「他の都道府県にある施設のことは、制度上つかめない」。通信制高校の国の指針づくりで、都道府県10団体程度へのヒアリング結果が公開されました(9月29日・第2回)

通信制高校には、本校のほかに「サテライト施設」と呼ばれる通学先があります。多くの子が実際に通うのはこちらです。その施設が本校と違う都道府県にあるとき、いま何が起きているのか——文部科学省が2026年9月29日に開いた検討会議で、都道府県10団体程度へのヒアリング結果が公開されました。出てきたのは「他の都道府県にある施設のことは、制度上つかめない」という、行政側からの率直な課題でした。

1. 9月29日に何が公開されたのか

文部科学省の「通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議」の第2回が、2026年(令和8年)9月29日10時から12時まで、WEB会議で開かれました。同日、配付資料が文科省サイトで公開されています。

項目内容
会議名通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議(第2回)
日時令和8年9月29日(火)10時00分〜12時00分
場所WEB会議
議題広域通信制課程における通信教育の適正な実施及び運営の確保について/広域通信制高等学校の実態について/自由討議/その他

出典:文部科学省「通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議(第2回)配付資料」(令和8年9月29日公開)

この会議は、国が通信制高校について初めて「基本指針」をつくるための議論の場です。指針そのものの論点は、第1回の資料をもとに通信制高校の「基本指針」で何が変わる?有識者会議の論点を保護者向けに整理で整理しています。この記事では、第2回で新しく出てきた「都道府県どうしの連携」という論点だけを扱います。

2. 都道府県へのヒアリングは、どう行われたか

公開された資料のひとつ(資料3)は、文科省が都道府県に対して行ったヒアリングの概要です。条件は次のとおりでした。

項目内容
趣旨令和6年に実施した「私立広域通信制高等学校の設置認可等に関する調査」の結果を踏まえ、さらにガイドラインや認可基準の標準例の運用状況を把握するために実施
時期令和8年7月〜8月
対象私立通信制高校を所轄する都道府県のうち、10団体程度を抽出
実施形態オンラインによる面談を通じて、都道府県の設置認可や指導監督の実態や課題について情報交換

出典:同会議 資料3「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン、通信制課程に係る私立高等学校の認可基準(標準例)に係る運用状況に関するヒアリング(概要)」

全都道府県への悉皆調査ではなく、10団体程度を抽出した面談です。資料に「どの都道府県か」は書かれていません。以下に挙がる課題も、その範囲で出てきた声である点を先に押さえてください。

3. 挙がった「主な課題」は4つ

資料3の〔主な課題〕として、次の4点が挙げられています。表現は資料のとおりです。

① 通信教育連携協力施設の情報把握について

・他都道府県が所轄する通信教育連携協力施設の状況を施設の所在する都道府県が把握することは制度上困難である。
・所轄庁も他都道府県に所在する施設を指導・監督することに難しさを感じている。

② 意向確認(教育区域照会)の実効性について

・認可基準の標準例に示されている他の都道府県からの意向確認(教育区域に加えることの是非に関する照会)があった場合に、多くの都道府県が「やむを得ない(設置やむなし)」という事実上の追認回答となっている。
・「支障がある」と回答した際も、所轄庁において十分に汲み取られていないと感じる場合がある。
・意向確認の回答後に認可結果のフィードバックが都道府県に届いていない場合が多く、実情を把握しにくい。

③ 認可基準について

・国が策定しているガイドラインや認可基準の標準例についても、分校やその他施設についての定義、風営法の取扱いなど曖昧な記載もあり、学校や都道府県間の基準についての認識に差異が生じている。

④ 所轄庁の事務体制の脆弱性

・少人数の体制で他の業務も抱えながら、通信制高校の監督・審査業務を担当している都道府県が多く、通信制高校の管理・監督に対応できる人的資源の確保が困難な状況にある。

同じ資料には〔特徴的な取組〕もあわせて載っており、「所轄庁の区域内か否かにかかわらず、通信教育連携協力施設を設ける際には現地確認を行っている」「定期的に独自の点検調査を行い、調査結果を学校にフィードバックして改善を求めている」といった、踏み込んだ運用をしている自治体の例も報告されています。都道府県によって運用の濃さに幅がある、というのがこの資料全体の姿です。

4. 「所轄庁」と「施設の所在地」がずれる、という話です

ここが分かりにくいところなので、順に整理します。

通信制高校のうち、通信教育を行う区域が本校のある都道府県を含めて3以上の都道府県にまたがる学校を「広域通信制高等学校」といいます。広域通信制高校の設置等を認可する場合、所轄庁(本校のある都道府県など)はあらかじめ文部科学省へ届出を行うことになっています。

そして広域通信制高校は、本校(実施校)とは別に、面接指導や添削指導のサポート等を実施するためのサテライト施設を広く展開している学校も多くあります。文科省の参考資料では、サテライト施設は次のように整理されています。

類型説明大分類
分校実施校専用の施設として設置する添削指導・面接指導・試験のための施設面接指導等実施施設
(=通信教育連携協力施設)
協力校実施校の行う面接指導・試験等に協力する他の高等学校
技能教育施設所在する都道府県の教育委員会の指定を受けた技能教育のための施設で、実施校の行う面接指導・試験等に協力する施設(企業内訓練校、高等専修学校等)
他の学校等の施設実施校の面接指導・試験等を実施するために借用する他の学校等の施設(大学、専修学校、高等専門学校等)
サポート施設実施校に在籍する生徒に対して学習面や生活面での支援等を行うものとして実施校・設置者が提携を認める施設学習等支援施設
(=通信教育連携協力施設)
その他の施設学校教育活動とは直接関連があるものではないが、実施校・設置者が提携を認める施設通信教育連携協力施設に含まれない

出典:同会議 参考資料「本検討会議における検討課題及び通信制高等学校に関する基礎資料」より、広域通信制高等学校のサテライト施設の類型。

つまり、お子さんが毎週通う建物の所在地の都道府県と、その学校を認可・監督している都道府県が、別であることがある。そのうえで①の課題は、所在地の都道府県が「制度上」その施設の状況を把握しにくい、と述べています。

5. 通信制高校はいま、どれくらいの規模か

同じ参考資料に載っている、令和8年度の学校基本調査(速報値)の数字です。

課程学校数割合生徒数割合
全日制4,579校82.6%2,764,107人87.8%
定時制607校10.9%73,131人2.3%
通信制358校6.5%311,792人9.9%

出典:文部科学省「学校基本調査」(令和8年度は速報値)。同会議 参考資料より。学校数は1つの学校に課程が併置されている場合、課程ごとに重複して計上。生徒数は専攻科・別科に属する生徒数を除く。

高校生のおよそ10人に1人が通信制です。今回の議論は、その31万人あまりが通う先の「見えにくさ」をどう埋めるか、という話でもあります。

★ここは誤解されやすい

「認可されている=通っている施設を、その土地の県がチェックしている」ではありません。資料が述べているのは、所在地の都道府県が他都道府県所轄の施設の状況を把握するのは制度上むずかしい、ということです。認可・監督の責任は所轄庁(本校側)にあります。

「事実上の追認回答」は、「審査をしていない」という意味ではありません。②で指摘されているのは、他県から意向を聞かれた際の回答が結果的に「やむを得ない」に寄っている、という照会手続きの実効性の話です。認可そのものの審査をしていない、とは書かれていません。

まだ何も決まっていません。これは指針をつくるための検討会議の第2回です。今回公開されたのは現状把握の資料であり、指針の案ではありません。

6. いま、できること/しなくていいこと

できること

① 見学のときに「この場所は何にあたるか」を聞く。上の表の6類型のどれか(分校/協力校/技能教育施設/他の学校等の施設/サポート施設/その他の施設)を尋ねれば、面接指導を受けられる場所なのか、学習・生活の支援をする場所なのかが分かります。

② 本校がどこにあり、どこが所轄庁かを確認する。何かあったときの相談先は、通っている施設の都道府県ではなく、本校を認可している都道府県(私立なら私学担当課)になります。

③ 学校評価と情報公開を見る。指針の論点にも「学校評価・情報公開の徹底」が入っています。自己評価・学校関係者評価の結果を公表しているかは、いま自分で確かめられます。通信制高校の情報公開の実態については通信制高校で「退学・転学・卒業の人数」まで公表しているのは323校中103校(31.9%)にまとめています。

しなくていいこと

いま通っている学校を、この資料を理由に慌てて変える必要はありません。資料は個別の学校を評価したものではなく、都道府県の行政手続きの課題を整理したものです。

指針の結論を先取りして進路を決め直す必要もありません。検討はまだ途中です。

7. これから何が指針に書かれるのか

基本指針の根拠は、改正後の「高等学校の定時制教育及び通信教育の振興等に関する法律」第9条です。第2項で、指針に定める事項が4つ挙げられています。

号定める事項
一通信制の課程を置く高等学校の適正な管理運営に関する事項
二通信教育の適正な実施及び運営の確保に必要な監督及び情報の提供、指導、助言、勧告その他の援助の適切な実施に関する事項
三広域通信制課程における通信教育の適正な実施及び運営の確保のための関係地方公共団体相互間の連携協力に関する事項(イ 情報の共有及び意見の交換/ロ 管理運営の状況を把握するための調査の実施)
四前三号に掲げるもののほか、通信教育の適正な実施及び運営の確保に関し必要な事項

出典:同会議 参考資料に掲載の、改正後の「高等学校の定時制教育及び通信教育の振興等に関する法律」(抜粋)。

文科省の検討課題資料は、このうち第三号は「これまでガイドラインに記載がない」と明記しています。第2回で都道府県へのヒアリング結果が示されたのは、この空白を埋めるためです。検討課題としては、認可にあたって所轄庁から施設所在地の都道府県への情報共有・意見交換、認可後の相互の連携協力、文科省と所轄庁が合同で実施する点検調査(施設所在地の都道府県の関与を含む)といった観点が挙げられています。

この記事で確認できなかったこと

参考資料のサテライト施設の類型図には施設数とみられる数値が入っていますが、どの類型に対応する数値かを画面上で確定できなかったため、掲載を見送りました。また第2回では、評価機構・自治体・学校からの発表資料もあわせて公開されていますが、本記事では資料3と参考資料のみを根拠にしています。

8. まとめ

今回分かったのは、「通信制高校のサテライト施設が都道府県をまたぐとき、所在地の県はその状況をつかみにくい」という構造が、行政の側から課題として言葉になった、ということです。国はこれを埋めるための指針をこれからつくります。保護者の側でいま打てる手は、通う場所の位置づけと、所轄庁がどこかを、入学前に確かめておくことです。

出典

文部科学省「通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議(第2回)配付資料」(令和8年9月29日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/211/siryo/mext_00003.html

うち、資料3「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン、通信制課程に係る私立高等学校の認可基準(標準例)に係る運用状況に関するヒアリング(概要)」、および参考資料「本検討会議における検討課題及び通信制高等学校に関する基礎資料」。

生徒数・学校数は文部科学省「学校基本調査」(令和8年度速報値)。上記参考資料に掲載の数値によります。

問合せ先:文部科学省 初等中等教育局高等学校振興課

通信制高校を検討している方へ

指針づくりで課題になっているのは、本校と通う施設の所在地が違うと、学びの実態が見えにくいという点でした。進学先を選ぶときは本校の所在地・面接指導(スクーリング)の場所・日々サポートしてくれる施設を分けて確かめるのが安心です。NIJINアカデミーの高等部として生まれた通信制高校サポート校ニジ高は、オンライン校舎で全国から通えます。

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文責:にじいろ編集部
公開日:2026年9月29日 / 最終更新:2026年9月29日
この記事は、にじいろ編集部が一次情報にあたって作成しています。編集の考え方は編集体制・編集方針をご覧ください。誤りが判明した場合は、記事を書き換えるのではなく、末尾に訂正を追記します。
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