「学校へ行かず、一日中マイクラをしている」
「勉強には手をつけないのに、ゲームなら何時間でも続けられる」
不登校の子どもを見守る保護者から、このような悩みを聞くことがあります。生活リズムや学習の遅れを考えると、「このままで大丈夫なのだろうか」と不安になるのは自然なことです。
けれど、マインクラフト(以下、マイクラ)に向かっている子どもは、本当に何も学んでいないのでしょうか。
建物の完成を想像する。必要な素材を選ぶ。広さや高さを考える。失敗した部分を壊して作り直す。作品を仲間に見せるために、自分の工夫を言葉にする。マイクラの中には、教科の枠だけでは捉えきれない学びが数多く含まれています。
この記事では、不登校の子どもがマイクラで使っている力と、「好き」を学びや人とのつながりへ広げる方法を紹介します。
不登校の子に、すぐ「勉強させる」ことが難しい理由
学校へ行けなくなった子どもは、周囲が思っている以上に心と体のエネルギーを使っていることがあります。朝になると体調が悪くなる。人の目が気になる。教室の音やにおいで疲れてしまう。友達や先生との出来事を思い出し、緊張が続く。理由は一人ひとり違います。
そのような時期に、「学校へ行かないなら家で勉強しよう」と求められても、机へ向かう力が残っていないことがあります。勉強を始められないのは、能力や意欲がないからとは限りません。安心して力を出せる状態へ、まだ戻っていないのかもしれません。
一方、好きなゲームには取り組める子がいます。マイクラをしている時間だけは、嫌なことを忘れられる。自分で選べる。失敗してもやり直せる。誰かに評価される前に、自分のペースで試せる。その安心感が、少しずつエネルギーを回復させることがあります。
まず必要なのは、マイクラを勉強に置き換えることではなく、子どもが何に夢中になっているのかを知ることです。
マイクラの建築で使っている5つの力
マイクラは、用意された正解を選ぶだけのゲームではありません。何もない空間に、自分で目的を決め、ブロックを組み合わせて世界を作ります。制作の過程では、次のような力を使っています。
1.完成した姿を思い描く想像力
城、街、学校、ホテル、映画で見た空間など、作るものは子どもによって違います。完成形を頭の中に思い描き、色や形、素材を選びます。「こんな世界を作りたい」という思いを形にすることは、創造的な表現です。
2.広さ・高さ・奥行きを捉える空間認知
外から見て美しいだけでなく、建物の中を歩けるようにするには、部屋の広さ、天井の高さ、階段の位置、通路の幅などを考えます。平面の見本を立体に置き換えるときにも、位置関係や奥行きを捉える力を使います。
3.使いやすさまで考える設計力
入口をどこにするか。暗くならないように光をどう入れるか。目的の場所まで、どのような道を作るか。見た目と使いやすさの両方を考えることは、建築やデザインにも通じる視点です。
4.失敗からやり直す試行錯誤
作ってみると、大きさが合わないことがあります。使いたい素材が足りないこともあります。そのたびに、壊す、作り直す、別の方法を調べるという判断をします。
マイクラでは、失敗してもやり直せます。「できなかった」で終わらず、「次はどうするか」を考えられることが、試行錯誤を続ける力につながります。
5.長い時間をかけて完成させる集中力と粘り強さ
大きな建築は、一日では完成しません。少しずつ作り続け、途中で修正しながら完成を目指します。教科書の課題には集中できなくても、自分で選んだテーマなら、長い期間取り組める子がいます。

マイクラをすれば、学習能力が自動的に伸びるわけではない
マイクラには多くの学びにつながる要素があります。ただし、遊んでいるだけで想像力や空間認知が必ず伸びる、と言い切ることはできません。
2024年に発表された小学生885人を対象とした研究では、マイクラを使った授業が空間的思考と創造性へ与える効果が検討されました。全体では一律の向上は確認されませんでしたが、学年による違いが見られ、子どもの参加意欲や継続的な実践の重要性が指摘されています。
大切なのは、目的を持って作ること、工夫を言葉にすること、ほかの人の作品から学ぶこと、次の制作に生かすことです。マイクラを学びへつなげるのは、ゲームそのものだけではなく、活動を取り巻く環境です。
Minecraft Education公式サイトでも、マイクラを活用した学びは、協働、創造的な問題解決、コミュニケーション、システム思考などを使う機会になると紹介されています。
作品を見せることで、人とのつながりが始まる

一人で建築を続けている子どもの中には、「本当は誰かに見てほしい」と思っている子もいます。しかし、自分から人へ話しかけることや、大勢の前で発表することには抵抗があるかもしれません。
そのような子も、オンライン掲示板へ作品画像を投稿するところから始められます。「すごい」「この部分が好き」「どうやって作ったの?」と反応が届くと、自分の好きなことが誰かに受け止められたと感じられます。
さらに、質問へ答えるために、作り方や工夫を説明します。自分では当たり前だと思っていた技術が、仲間から見れば「教えてほしいこと」になる場合もあります。学校では自信を失っていた子が、マイクラの場では人に教える側になれることもあります。
作品を作る、見せる、感想を受け取る、説明する、次の作品へ生かす。この循環が、マイクラでの遊びを、発信と対話を含む学びへ変えていきます。
動画制作やプログラミングへ広がることもある

マイクラの世界は、動画の舞台にもなります。物語を考え、建物を作り、キャラクターを動かし、撮影して編集する。一本の動画を作るまでには、企画、台本、演技、撮影、音声、編集、サムネイルなど、さまざまな役割があります。
話すことが好きな子はナレーションを担当できます。建築が得意な子は舞台を作れます。人前に出ることが苦手でも、編集や仕組みづくりで力を発揮できます。
また、装置づくりから回路やコマンドへ興味が広がり、プログラミングを学び始める子もいます。「家を作りたい」から始まった興味が、映像、デザイン、建築、エンジニアリングなど、将来の仕事を知る入口になる可能性があります。
子どもが外部サービスで作品を発信するときは、年齢に応じた利用条件を確認し、個人情報やコメント対応について保護者とルールを決めることが必要です。
不登校の子が安心して参加できる場に必要なこと

オンラインの活動で重要なのは、マイクラが使えることだけではありません。誰が活動を見守るのか、困ったときに相談できるのか、顔出しや声出しを強制されないかを確認しましょう。
NIJINアカデミーのサークルには、担当の先生がいます。元教員をはじめ、子どもと関わってきた経験のある大人が活動を見守ります。
参加方法も一つではありません。最初は見学だけでもよい。声を出さず、チャットだけでもよい。作品を投稿するところから始めてもよい。その日の状態に合わせて選べることで、子どもは無理なく人との距離を縮められます。
安心とは、トラブルが絶対に起きないことだけではありません。小さな行き違いが起きたとき、大人と一緒に状況を整理し、相手への伝え方を考えられることも大切です。守られながら経験することが、次のコミュニケーションにつながります。
NIJINアカデミーなら、「好き」を学びと居場所につなげられる

NIJINアカデミーは、不登校の小学生・中学生などが、自宅からオンラインで学べるオルタナティブスクールです。授業だけでなく、少人数のクラス、サークル活動、探究プロジェクトなどがあります。
マイクラサークルでは、「マイクラが好き」という気持ちを持つ子どもたちが、学年や地域を越えてつながります。最初から上手に話す必要はありません。同じゲームを好きな仲間の作品を見ることから、関係を始められます。
実際にNIJINアカデミーでは、マイクラのコンテストや企業と連携した街づくりなど、「好き」を社会へつなげる活動も行われてきました。自分だけの遊びだったマイクラが、仲間との共同制作やプレゼンテーションへ広がっています。
子どもたちのサークルについては、NIJINアカデミー「サークル活動」で紹介されています。マイクラから始まった子どもの実例は、マイクラコンテスト優勝者インタビューでも読むことができます。
「ゲームをやめさせる」前に、子どもが何をしているか見てみよう
画面に向かう時間が長いと、保護者が心配になるのは当然です。睡眠、食事、運動とのバランスを整えることも必要です。
そのうえで、マイクラを一括りに「ゲームばかり」と捉える前に、子どもが何を作り、何を考えているのか見てみてください。
「どこを一番工夫したの?」
「次は何を作りたい?」
「これを誰かに見せるとしたら、何を説明したい?」
評価や指導ではなく、興味を持って聞くことが、子どもの考えを言葉にするきっかけになります。
学校へ行けていない時期にも、学びは止まっているとは限りません。好きなことへ集中し、何度も試し、作品を完成させている。その力を安心できる仲間や先生とつなぐことで、マイクラは次の学びへ進む入口になります。
参考・関連ページ
- Minecraft Education:What Is Minecraft Education?
- Slattery, E. J. et al. (2024). Effectiveness of a Minecraft Education Intervention for Improving Spatial Thinking in Primary School Children.

動画で見る|【マイクラ】「理想の学校づくりコンテスト」で優勝した小学生の建築がすごかった!
この記事の内容を確かめるための一次資料
学校以外の学びの場は、この10年で制度が大きく変わりました。いまは「学校復帰だけがゴールではない」というのが国の公式な立場です。選択肢の全体像と、それぞれが制度上どう扱われるかを押さえておくと、進路の話が現実的になります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 文部科学省「学びの多様化学校の設置者一覧」 | 全国84校。旧・不登校特例校の全リスト |
| 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」 | 高校に通わずに大学受験資格を得る制度 |
| 文部科学省「就学援助」 | 学用品費・給食費などの経済的支援 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 欠席が多いと高校に行けませんか?
A. 行けます。出席日数を選抜に使わない高校は増えており、通信制高校では欠席日数を問わないところがほとんどです。中学校卒業程度認定試験や高等学校卒業程度認定試験という道もあります。
Q. フリースクールに通うと出席扱いになりますか?
A. 要件を満たせば校長の判断で出席扱いにできます。ただし文部科学省の通知では教育支援センター等の公的機関が第一に想定されており、民間施設は「公的機関に通えない場合」に考慮される位置づけです。詳しくは教育支援センターとはをご覧ください。
Q. 費用が心配です
A. 教育支援センターは原則無料です。民間のフリースクールについては、利用料の補助制度を設けている自治体が増えています。就学援助もあわせて教育委員会に確認してください。
Q. 学校に戻ることを目標にしなくていいのですか?
A. はい。文部科学省の通知が「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、社会的に自立することを目指す」と明記しています。学校復帰は選択肢のひとつであって、唯一のゴールではありません。
Q. 近くに通える場所がありません
A. ①校内の別室、②教育支援センターの訪問型支援、③自宅でのICT学習を出席扱いにする道(別記2)、④オンライン——の順で確認するのが現実的です。地域に選択肢がないことは、家庭の責任ではありません。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

