国大会は実技(2食分) |
| ハットリキッズ食育クッキングコンテスト | 学校法人服部学園 服部栄養専門学校 | 小学1〜6年生とその保護者 | レシピ応募→本選は実技(リンゴの皮むき・キャベツの千切り・アジの三枚おろし) |
| いきいきちばっ子 オリジナル弁当コンクール | 千葉県教育委員会 | 小学5・6年生(千葉県内在住・在学) | 写真 |
| お弁当・おむすびコンテスト | おいしいごはんを食べよう県民運動推進協議会・兵庫県ほか | おむすびの部=小・中学生/お弁当の部=中・高校生(兵庫県内) | 写真 |
| ジュニア料理選手権 | 味の素株式会社・株式会社オレンジページ | 中学生・高校生(小学生は不可) | オリジナルレシピ |
注目したいのは、小学生のうちは「写真とレシピ」で応募できるものが中心で、実技まで求められるものは限られている点です。いきなり人前で調理するのではなく、作って写真を撮って言葉で説明する、というところから始められます。
応募時期は年度ごとに変わります。参加を検討するときは必ずその年の公式サイトを確認してください。

「食べる人がいる」と、料理は変わる
自分のために作る段階から、誰かのために作る段階に進むと、考えることが増えます。相手の好き嫌い、その日の体調、食べる時間、片づけのしやすさ。これは学校の家庭科が「1食分の献立の工夫」として求めていることそのものです。
国の計画にも、そこに触れる目標があります。2026年6月24日に決定された「第5次食育推進基本計画」(計画期間は令和8年度からおおむね5年間)では、朝食を欠食する子どもの割合を6.4%から5%以下へ、朝食または夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を週8.6回から週10回以上へ、という目標が掲げられています。
作る側に子どもが加わることは、この「共食」を増やす方向に働きます。料理ができるようになることと、食卓が変わることは、同じ線の上にあります。
料理から、どこへ広がるか
料理を入り口にした子が進む先は、調理の道だけではありません。栄養を調べれば理科と保健につながり、原価を計算すれば算数になり、地域の食材を追いかければ社会科の学習になります。レシピを人に伝えるには、順序立てて説明する力が要ります。
にじいろでも、料理をきっかけに自信を取り戻した子どもを取材してきました。「うまくできた」が形として毎回残り、しかも人に食べてもらえる。この即効性は、ほかの習い事にはなかなかないものです。

よくある質問
まとめ
学校で調理を学ぶ時間は小学校で2年間115時間(家庭科全体)と限られていて、包丁と火に慣れるかどうかは家庭での経験にかかっています。台所の事故は現実にありますが、公的資料が求めているのは「使わせない」ことではなく「教えて、見守る」ことです。洗う・ちぎるから始めて、同じ作業を3回安全にできたら次へ。そして作れるようになったら、写真とレシピで応募できるコンテストから外に出てみてください。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 文部科学省 中央教育審議会「標準授業時数について」令和3年6月28日(PDF)
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 家庭編』(PDF)
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編』(PDF)
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「楽しいはずの『おうちごはん』で事故のおそれ」2020年7月21日(ページ)
- 国民生活センター「こんろのグリルでの子どものやけどに注意」2017年9月21日(ページ)
- 農林水産省「『第5次食育推進基本計画』の決定について」2026年6月24日(ページ)
- 日本即席食品工業協会「インスタントラーメン 小学生レシピコンクール」(ページ)
- 服部栄養専門学校「ハットリキッズ食育クッキングコンテスト」(ページ)
- 千葉県教育委員会「いきいきちばっ子 オリジナル弁当コンクール」(ページ)
- 兵庫県「お弁当・おむすびコンテスト」(ページ)/オレンジページ「ジュニア料理選手権」(ページ)
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