- 農業・農村が不登校の子どもの居場所として注目されている背景(日本農業新聞の論説より)
- 畑だと過ごしやすい子がいる、4つの構造的な理由
- 農業体験ができるフリースクールの3つの型と、それぞれの探し方
- 秋田にかほ校・静岡掛川校の活動内容・開校日・費用(2026年9月時点)
この記事は、全国から900名を超える子どもたちが通うオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の知見も踏まえて構成しています。全国のリアル教室のうち2校が、農業・農園を軸にした特化型の教室です。
いま、農の現場が「居場所」として注目されています
日本農業新聞は2025年11月16日の論説で、「小中学生の不登校増加 農業で居場所づくりを」と題し、農業・農村が不登校の課題解決に貢献できる可能性を提起しました。文部科学省の調査で2024年度の小中学生の不登校児童生徒数が35万3,970人と過去最多になった一方、学校に代わる居場所が足りていない、という問題意識です。
同論説では、宮城県石巻市の社会的企業「イシノマキ・ファーム」が不登校の生徒を受け入れ、ホップやサツマイモの農作業を通じた体験学習を行っている例が紹介されています。「農作業を通じて、いろいろな人と関わり、さまざまな体験をする中で達成感や感動を味わってほしい」——記事はそう結んでいます。
参考:日本農業新聞「[論説]小中学生の不登校増加 農業で居場所づくりを」(2025年11月16日)
なぜ畑だと過ごしやすい子がいるのか
もちろん、すべての子に農業が合うわけではありません。ただ、畑という場には、教室とは構造的に違う点がいくつかあります。この違いが、学校がしんどくなった子にとって負荷を下げる方向に働くことがあります。
1. 正解が一つに決まっていない
テストのように、正しい答えが決まっていて、それに近いか遠いかで評価される場面がほとんどありません。水をやる、草を抜く、収穫する。やったことがそのまま作業として成立します。「間違えたらどうしよう」が働きにくい環境です。
2. 結果が出るまで時間がかかる
種をまいて、その日のうちに実がなることはありません。数週間、数か月かけて少しずつ変わっていきます。「今日中にここまで」と急かされる構造がそもそも存在しないため、自分のペースが崩されにくい。学校の時間割で消耗してきた子にとっては、この点が大きいことがあります。
3. 人と向かい合わずに、並んで作業できる
教室は、正面を向いて座り、目を合わせ、発言することが前提の空間です。畑では、同じ方向を向いて手を動かしながら、ぽつぽつと言葉が出てきます。人と関わることの負荷が高い時期でも、「並んで作業する」形なら関われる子がいます。
4. やったことが目に見える形で残る
草を抜けば畝がきれいになる。収穫すればカゴにたまる。誰かに認めてもらわなくても、自分の目で「やった分だけ変わった」と確認できます。自信が削られてきた時期に、この積み重ねが効くことがあります。
ただし、農業体験そのものが何かを「治す」わけではありません。合う子と合わない子がいますし、虫や土が苦手な子にとっては逆に負担になります。見学に行って、お子さんが実際にどんな表情をしていたか——判断材料としてはそれが一番確かです。日焼けや虫刺され、着替えの手間といった現実的な面も、あわせて確認しておくと安心です。
農業体験ができるフリースクールの3つの型
探し始めると、運営の形がいくつかあることに気づきます。それぞれ通い方も費用感も違います。
| 型 | 特徴 | 通い方 | 探し方 |
|---|---|---|---|
| ① 農園・農家が運営 | 本物の農作業に関われる。動物がいることも | その農園まで通う必要がある | 「地域名+農園+フリースクール」で検索 |
| ② 自治体・NPOの農体験プログラム | 単発・短期のことが多い。安価または無料 | イベント参加型 | 市区町村の教育委員会・社会福祉協議会に問い合わせ |
| ③ フリースクールが農を取り入れる | 普段の学びと農体験が両立する | 週1回など、頻度を選べることが多い | スクールの活動内容を個別に確認 |
①は体験の濃さで優れますが、農園は郊外にあることが多く、送迎の負担が現実的な壁になります。②は続けにくい。③は普段の学びを止めずに農に触れられる形で、次に紹介する2校がこれにあたります。
全国から通える、NIJINアカデミーの農業特化校2校
NIJINアカデミーは全国にリアル教室を展開していますが、そのうち2校が農業・農園を軸にした特化型の教室です。どちらも「週1日はリアル教室、残りの平日はオンラインのメタバース校舎」というハイブリッド通学が基本の形なので、毎日通う必要はありません。
秋田にかほ校(秋田県にかほ市)
鳥海山と日本海に挟まれたにかほ市で、農家民宿を活用して運営されている教室です。ここが特徴的なのは、農業を「体験」で終わらせない設計になっている点。畑に入って土に触れるところから始まり、興味が出てきたら自分で栽培に挑戦し、さらに地域のイベントを企画から実施までやってみるところまでつながっています。
農家民宿という場の性質上、農業を軸に地域内外からさまざまな人が訪れます。教室長のゆってぃ先生は「出会う人の数だけ、自分の興味・関心が広がる」と話しています。地域のさまざまなキャリアの大人と交流できるのは、この立地ならではです。
- 所在地〒018-0133 秋田県にかほ市象潟町関建石45-333
- アクセス象潟ICより車で4分/金浦ICより車で10分(駐車場あり)
- 開校日木曜日 10:00〜15:00(お盆・年末年始は休み)
- 定員・対象6名/小学1年生〜中学3年生
- できること野菜の栽培、地域の多様なキャリアの人との交流、スポーツ・遊び、地域イベントの企画・実施
- 費用ハイブリッド通学 月額45,243円(税込・施設利用料込/入学金33,000円)
- 通学圏にかほ市・由利本荘市・秋田市・山形県酒田市
出典:NIJINアカデミー秋田にかほ校 公式ページ(2026年9月確認)
静岡掛川校(静岡県掛川市)
体験学習農園「キウイフルーツカントリーJapan」を舞台にした教室です。キウイの収穫や畑の手入れに加えて、羊のお世話や毛刈りといった動物とのふれあいがあるのがこの教室ならでは。収穫した食材を使った調理まで行うので、「育てる・食べる・考える」が一続きになっています。
DAYキャンプや火起こしなどのアウトドア・防災体験も活動に入っています。教室長の松永怜士先生とキウイカントリー代表の平野耕志さんの2人体制で、農園の運営者が直接関わっているのが強みです。
- 所在地静岡県掛川市上内田2040(体験学習農園キウイフルーツカントリーJapan内)
- アクセスJR東海道線「掛川駅」より車で10分(送迎可・無料駐車場あり)
- 開校日火曜日 10:00〜15:00(収穫時期などにより相談可)
- 定員・対象5名程度/小学生〜中学生
- できることキウイの収穫・畑の手入れ、羊のお世話・毛刈り、食育とクッキング、プロジェクト学習、DAYキャンプ・火起こし
- 費用ハイブリッド通学 月額43,943円(税込・施設利用料込/入学金33,000円)
- 通学圏掛川市・浜松市・磐田市・袋井市
出典:NIJINアカデミー静岡掛川校 公式ページ(2026年9月確認)
「育てて終わり」にしない——その先に、売る・届けるがある
農業体験のプログラムは各地にありますが、多くは収穫して食べるところで完結します。にかほ校が意識しているのは、その先です。
自分で育てたもの、自分の得意なことで作ったものを、地域のイベントで実際に販売してみる。企画を立て、準備をし、当日お客さんとやりとりする。これは子ども一人では、まず実現できません。だから大人が横について、一緒にやります。一人では届かないところに、誰かと一緒なら届く。その経験を積んでいくうちに、次は自分で決められるようになっていく——という設計です。
にかほ校には農業のノウハウと地域のつてがあるため、子どもが「やってみたい」と言ったときに、実際に形にするところまで支えられます。「体験しました」で終わらず、社会と接点を持つところまで行けるかどうかは、見学時にぜひ確認してみてください。
遠方でも「週1日だけ」なら通える
農園は郊外にあることが多く、毎日の送迎は現実的ではありません。だからこそ、この2校は週1日通学を基本にしています。残りの平日はオンラインのメタバース校舎で過ごすので、月4回の送迎で成立します。
メタバース校舎は平日毎日開いていて、月100コマの授業から自由に選べます。アバターで参加するため顔も声も出す必要がありません。「まだ外に出るのがしんどい」時期はオンライン中心で始めて、元気が戻ってきたら畑に足を運ぶ——この順番で組み立てられるのが、ハイブリッド型の利点です。
2校とも県外からの通学を想定しています。にかほ校は山形県酒田市から、掛川校は浜松市・磐田市・袋井市から通える距離にあります。
費用と、在籍校の出席扱い
費用は2校とも月額4万円台です(メタバース校舎の利用料を含む合計)。メタバース教育費を年払いにすると割安になります。自治体によってはフリースクール利用料の助成制度があり、東京都では月額最大2万円が助成されます。お住まいの自治体の教育委員会に確認してみてください。
在籍校の出席扱いについては、校長判断により認められるケースがあります(最終判断は学校によります)。NIJINアカデミーでは学習内容や活動の様子、担任の所見を記載したレポートを毎週発行して在籍校と共有しており、出席扱いを希望した生徒の9割以上が在籍校で出席として認められています。
「明るくない子どもなんていない。問題児なんてたったの一人もいない」——これは、公立小学校の教員だった星野達郎(タツロー)校長がNIJINアカデミーを設立した原点にある言葉です。教室では手が挙がらなかった子が、畑では誰よりも先に動き出すことがあります。その子が変わったのではなく、力を出せる場所がそこにあった、ということなのだと思います。
よくある質問
まとめ
畑という場には、正解が一つに決まっていない、急かされない、並んで作業できる、やったことが目に見える——学校とは違う構造があります。それが負荷を下げる方向に働く子がいる、というのが農業を軸にしたフリースクールの発想です。日本農業新聞が論説で提起したように、農の現場を居場所にする動きは各地で少しずつ広がっています。
NIJINアカデミーでは、秋田にかほ校と静岡掛川校の2校が農業・農園を軸にしています。どちらも週1日通学が基本で、残りの平日はオンライン。遠方でも成立する形です。まずは見学に行って、お子さんが畑でどんな顔をするかを見てみてください。それが一番確かな判断材料になります。


