滋賀県教育委員会は2026年10月1日、県立学校や教育委員会事務局で、保護者・地域住民等からの過剰な苦情や不当な要求に組織として対応するための指針を公表しました。同日は、改正労働施策総合推進法によるカスタマーハラスメント防止措置の義務化が施行された日でもあります。文部科学省も8月に学校と保護者・地域との関係づくりに関するガイドラインを公表しており、学校が個々の教職員だけに対応を任せず、相談や記録、組織的な判断を整える動きが進んでいます。
このニュースは「保護者の苦情を受け付けない」という意味ではありません。滋賀県の指針は、保護者や地域住民を教育上の重要なパートナーとしたうえで、一定の要件を満たす言動から教職員と教育環境を守ることを目的にしています。いじめ、学習上の困りごと、合理的配慮、子どもの安全について、家庭が学校へ相談し意見を伝えることは引き続き必要です。記事では、国の法改正と県の指針を分けて説明し、家庭が安心して相談を続けるために確認できる点を整理します。
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10月1日から変わったこと
厚生労働省によると、2025年6月に公布された労働施策総合推進法等の一部改正により、カスタマーハラスメント防止のために事業主が必要な措置を講じることが義務化され、施行日は2026年10月1日です。指針は2026年2月26日に公布されています。学校も、設置者・雇用主として関係する事業主の措置を検討する必要があるため、文部科学省は学校向けの関係づくりガイドラインを作成しました。法令の最新情報や告示は厚生労働省のハラスメント対策ページに掲載されています。
法律が求めるのは、保護者や利用者からのすべての不満をハラスメントとして扱うことではなく、顧客等の言動によって労働者の就業環境が害される問題を防ぐため、職場として必要な対応を整えることです。具体的な考え方は国の指針やQ&Aに沿って判断されます。学校での保護者対応には、子どもの教育をめぐる大切な相談や、学校側に説明責任を求める話し合いが含まれます。制度の導入を理由に、正当な問い合わせや苦情を一律に断ることが許されると読み替えてはいけません。
文部科学省は、学校と保護者・地域住民等は教育を支える重要な関係者だという前提を示し、ガイドラインや研修資料を公開しています。そこでは、過剰な苦情や不当な要求への対応だけでなく、いじめ問題で保護者と連携する方法、不登校の子どもや保護者への支援、面談や家庭訪問の留意点なども扱われています。学校との関係を対立か服従かの二択にしないこと、必要な説明と適切な境界線を両立することが、制度の実際の運用を考える出発点です。
学校や地域の候補を確認したうえで、通い方が合わない場合は別の学び方も検討できます。対象と利用条件を公式情報で確かめてください。
滋賀県教委が公表した指針
滋賀県教育委員会のページは2026年10月1日更新です。県教委は、県立学校向けと教育委員会事務局・学校以外の教育機関向けの指針を策定し、該当する過剰な苦情や不当な要求があった場合には、教職員と学校教育環境を守るため組織的に対応すると説明しています。教職員向けの相談窓口や研修、保護者・地域住民への周知も掲げています。本文とPDFは滋賀県教育委員会の指針ページから確認できます。
県のページでは、指針を設けた背景として、学校では対応が困難な要求や社会通念上許容される範囲を超える言動が、教職員の勤務環境を悪化させたり、教育活動に影響したりする可能性を挙げています。特に重要なのは、相談を受けた職員が一人で判断して抱え込まない仕組みです。相談窓口、研修、管理職を含む組織対応を組み合わせることで、必要に応じて教育委員会や専門家につなぐ体制を作ることができます。
県の指針は、県立学校と県教育委員会事務局などを対象にしたものです。市町立学校や私立学校など、すべての学校で同じ文書がそのまま適用されると解釈することはできません。県内でも設置者によって相談窓口や対応手順が異なる可能性があります。家庭が在籍校の運用を確認したいときは、「滋賀県の指針があるから全校共通」と決めつけず、その学校の設置者や教育委員会が公開している案内を確かめる必要があります。
何が「過剰な苦情・不当な要求」に当たるのか
滋賀県のページでは、指針でいう「学校における過剰な苦情・不当な要求等」は、次の三要素すべてを満たすものと説明されています。保護者や地域住民等からの言動であること、その言動が職務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えること、そして教職員の勤務環境などが害されることです。ひとつの要素だけで機械的に該当と決めるのではなく、背景や状況を踏まえて総合的に判断する考え方です。
| 判断の観点 | 確認すること | 誤解を避けるポイント |
|---|---|---|
| 誰からの言動か | 保護者や地域住民等によるものか | 相手の立場だけで結論を決めない |
| 内容・方法の相当性 | 要求の内容や伝え方が社会通念上の範囲を超えていないか | 強い口調だけで直ちに判断しない |
| 勤務環境への影響 | 教職員の就業環境や学校の教育活動に実際の支障が生じているか | 学校側の説明責任や子どもの訴えも確認する |
県のページには、学校の教育活動と関係のない要求、著しく範囲を超えた対応の要求、相当性を欠く賠償要求、暴行や脅迫、暴言、威圧、執拗な繰り返し、居座りなどが例として示されています。例は判断を助けるためのもので、似た言葉があればすべて自動的に該当するというリストではありません。具体的な事案では、要求の背景、学校の説明や対応、言動の頻度・態様、影響を受けた人の状況などを確認する必要があります。
保護者が、子どもの安全やいじめ、学習の困難、合理的配慮について具体的な説明や改善を求めることは、教育上必要なコミュニケーションです。回答が不十分なために何度か確認したり、別の担当者に相談したりすることも、それだけで不当な要求になるわけではありません。学校側も、事実確認の記録を残し、何を説明し、どの点が未解決なのかを整理する必要があります。指針を運用する際には、適切な意見表明と行き過ぎた言動を区別することが欠かせません。
保護者の意見や相談まで制限されるのか
答えは、制限されません。学校と保護者の間には、子どもの安全や学びについて情報を交換し、必要な支援を一緒に考える役割があります。文部科学省が作成したガイドラインも、保護者等を教育上の重要なパートナーとする考え方を前提にしています。子どもの状態や学校での出来事を具体的に伝えること、説明を求めること、対応に納得できない点を相談することを、カスタマーハラスメント対策の名のもとに一律に止める趣旨ではありません。
家庭が学校へ伝える内容を整理するには、評価や推測と、確認できた事実を分ける方法が役立ちます。「先生が嫌がらせをした」と結論から伝えるより、「いつ、どの場面で、どんな言葉や対応があったと本人が話したか」「その後、学校へ行くことや学習にどんな変化が見られたか」「家庭として何を確認したいか」を順にまとめます。本人の話を疑うためではなく、学校が事実確認や支援を進めやすくするためです。メモや連絡帳、面談記録など、家庭に残っている情報を整理しておくこともできます。
学校へ要望を伝えるときは、望む対応を具体的にし、いつ頃までにどのような返答が必要かを添えると、話し合いの焦点が明確になります。たとえば、座席や課題の調整を試してほしい、本人が相談できる担当者を決めてほしい、いじめの調査手順を説明してほしいなどです。学校の回答を待っても解決しない場合は、管理職、設置者である教育委員会、学校の相談窓口など、次の相談先を確認できます。相談の段階で、家族が過剰な対応を受けるのではと心配な場合も、記録を残し、同席者を依頼する方法があります。
学校側は、苦情を受けたときに相手を「カスハラ」とラベル付けして話を打ち切るのではなく、相談の中身と伝え方を分けて扱うことが求められます。伝え方に問題があっても、子どもの安全に関する情報や学習上の課題が含まれているなら、その部分への対応は必要です。逆に、要求の実現が困難な場合には、なぜ難しいのか、代わりに何ができるのかを具体的に説明することが、信頼を保つために重要です。対立が深まった場合に第三者の調整を使える仕組みを整えることも、学校・家庭双方の負担を軽くする可能性があります。
学校側に求められる組織対応
組織的な対応とは、相談を受けた教職員が一人でやり取りを続けず、校内の責任者や教育委員会の窓口と情報を共有し、対応方針を決めることです。記録を残す、複数人で面談する、連絡手段や時間帯を整理する、必要に応じて第三者や専門家につなぐなどが考えられます。これらは滋賀県の具体的な手順をすべて列挙したものではなく、国の指針が求める体制整備を学校運営へ落とし込む際の一般的な論点です。各学校の規程や案内を確認してください。
記録には、やり取りの日時、参加者、話し合った事実、合意した対応、次の確認時期などを残す方法があります。記録の目的は保護者を監視することではなく、同じ説明を繰り返す負担を減らし、子どもに必要な支援が担当者の交代後も続くようにすることです。個人情報を含む記録は、保管場所、閲覧できる職員、保存期間を適切に管理し、家庭へ説明できる範囲を明確にします。情報共有は必要な人に限定し、関係のない職員や生徒へ相談内容が広がらないよう配慮する必要があります。
組織対応は、保護者と学校の連絡をすべて遮断することとも違います。窓口を一つに決める場合でも、緊急時に誰へ連絡するか、子どもが学校で困ったときにどの職員へ相談できるかを明確にします。連絡の頻度や方法について合意を作ることはできますが、子どもの重大な変化や安全に関わる情報まで共有を遅らせることがあってはなりません。双方が話し合える連絡経路を保ち、緊急性に応じた連絡手順を区別しておくことが重要です。
教職員研修では、行き過ぎた言動への対応だけでなく、保護者からの訴えを受け止め、事実確認を行い、子どもの支援につなぐ方法も扱う必要があります。文部科学省のページには、いじめ問題で保護者との信頼関係を築く研修動画や、不登校の子どもと保護者への支援に関する教材が掲載されています。制度を「断る練習」だけに狭めず、対話の基盤と適切な境界線の両方を学ぶことが、教育活動を守ることにつながります。
子どもを中心にした話し合いを守る
学校と家庭のやり取りの中心にいるのは、子どもです。保護者と教職員の間で意見が対立しても、本人の学習、安全、安心、進路に必要な情報が届くようにすることが必要です。会議の場で大人同士の主張が強くなると、子どもが自分の困りごとを伝えにくくなったり、どちらかの側につくよう求められたりすることがあります。本人が話したい相手や方法を選べるようにし、必要に応じて支援者が同席するなど、子どもの負担を小さくする工夫が考えられます。
不登校や登校しぶりに関する相談では、出席を促すことだけを目標にせず、本人の健康や学習、つながりをどう支えるかを話し合います。家庭から相談が重なる背景には、学校との連絡が途切れている、支援方針が担当者ごとに異なる、本人の希望が確認されていないなど、具体的な行き詰まりがあるかもしれません。そのような時、学校側が「相談が多い」とだけ受け止めると、本来必要な支援が見えにくくなります。相談の頻度ではなく、何が未解決なのかを確認し、連絡方法や話し合いの場を調整することが重要です。
発達特性や障害に関わる配慮を相談するときも、家庭の要望を一度の面談で最終決定できない場合があります。学校は本人の様子、授業の目標、支援体制、専門家の意見などを踏まえ、家庭と合意形成を進めます。すぐに希望通りの方法が難しい場合には、代替案や試行できる内容、見直しの時期を提示することで、対話を止めずに前進できます。保護者は、配慮を求めること自体を申し訳なく思う必要はありません。必要な支援を具体的に相談し、試行した結果を一緒に振り返ることが大切です。
学校と家庭の信頼は、問題が起きないことだけで成り立つのではありません。意見の違いやミスが生じたときに、事実を確認し、説明し、必要な修正を行えることも信頼を支えます。過剰な言動への対策が、苦情を申し出た人を排除する手段になると、子どもが助けを求める機会も狭まるおそれがあります。逆に、教職員が深刻な威圧や執拗な連絡を受けて疲弊すれば、教育活動に影響する場合があります。双方の権利と安全を守る視点から、相談内容と対応方法を分けて検討することが重要です。
家庭が相談するときに整理できること
保護者が学校へ伝えたい内容を整理するときは、まず相談の目的を一文にします。「本人が安心して授業に参加できるようにしたい」「いじめの事実確認と安全確保の手順を知りたい」「登校できない期間の学習・連絡方法を決めたい」などです。次に、本人や家庭が確認した事実、分からない点、希望する対応、相談したい期限を分けて記録します。面談で話す内容が多い場合は、優先順位をつけ、まず安全や健康に関わる点から話すことができます。
- 起きた日時・場所・関係者など、確認できている事実。
- 本人が話した内容と、家庭が直接見聞きした内容の区別。
- 現在の生活や学習に表れている困りごとと、本人の希望。
- 学校に確認したい事項、希望する対応、返答の時期。
- 次の連絡方法と、相談内容を共有してよい人の範囲。
面談には、必要に応じて保護者の同席者や学校側の複数の担当者を依頼することができます。記録を取りたい場合は、目的を伝えて確認します。学校から難しいと言われた要望があるときは、理由と代替案を聞き、見直す時期を決める方法があります。話し合いが進まない場合は、校長・教頭、教育委員会、スクールカウンセラーなど、別の相談先を選べるか確認します。すべての話し合いが円滑に進むとは限りませんが、相談を続ける方法を事前に共有することは、行き違いの予防に役立ちます。
電話やメールの回数を減らすために学校と連絡方法を決める場合も、緊急時の連絡先、返信にかかる目安、記録を残す方法を確認しておくと安心です。学校の営業時間外に返事が来ないことを、直ちに無視と受け止めない一方、健康や安全に関わる急ぎの相談をどう伝えるかも必要です。連絡の約束は、保護者だけに課されるものではなく、学校側もいつ、誰が、どのように返答するかを明確にすることで機能します。
指針の対象範囲と注意点
第一に、滋賀県の指針は県立学校や県教育委員会事務局等に関する県の運用方針であり、全国の全学校を直接規定する文書ではありません。国の法律や厚生労働省の指針は全国的な枠組みですが、相談窓口、担当部署、記録の扱いなど具体的な運用は設置者によって異なります。市町立学校に通う家庭は市町教育委員会、私立学校の家庭は学校法人など、設置者の案内を確認してください。
第二に、県ページにある該当行為の例は、場面を検討するための参考です。強い言葉や繰り返しの連絡があったという一点だけで、事情を聞かずに結論を決めるものではありません。子どもの安全や人権に関する重要な相談が含まれていれば、その部分に対応する必要があります。第三に、指針を作成したことだけで、相談体制が現場で十分に機能していると証明されるわけではありません。窓口につながるか、教職員が研修を受けるか、困難な事案を組織として扱えるかは、今後も運用を確認する必要があります。
法令やガイドラインは、学校と家庭の問題を自動的に解決するものではありません。実際の相談では、事実の認識に違いがあったり、本人が家庭と学校の前で異なる希望を伝えたりすることもあります。そうした場合は、本人の意思を丁寧に確かめ、短い期間で一方の説明だけを採用しない方法が考えられます。深刻な安全上の懸念がある場合は、学校内の通常の話し合いだけで抱えず、設置者や適切な専門機関に早めに相談してください。
確認できる公式資料
国の制度については厚生労働省の職場のハラスメント防止ページに、改正法、カスタマーハラスメント防止指針、事業主向け資料が掲載されています。文部科学省の保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する取組ページでは、学校向けガイドライン、保護者・地域向け資料、教育委員会の取組、研修教材を確認できます。滋賀県の運用は滋賀県教育委員会の指針ページから確認してください。
読者が制度を確かめるときは、国の法令・指針、文科省の学校向け資料、各設置者の具体的な手順を分けて読むと、どこまでが全国共通の枠組みで、どこからが地域の運用なのかが見えやすくなります。ページ更新日や資料の版も確認しましょう。法的な判断が必要な個別事案について、この記事は法律相談の代わりになるものではありません。学校や教育委員会との連絡で困っている場合は、まず設置者の相談窓口を確認し、必要に応じて公的な専門相談先につないでください。
まとめ
滋賀県教育委員会は、10月1日からのカスタマーハラスメント対策義務化を踏まえ、県立学校などで過剰な苦情・不当な要求に組織対応する指針を公表しました。県の定義は、保護者等からの言動、社会通念上の範囲を超えること、教職員の勤務環境などが害されることの三要素をすべて確認するものです。保護者の意見や相談を一律に止める趣旨ではなく、子どもの教育や安全について必要な対話を続けながら、教職員が孤立しない体制を整えることが目的です。対象となる学校や運用は設置者によって異なるため、在籍校・教育委員会の案内と国の資料を併せて確認しましょう。
CTA:文科省の学校向けガイドラインを確認し、困りごとがある場合は在籍校の相談窓口や設置者に、事実・希望する対応・次の連絡方法を整理して相談してください。


