結論(早見):NIJINアカデミーに定期テストはありません。理由は、定期テストが現実の必要感から切り離された「虚学」であり、地頭の土台である知的好奇心を奪ってしまうからです。定期テストを廃止して小テストに変える取り組みにも、タツロー校長は否定的。必要なのは「みんな同じ基準のテスト」ではなく、その子に合わせた”その子らしいテスト”だと考えています。
「テストがなくて、学力が身につくのか心配」——学校のような定期テストが存在しないNIJINアカデミーに対して、こう感じる保護者もいます。しかしタツロー校長は、この疑問に明確な理由を持って答えます。
そこで本記事では、「なぜNIJINアカデミーに定期テストがないのか」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、実際の入試問題を例に、テストの本質と「地頭」の育て方を徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
実際に「PISA型学力」の問題を解いてみると

タツロー校長は、日本がOECDのPISA型学力調査で世界トップクラスの成績を残したという話題を取り上げ、実際に中学3年生レベルの問題をスタッフに解かせてみました。
あるピザ店では、ピザを1枚1,600円で販売しています。この店ではこれまでの「通常プラン」に加えて、新しく「月額会員プラン」を始めることになりました。
通常プラン:ピザ1枚につき1,600円を支払う。
月額会員プラン:毎月3,000円の会費を支払うと、その月はピザを1枚1,000円で買うことができる。
(問)月額会員プランのほうが通常プランより代金が安くなるのは、1か月にピザを何枚以上注文したときですか。求め方を説明し、答えを書きなさい。
式に表せば、買う枚数をXとして「1600X > 3000+1000X」を解くだけの、決して難しくない問題です(答えは6枚以上)。しかしタツロー校長は、この問題そのものに大きな疑問を投げかけます。
タツロー校長「この問題を解いても、頭は良くなりません。なぜなら、生徒はピザ屋をやっていないから。解きたいと思える必要性も切実さも、パッションも何もないんです。しかも問題自体、営業利益率もオペレーションコストの違いも考慮していない。現実を知らない人が作った、破綻した問題なんですよ。」
「虚学」と「実学」の決定的な違い
タツロー校長は、こうした机上の問題を「虚学」、現実の必要に迫られて行う学びを「実学」と呼んで区別します。





「民間で働く人たちは、実学をやります。売上をちゃんと計算しないと、明日お店が潰れてしまうから。一方で、税金でご飯を食べている人たちは、机の中で計算して満足する虚学を好みがちです。NIJINアカデミーの生徒たちは、実際にお店を作って売上を立て、原価計算もします。必要に迫られれば、人間はちゃんとやるんです。」
この考え方から、定期テストを廃止して小テストや単元テストに切り替える学校の取り組みについても、タツロー校長は否定的です。



「定期テストをなくして小テスト・単元テストにする学校も増えていますが、私はむしろ反対です。頻度を変えても、中身が虚学のままなら意味がありません。構造そのものを捉え直さないと、本質は変わらないんです。」
「地頭」を支える2つの土台と3つの思考力
ここでタツロー校長は、ビジネス書『地頭力を鍛える』(細谷功氏)で知られる「地頭」の構造を引用します。地頭は、2つの土台の上に、3つの思考力が乗った構造で成り立っているといいます。
地頭を支える構造
土台が崩れると、上に積み上がる思考力も育たない



「地頭の一番の土台にあるのは、知的好奇心です。宇宙はどうなっているんだろう、この生き物はどうやって生きているんだろう。子どもはみんな、生まれながらに知的好奇心を持っています。これがあるからひらめきが生まれ、行動につながっていくんです。」
その2階部分にあるのが「論理的思考」。そして、その土台の上に「仮説思考力(決めてやってみる力)」「フレームワーク思考力(全体を見る力)」「抽象化思考力(シンプルにまとめる力)」という3つの思考力が積み重なっていきます。
定期テストが、地頭の「土台」を奪ってしまう


タツロー校長が最も問題視しているのが、定期テストによってこの土台である「知的好奇心」そのものが失われてしまうことです。



「ピザ屋をやりたいわけでも、サブスクにしたいわけでもないのに、その問題を公式に当てはめて機械的に解かされる。それを『頭がいい』と評価されてしまう。これを繰り返していると、必要感がなくなり、何を見ても興味が湧かなくなってしまうんです。ひらめきや直観が働かなくなって、論理的思考力だけが目立つ、いわゆる『頭でっかち』になっていきます。」
本来なら誰もが持っている知的好奇心や直観力が、定期テストという仕組みの中で削られていく——これが、タツロー校長が定期テストに反対する最大の理由です。
「同世代×単一基準」から「多世代×複線基準」へ


定期テストの構造を、タツロー校長は次のように整理します。学校の定期テストは「同世代」の子どもたちが「単一基準」で評価される仕組みです。一方でNIJINアカデミーは、異なる年代の子どもたちが、それぞれ異なる基準で評価される「多世代×複線基準」を大切にしています。



「同じ年代の仲間と、同じ内容の問題を解かされて、同じ基準で評価される。社会に出たら、そんなことはあり得ませんよね。これは、ロボットを育てるための教育です。しかも論理的思考はAIが最も得意とする領域。これからの時代には合わないと思っています。」
必要なのは「その子らしいテスト」


タツロー校長は、テストそのものを否定しているわけではありません。人は誰しも、高い壁に挑戦したいという思いを持っているからです。ただし、それは全員一律の定期テストではなく、「その子らしいテスト」であるべきだと考えています。



「NIJINアカデミーでは、お店を出してみる、仲間のために動いてみる。引きこもりだった子にとっては、チャットを一つ打つことすら、ものすごく高いハードルのテストなんです。心理学者ヴィゴツキーの『発達の最近接領域』という考え方の通り、その子にとって『ちょっと頑張ればできること』は一人ひとり違います。」
引きこもりの子、ADHDの特性を持つ子、シリコンバレーでのピッチに挑戦する子——それぞれの子どもに合わせて目標を設定し、乗り越えていくプロセスこそが、その子だけのストーリーとなり、将来誰かを支える付加価値に変わっていくとタツロー校長は語ります。
よくある質問(FAQ)
Q1. NIJINアカデミーには本当にテストがないのですか? A. 学校のような一律の定期テストはありません。ただし、お店を出す、プレゼンに挑戦するといった、その子に合わせた「その子らしいテスト」を大切にしています。
Q2. 定期テストをなくすと、学力は身につかないのでは? A. タツロー校長は、定期テストのような「虚学」よりも、実際にお店を運営するなどの「実学」の方が、原価計算や読解力といった実践的な学力が身につくと考えています。
Q3. 「地頭」とはどういう意味ですか? A. 知的好奇心と論理的思考を土台に、仮説思考力・フレームワーク思考力・抽象化思考力という3つの思考力が積み重なった、考える力の全体構造を指します。
Q4. 小テストや単元テストへの変更についてはどう考えていますか? A. タツロー校長は否定的です。頻度や形式を変えても、内容が現実離れした「虚学」のままであれば、本質的な問題は解決しないと考えています。
まとめ:知的好奇心を守ることが、本当の学力につながる
定期テストは、地頭の土台である知的好奇心を奪い、論理的思考だけが目立つ「頭でっかち」を生み出してしまう可能性があります。AIが論理的思考を得意とする時代だからこそ、これからの学力にはむしろ、知的好奇心やひらめきといった、人間にしかない力が求められます。



「知的好奇心を持って、どうしたらあの人を助けられるだろうと考える善なる心と、こうすればいいんじゃないかというひらめき。それだけでは足りないから、人間性やコミュニケーション能力も磨いていく。人間は、人の間で生きていく存在ですから。」
「テストがないと不安」と感じたときは、それが本当に子どもの知的好奇心や実学につながっているかを、一度見つめ直してみてください。その子に合った”その子らしいテスト”を見つけることが、これからの時代に必要な学力への近道です。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
PISA型学力問題を実際に解く様子など、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!


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