「学校に行けないのは、親のしつけが悪いから」。そんな言葉を見聞きして、胸が苦しくなった保護者もいるのではないでしょうか。
2025年12月、富士宮市長の不登校をめぐる発言が問題になりました。発言は同日に撤回され、翌日には謝罪が報じられています。それでも残るのは、なぜ不登校が「親の責任」という一言で片づけられてしまうのかという問いです。
NIJINアカデミー校長・星野達郎が重視するのは、発言への批判で終わらず、その背後にある教育観を問い直すこと。そして、親子を責めるより、安心して学べる環境を増やすことです。
- 富士宮市長の発言と、撤回・謝罪までの経緯
- 「親が悪い」という見方が見落とす、支援の視点
- 家族・親戚への向き合い方と、NIJINアカデミーの実例
富士宮市長の不登校発言とは?撤回・謝罪までの経緯
2025年12月2日、富士宮市議会の一般質問で、当時の須藤秀忠市長は不登校について「親が悪い」と述べ、親がしつけをしないことと結びつける答弁をしました。静岡放送の報道で、発言とその後の取り消しが確認できます。[1]
- 市議会で発言、その日のうちに撤回親だけの責任と受け取られかねない発言があったとして、取り消しを申し出ました。
- 取材に対して謝罪市長は「言い過ぎだった」と説明しました。
- 教育委員会で支援方針を確認親子を支える従来の姿勢を変えず、市長部局とも連携すると説明しています。
12月19日の市教育委員会定例会では、子どもと保護者を共に支援していく考えが改めて示されました。市長の発言を、市全体が不登校の親子を支援しない方針だと受け取るのは正確ではありません。[2]
その経緯を押さえたうえで考えたいのは、「親が悪い」という言葉が、困っている家庭にどう届くかです。「自分が責められるのでは」と感じれば、助けを求めにくくなるかもしれません。批判の焦点は、個人の年齢や人格ではなく、親子の相談と支援を遠ざける見方になっていないかという点にあります。
「親のしつけ」で説明すると、何を見落とすのか
不登校になった理由を知ることは、支援を考えるうえで大切です。ただ、「誰が悪かったか」という結論を先に置くと、本人が何に困り、何を必要としているのかが見えにくくなります。
文部科学省は、登校という結果だけを目標にせず、本人が主体的に進路を考え、社会的に自立していくことを支援の目標としています。また、子どもの状況に応じて家庭・学校・関係機関が連携し、保護者が相談しやすい体制を整えるよう求めています。[3]
人との関係、学習、体調、
教室での過ごし方など
話を聞く、負担を減らす、
関わり方や環境を調整する
家庭・学校・相談員、
地域や学校外の学びの場
支援を検討するための整理図。必要な対応や組み合わせは、一人ひとり異なります。
たとえば、「朝、学校の話になるとつらそう」「一対一なら安心して話せる」といった具体的な様子を共有すると、相談が次の行動につながりやすくなります。学校では担任のほか、養護教諭やスクールカウンセラーなどに相談する方法もあります。
家庭でできる工夫を考えることと、親を責めることは別です。保護者も支援を受ける側の一人として、一緒に考えてもらってよいのです。
発言の背景をどう考える?「同じ場所で頑張る」という教育観
星野は、決まった場所で周囲に合わせて頑張ることを重視する教育観と、本人に合う場所や方法を選ぶ教育観との隔たりに注目します。
学校へ通い続けた経験や、厳しい環境を乗り越えた経験が、自分を支えている人もいるでしょう。しかし、その経験だけを基準にすると、同じやり方では力を出しにくい子の姿を見落としてしまいます。
できるか?」
登校や集団への適応だけで
子どもの状態を見てしまう
学べるか?」
人数・時間・場所・関わり方を
具体的に見直せる
星野の問題提起をもとに整理した教育上の視点です。市長本人の内心や発言動機を確定するものではありません。
ここで「高齢者だから理解できない」と線を引いてしまえば、別の決めつけになります。星野が求めるのは、世代を責め合うことより、大人の側も今の子どもたちから学び直すことです。
ゲームの話を、子どもに教わってみる
星野が挙げるのは、ゲームを楽しむだけでなく、モデリングでキャラクターをつくったり、物語を考えたり、プログラミングでゲームそのものをつくったりする子どもたちの姿です。そうした話を聞き、「今はそういうことができるのか」「こんなことをやりたいのか」と、大人の自分が教わることも多いといいます。
タツロー校長子どもたちから学ぶ機会を、もっと設けた方がいい。
大人が知らない活動を、すぐに「遊んでいるだけ」と評価しない。「どこを自分でつくったの?」「難しかったところは?」と、教えてもらう立場で聞いてみる。すると、出席日数や成績だけでは分からない、その子の興味や工夫が見えてくるかもしれません。
大人が学ぶ姿勢を持つことは、子どもを一人の対話相手として尊重することでもあります。すべての遊びを学習成果に置き換えようとせず、まずは本人が面白いと感じる世界に関心を向けてみてください。
家族や親戚から「親が悪い」と言われたときは
社会の発言だけでなく、帰省先や親戚の集まりで「甘やかしている」「もっと厳しく」と言われ、つらくなることもあります。そこで星野が伝えるのは、その場で相手を説得しきる必要はないということです。
タツロー校長跳ね返さなくていい。
強く言い返すことで家族関係に亀裂が入る場合もあります。理解してもらうことをその日の宿題にせず、まずは親子が消耗しないことを優先してかまいません。
返答例は星野の発言趣旨を踏まえた編集上の提案です。本人の発言を引用したものではありません。
会話を切り上げる、会う時間を短くする、理解してくれる家族に間に入ってもらう方法もあります。子どもの前で責める言葉が続くなら、その場から離れることも考えてください。長い目で理解を待つことは、傷つく場に居続けることではありません。
学園祭で孫の姿を見て、理解が動いた家族も
星野は、学校以外の学びを当初は認められなかった祖父母が、後に孫から学園祭へ招かれ、その姿を見て涙を流した経験を語っています。時間を経て、親子が選んだ道を受け止めるようになったといいます。
この経験から星野が伝えるのは、その日の言い争いで結論を出さなくてもよい、ということです。言葉で説明するだけでは伝わりにくかった相手に、子どもが過ごす場所や活動に触れる機会が、理解のきっかけになる場合もあります。
もちろん、家族の理解が進む速さはそれぞれです。子どもの作品や活動を伝えたいときも、まずは本人の気持ちを確かめます。大人を納得させるために、子どもが成果を見せ続ける必要はありません。
NIJINアカデミーの実例|家族が「支える側」になる関わり
親子を支えるとは、どんな関わりでしょうか。NIJINの公開インタビューから、保護者のつながりと、家族が選択肢を渡した二つの例を紹介します。
子どもが参加できない時期も、親がつながれる場所があった
「な」さんは、取材時には自宅で過ごすことが多く、メタバース校舎を利用する機会も限られていました。それでもお母さんは、保護者同士の交流や面談を支えに、NIJINとのつながりを続けていたと語っています。

担任の先生も、お母さんとの定期的なオンラインでのやり取りを通して、本人の様子や小さな頑張りを共有していました。
すぐに授業へ参加できるかだけで支援の意味を測らず、親が一人で抱え込まない関係をつくる。
祖父母が見つけた情報を、本人が時間をかけて選んだ

黒音さんがNIJINを知ったきっかけは、祖父母がテレビで見つけた情報でした。父親を通じて知り、一度は見学をキャンセルしながらも、数か月の話し合いを経て入学を決めています。
その後は、仲間との会話や企画、好きなイラストの学園祭出展などに取り組みました。
家族ができるのは、責任を問うことだけではありません。選択肢を見つけて渡し、本人が考える時間を持てるよう支えることもできます。
いずれも取材時の個別の経験です。お子さんの状況や希望によって、合う学び方や必要な支援は異なります。
親子を支える言葉が、地域や社会の未来につながる
公的な立場の言葉は、相談への信頼にも関わる
星野がこの発言を重く受け止めるのは、市長という立場から発せられた言葉だからです。子育て中の家庭が「困ったとき、この地域で助けてもらえる」と思えるか。その信頼に関わる問題だと捉えています。
たとえば、学校とのやり取りに悩みながら相談窓口を探している親が、「相談しても育て方を責められるのでは」と感じたら、話し始めること自体が負担になるかもしれません。支援制度があることと、安心して相談できると感じられることの両方が大切です。
市長が発言を撤回した経緯や、市教育委員会が示した支援継続の姿勢も、だからこそ併せて伝える必要があります。批判で相談先まで遠ざけるのではなく、親子が使える支えに結びつけたいところです。
子育てを、家庭だけの責任に閉じ込めない
星野は、子どもだけでなく、子育てをしている人も大切な存在だと繰り返し語ります。「親が何とかするべき」で終わらせず、学校以外の学び方も地域や行政が応援してほしい、というのがその訴えです。
学校で過ごしやすくする工夫、学校外の学びへの接続、保護者が話せる場。子どもに合う方法を探す負担を、家庭だけに集中させないことが求められます。地域の大人にも、本人の話を聞く、活動を知る、必要な情報を渡すといった関わりができます。
一つの発言から人口減少や地域経済の変化までを直接説明することはできません。それでも、困ったときに責められる社会なのか、相談して一緒に考えてもらえる社会なのかを問い直す意味はあります。親子が「ここで暮らし、学び続けたい」と思える地域を、どんな言葉と行動でつくっていくか。それが、星野の問題提起を私たちの暮らしにつなぐ問いではないでしょうか。
Q&A|富士宮市長の発言と、不登校の親への支援
- Q1富士宮市長の不登校発言は撤回されましたか?
- A. はい。2025年12月2日の発言は同日に取り消され、翌3日には「言い過ぎだった」と謝罪したことが報じられています。[1]
- Q2不登校は親のしつけが原因なのでしょうか?
- A. 不登校を一律に親のしつけのせいと決めつけることはできません。本人の状況や背景を確かめ、家庭・学校・関係機関が協力して必要な支援を考えることが大切です。[3]
- Q3家族から責められたら、反論した方がいいですか?
- A. その場で説得しきる必要はありません。話を区切る、会う時間を調整する、理解してくれる人に間に入ってもらうなど、親子の負担を減らす方法を考えましょう。
- Q4学校以外の場所を選ぶことは、諦めることですか?
- A. 学ぶ方法を探す選択でもあります。校内での配慮や別室、教育支援センター、フリースクール、オンラインなどを、本人の状態と希望に合わせて検討できます。[3]
まとめ|「親が悪い」で終わらず、必要な支えを増やす
- 発言と、その後の撤回・謝罪を併せて捉える。市長個人の言葉と、市全体の支援方針を混同しない。
- 責任を問う前に、本人の困りごとを確かめる。保護者も支援を受けながら、周囲と一緒に考える。
- 家族の理解を、その日に勝ち取らなくてもよい。親子の安心を守り、合う学びやつながりを探す。
最初の一歩は、困っていることを一つ、話せる相手に伝えることでもかまいません。「登校できたか」だけでなく、安心して過ごせたか、誰かとつながれたかにも目を向けてみてください。
関連記事|家族との関わりと、学びの選択肢
元動画・参考資料
本記事は、星野達郎の以下の発信をもとに構成し、出来事の経緯・支援方針・親子の実例を公開資料で補っています。
元動画をYouTubeで見る(2025年12月18日公開)。吹き出しは、発言の趣旨を変えずに表記・語尾を整えた引用です。返答例・整理図は、発言や参考資料を踏まえた編集上の提案です。
- 静岡放送(TBS NEWS DIG)|不登校をめぐる発言と撤回/翌日の謝罪について(2025年12月3日)
- 富士宮市教育委員会|令和7年12月定例会議事録(2025年12月19日)
- 文部科学省|不登校児童生徒への支援の在り方について(2019年10月25日通知)
- NIJINアカデミー|「な」さんのお母さんへのインタビュー
- NIJIN|黒音さんへの公開インタビュー
資料・サービス情報の確認日:2026年11月7日。

